一九五四年以降、日本全土が核実験の死の灰で覆われていた実態も明らかになる。 | 日本のお姉さん

一九五四年以降、日本全土が核実験の死の灰で覆われていた実態も明らかになる。

筆洗
2012年9月13日

 
米国は一九五四年、太平洋のビキニ環礁などで、六回もの水爆実験を繰り返した。

無線長だった久保山愛吉さんが亡くなった「第五福竜丸」以外にも、多くの日本の漁船が「死の灰」を浴びたことはほとんど知られていない


▼同じ海域で数多くのマグロ漁船が操業していた。

二百七十隻は高知県の船だった。

闇に葬られそうだった事実を発掘しようと、高校の教員だった山下正寿さんは三十年かけて、生徒とともに漁村を訪ね歩き、聞き取りを続けた


▼調査の過程で二百人以上の元船員の消息が分かった。

健在なら五十代から六十代のこの時期に、三分の一の人はすでにがんなどで亡くなっていたという


▼山下さんの調査の足跡を丹念にたどり、生存している元船員や遺族への取材を重ねた南海放送(松山市)のドキュメンタリーが映画になった。

「放射線を浴びた『X年後』」。

十五日から東京都内で上映が始まる


▼なぜ、被曝(ひばく)の記憶が消えたのか。

船員には米国からの補償金は届いたのか。

歴史の底に沈む闇を照らそうとするジャーナリズムの熱意が伝わる。

山下さんの執念が、地方のテレビ局に乗り移ったかのようだ


▼南海放送が独自に入手した米国の原子力委員会の機密文書からは、

日本全土が核実験の死の灰で覆われていた実態も明らかになる。


福島第一原発の事故を経験した今、映像は重い問い掛けを発している。ttp://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012091302000110.html?ref=rank