コメント欄を読んでみて | 日本のお姉さん

コメント欄を読んでみて


(2012/01/22追記)
この記事を読まれて、「こいつ何を言っているのだろう」とお思いになった方がおられるかも知れません。私が「シェールガス革命」に違和感を持ったのは、むしろ資源的に豊かなはずだと思っていたアメリカが、何で非在来型、しかも生産効率の悪いシェールガスに手を出しているのだろうということでした。図-7を見て愕然としたのは、アメリカの在来型ガス田(陸上と海底)の目を覆うばかりの衰退ぶりです。アメリカの在来型天然ガスの衰退は、私にとっては「シェールガス革命」のインパクトより大きかったです。“The end of cheap oil”
(安い石油の終わり)という言葉がありますが、図-7は“The end of cheap gas” アメリカの安い天然ガスの終わりを示しています。たしかに、アメリカの在来型天然ガスはタダみたいに安かったのです。しかし、在来型天然ガスが衰退し、非在来型天然ガスに頼るようになったということです。それは「革命」ではないでしょう。

アメリカの天然ガス不足が、瞬間風速的にシェールガスでまかなわれるかも知れませんが、ここ10年間程度は、カナダからの天然ガスの輸入と、南米からのLNGの輸入でまかなわれるのだろうと思います。しかし、カナダの在来型ガス田もピークアウトしています。カナダがいつまでもアメリカに天然ガスを送り続けることはできません。アメリカもカナダも、一人当たりのエネルギー消費量は日本の約2倍です。節約をすれば良いはずですが、人間は一度エネルギーをふんだんに使ってしまうと、生活習慣になって抜け出せないようです。

アメリカのピークオイルとピークガスは1970年代初頭でした。世界は2005年にピークオイルを迎え、2025頃にピークガスを迎えます(本ホームページ内のポール・チェフルカ「2050年までの世界のエネルギー見通し」のサマリーをご覧下さい)。私たちはいつまでもふんだんにエネルギーを使える訳ではないのです。

Annual Energy Outlook 2011の全文に目を通し(いろいろなケーススタディーをしています。天然ガスの価格がどうなるかによってシナリオがまったく変わってしまいます。価格が乱高下するのでDOE/EIAは頭が痛いのです。)、図-7をもう一度見てみると、アメリカは天然ガスだけには頼れないため、中長期的には石炭火力と原子力に移行していくことが判ります。石油と天然ガスという使いやすいエネルギーから先に使われ、なくなっていくからです。「シェールガス革命」というメッセージによって、アメリカはカナダの天然ガスを安く買うことができ、石炭火力と原子力への移行のための時間稼ぎができます。日本も本当はアメリカと同じく、この先10数年は天然ガスに依存するとしても、石炭火力と原子力に軸足を移していかなければならないです。今の日本の脱原発路線、その結果としての天然ガスへの過大な依存は、近い将来に、日本をさらなるエネギー危機へと追い込むことになります。

アメリカは世界最大の石油輸入国でもあります。アメリカのエネルギー事情は思っていたよりも深刻です。しかし、原子力を除くとエネルギー自給率が4%(原子力を入れると18%)しかない日本のエネルギー事情は、エネルギー自給率が67%(原子力を入れると77%)のアメリカとは比較にならないほど深刻です。そして、エネルギー自給率77%のアメリカが、(lower 48から)長期的に日本
にエネルギーを輸出してくれるとは考えられません。政治家の先生方、メディアの皆さん、原発をやめて何で代替するのですか? 教えて下さい。まさか自然エネルギーとかシェールガスとかではないですよね。


(2012/02/10追記)
「米、34年ぶり原発建設を認可=スリーマイル島事故後初」
時事通信 2月10日(金)5時54分配信
 [ワシントン時事]米原子力規制委員会(NRC)は9日、東芝子会社が開発した原子炉を採用した米南部ジョージア州の原子炉建設計画を認可した。建設認可は1978年以来、約34年ぶり。79年のスリーマイル島原発事故以降、凍結してきた原発の新規建設の再開に踏み切った形だ。原発輸出の拡大を目指す日本勢にとり、大きな弾みとなる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120210-00000024-jij-int

