▼アフガン戦略の出ばなをくじいたCIA秘密基地に対する自爆テロ | 日本のお姉さん

▼アフガン戦略の出ばなをくじいたCIA秘密基地に対する自爆テロ

From:菅原出
件名:秘密戦争の司令官オバマ(3)
2013年(平成25年)1月10日(木)
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軍事情報短期連載 秘密戦争の司令官オバマ(3)

「オバマの戦争」について、日本では十分な理解がされているとは言い難い。第二期オバマ政権のスタートにあたり、過去4年間の「オバマの戦争」の実態を振り返って検証し、米国の戦争の仕方を知っておくことは、日米同盟のあり方が問われている現在のわが国にとって大切なことではないでしょうか?

オバマとCIAの隠された戦争のリアルな実態や、衰退する米国と無極化する世界の現実を、いち早くお伝えします。
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□はじめに

 オバマ大統領が第二期政権の国防長官にチャック・ヘーゲル元上院議員を指名する意向であることが伝えられている。ヘーゲル氏は共和党員だが、ブッシュ前政権のイラク戦争を徹底的に批判したことで、共和党の保守派、特にネオコン・グループとは仲が悪いことで有名だ。最近でもイランに対する強硬な政策に反対し、イランとの対話を主張しており、ここでも米議会の保守派とは意見を異にしている。

 このような人物を国防長官に指名するオバマ大統領は、これからどのような外交・安全保障政策をとってくるのだろうか。そして、テロとの戦いはどのような方向に向かうのだろうか。本連載「秘密戦争の司令官オバマ」では、アフガン戦争を通じて、オバマ大統領が「秘密戦争の司令官」へと変貌していった過程を描いていく。
前回は、そもそものアフガン戦略策定をめぐるオバマ政権内の路線対立を振り返ってみた。連載第3回目の今回は、2009年12月に発表された新アフガン戦略が、いきなり壁にぶつかり、変更を余儀なくされていく背景について触れていきたい。

▼アフガン戦略の出ばなをくじいたCIA秘密基地に対する自爆テロ

2009年12月1日に、オバマ大統領がウェストポイントで新アフガン戦略を発表してから一カ月も経たない12月30日、米国の諜報史上に残る大惨事が発生した。アフガニスタン東部のホースト州にある米中央情報局(CIA)の基地で自爆テロが発生し、7名のCIA要員と1名のヨルダン政府関係者等が死亡したのである。一度にこれだけ多数のCIA要員が殺害されたのは、過去30年のCIAの歴史を振り返っても例がなかった。

しかもこの自爆テロ犯は、CIAが911テロ事件以来、緊密に協力してきた親米アラブ国家ヨルダンの情報機関がアルカイダに潜入させていたスパイだった。CIAは、「ヨルダン情報機関とアルカイダの二重(ダブル)スパイによる自爆テロ」という前代未聞の手法で、奈落の底に突き落とされたのである。

この自爆テロ発生から10日程が経った2010年1月9日、アラビア語のニュース・チャンネルに、自爆テロを実施したダブル・スパイが、「パキスタンのタリバン」の指導者ハキメラ・メスード司令官と並んで映っている映像が流された。伝統的なアラブ衣装を身にまとった自爆テロ犯は、「われわれはベイトゥラ・メスード首長の血を決して忘れてはならない。米国内外で彼のための復讐を求め続けるのだ」とアラビア語で述べて、このパキスタン・タリバン指導者が殺害されたことに対する報復として、米国のターゲットに攻撃を加えると宣言していた。

この自爆テロで、パキスタン・タリバンがアルカイダと連携してCIAに果敢に攻撃を仕掛けたことは、西側のテロ対策関係者の当時の常識を超えた行為だった。しかも、本来ダブル・スパイを使った工作とは、非常に洗練された作戦であるため、彼らがこのような高度な技を使い、しかも目標を見事に達成してCIAに甚大な被害を与えたことは、オバマ政権の対テロ・チームに大きな衝撃を与えた。

パネッタCIA長官(当時)は、この自爆テロ事件を経験して、「アルカイダとの戦いが本当に戦争だということを思い知った」、と後に回想している。新たなアフガン戦略に基づく本格的な増派作戦を前にして、オバマ政権はのっけから出ばなを挫かれたのだった。そしてこの事件は、オバマの戦争を激化させ、秘密作戦を劇的にエスカレートさせる一大契機になったと言える事件だったのである。

▼カルザイ大統領の反乱

アルカイダとのテロとの戦いの凄まじさを思い知らされオバマ政権は、米軍増派による反乱鎮圧作戦(COIN作戦)でもいきなり大きな壁に突き当たった。他でもないカルザイ政権という「壁」である。

前号でも触れたように、米軍を増派して住民の安心・安全を確保して、タリバンが活動出来ないように封じ込めていくCOIN作戦を展開するには、現地のパートナーであるカルザイ政権が“市民から受け入れられる正統な政権だ”と見なされる必要があった。そしてそのためには、カルザイ政権が「腐敗」を断ち切り、住民から信頼される政権に生まれ変わる必要があった。

それゆえ米軍の「増派」とカルザイ政権の「腐敗対策」はセットだと考えられていた。そこでオバマ政権は、新アフガン戦略の発表後、早速カルザイ政権に圧力をかけ始めたのだった。

