脱原発に良いことなし―最も安全な原発をなぜやめようというのか!―  茂木 弘道  | 日本のお姉さん

脱原発に良いことなし―最も安全な原発をなぜやめようというのか!―  茂木 弘道 

今、すぐに脱原発は無理。↓

このような意見もあるということで、読んでおいてほしい。事実も入っていると思います。

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脱原発に良いことなし―最も安全な原発をなぜやめようというのか!―  

 
 今回の総選挙において、「脱原発」を叫ぶ政党は数あれど、「原発推進」の正論を掲げる政党がほとんど見当たらないのは、実に奇怪なことであります。


 世の中に絶対の安全など存在しないことは言うまでもありません。相対的な安全性、すなわち単位発電量当たりの死亡者数を比べると、原発は最低です。火力の何と700分の1であり、最も安全であります。
 にも拘らず、何かに取り憑かれたかのように、原発は絶対的に避けるべきものであるかのような、固定観念を多くの人たちが思い込んでいるのは一体どういうことなのでしょう?原発と原爆を混同しているのかも知れません。


 しかも、そう思い込むことが「正義」であるかのように錯覚している人が多いようです。とんでもない話で、脱原発は偽善的で不道徳な考え方なのです。なぜならば、先進国が脱原発を行うことは、実質的には貧しくエネルギー資源のない国に対する利己的で無慈悲な差別行為となります。エネルギー資源の高騰を招き、貧富の差を拡大するだけだからです。 ダライラマが昨年日本に来た時に脱原発を批判しましたが、当然のことです。
 その論拠を簡単にまとめた小文を添付しますので、是非目を通していただきたいと思います。どんなご質問にもお答えするつもりです。
 なお、小論では不十分とお考えの方には、次の3つの論文がありますので、ご希望があればPDFファイルを無料でお送りいたします。ご注文ください。
 
 *BEIR委員会報告書批判
T.D.ラッキー.Phd., ミズーリ―大学名誉教授  (42ページ)
・訳者注:原題はNuclear law stands on thin ice (核関係の法制は薄氷を踏む如し)となっているが、論文の内容を示すためにこの日本語タイトルとした。International Journal of Nuclear Law, Vo. 2, 2008 に掲載されたもの。(訳者:茂木弘道)
*『これが結論―日本人と原発』(竹田恒泰著)徹底批判ーその1 放射能編
*       〃                 ーその2 原発編
(この2点は茂木執筆、それぞれ30ページ、25ページ)  
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平成24年11月22日       茂木 弘道  
脱原発に良いことなし
―最も安全な原発をなぜやめようというのか!―
「史実を世界に発信する会」事務局長 茂木弘道

非科学的な放射線恐怖の誤り

 「低線量放射線は危険どころか体に良い」この事実を知った時はまさに目からうろこの思いであった。1982年にミズリー大学生化学教授トーマス・ラッキー博士はHealth Physics誌に「自然放射線の100倍から1万倍までの線量率の放射線を受けるのは、生体の活性化を生じ、有益な効果をもたらす」という論文を発表した。博士は、NASA飛行士の食事指導の傍ら、帰還飛行士の健康データチェックを行っているうちに、飛行士の健康データがいずれも出発前より改善されていることに気がついた。これがきっかけで、放射線の健康への影響を調べ始め、2000を超える論文に低放射線の好影響が出ていること、そしていくつかの実験結果をもとに低放射線の「ホルミシス」効果を実証した此の画期的な論文を発表したのである。


 1985年に従来の概念を覆すこの新説の正否を議論する学会がカルフォルニア大学医学部主宰でオークランドで150人の参加者を集めて開かれた。結論は「ラッキー論文は科学的に正しいものであるが、哺乳動物や人に関するデータが乏しいため哺乳動物など積極的研究を要する」ということになった。
 その後、世界の放射線分子生物学者、DNA研究者などが本格的にこの問題に取り組みだした。ホルミシス効果の原理は放射線で損傷を受けるDNAを修復する機構を人間は持っていて、その働きによってかなり高い放射線にも耐えることができるばかりではなく、低放射線を浴びることによって此の修復機構が強化されるところにあることが解明されてきたのである。