(ominoコメント) シェールガスがたっぷりあるのに、どうしてアメリカは原子力発電所を新設するのでしょう? エネルギー安全保障上の観点から、エネルギーのベストミックスを目指しているからだと思います。石油の供給動向も不透明だし、シェールガスについても不確定な要素があるからです。アメリカやカナダが、日本にシェールガスを輸出してくれるかどうかは交渉してみないと判りません。また、太平洋岸に日本向けの天然ガス液化設備を作らないといけません。もし、日本がアメリカやカナダからシェールガスを輸入したいのであれば、友好関係が必要ですし、TPPやFTAを結ぶことが求められるでしょう。TPPやFTAの話になると、すぐ鉢巻きをしめて反対する人たちがいますが、政治家の皆さん、そしてメディアの皆さん、どうするのでしょう? どちらにつくのですか?

ピークオイルと「シェールガス革命」というメッセージは、石油も天然ガスも「非在来型」に頭を切り換えないといけない時代になったということでしょうか。しかし、それは原子力を使えず、エネルギー自給率が4%しかない日本にとって、とても厳しいメッセージです。「非在来型」はコストが高く、これからさらに貿易赤字が増えることになります。エネルギー資源のない国でありながら、これまで在来型石油と在来型天然ガスの権益確保をないがしろにしてきたツケを、これから払わなければいけないのでしょう。


(2012/02/18追記、02/26更新)
「シェールガス 開発権取得」
NHK Newsweb 2012年2月18日 5時39分
<引用>
 三菱商事は、カナダ西部にある世界最大規模のガス田の開発と生産を行う権利の40%を、カナダの資源会社から取得することで合意しました。開発する費用も負担することにしており、投資額は合わせておよそ60億カナダドル(日本円にしておよそ4700億円)に上ります。このガス田の埋蔵量はおよそ7.2億トンと見込まれており、日本で消費されている天然ガスの9年分の量に相当するということです。
<引用終わり>
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120218/k10013113341000.html

三菱商事のプレスリリースです。
<引用>
 CRP(註:カットバンク・リッジ・パートナーシップ、Cutbank Ridge
Partnership)が保有する天然ガス資産の合計可採埋蔵量は、35兆立方フィート(約7.2億トン)以上と推定され、日本の天然ガス年間需要の約9年分に相当する膨大な量が見込まれており、今後5年間でCRPとして総事業費約60億カナダドル(約4,800億円)以上を投じ、累計約600本以上の生産井を掘削して開発を進めます。生産期間は50年以上であり、CRPとして今後10年の間に日量約30億立方フィート(約2,250万トン/年)の生産を目指します。 現在、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めておりますが、本資産の取得に伴いその検討を加速させ、将来的にはカナダの経済発展及び雇用創出に寄与し、日本をはじめとする東アジアのエネルギー安定確保を実現することを目指しております。<引用終わり>
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2012/html/0000014164.html


(ominoコメント)


カナダ政府が天然ガスの輸出に同意している訳ではないのでした。CRPが開発しようとしているのは、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州のMontoneyシェールのガス田です。アルバータ州との州境近くにドーソンクリークという町がありますが、その南にある鉱区です。ブルームバーグの記事は興味深いです。<引用> 三菱商事はカナダの天然ガス生産会社エンカナのカットバンク・リッジ天然ガス資産の権益40%を14億5000万カナダ・ドル(約1160億円)で取得することで合意した。同天然ガス資産をめぐっては、中国の石油会社ペトロチャイナ(中国石油)が8カ月前に取得合意を撤回していた。天然ガス価格の下落を背景に、エンカナは掘削コストを調達するため資産売却と事業提携を進めている。同社は昨年、35億米ドルの資産売却を発表。エリック・マーシュ執行副社長は7日にコロラド州で開かれた会議で、合弁相手による年10億-20億米ドルの出資を見込んでいると述べた。<引用終わり>http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZJL651A1I4M01.html(omino


(コメント)

