「頂門の一針」 2657号
わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」 2657号
2012(平成24)年7月6日(金)
2012(平成24)年7月6日(金)
福島原発事故は「人災」
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渡部 亮次郎
若き中曽根康弘と老獪 正力松太郎が組んではじめたわが国の原子力発
電。
資源というものの無いわが国にとっては太陽にも替わる存在だった。
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渡部 亮次郎
若き中曽根康弘と老獪 正力松太郎が組んではじめたわが国の原子力発
電。
資源というものの無いわが国にとっては太陽にも替わる存在だった。
友人がこの世界のPRに関係しているので、誘われて原発の現場を視察して「安全神話」を叩き込まれてきた。
しかし神話はウソだった。
しかし神話はウソだった。
津波の無い国で設計したものを、津波に素っ裸にさらした福島原発。
東京電力も経済産業省も「危険」はとっくに承知していたはず。
それなのに彼らは国民をだましていたのだ。
ばれてみれば馬鹿げた話では無いか。
ばれてみれば馬鹿げた話では無いか。
福島原発の敷地はもともと海抜50mの高台だった。だから今度の津波でも絶対、大丈夫のはずだった。それなのに津波に呑まれたのは、高台をわざわざ削り取って低くしていたからである。
建設工事の資材を海から荷揚げするのに不都合だと、簡単に削り取ってしまったのである。ここまでだけでも「人災」は明らかである。
<福島原発事故は「人災」=官邸介入で被害拡大―国会事故調が報告書
建設工事の資材を海から荷揚げするのに不都合だと、簡単に削り取ってしまったのである。ここまでだけでも「人災」は明らかである。
<福島原発事故は「人災」=官邸介入で被害拡大―国会事故調が報告書
東京電力福島第1原発事故を検証してきた国会の事故調査委員会(委員長=黒川清・元日本学術会議会長)は5日、「事故の根源的要因は『人災』で、政府、規制当局、東京電力は人々の命と社会を守るという責任感が欠如していた」とする報告書を公表した。
報告書は約640ページ。事故の背景として、「これまで何度も対策を打つ機会があったにもかかわらず、歴代の規制当局と東電経営陣が先送りしてきた」とした上で、「今回の事故は自然災害ではなく、明らかに『人災』だ」と断定した。
また、事故直後の対応について、経済産業省原子力安全・保安院の機能不全や東電本社の情報不足に不信を募らせた首相官邸が、現場に過剰に介入したと指摘。「重要な時間を無駄にしただけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大した」と批判し、「事故の進展を止められず、被害を最小化できなかった最大の要因」と述べた。>
. 時事通信 7月5日(木)14時23分配信
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「もう病としか言いようがない」
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岩見 隆夫
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政治は劣化したとか、民主党はもはや崩壊したとか、極論が目立っているが、消費増税法案の衆院可決をもってそうした決めつけ方をするのはおかしい。
劣化でなく、久しぶりの一歩前進だ。増税不評のなかで、やりにくいことをやったのである。
民主党から57人という大量の造反者が出たのは、一つの異変に違いない。
これをどうみるか。異変が起きた時は、まず主要紙の社説を見るのが長年の習慣になっている。購読している4紙が可決の翌日、6月27日付の社説につけた見出しは次の通りだった。
▽朝日 緊張感もち、政治を前へ
▽読売 民自公路線で確実に成立を 造反には厳正な処分が必要だ
▽産経 3党合意これで持つのか 首相は除名処分を決断せよ
▽毎日 民主はきっぱり分裂を