 1998年からフランス科学アカデミーのモーリス・チュビアーナ博士の主導によってEU研究者たちの細胞実験で、放射線をどこまで上げるとDNA修復は不可能になるのか、限界追求がなされた。2001年アイルランドのダブリンで開催された学会で、チュビアーナ博士はこうした実験結果に基づいて、「自然放射線の10万倍の線量すなわち10ミリシーベルト/時以下の放射線による損傷に対して、DNAは十分に修復され、修復不良のDNAを持つ細胞を除去するアポトーシスなどの人体細胞の防御活動も考慮すれば、10ミリシーベルト/時以下の線量率であれば、長時間に亘る照射でも人体細胞はパーフェクトで、ガンの発生などはない」と発表したのである。
 時間当たり、10ミリシーベルトが大丈夫と言っているのに、年間100ミリシーベルトはだめだ、20もだめだ、1以下にすべきだなどと、ばかばかしい議論が学者から出され、それに日本政府が振り回されているのは、何ともいたわしい限りである。

ホルミシス効果を実証するデータ

 オークランド会議以来、日本でも様々な実験が行われホルミシス効果についての実証データが生まれている。その一つをご紹介しよう。
 グラフ1は東北大学医学部の坂本澄彦教授が、悪性リンパ腫患者100名以上に、従来の臨床対応と並行して100ミリシーベルトの全身照射(週3回、5週間計1500ミリシーベルト)を行った結果である。
 10年後の生存率が、照射ナシの患者50%に対し、84%へと大きく上がっているのである。死亡率で比較すると、50%に対し16%となる。この原因について、免疫細胞(特にヘルパーT細胞)の増加によるものだろうと推定データも載せているがここでは割愛する。顕著なホルミシス効果である。

 次に紹介するのは、欧米核施設で働く労働者の調査結果である。

グラフ2がそれであるが、8つの研究結果を一つのグラフにまとめたものである。被曝した労働者と同じ施設で働く被曝しない労働者とのガン死亡率比較である。100が、被曝していない労働者の死亡率である。これに対して、被曝した労働者のガン死亡率であるが、8つの研究のどのケースにおいても累積被曝量が多くなるに従って、死亡率は低下していることが分かる。最も低下が著しいのは、7、カナダ核エネルギー3工場(アバット他)、次は1、英国兵器工場(ケンドール他)である。いずれも、右端、10cSv=100ミリシーベルト近く被曝した労働者の死亡率は、非被曝労働者のほぼ10%となっている。
 もし、少量被曝が危険だというのなら、この結果は一体どうなるのだ、というわけである。要するに低放射線は、ホルミシス効果により体に良い、だからガン死亡率がこんなに低くなる、ということなのである。
  福島の放射線量は体に良いことはあっても悪いことはありえない

 さて、福島の放射線量はどうだろうか?最も高い地域である飯館、浪江地区においても、直後の高い時で45マイクロシーベルト/時(チュビアーナ博士の言う安全圏10ミリシーベルト/時の2百分の1)であり、累積がせいぜい70-80ミリシーベルトである。20キロ圏内など高い時で10マイクロ/時であり、累積で5‐10ミリシーベルトになるかどうかの程度である。
 即ち福島は、累積で100ミリシ-ベルト以下なのだから、グラフ2で示されているホルミシス効果のあるレベルなのである。従って、福島はむしろ健康に良い程度の被曝量だったということだ。植物、作物にその好影響が表れていることはすでに伝えられているとおりである。(『週刊文春』23年12月29日号)また、福島原発の作業員として事故後わざわざ出かけて行った人の体験談として、持病が無くなり健康になったということをチャネル桜で放送していたそうである。
 何か福島でとんでもないことが起こり、あそこは安心して住めないところになったかのような悪宣伝をし、また多くの人々はそれに近いイメージを持っているようであるが、それは全く見当外れの誤解なのである。