しかし圧力を受けたカルザイ大統領は、オバマ政権の増派戦略に協力するどころか、そんなに圧力をかけるのであればタリバンに加わる」とまで発言して事実上居直ってしまった。そして、実は、カルザイ大統領に居直られてしまえば、オバマ政権としては手がなくなってしまうことを、カルザイ大統領は十分に見透かしていた。このカルザイ政権の「居直り作戦」を受けて、オバマ政権は早々に計画の変更を余儀なくされていくのである。

オバマ大統領は以降、「これ以上圧力をかけても逆効果」と判断し、少なくとも表向きにはカルザイ大統領を徹底して持ち上げ、彼の正統性を高めるアプローチに変更したのである。
つまりオバマ政権は、増派戦略と同時にカルザイ政権の腐敗を正し、より信頼できるパートナーと共に本格的なCOIN作戦を実施する道を早々に諦めてしまったのだった。それゆえ大規模な部隊を投入して地道なCOIN作戦を展開するのではなく、より小規模の特殊作戦部隊を送り込み、テロリスト」を暗殺する特殊作戦へとシフトせざるを得なくなるような政治状況しかつくれなかったのである。

本来の新戦略で描いていた増派部隊を投入したCOIN作戦は、もともと実施出来ない政治的な環境になっていた。カルザイ政権と早々に妥協したことにより、本格的なCOIN作戦は出来ず、いずれ対テロ作戦(CT作戦)に移行せざるを得ない条件が最初から備わってしまっていたと言えるのである。

▼拡大したパキスタンでの「見えない戦争」

CIA基地に対する自爆テロ以降、オバマ政権は無人機によるミサイル攻撃を劇的にエスカレートさせ、これがオバマ政権の対テロ政策の主力となっていく。この作戦は新アフガン戦略の中では、「タリバンの戦闘員を蹴散らして掃討する」いわゆる「クリア」をサポートする作戦の一つとして位置付けられていた。

このクリアの段階では、増派された米軍の一般部隊がタリバンの軍事拠点を潰してタリバンの武装勢力を掃討する、いわゆる「目に見える軍事作戦」が展開された。しかしその裏で、目に見える軍事作戦を支援するために、「目に見えない秘密作戦」も同時に展開されていた。
その一つは軍の特殊部隊がアルカイダやタリバンの指揮官などの隠れ家を探して、夜間にそうした隠れ家を急襲して彼らを殺害する作戦である。そしてもう一つが、隣国パキスタンで展開された目に見えない作戦だ。
特にパキスタンにアルカイダやタリバンなどの過激な武装反乱勢力が「聖域」をつくり、そこで米国に対するテロを計画し、訓練を重ねていたため、その「パキスタンの聖域」を潰すことが、アフガニスタンの作戦を成功させるために不可欠だと考えられたのである。

しかし、パキスタンにアルカイダやタリバンの指導者たちがいることがわかっていても、表向きパキスタンは米国の同盟国であり、ここに軍隊を送って軍事行動をとるわけにはいかない。そこでオバマ政権は、パキスタンではCIAに「秘密工作」という枠組みで戦闘行為をさせたのである。

そしてパキスタンで「テロリストを探し出し、暗殺する」秘密工作活動の主役として、オバマ政権の下で強化された作戦が、無人機「プレデター」によるミサイル攻撃だった。超高性能のビデオ・カメラとミサイルを搭載したプレデターが、3キロほど上空を飛び、CIAの工作員や特殊部隊員ですら近づけないアフガニスタン・パキスタン国境の村々を上空から監視し、「テロリスト」を発見し、その行動を監視した後、最適な機会を見計らってミサイルを発射して殺してしまうというリモコン操作の暗殺作戦だ。

この無人機によるテロリスト暗殺作戦は、ブッシュ前政権時代に始められたが、オバマ政権になると劇的に規模が拡大され、パネッタ長官のもとで積極的に運用された。2009年秋までは7機体制だったのが、同年末の自爆テロを受けて、アフガニスタン・パキスタンだけで14機体制へと文字通り能力が「倍増」されたのだった。

こうしてオバマ大統領が新アフガン戦略を発表してから1年も経つと、ワシントンでは、「アフガニスタンの作戦がうまくいかないのはパキスタンのせい」とでも言いたげな論調が急速に強まっていった。そして、こうした論調が出ている裏で、CIAはパキスタン北部のアボタバードにオサマ・ビン・ラディンが潜んでいる可能性について、全力を挙げて諜報活動を展開していた。

こうして2011年はオバマ政権の焦点がパキスタンにシフトし、米国とパキスタンが衝突する年になっていくのである。次回はCIAとパキスタンの諜報機関ISIの暗闘についてみていきたい。


(つづく)

(すがわら・いづる)


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● 著者略歴

菅原 出(すがわら・いずる)

1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。
同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。
在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュース
レター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』
(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経
BP社)などがある。

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発行:おきらく軍事研究会(代表・エンリケ航海王子)
著者:菅原出
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アメリカの大統領になるのは、大変なことですね!

でも、オバマ大統領はよく頑張っているなと思います。

アメリカは、きちんとイスラム過激派のテロリストの元親玉であり、元資金源であった

アルカイダのトップであったオサマ・ビン・ラディンを殺害したので

世界中のイスラム過激派は、やっぱりアメリカはバカにできない国だと思ったのではないでしょうか。

アラブ人に限らず外国人たちは、相手が弱いと思うと徹底的にバカにします。

日本人だけです。相手のことを思いやってやるべきこともやらないのは、、。

その結果、どんどんバカにされて、いろんなモノを奪われる。