13年度の生活保護費を削減する方向で調整 | 日本のお姉さん

13年度の生活保護費を削減する方向で調整

<生活保護費>来年度削減へ 政府・与党調整
毎日新聞 1月16日(水)21時5分配信
 政府・与党は16日、13年度の生活保護費を削減する方向で調整に入った。保護費のうち基本的な生活費を賄う生活扶助の基準額に関し、子育て世帯などの基準額が一般低所得世帯の生活費を上回る「逆転」が生じているとした厚生労働相の諮問機関、社会保障審議会生活保護基準部会の報告を受けた形を取っている。しかし、政府方針は「減額ありき」だ。厚労省は大幅な保護費カットに反発する同部会の報告書にも「介入」するなど、減額に向けた自作自演のにおいも漂う。【鈴木直、遠藤拓、佐藤丈一】

【厚労省前では抗議集会】生活保護費切り下げ反対の声

 ◇審議会委員から批判も

 16日の同部会。委員からは「消費者物価指数や賃金など(経済指標)は一度も検討していない」との不満が飛び出した。同省の強い意向で報告書に経済指標を使って保護費を改定できる一文が盛り込まれたためだ。財務省は以前から民間給与の下落を盾に保護費減額を迫っており、経済指標を使えば部会の検証結果にこだわらず保護費を下げられる。

 さらに、政府には検証結果をつまみ食いしようという姿勢もうかがえる。検証では世帯類型ごとに生活扶助基準額と一般低所得世帯(全世帯のうち収入が低い方から10%の世帯)の生活費(09年調査)を比べているが、夫婦と子ども2人の世帯の場合、月18万5500円の生活扶助を受け取れるのに対し、一般低所得者の生活費は月15万9200円で2万6300円(14・2%)の差があった。「子育て世帯は保護費をもらいすぎ」ととらえることも可能だ。

 ただし、60歳以上の単身高齢者で比べると事情は一変する。月の保護費は生活費より3300円(4・5%)低く、保護費の基準が相場より低いことを物語る。全保護世帯に占める夫婦と子ども2人世帯の割合は0・4%に過ぎない。単身高齢者の割合は51・8%と半数を占めている。

 さすがに厚労省も機械的な減額は避ける意向で、単身高齢者と子育て世帯の格差是正をしたうえで全体の保護費を削減する方針だ。それでも、生活扶助の基準額はさまざまな低所得者対策の指標となっている。減額されれば地方税の非課税措置や就学援助などから外れる人が出てくる。子育て世帯の減額に踏み込めば、貧困世帯の子どもが貧困に陥るという「貧困の連鎖」を断ち切れなくなりかねない。同日の部会で国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・社会保障応用分析研究部長は「子ども世帯にマイナスになるのでは」との懸念を示した。

 ◇自民主張、修正も

 16日は生活保護制度の見直しを議論してきた同審議会の特別部会も報告書をまとめている。就労支援策の強化など昨年9月の厚労省素案に沿った現実的な内容だ。自民党は衆院選の公約で「保護費の原則1割カット」など報告書を超える「劇薬」も主張して政権を奪還したものの、制度改革にあたっては受給者への影響を配慮せざるを得ないとみられる。

 部会の報告書には保護費の削減策として、受給者が受診する「指定医療機関」への有効期限設置や、新薬より安い後発薬の使用促進なども並ぶ。これらの案には自民党内にも異論はない。

 むしろ今後の焦点は、同党の生活保護プロジェクトチームが昨年11月にまとめた改革案がどこまで反映されるかだ。その中では保護費のカットに向け、約3.7兆円に上る保護費の半分程度を占める医療費削減を狙った毎月の受診回数の制限、食料などをクーポン券で渡す「現物支給」の導入なども打ち出している。

 とはいえ、医療費の安易な削減は受給者の生命にもかかわる。クーポンの支給も第三者に受給者であることが分かるため、実現は容易ではない。

 この日、世帯によっては保護費が10%以上高い、との検証結果も示されたが、厚労省は「機械的に当てはめて減額するわけではない」と釈明している。田村憲久厚労相も、「必要なものを切るわけにはいかない」と述べ、党の主張を修正しつつある。

 ◇検証方法に疑問

 布川日佐史・静岡大教授(労働経済論)の話 検証の方法自体に疑問が残る。受給世帯の比較対象としている(一般低所得)世帯には生活保護を受給できるのに受けていない世帯も含まれており、生活保護の基準を低い方に誘導する恐れがある。現在の水準の検証にリーマン・ショック翌年の09年のデータを元にした分析結果をそのまま使うのも問題だ。

 ◇生活困窮者支援に関する社保審特別部会報告書(ポイント)◇

1 新たな困窮者支援制度の構築

・一般の就労が難しい人に簡単な作業の機会を提供する「中間就労の場」を創設

・住居確保のための給付金制度を検討

・「貧困の連鎖」防止に向け、生活困窮家庭の子どもへの学習支援

2 生活保護制度の見直し

・積極的に就職活動を行う人への手当支給

・収入があっても一定額は保護費が減額されない制度の拡大

・働いて得た収入の一定額を保護脱却時に支給する「就労収入積立制度」を創設

・働く意思がなく保護を2回打ち切られた場合、3回目の審査を厳格化

・不正受給に対する罰則引き上げ

・援助が難しいと答えた親族に理由の説明を求める

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130116-00000110-mai-pol