原発の安全性が証明された

 マグニチュード9の地震は、文科省が管轄する地震調査研究本部が予測したマグニチュウド8.2の16倍の巨大地震(関東大震災の約50倍)であり、まさに千年に一度の地震である。しかし、女川原発のように最も震度の高い地区にあった原発を含め、地震に襲われ原発は「全て」数秒後に核分裂反応を停止し、原発本体はほぼ無傷であった。


しかし昭和8年に三陸に15メートルの津波が来たときに、福島の相馬では1.5メートルだったように、福島に15メートルの津波が来ることは学会でも全く予測していなかった。その結果最も古いタイプの原発で、重力で自動的に循環冷却する装置がなかったこともあり、電源喪失という事故に見舞われ、水素爆発を起こしてしまった。それでも本体の核分裂反応は停止していたために核爆発になったわけではなく、放出された放射線量は、すでに述べたように、危険水準などでは全くなく、むしろ健康によいほどの水準であったということである。
従って、このいわばマイナーな問題を除いて基本的には、超巨大地震に対して原発は基本的に安全であることが、立証されたのである。
『放射能と理性』の著者である、オックスフォード大学で素粒子論を教えていたウェード・アリソン博士は昨年10月来日し、福島を観察し、外国人特派員協会で講演をしたときに、原発の安全性が証明されたのであるということを強調されていた。

安全な原発をなぜやめなければいけないのだ

 水素爆発を核爆発と錯覚している人がいるためか、そういうイメージを撒き散らす反核イデオロギーに染まった人々に操られているためか、何か原発は恐ろしい危険なもので、できるだけ減らしていくことが当然であるかのような風潮となっている。
 安全神話が崩壊したという。世の中に絶対安全なものなどあるはずがなく、ある確率での事故が起こることは当然である。しかし、だからと言って絶対許せない危険であると考えるのは見当はずれである。今回はそのいい実例を示してくれたはずである。千年に一度の超巨大地震に襲われた。原発本体は無事だったが、予想外の所で事故が起き、放射線も漏洩した。しかし、大騒ぎをしているのとは違い、実際に人体に危害を与えるような程度ではないというのが真実である。事実放射線障害による病気になったり、死者が出たなどということもない。数万の死者は、地震と津波によるものであり、別に放射線によるものではない。そればかりか、福島はむしろ人体に良い程度の放射線量である。
 という事実からすると、脱原発などというのは正にキチガイ沙汰である、ということになる。民主党の仙谷由人議員が、脱原発を「集団自殺」と呼んだのは正に真実をついている。

原発は火力発電よりはるかに安全である

 自然エネルギーは将来にわたって、中心エネルギーになることはほとんど期待できない。しかもコストが高い。となると、原発に代わるものは石炭・石油・天然ガスなどのいわゆる化石燃料ということになる。
 では化石燃料は安全で原発は危険なのかというと、それは実は全く逆なのである。化石燃料のもたらす被害はCO2放出など多々あるが、WHO(世界保健機構)報告によると大気汚染で年間115万人が死亡しているが、そのうち30%が火力発電とすると30万人ほどになる。原発の死者は多めに見積もって50年間で4000人ほど。1兆Wh当たりの死者を比べると、火力発電は21人なのに対し原発は0.03人、つまり700分の1である。
 これを見ても絶対安全などというものが存在しないことがよくわかるであろう。相対的に原発は超安全である。因みに、太陽光発電はどうかというとゼロではなく、0.44人、すなわち原発の15倍である。自然エネルギーは安全と漠然と考えるのは大間違いなのである。

脱原発に良いことナシ

 原発には、この外にコスト、資源供給他多くの利点があるのであるが、その詳細は割愛する。ここでは、脱原発に実はよいことなどなく悪いことばかりであることを列記してまとめとしたい。