各紙とも、民主・自民・公明3党合意による衆院可決で成立への道をひらいたことを評価する一方、朝日以外の3紙は小沢一郎元代表ら造反グループの厳正処分を求めている。
当然のことで、ここに至って双方が利害得失の綱引きをするのはみっともない。組織のルールに従い、造反者を除籍(除名)にしなければ、それこそ民主党は笑いもの、墓穴を掘ることになる。
今回の騒動でもっともわかりにくいのは、大量造反の動機だ。消費増税は大型テーマだから、民主党内に反対意見があるのはむしろ当然だった。
しかし、意見は意見として党議拘束に違反してまで反対投票に回る理由がわかりにくい。どうしても反対投票したいのなら、離党届を出してから投票するのが組織人のあるべき姿ではないか。
造反の動機について、核心をつく発言をしたのは菅直人前首相だった。
菅さんは6月23日付の自身のブログで、まず昨年6月、菅内閣への不信任決議案に小沢グループが賛成する構えをみせたことに触れ、
〈目的は小沢氏の思う通りにならない私を引きずり下ろすためだった。
今回もテーマは違うが目的はまったく同じだ〉と指摘したあとで、こう呼びかけた。
〈小沢グループと呼ばれている皆さん、小沢氏の個利個略のために、駒として利用されることがないように、目を覚ましてほしい。小沢氏の呪縛から離れて、自らの判断で行動してほしい〉
◇まじないかけられた? 側近、シンパ、ガールズ
キーワードが2つある。まず、個利個略。党利党略は辞書にあるが、それから派生した派利派略、個利個略はない。だが、意味はわかる。個人の利益のために謀をすることだ。
小沢さんの〈個人の利益〉とは何か。権力奪取だろう。権力を握ろうとした(現在も、している)政治家は何人もいる。政界の権力闘争は日常のこと、欲望渦巻く世界だ。
しかし、欲望にも、国家、国民のため自分の理念を実現したいという公的なものと、やみくもに権力を手にしたいという私的なものとがある。
通常はこの2つがないまぜになり、政治家のイメージが浮き出てくるのだ。国民はそれを敏感に嗅ぎとる。
小沢さんの場合、私的な欲望がどぎつく感じられ、手段を選ばぬ強引さが嫌われた。並はずれた蓄財欲と最近明らかになった和子夫人の手紙が、個利個略の体質を裏づけている。田中角栄元首相の紹介で結婚した和子夫人に、
「どうせ、お前も地位が欲しかっただけだろう」と言ったという信じがたいような話は、小沢さん自身がそういう感覚で権力世界を遊泳してきたことをうかがわせるのだ。
2つ目のキーワードは呪縛。
民主党から57人という大量の造反者が出たのは、一つの異変に違いない。
これをどうみるか。異変が起きた時は、まず主要紙の社説を見るのが長年の習慣になっている。購読している4紙が可決の翌日、6月27日付の社説につけた見出しは次の通りだった。
▽朝日 緊張感もち、政治を前へ
▽読売 民自公路線で確実に成立を 造反には厳正な処分が必要だ
▽産経 3党合意これで持つのか 首相は除名処分を決断せよ
▽毎日 民主はきっぱり分裂を
各紙とも、民主・自民・公明3党合意による衆院可決で成立への道をひらいたことを評価する一方、朝日以外の3紙は小沢一郎元代表ら造反グループの厳正処分を求めている。
当然のことで、ここに至って双方が利害得失の綱引きをするのはみっともない。組織のルールに従い、造反者を除籍(除名)にしなければ、それこそ民主党は笑いもの、墓穴を掘ることになる。
今回の騒動でもっともわかりにくいのは、大量造反の動機だ。消費増税は大型テーマだから、民主党内に反対意見があるのはむしろ当然だった。
しかし、意見は意見として党議拘束に違反してまで反対投票に回る理由がわかりにくい。どうしても反対投票したいのなら、離党届を出してから投票するのが組織人のあるべき姿ではないか。
造反の動機について、核心をつく発言をしたのは菅直人前首相だった。
菅さんは6月23日付の自身のブログで、まず昨年6月、菅内閣への不信任決議案に小沢グループが賛成する構えをみせたことに触れ、
〈目的は小沢氏の思う通りにならない私を引きずり下ろすためだった。
今回もテーマは違うが目的はまったく同じだ〉と指摘したあとで、こう呼びかけた。
〈小沢グループと呼ばれている皆さん、小沢氏の個利個略のために、駒として利用されることがないように、目を覚ましてほしい。小沢氏の呪縛から離れて、自らの判断で行動してほしい〉
◇まじないかけられた? 側近、シンパ、ガールズ
