「新型うつ病」という専門用語はない 精神医学的定義もない | 日本のお姉さん

「新型うつ病」という専門用語はない 精神医学的定義もない

新型うつ No.1よりOnly1世代が企業社会で齟齬来したの見方
8月05日16時00分
提供:NEWSポストセブン
 就業中はうつで仕事がろくにできないのに、会社を一歩出た途端に元気になる――今、こんな「新型うつ病」が職場で急増しているという。これが果たして本当に「病気」なのか、精神科医の間からも疑問の声があがり、「甘えているだけだ」との厳しい指摘もある。一方で、その風潮に便乗して「新型うつ病」を悪用する者まで現われている。

 詐病は問題外としても、企業にとって、新型うつ病の増加は大きな痛手となる。休職している社員に病休手当を支払い続けることが損失になるが、問題はそれだけではない。

 企業の人事・労務担当からの相談を受けている社会保険労務士の片岡幹雄氏は、実態をこう語る。

「新型うつ病の場合は従来型うつ病と違って、本人が仕事を休んで遊んでいたりするので、職場に不信感が生まれる。しかも職場復帰した後、本人はうつ病を“水戸黄門の印籠”のように捉えていて、『俺は特別』で『仕事を軽減してもらって当然』という意識が言葉の端々に出てくるので、反感を買うことも多い。職場環境を破壊してしまうのです」

 新型うつ病に振り回されないために、企業はどのような防衛策を講じればいいのか。

『心が折れそうなビジネスマンが読む本』(ソフトバンク新書)の著者である労働コンサルタントの中森勇人氏はこう答える。

「すでに一部の会社では自己防衛を始めていて、『EAP(従業員支援プログラム)』という制度を導入する企業が増えつつある。このプログラムでは、従業員の心に寄り添っているように思わせながら、その実、転職を勧めたりすることもできるわけです。こうなるともはや“狐と狸の化かしあい”です。新型うつ病で休職している人は、退職や転職を勧められる前に、上司や人事とよく話し合って職場復帰することをお勧めします

 厳しい姿勢で臨む会社が増えているということだ。新型うつ病は、大企業や公共団体など、休業保障制度が充実した事業所に多いのが実態だ。実際に、某機械メーカーの人事担当者は、こんな経験を話した。

「入社2年目の20代男性社員が1か月も無断欠勤を続けた。聞くと『新型うつ病なんです』と言う。しかし診断書もなかったですし、長期の無断欠勤は解雇の理由になるので、退職勧奨をしたところ、本人が『辞めたくない。きちんと治して頑張ります』と言い出し、今は普通に働いている。拍子抜けしました」

 もちろん、新型うつ病の中にも、職場の悩みだけでなく、プライベートで重い悩みを抱えているケースも皆無ではない。それが余計にこの問題の扱いを難しくしている。現実には主治医と相談し、原因や症状の軽重を見極め、従来型うつ病とは区別する必要があるが、解雇の要件を満たせば、“荒療治”が効くこともある。

 前出・片岡氏もこう言う。「新型うつ病になる人は、人格的に未熟で社会的な体験が乏しいまま社会人になり、職場での対人関係や顧客との付き合いができないことが多い。それが病気という形で現われてくるので、治る見込みがあるなら再訓練をするべき。その際、特別扱いするのでなく、職場にはルールがあることを徹底させる必要があります」

 ナンバーワンよりオンリーワン、競争は悪で個性が大事と教えられた世代が、企業社会に入って齟齬をきたしているようにも見える。必要なのは社会人として生きていくための再教育ということか。