・日本経済に対する負担増
 昨年だけで石油、天然ガスなどの輸入金額が3兆円も増加した。これらは何
も経済価値、効用を生むことなくただ単に海外に支払うという負担増である。
・日本国民への負担増
まずは、電気料金の値上げという形で生ずるが、そのほか多くの経路をたど
って負担増となってくることは以下を見ればわかる。
・日本企業への負担増
 電気料金という形で負担がかかり、企業収益、国際競争力に打撃が生ずる。
加えて、一時的な電力不足、停電などが非常に大きなダメージを与える業種
もある。これは巡り巡って雇用減、雇用者の収入減などの形で国民への負担
となる。
・企業の海外移転促進
 円高に加えて、上述の企業負担は、日本企業の海外移転を促進することになり、雇用減をもたらし、国民への負担となる。
・核開発関技術者減、核関連技術の水準の低下
 政府が脱原発を国策に採用した場合、当然のことながら将来性のない核関連
学部への進学者は大幅に減少し、日本の核関連技術水準が大きく低下していく
ことになる。そればかりか、現在いる優秀な研究者・技術者が韓国などから狙
われている。これは絵空事の心配ではない。かつて、家電、半導体,自動車な
どで、大量の技術者が韓国に引き抜かれた。退職者(実は最高の技術経験を有
する)が中心であったが、今度は第一線の優秀な技術者引き抜かれる。引抜き
が韓国の競争力強化に大きく寄与したことが思い起こされる。原子力分野に
おいても同じようなことが起こる可能性が極めて高い。こんなことを自らやろ
うとしているのだから、これを自殺といわずなんというのか。先端技術の核開
発分野での水準低下は、全体的な日本の科学技術水準の低下にもつながらざる
をえないであろう。二流技術国家への転落の危機である。
・環境汚染の促進
 単位電力当たり最も廃棄物が少ない原発をやめることにより、その1万倍も
廃棄物の多い、化石燃料の消費が増えるということは、CO2などのよる大気
汚染、重金属による土壌汚染ほか環境に大きな負荷を与えることになる。この
人的犠牲者もかなり予測される。勿論温暖化の問題も生ずる。
・世界の石油・天然ガス需要ひっ迫の促進     
 増大しつつある世界のエネルギー需要に対してその有力な供給源である原子
力にブレーキをかけるということは、石油・天然ガスへの過大な依存をもたら
すことになる。その結果は、価格高騰をもたらすのみならず、限られた地域に
偏在するこれらの資源をめぐる争奪戦を激化させることになる。すなわち国際
紛争、戦争の危険性を増大させることになるのである。
・脱原発は日本の国家主権の危機をもたらす
 エネルギー安保は国家主権の根源的基盤である。この危機を招く恐れがある。
 1)火力発電は海外からの天然ガスや石油の輸入にどっぷり依存している。従って特定資源国の資源戦略に強く左右される。
 2)再生可能エネルギーは、供給不安定さから需要に対して供給を確実には保障できない。このため火力によるバックアップが不可欠となる。
 3)原発は地政学的に安定した国々からウラン燃料を確保すれば長期にわた
り安定的に発電を確保できる。ウラン原料の海中からの採取見通しもある。 

脱原発は偽善的で不道徳

 最後に言っておきたいのは、脱原発思想は極めて偽善的で不道徳な思想であるということである。
第1に、「正義」である反核思想は放射線を絶対悪と決め付けるウソに支えらたものである。従って、「偽善」以外の何物でもない。
そして、文明史として一端原発に到達したものを否定して退行するということは人間の知性の本質から外れる。
さらに、脱原発は、実質的には貧しくエネルギー資源のない国に対する利己的で無慈悲な差別行為となる。なぜなら、エネルギー資源の高騰を招き、貧富の差を拡大するだけだからである。 ダライラマが脱原発を批判するのはこのためである。 結論として、脱原発の主張は極めて不道徳であり醜いものである。

*なお核廃棄物問題が最大の問題であるかのようによく言われるが、それは放射線の危険性を過大視することが大きな原因となっている。『放射能と理性』にあるとおり、基本的に解決可能であり、またガイア理論で有名なジェームズ・ブラロック博士は「世界中の高レベル放射性廃棄物を自分の敷地に引き受けてもいい」と宣言しているくらいである。その程度の問題なのである。