このところの天然ガス価格の下落で、天然ガス生産会社が厳しい経営状況にあるようです。ブルームバーグの記事の数字によれば、投資29億カナダドルに対して当面9000億立方フィートの生産を想定しているようです。29億カナダドル/9000億立方フィート=29億カナダドル/9億mcf=3.2カナダドル/mcf。カナダドルはUS$とほとんど同じですから、井戸出口原価で3.2$/mcfになります。これを精製して、パイプラインで西海岸の港まで送り、そこで液化してタンカーで日本に輸送していくらになるかという話です。西海岸に新しく液化基地を建設しないといけません。


 一番上の図-1にあるように、日本のCIFで10$/MMBtu(ほぼ10$/mcf)以下になればシェールガスをカナダから輸入するメリットが出ます。


しかし、ガス原価3.2$/mcfに、精製コスト+パイプライン輸送コスト+液化コスト+日本へのタンカー輸送コストが上乗せされますから、メディアが言っているように、現在日本が輸入しているLNG価格を下げるほどのインパクトがあるのかどうか不明です。


また、すぐに輸入がはじまる訳ではありません。


メディアが幻想を振りまいているだけなのではないでしょうか。


また、日本で消費されている天然ガスの9年分の権益を取得しただけですから、これからもどんどんシェールガス権益を買いつづけないと、「シェールガス革命」の恩恵には浴せません。利益を得るためにはリスクをとらないといけませんが、商社とはいえ民間企業がリスクをとることは大変なことだと思います(政府系が手を出したら大赤字になるかも?)。


メディアは、自らは常に外野席にいて「シェールガス革命」を囃したて、「何でシェールガスを買わないのだ」と言わんばかりの記事を書きます。


そのうえ、「シェールガスがあるから原発はいらない」と言わんばかりの論調もあります。


高い知性を持ち、責任ある報道をしなければいけない方々のおやりになることではないでしょう。


天然ガスは将来も必要です。


日本の商社がリスクを冒して決断して取り組むのですから、このプロジェクトの成功を願っています。問題は、カナダ政府が輸出に同意するかです。

(2012/02/23追記)


「米産LNG輸入交渉、首脳会談で合意目指す」読売新聞2012年2月22日(水)3時6分配信 エネルギー事情の深刻化を受け、政府が米本土産の液化天然ガス(LNG)の対日輸出許可を求め、米政府と交渉に入ったことが21日、明らかになった。 


日本国内の原子力発電所の相次ぐ運転停止やイラン産原油の輸入削減を受け、エネルギー調達先を多様化する狙いがある。


米国はこれまでLNGを戦略物資と位置づけ、輸出を規制する姿勢をとってきたが、同盟国・日本の強い要請もあり、今春予定する野田首相訪米の際、オバマ大統領とLNG輸出で合意する方向で両政府が調整している。


関係筋によると、日本政府は、米ルイジアナ、メリーランド両州で進む民間のLNG生産プロジェクトからの輸出許可を求めている。


米国では技術向上によって天然ガスの採掘量が急速に伸びており、両プロジェクトの年間輸出見込み量は計1700万トン。


許可が下りれば2016年から輸出が始まる見通しで、アラスカ州を除く米本土で産出するLNGの初の対日輸出となる。


プロジェクトには三菱商事などの商社、中部電力や東京ガスなどの電力・ガス大手が参入に関心を示しているという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120221-00001253-yom-pol


(ominoコメント)


普天間基地移設問題で日米の信頼関係にヒビを入れ、原子力発電所の事故を起こして世界のエネルギー政策に影響を及ぼしてしまい、脱原発にまっしぐらに走ってしまい、今度はLNGが足りないから譲って下さいという話が通るのでしょうか? 


