配信元:2012/09/26 08:35更新 日本政府の沖縄県・尖閣諸島国有化への対抗措置とみられる出版社や国営書店に対する中国当局の日本書籍取り扱い禁止令に対し、中国人から「愚かすぎる」「反日に名を借りた洗脳教育だ」と反発の声が上がっている。村上春樹氏ら日本人作家の作品や日本漫画は、若者を中心に中国で人気が高い。中国政府の意向を受けた日本書籍への「過剰」な締め付けに、息苦しさを伴う不満が広がっているようだ。
「知識すらボイコットする気か」。インターネット上では禁止令への支持は少数派。「中国はまだこんな幼稚なレベルなのか」「(日本の)漫画なしでは生きられない」といった批判や、禁止令見直しを求める声が多数を占めた。伝統や外国文化を敵視した文化大革命(1966~76年)を引き合いに「昔は文革、今は文化普及制限。中国は特殊すぎる」との嘆きもあった。(共同)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/594125/
中国「無法国家」と心得るべし 関西との関係は…
配信元:2012/09/25 17:56更新
【西論】編集委員・河村直哉
醜悪な顔、と見るほかはなかった。尖閣諸島の国有化に際して中国で暴徒と化し、日系企業の施設の襲撃や略奪に走った隣国の男女の顔である。盗っ人たけだけしいなどといっては、たけだけしいという言葉に失礼に当たる。
同時に、デモと暴動を許し、盗っ人の親分よろしく尖閣の領有を開き直って言い募り、軍艦を持ち出した中国政府は、近代国家としての知性も持ち合わせていないことを満天下にさらした。
ただし、中国が計画的に動いていることは、領海に侵入した監視船の動向などを見ているとよくわかる。今回に限った短期的なものではあるまい。1992年に領海法を制定し尖閣の領有を勝手に定めたときから、腹黒い思惑があったと見るべきだろう。
90年代以降、特に江沢民政権時代に激しくなった反日・愛国運動も表裏一体といえる。誤りも含めて、中国の教科書では戦中の日本の残虐さが強調された。かつて1000万人とされていた抗日戦争の犠牲者数は、3500万人に水増しされた。抗日記念館が各地に造られたが、展示された「残虐写真」には信頼性が乏しいものも指摘されている。
1989年には、民主化を求めて天安門広場に集まった若者らを軍隊が武力弾圧し、多数が死傷した天安門事件が起こっている。反日運動は、事件で信用をなくした中国共産党が国民の不満を外に向けるため日本を外敵にした、と指摘する識者もいる。
いずれにしても、この事態が20年ほども続いた。反日教育で育った世代が社会に出ている。親となり、子供に日本への憎しみを植え付けている者もいるだろう。官の策謀、民の憎悪により、中国は脅威の国となった。一方で、日中は政治的には問題があっても経済は熱いという「政冷経熱」を言い続けてもきたのである。
◆習氏の二枚舌
中国で活動する企業には用心をお願いしたい。いまや日本経済と中国の関係は深い。現地法人は平成22年度で5500社を超えている。今回は関西企業の現地拠点も襲撃を受けた。
関西経済連合会によると、実は関西は全国的に見ても中国との取引の割合が多い。21年の数字を見てみる(小数点以下四捨五入)。輸出のうち中国が占める割合は、日本全体では19%、関西は23%。同じく輸入は日本全体22%、関西34%と、1割以上も多い。
歴史的な経緯もあるだろう。関西の経済界は日中国交正常化前の昭和46年、経済団体首脳で作る訪中団を送った。今年7月にも通算7回目の訪中があり、次期国家指導者に内定している習近平国家副主席とも会談している。
ところで、その際の習副主席の発言が、関経連の機関誌「経済人」9月号に掲載されている。文言を読むと絶句する。
「中日関係が安定的で健全な方向に向かうにはいかにすればよいか、深く考えなければならない。中国は中日関係を重視しており、引き続き友好政策を堅持していく」
その同一人物は今回の尖閣問題の直後、「日本国内の一部の政治勢力が反省しないどころか、さらにひどくなって過ちを重ね、島の購入という茶番を演出した」と言ってのけるのである。自分たちが「深く考える」つもりはまったくないのだ。
私たちは現実をよく見るべきではないか。表面的な「日中友好」や「政冷経熱」を単眼的にうのみにすべきではない。経済活動を行う際のマイナス要因、いわゆる中国リスクはもちろん、相手の腹の内まで複眼的に見たい。例えば中国は単に日本の技術と資本がほしかったのではないか、と。
中国は今回、そのリスクを自ら世界に示した。生産拠点などを中国以外に分散させる動きも、今後目立ってくるだろう。
◆自国以外は野蛮
一昨年、尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件があって間もなく、「最終局面にきた日本の危機」と題した中西輝政・現京都大学名誉教授の講演会が奈良市で開かれた。その段階で中西氏は、日本はもはや平時ではない、戦争には至っていない段階の準有事である、と位置づけた。
第2、第3の尖閣事件がいつ起きても不思議ではない、と書いた氏の近著「迫りくる日中冷戦の時代」が書店に並ぶか並ばないかのうちに、今回の暴動が起きた。
氏は同書で、中国の一党独裁が持つ意味や謀略の哲学に日本人が目を向けず、情緒的な日中友好の交流を進めてきたことに注意を促す。あるいは、中国市場の盛況ぶりに幻惑されることの危うさを指摘する。自らが世界の中心にある文明国で周辺は野蛮国だという古い世界観を、中国はいまだに持っているのではないか、というのが氏の見立てだ。次の焦点は沖縄に当てられているという。
媚中(びちゅう)あるいは弱腰外交を続けてきた歴代政権、それに、靖国や慰安婦問題をことさらに騒いで中国、韓国に歴史カードを与えてきた一部メディアの責任も大きい。国を損ねるここまでの事態になって覚醒しないとしたら、愚かとしか言いようがない。まずは中国の実態を見るべきだろう。
29日は日中国交正常化から40周年となる。誇りを持って隣国に接した古の人にならい、関西からさらに西の、日没する国を冷静に見る日としたい。