キーワードが2つある。まず、個利個略。党利党略は辞書にあるが、それから派生した派利派略、個利個略はない。だが、意味はわかる。個人の利益のために謀をすることだ。
小沢さんの〈個人の利益〉とは何か。権力奪取だろう。権力を握ろうとした(現在も、している)政治家は何人もいる。政界の権力闘争は日常のこと、欲望渦巻く世界だ。
しかし、欲望にも、国家、国民のため自分の理念を実現したいという公的なものと、やみくもに権力を手にしたいという私的なものとがある。
通常はこの2つがないまぜになり、政治家のイメージが浮き出てくるのだ。国民はそれを敏感に嗅ぎとる。
小沢さんの場合、私的な欲望がどぎつく感じられ、手段を選ばぬ強引さが嫌われた。並はずれた蓄財欲と最近明らかになった和子夫人の手紙が、個利個略の体質を裏づけている。田中角栄元首相の紹介で結婚した和子夫人に、
「どうせ、お前も地位が欲しかっただけだろう」と言ったという信じがたいような話は、小沢さん自身がそういう感覚で権力世界を遊泳してきたことをうかがわせるのだ。
2つ目のキーワードは呪縛。
まじないをかけて動けないようにすること、と辞書にある。
造反57人のうち、自身の政策的信念から反対票を投じたものも相当数いたのは間違いない。だが、菅さんご指摘のように、日ごろから小沢さん一流のまじないをかけられたかのような言動をするものもいた。特に小沢ガールズ。
小沢さんが、〈国民生活第一〉とか〈正義〉〈大義〉を口にするたびに、世間では眉に唾する人が増えているが、呪縛の網がかかると当事者はそ
うでもないらしい。政界でも、森喜朗元首相などは、
小沢さんが、〈国民生活第一〉とか〈正義〉〈大義〉を口にするたびに、世間では眉に唾する人が増えているが、呪縛の網がかかると当事者はそ
うでもないらしい。政界でも、森喜朗元首相などは、
「小沢さんが20年以上政界再編を唱えて成就しないのはなぜだかわかるかい。『国家のため』と言いながら、心の中では『自分がどう生き延びるか』と邪な気持ちを抱いてきたからじゃないのかな」(5月5日付
『産経新聞』コラム〈単刀直言〉)
と明快だ。しかし、呪縛派は小沢さんへの批判が強まるとよけいに信奉の度を強めたりする。
これまで小沢さんに吸い寄せられるように多くの政治家が側近、シンパとして周辺に集まり、まもなく離れていった。これが何度も繰り返されるのは、小沢さんのマインドコントロール(他人の心理状態や態度を支配すること)能力が並でないことを示している。
オウム真理教被害対策弁護団のメンバーで『マインド・コントロール』
(アスコム・2012年刊)の著書もある紀藤正樹弁護士は、
「マインド・コントロールは恐怖心と依存心の2つがセットになっている。恐怖心がなくなっても依存心が残ることがある」
と言う。小沢さんは典型的な強面実力者だ。若い政治家が恐怖心を抱いても不思議でない。同時に頼りがいのある先輩と思わされる。なにしろ、座持ちのよさでは政界三指に入るといわれ、対人接触術、口説き術にたけているうえ、資金力が豊富。依存心が芽生えて当然だ。厄介なことである。
小沢さんと三たびかかわりあった海部俊樹元首相は、回顧録『政治とカネ』(新潮新書・2010年刊)のなかで、
〈あの「壊し屋」にはほとほと疲れる。人の陣地に手を入れて、誘惑してその気にさせて、壊す。あの性癖は、死ぬまで治らないのではないか。
業というか、あそこまでいくと、もう病としか言いようがない〉
と書いた。いままた民主党政権が標的になっている。病、ですむことではない。(サンデー毎日)
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川柳で斜めに詠めば見えてくる
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杉浦 正章
<脱藩の度に家来の質が落ち>ー最近の政治を風刺した読売時事川柳の秀逸句だ。ついに離党して新党を旗揚げすることになったが、小沢一郎の心中もおだやかではあるまい。
家老とも言える代表代行には“疑惑山積”で国家公安委員長を棒に振った山岡賢次。幹事長には目立つのはひげだけの東祥三ではいかんともしがたい。まるで箱根の山中に巣くう山賊一家のような面々だ。