何だかガキの言い分みたいです。アメリカは応じてくれるでしょうか。


「米国はこれまでLNGを戦略物資と位置づけ、輸出を規制する姿勢をとってきた。。。」当然だと思います。


こちらも、米国政府が輸出に同意するかが問題です。


石油や天然ガスを手に入れるのは、築地の市場でマグロを競り落とすのとはワケが違います。


米国政府もカナダ政府も、日本の商社などがリスクの高いシェールガス開発に投資してくれることはwelcomeでしょう。


見返りにある程度の天然ガスの輸出は認めてくれるかも知れません。しかし、日本が輸入しているLNG価格を下げるほどの量が確保できるかどうかは判りません。


資源やエネルギーに詳しい人ならば、常識的には非在来型のシェールガスやタールサンドに手を出すことにはためらいを感じるとおもいます。今後の動向を注視したいと思います。

(2012/03/22追記)


この記事を書いてからも、メディアによるシェールガスに関する報道が続いています。NHKテレビは「シェールガスブーム」ということで報道していました。とくに雇用創出に貢献しているとのことです。

しかし、どうも投資先がなくてだぶついているマネーが、シェールガス開発に向かっているのではないかという気が私にはします。

かっての住宅バブルと同じようにです。

EXXONがシェールガスに対してクールになったという記事も見かけました。


天然ガスが石炭とともに今後十数年発電の主力であり、現在、天然ガスが黄金時代を迎えていることは間違いありません(その先が問題です)。


天然ガス調達先を増やすことは、日本のエネルギーセキュリティーを向上させる上で非常に重要なので、カナダやアメリカから天然ガスを安く輸入することができるのなら、それにこしたことはありません。


しかし、日本の輸入しているLNG価格を下げるほどの大量の天然ガスを、天然ガスの大量消費国であるカナダやアメリカから長期にわたって輸入するのは難しいと考えるのが常識です。


日本は、ロシアとの間では領土問題を抱え、さらに過去にサハリン天然ガスプロジェクトで痛い目に遭っています。


しかし、日本のエネルギーセキュリティーを考えるならば、ロシアから可能ならばパイプラインで天然ガスを輸入すること考えるのが本筋でしょう。


感情的な問題がありますが、日本の生き残りのために冷静になって、ロシアとwin-winの関係を築くべきです。


政治家もメディアも目先の受けを狙ってばかりしていないで、将来の世代のために一つくらい良い仕事をして下さるようお願いします。


(2012/03/28追記)


「シェールガスに期待しすぎてはいけない-持続的と考えられていない米国のLNG輸出-」テクノバの大場紀章さんが、日経BPの「そもそも」から考えるエネルギー論に、上記の標題の記事を書いています。http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120321/230119/


「石油『輸入』国サウジ(2012年3月21日)」、「石油ブームの米国(2012年3月28日)」毎日新聞の潮田道夫さんが、「水説」に相次いで石油に関する二つの解説を書いています。


前者は、石油輸出国サウジが石油輸入国になる日が来るという大場紀章さんの、「そもそも」から考えるエネルギー論を受けたものです。


サウジの石油輸出量が、国内消費が増えているために減少し、いずれは石油輸入国になるという話です。


実際に世界の原油取引量は2007年から減っています。


このことは、本ホームページの「食料、化石燃料、人口が連動」の「世界の原油取引量」のグラフで見ることができます。


後者の要旨を引用すると次の通りです。<引用>科学雑誌「ネイチャー」の1月26日号に掲載されたオックスフォード大学のデビッド・キング教授とワシントン大学のジェームズ・マレー教授の「石油は転換点を越えた」によればシェールオイルは所詮、あだ花に過ぎない。


世界の既存油田の産油量は年々4・5~6・7%も減少し続けており、シェールオイル(註:下のOminoコメント参照)やタールサンドなど非在来型石油の生産も焼け石に水だという。


産油量はこれまで、石油価格の上昇とともに拡大してきたが、05年以降は年率15%ずつ価格が上がっているのに生産が増えていない。


両教授は世界の石油産出量は05年に天井に達した、つまりピークオイルを迎えたと結論する。「現在はかろうじて横ばいの高原状態」である。


<引用終わり>


潮田さんの「水説」は、残念ながらアップロード後1ヶ月くらいで新しい解説に置きかえられて読めなくなってしまいます。URLは次の通りです。http://mainichi.jp/select/opinion/ushioda/news/20120328ddm003070123000c.html (Ominoコメント、2012/05/09書き換え)


