アメリカの「レッドライン」を探っているチュウゴク | 日本のお姉さん

アメリカの「レッドライン」を探っているチュウゴク

【佐藤優の地球を斬る】尖閣主権 米国に承認させる努力を
配信元:2013/01/28 13:10更新
 イランと中国の外交戦略は実によく似ている。イランが核開発で、中国は尖閣諸島問題で、挑発的行動を繰り返すのは、「どの線を越えたら、米国が実力行使に踏み切るか」という「レッドライン」を探っているからだ。
 イランは挑発活動を繰り返した結果、「20%を超えるウラン濃縮を行えば米国がイランに対する実力行使に踏み切るか、あるいはイスラエルによるイランに対する先制攻撃を容認する」という感触をつかんだ。だから、オバマ政権が続く間は、核開発の準備を鋭意進めるが、ウラン濃縮に関しては、20%の「レッドライン」を越えないようにするであろう。
 ■定まる「レッドライン」
 尖閣諸島問題に関しても「レッドライン」が定まりそうだ。1月18日(日本時間19日)に、ワシントンで岸田文雄外相とヒラリー・クリントン米国務長官が会談した。19日のMSN産経ニュースは、<クリントン長官は沖縄県・尖閣諸島をめぐって、中国が公船や軍用機による領海侵犯など挑発行為を活発化させていることについて、「日本の安全を脅かすいかなる一方的な行為にも反対する」との考えを表明し、岸田外相は米国の姿勢を評価した。(中略)クリントン長官は、「日本の施政権下にある尖閣諸島が、米国による日本防衛義務を定めた日米安保条約の適用対象である」と重ねて強調。米政府として、中国の挑発行為に反対する姿勢を初めて明確に示した>と報じた。


 外務省は、クリントン長官発言を最大限に活用して、尖閣問題に関し、米国が一歩踏み込んで日本寄りの姿勢を示したという印象を世論に焼き付けようと腐心している。しかし、「尖閣諸島に対する日本の施政権を維持する」という内容が、「レッドライン」になることは日本にとって不利だ。日本にとって重要なのは、尖閣諸島の主権が日本に帰属することを国際社会に承認させることだ。
 ■中立的立場を取る現状
 復帰前の沖縄は米国施政権下に置かれていた。沖縄では米ドルが流通し、裁判権も米軍政府が握っていた。しかし、沖縄が米国領になったわけではない。潜在主権は日本に属していた。
 図式的に整理すると完全な主権は、潜在主権と施政権によって構成される。米国が尖閣諸島に対する日本の施政権をどれだけ強く支持しても、肝心の主権(もしくは潜在主権)について中立的立場を取っているという現状は、今回の日米外相会談によっても小指の先程も変化していない。



外務省が日米同盟を本気で深化させようと考えているならば「尖閣諸島の主権は日本に属する」というわが国の立場を米国に明示的に認めさせる外交努力をするべきだ。


日本の施政権に手をつけないことが米国の「レッドライン」であるとの認識を中国が抱くと、今後、面倒なことが起きる。



尖閣諸島の帰属に関し、米国が日本の施政権しか明示的に承認していない現状では、中国の宣伝に付け入る隙を与えてしまう。
 (作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS)http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/625606/

 中国は尖閣諸島をめぐる歴史解釈を装った宣伝攻勢を一層強める。そして、「『釣魚島及其附属島嶼』(尖閣諸島に対する中国側の呼称)は、日本の施政権下に置かれているが、潜在主権は中国にある。米国も中国の立場に十分配慮している」という論理で、国際世論を説得しようとする。
 ■強まる中国の宣伝攻勢
 どうも河相周夫外務事務次官の指導下にある外務省は、尖閣諸島に対する日本の立場を米国に認めさせることを初めからあきらめてしまっているようだ。
 外務省は極めて政治的な役所だ。民主党政権時代に、当時の権力者にすり寄ることで登用された一部の外務省幹部が、自公政権になって日米同盟が深化しているという「政策広報」、よりはっきり言うならば「情報操作」を行うことで、自らの生き残りを画策している。