チルドレンらは「ついてく」「ついてかない」で右往左往。新党の7割が落選必至のチルドレンでは、正直言って小沢も朝日川柳の<新党首子ども手当が欲しくなり>と言いたくなるだろう。
もっともこの川柳は意味深だ。というのも<うるさくて電池抜かれた鳩時計>なのに、<またしても庶民に遠い母の愛>なのだ。
鳩山兄弟に母親からの生前贈与が約41億円ずつとは恐れ入る。贈与税で半分持って行かれるが、それでも20億円の臨時収入とは近ごろケタ外れだ。おぼっちゃまだからだまされて<母の愛あらぬところの軍資金>となってもおかしくはあるまい。
母の慈愛の“子ども手当”が、“悪い友達”に皆持って行かれませんようにと国民はみんな祈っているのだ。半年間の党員資格停止処分を食らったことをこれ幸いに、ぽっぽさんは<鳩山ファイナンス半年休業>の貼り紙をして、どこかに雲隠れしてくれた方が政界もシロアリがたからなくていい。
しかしご本人は<叱られた意味も分からぬ元総理>で「何でわたしだけが6か月」と憤まんやるかたない。野田佳彦から「出て行ってくれて結構」と言われているのが分からない。反対したが離党しない残留組が集まってなにやらすごみ始めた。「不信任案に賛成するぞ~~」だそうだ。
離党が怖くて欠席だの一部賛成だのにとどまった連中が、“脅し”をかけようとしているのだから始末に負えない。これを負け犬の遠吠えという。すごみなどかけらもないのだ。
同じ政党に属しながら不信任案賛成をあらかじめ公言するなら、離党してから行動を起こすのが憲政の常道であることが分かっていない。
もっとも小沢が離党となると、音より早く急旋回して野田べったりとなった輿石東がまたまた反対組に“揉み手”をしだした。党員資格停止を決めた直後の党役員会で輿石は、「処分期間中であれば、公認候補にはならない」と「鳩山切り」を宣言したものだが、5日になって「公認にならないことはあり得ない」のだそうだ。一党の責任者が180度反対のことを言ってはいけない。
輿石の小沢グループへの気の使い方は並大抵ではない。小沢は<国民と言うほど国民遠ざかり>とも知らずに、新会派の名称を「国民の生活が第一」とした。
これを、おもんばかって輿石は記者会見場の「国民の生活が第一」という民主党の政策スローガンが印刷されているボードを反転させて党旗に貼り替えさせたのだ。
そもそも民主党のスローガンを、小沢が“盗用”したのであって、本家本元が姑息(こそく)にも気を遣うことでもあるまい。本末転倒とはこのことだ。どうも小沢の“執事”の癖が抜けないのだ。
自民党は麻生太郎が「国民の生活が第一という新会派だそうだが、『選挙が第一』という名の方がいい」と皮肉れば、古賀誠が「小沢氏グループの生活が第一」とぼろくそだ。まさに<国民とすり寄られても気味悪い>だ。
小沢のプロパガンダは「大増税だけが先行することは国民の皆様への背信行為。我々の主張は大義であり正義であると確信する」の繰り返しだ。
これに頂門の一針の川柳がある。朝日の<正義とか大義とか言う顔を見る>だ。
実際「言ってる政治家の顔が見たい」というところだが、本人は近ごろ意識してテレビに顔を出す。そのうちに<正義づら大義づらなど見たくない>となる。国民は<正論を解体工事のたびに聞き>であり、聞かされる方の身になってもらいたい。まったく<壊して作る目指すはギネス>と言いたくなるのも分かる。 (政治評論家)
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復旧復興で建設業界が好調
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平井 修一
東日本大震災の復旧復興需要などにより建設土木業界は好調のようだ。
直近決算(3月期)の売上高(連結)を見ると、鹿島建設は1兆4577億円で前年比110.0%、清水建設1兆3361億円、102.5%、大成建設1兆3235億円、108.7%、大林組1兆2457億円、110.1%と、おおむね好調である。
これに伴い建設機械需要も伸びている。日本建設機械工業会の2012年度の建設機械需要予測によると、12年度の出荷額は、前年度比10.2%増の2兆2366億円と3年連続の増加を予測しており、2年連続で2兆円を維持し過去最高だった07年度に次ぐ高水準となる。