ここでいう「シェールオイル」とは、主として、米国北部モンタナ州やノースダコタ州にある"Bakken Shale"(図-9参照)から採れる中軽質油のことで正式には「タイトオイル」と呼ばれているものを指しています

(「シェールオイル」はメディアがシェールガスから「連想ゲーム」ででっち上げた俗称です)。


シェールガス採掘技術を応用して、シェールというよりはタイトサンドに閉じ込められた石油を採取しているようです(有機物を含む石油や天然ガスの元となる根源岩の熟成温度が、七面鳥を焼く温度(145℃)だと天然ガス、コーヒーを入れる温度(82℃)だと石油になります。


だから石油と天然ガスが共存する場合が多いのです。


本ホームページの「石油と天然ガスの起源」を参照してください。)初期生産量が大きいものでも日量4000バレル(636キロリットル)で「シェールガスと同様に、初期時の生産水準からその後急激に減退するものの、その後数十年に渡って低位で生産することが可能とされる(下の引用文献)」とのことです。


ずいぶん頼りない話です。


(引用文献)


市原路子「米国:シェールガスからタイトオイル開発へ -新技術がもたらす可能性-」石油・天然ガス資源情報 2010/12/20URLはこちら(新しいウィンドウで開きます)通常「オイルシェール」とは10%くらいまでの油分を含む頁岩を指します。見かけ上はまるっきり石で、油が滲み出てしたたる様な代物ではありません。「オイルシェール」から油分を取り出すには、オイルシェールを破砕して、天然ガスなどを熱源にして乾留しないといけません。


オイルシェールから油分を回収するのであれば、石炭を乾留した方が余程ましです。とても採算に乗る代物ではありません。タイトオイル(シェールオイル)やタールサンドなどの非在来型石油は、在来型の石油・天然ガス生産が衰退した後の「あだ花」に過ぎないとの指摘です。

私もそう思います。 


民主党政権は、代替エネルギーが明確になっていないのに、全部の原子力発電所を止めてしまいました。


原子力を自然エネルギーで代替できるとか、シェールガスを輸入したいとか、非現実な願望を前面に出して拙速に将来のエネルギー構成を決めようとしていますが、それでは日本をエネルギー危機に追い込んでしまいます。


「石油備蓄の放出、依然選択肢=ガスへの日本の関心考慮―米長官」 時事通信2012年3月30日(金)11時53分配信米エネルギー省のチュー長官は30日、都内で記者会見し、ガソリン価格高騰の抑制策として戦略石油備蓄(SPR)を放出することについて「選択肢の一つだが、まだ決定はされていない」と述べた。一方、日本が輸出を求めている「シェールガス」などの天然ガスについては、「自由貿易協定(FTA)締結国が優先される」としながらも、「日本は強い関心を表明しており、考慮する」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120330-00000069-jij-int

(ominoコメント)


外交用語で「考慮する」というのは、その反対の意味ではないでしょうか。枝野経済産業大臣がチュー長官に会った際に「シェールガスを輸出してくれることに強く期待している」と表明したというNHKのネットニュース記事は、なぜかあっという間に消え去りました。「シェールガスは本当に有望か」FINANCIAL TIMESより日経ビジネス2012年3月7日http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120302/229375/

(関連記事)


「米国で湧く『シェールガス革命』に待った-懸念される環境汚染-」BloombergBusinessweekより日経ビジネス2011年3月3日http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110311/218939/ 原文は"Fracking: The Gratest Shale Gas Rush" by Jim Efstahiou Jr. and KimChipman Bloomberg Businessweek

2011年3月3日「米国から初のシェールガス輸入へ、

三井物産と三菱商事が基本合意」産経ニュース

2012年4月18日00.31配信<以下引用>


三井物産と三菱商事は17日、米エネルギー大手のセンプラ・エナジー(カリフォルニア州)から液化天然ガス(LNG)を最大800万トン調達することで基本合意したと発表した。年内の正式合意を目指す。