※SAPIO2012年8月1・8日号

http://news.ameba.jp/20120805-744/


「新型うつ病」という専門用語はない 精神医学的定義もない
2012.08.02 16:00
 うつ病で会社の仕事はできないのに、カメラマンのバイトをしている。うつ病で休職中に大型バイク免許を取得してツーリングに出かける――このようなケースが近年、多発し、会社側を困惑させている。
 彼らのように、「辛くて会社には出社できないが、趣味や旅行などには元気に出かけられる」という症例は、「新型うつ病」と呼ばれ、メディアでもたびたび報じられている。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構が2010年9月~10月に実施した調査「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」によると、56.7%の事業所が「メンタルヘルスに問題を抱えた正社員がいる」と回答し、その内の3割強(31.7%)が「3年前に比べて人数が増えた」としている。1000人以上の大企業では、不調者のいる割合が72.6%で、いない事業所を大きく上回ったという。その中には従来のうつ病だけでなく、新型うつ病も多く含まれていると推測される。
 従来型うつ病の場合、几帳面で仕事熱心な人がかかりやすく、自らを責める「自責的」な傾向があり、すべての意欲を失い、ベッドから起き上がることもできなくなったりする。一方、新型うつ病の場合は、会社で不平不満を口にする者に多く、「会社や上司が悪い」と他者を責める「他罰的」な傾向があり、職場以外の場所では活動的だ。
 ただし、この「新型うつ病」という名称はマスコミによる造語で、正式な医学用語ではない。日本うつ病学会のホームページには「『新型うつ病』という専門用語はありません。むろん精神医学的に厳密な定義はなく、そもそもその概念すら学術誌や学会などで検討されたものではありません」とある。『「新型うつ病」のデタラメ』(新潮新書)の著者で、精神科医の中嶋聡氏は言う。
「新型うつ病は2000年頃から急増しています。従来型うつ病との関係のなかでどう扱うかが今、大きな問題になっています。DSMという診断マニュアルでは多くがうつ病に当てはまってしまうのですが、臨床像があまりにも違うので、精神科医の間でも本当にうつ病なのか意見が分かれ、従来型とは区別すべきと考える人も少なくありません」
 新型うつ病もしばしばうつ病の一種として扱われているのが現状だが、うつ病で休んでいる社員が休職手当をもらいながら遊び歩いているとなれば、仕事を肩代わりしている職場の同僚らのモチベーションも下がる。本人が「会社や上司が悪い」という態度を示せばなおさらだ。
 今や新型うつ病は、企業の人事部や労務管理の担当者にとって悩みの種で、社会問題になっていると言っても過言ではない。
※SAPIO2012年8月1・8日号
http://www.news-postseven.com/archives/20120802_132275.html



「新型うつ」で休職中社員 週末は結婚式場カメラマンバイト
2012.07.24 07:00

 うつを巡る深刻な事態が進行する一方で、おかしな現象も出てきた。就業中はうつで仕事がろくにできないのに、会社を一歩出た途端に元気になる――今、こんな「新型うつ病」が職場で急増しているという。これが果たして本当に「病気」なのか、精神科医の間からも疑問の声があがり、「甘えているだけだ」との厳しい指摘もある。一方で、その風潮に便乗して「新型うつ病」を悪用する者まで現われた。
 IT関連企業で働く40代の男性課長のもとに、突然、20代の男性部下Aが医師の診断書を持って現われた。
 もともとAは他の社員と比べると仕事熱心とは言い難かった。仕事のスピードも遅い。それでも課長は、Aが仕事をこなすうちにやりがいを見つけてくれればと思い、根気よく指導をしていた。
「ところが、突然、うつ病の診断書ですよ。『日頃の激務から職場にいることが辛い。医者に診てもらったところ、うつ病と診断された』と言うのです。Aの同僚や先輩社員は同じように働いていて、別に激務だと訴えたりはしないのですが……。感じ方には個人差がありますし、精神科医の診断書もあるので、そういうものかなと思い、人事部と相談してAを休職させたんです」(課長)
 ところが、休職してから半年ほどしたある日、部下の一人が友人の結婚式に出席したところ、式場でAそっくりのカメラマンが写真撮影をしていたという。ご丁寧に名札をつけていたため、見てみると『A』と書いてあった。
「その報告を受け、Aを会社に呼んで問い詰めると、週末だけカメラマンのアルバイトをしていることをあっさり認めたんです。頭に来て『うつ病で休んでいるのに、なんでアルバイトができるんだ!』と怒ったんですが、ぬけぬけと『医者からは休息が必要だと言われ、何か好きなことをやって気分を変えた方がいいと指導された。だから学生時代からの趣味のカメラをやっている』と言うんです」(課長)
 Aは叱られてからすぐに「治った」と言い、今は職場復帰している。これがなんで「病気」だったのか、課長は今でもまったく理解できないと言う。
※SAPIO2012年8月1・8日号

http://www.news-postseven.com/archives/20120724_130593.html