「シェールガス」と呼ばれる新型天然ガスを原料にLNGを生産し早ければ2016年後半から日本に輸入する方向で協議を進める。

米国はFTA(自由貿易協定)締結国向けに制限していたLNG輸出の規制を緩和しており、センプラは非締結国の日本向け輸出を米政府に申請している。 


実現すれば、米国からシェールガスを原料とするLNGを輸入する初のケースとなる。<引用終わり>http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120418/biz12041800320000-n1.htm

(ominoコメント)


やはり実現すればの話です。2016年頃にはシェールガスが「あだ花」か「あだ花」でないか判ると思います。

今後、米国での天然ガスの需要増、価格上昇が見込まれるので、仮に天然ガスを日本に持ち出せなくても、日本の商社は米国内向けに天然ガスを販売すれば良いのであって、損をすることはないでしょう。

今、アメリカの天然ガス権益は底値のようですから、三菱商事や三井物産にとっては良い買い物だったのかもしれません。

「槍田松瑩三井物産取締役会長の指摘」 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本問題委員会(第20回会合、2012年4月26日)<以下引用>「シェールガスに頼ったガスシフトは必ずしも簡単ではない。


地政学的リスク等によりガス価格は変動するものであり、安全保障の観点からもガスに大きく依存する状況は危険。」http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/20th/20-1-1.pdf

(ominoコメント)


資源エネルギー調査会基本問題委員会でもシェールガスが取り上げられています。過大な期待を持っている人が何人かいるようです。

エコノミストの様です。エコノミストの予想は当たった試しがないような。私も「ロシアからのパイプラインを作る」ことには賛成ですが、2030年までに実現するでしょうか? 


資源エネルギー調査会基本問題委員会では、阿南久(全国消費者団体連絡会事務局長)、飯田哲也(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所長)、植田和弘(京都大学大学院経済研究科教授)、枝廣淳子(ジャパン・フォー・サステナビリティー代表、幸せ経済社会研究所所長)、大島堅一(立命館大学国際関係学部教授)、高橋洋(富士通総研主任研究員)、辰巳菊子(公益社団法人日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント協会理事)、伴英幸(認定NPO法人原子力資料情報室共同代表)の8委員が連名で、


「エネルギーミックスの選択肢」について、そもそもこのような枠組みは適切でない、エネルギー需給の観点から社会経済のあり方を構造改革することが問われているとの意見書を出しています。 


社会経済のあり方の選択肢としては、例えば、①供給者主導か消費者選択か、②計画経済か市場メカニズム活用か、③経済産業優先か市民の安心安全優先か、④大規模集中型か地域分散型か、⑤短期的経済合理性か長期的持続可能性か、といった点が問われるべきです、との主張です。要するに、二項対立、すなわち「原発をなくして自然エネルギーで代替する方向でのエネルギー政策を基本問題委員会で決めろ」ということなのでしょうね。 


太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などの自然エネルギー利用設備も、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料がないと作ることができません。

原子力も同じことです。自然エネルギーだから持続可能ではないし、原子力に経済合理性がないとも言い切れません。


残念ながら衰退しつつある日本が、限られた経済力でどうやってエネルギーを手に入れて生き残っていくのか、それが今問われているのだと考えています。もちろん、人類全体のことも。。。


「<日米首脳会談>首相、LNG輸出拡大を要請」 毎日新聞2012年5月1日(火)11時58分http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120501-00000032-mai-pol

<以下引用> 


LNG輸出には米政府の認可が必要だが、オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。<引用終わり>

(ominoコメント)


日本のメディアはと「有識者」はずいぶんと米国のシェールガスに期待を振りまいてきました。結局はこんなところでしょう。「天然ガス購入計画推進の見合わせを=米政府が日本などに要請」

ウォール・ストリートジャーナル日本版2012年5月31日(木)8時37分http://jp.wsj.com/US/node_451985


<以下引用>


関係者によれば、野田佳彦首相は4月30日にワシントンで行われたオバマ米大統領との首脳会談で、天然ガス輸出問題を提起したが、米側は政治的に微妙な問題であることなどを理由に、状況を見守るよう伝えた。米政府当局者は、「日本は非常に難しい状況にあり、同情する」としながらも、「この問題についてもっと多面的に考察する必要があるだろう」と述べた。<引用終わり>「米、ガス輸出許可を見合わせ」 共同通信2012年5月31日(木)13時32分<以下引用>【ワシントン共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は30日、米国産天然ガスの輸出を求める日本政府に対し、オバマ米政権が輸出の許可を当面見合わせる方針を伝えていたと報じた。米議会や米産業界から、輸出を認めることで天然ガスの価格上昇を招く恐れがあるとの声が寄せられていることが背景にあるとみられる。<引用終わり>「シェールガスは魔法の杖か 天然ガスシフト、冷静に戦略を」日経産業新聞編集委員 松尾博文http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD3003Q_R30C12A5000000/IEA


「天然ガスの黄金時代のための黄金律」 Executive Summaryの全訳国際エネルギー機関(IEA)2012年5月29日-天然ガスの黄金時代は、環境問題等への真摯な対応なくしては訪れない-「未来の資源 膨らむ夢」朝日新聞デジタル 2012年07月07日http://mytown.asahi.com/akita/news.php?k_id=05000001207070005


<以下引用>


「未来のエネルギー資源」として世界的に開発競争が始まっている「シェールオイル」が由利本荘市西沢の鮎川油ガス田で確認され、試験生産が始まる見通しになった。再生可能エネルギーの開発など「エネルギー供給県」として売り込む県内関係者からは試験生産の成功や地元雇用に期待する声があがった。シェールオイルは地下深くにある泥岩層に含まれる石油を指す。強い水圧で層に亀裂を入れる技術手法が開発されたことで、採掘が可能になった。鮎川油ガス田は由利本荘市役所から南へ約16キロの山あいにある。構想では、良質なシェールオイルを見つけた石油・天然ガス開発会社「石油資源開発」(東京)が来年にも試験生産を始めるという。<引用終わり>(Ominoコメント)シェールガスやシェールオイルで夢を膨らませるのは結構ですが、夢が萎んだ時のことも考えて下さい。「シェールオイル」は、「タイトオイル」と表現した方が実状に近いと思います。(2012/08/23追記)"ConocoPhillips ShipsThird LNG Shipment From Alaska to Japan" BY GCAPTAINSTAFF ON AUGUST 21. 2012「コノコフィリップスはアラスカから日本向けに3回目のLNGを出荷」http://gcaptain.com/conocophillips-ships-third-lng-cargo-alaska-japan/


アメリカは例外的にアラスカ州から日本への天然ガス輸出を認めています。lower 48(米本土)の天然ガスが豊かだった1970年以前からアラスカ州の経済を支えるために、天然ガスの輸出を認めていたのです。アラスカには日本向けの天然ガス液化プラントがあります。


天然ガス液化プラントも、LNGタンカーも、LNGコンバインドサイクル発電も日本が開発したお家芸技術です。日本は、消費地からあまりにも遠い天然ガス田の天然ガスや、余って燃やして捨てている油田などからの石油随伴天然ガスを何とか利用できないかと考えました。


天然ガスを液化天然ガス(LNG)にして、何とか利用しようと考えたのは、日本のガス会社と、今、原発事故で袋だたきにあっている日本の電力会社と、プラントメーカーや造船メーカーのエンジニアたちでした。


エネルギー自給率が4%しかない日本で、相対的に安い電力を供給できたのは、技術者の骨身を削る努力と、民間企業の努力と、そしてMITI/METIの優れた官僚たちの先見性などによるものです。



日本のアラスカからの天然ガスの輸入量は、日本のLNG輸入量の0.8%(出典:エネルギー白書2011 pp.97)でしかありません。

でもありがたいことです。

(最終更新2012年9月5日)


この記事に関連する本ホームページ内の記事へのリンク「シェールガスブームが失速?(1)」-シェールガス頼みの危ない日本のエネルギー政策-「シェールガスブームが失速?(2)」-住民の健康と環境への深刻な影響-シェールガスブームが失速?(3)-IEAもDOE/EIAも埋蔵量を下方修正-IEA 「天然ガスの黄金時代のための黄金律」 Executive Summaryの全訳ローマクラブ成長の限界(1972年)、40年後の検証