このうち国内出荷額は同11.3%増の6058億円、輸出も同9.6%増の1兆6308億円と、ともに3年連続で増加する。国内は復旧復興需要が牽引役となり、上期は前年同期比16.1%増、下期も伸びが鈍化するものの同9.1%増と堅調に推移すると見ている。
人材ニーズも旺盛のようだ。
<震災復興へ向けた各種工事の需要が高まり、採用ニーズも順調に右肩上がりを見せていた建築・土木業界。東北地方におけるがれきの除去作業など、多くの土木の現場ではいまだに人材不足が続いており、採用マーケットは引き続き活況が予想される。
さらに耐震補強分野においても求人ニーズは衰えておらず、下半期もエンジニアの大量採用が期待できそう。
そんな中、震災から1年以上が経過して、ようやくインフラの再整備が本格化し始めた。「まちづくり」が進むにあたり、“建物を建てる”需要が急増中。下半期以降は、土木分野の求人に加え、建築分野での採用ニーズが高まるだろう>(DODAデューダ)
報道によれば上記のゼネコン大手4社が昨年4~12月に国内官公庁から受注した土木事業は、前年同期比約1.6倍の総額4167億円。国の財政難から公共事業費が抑制され、受注減に苦しんできた業界だが、総額19兆円に上る復旧復興予算の一部が具体化し始め、様相が変わりつつある。
<これまでの受注の中心は岩手、宮城、福島各県などで大量に発生したがれき処理だったが、被災自治体では今春以降、土木、建築ともに大型事業が相次ぐ。津波を教訓とした沿岸部の土地のかさ上げや防潮堤の建設に加え、原発事故によって放射能で汚染された地域の除染作業も本格化する。ゼネコン各社の受注がさらに拡大するのは確実で、他産業への波及や地元雇用の下支えも見込まれる>(産経)
一日も早い復旧復興を祈るばかりだ。
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齒を鉗し舌を刺して以て簡古と爲す(1)
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上西 俊雄
[はじめに]
運命といふのはあるのだらうか。眠りの森の美女は祝宴に招かれなかっ
た妖女に絲車の紡錘(つむ)に刺されて死ぬだらうと呪をかけられるの
であるが、招かれてゐた最後の妖女が其の呪を長い眠りにつくことに變
へる。
しかし、王はそれに抗って、國中の絲車を禁止する。絲車を見ることな
く乙女となった王女はあるとき、塔の上の部屋ではじめて見る絲車に魅
せられて結局豫言が實現する。
運命を變へようとしたことが逆に運命を實現するといふ物語は多い。露
伴の運命は明の第二代建文帝と第三代永樂帝のこと。明の太祖は國の安
定を圖って諸子を四方に封じて藩屏たらしめんとする。しかし、そのこ
とが逆に戰亂をまねいたのだと露伴は書く。
<建文帝の國を遜らざるを得ざるに至れる最初の因は、太祖の諸子を封
ずること過當にして、地を與ふること廣く、權を附すること多きに基づ
く。
太祖の天下を定むるや、前代の宗元轉覆の所以を考へて、宗室の孤立は
無力不競(ふきやう)の弊源たるを思ひ、諸子を衆く四方に封じて兵馬
の權を有せしめ、以て帝室の藩屏たらしめ京師を拱衞(きようゑい)せ
しめんと欲せり。
是亦故無きにはあらず、兵馬の權、他人の手に落ち、金穀(きんこく)
の利、一家の有たらずして、將師外に傲り、奸邪間に私すれば、一朝事
有るに際しては都城守る能はず、宗廟祀られざるに至るべし、若夫衆く
諸侯を建て、分ちて子弟を王とすれば、皇族天下に滿ちて榮え、人臣勢
を得るの隙無し。>
以下、「第何子某を何處王に封じ」といふ記述が第二十五子まで續く。
諸王は皇帝の叔父に當る。その中の一人、第四子燕王が反逆、帝位を簒
奪して永樂帝となる。燕王に仕へたものは殺すのであるが、方孝孺だけ
は生かして自分のためにはたらいてもらひたい。
しかし孝孺はなびかない。ついに刀でもって孝孺の口を抉らしめて獄に
つなぎ、一族をめしとり、一人づつ孝孺に示して殺す。門弟まで方氏の
族としたので、死するものおよそ八百三十人、配流さるゝもの數ふ可か
らずとある。
表題の句は方孝孺の雜誡の第四章にあるもの。意味はよく判らない。ネッ
トで檢索しても何もみつからなかった。正字で檢索したところ、まさに
その方孝孺のものが出てきた。露伴の讀み下し文で示す。
<雜誡の第四章に曰く、學術の微なるは四蠧(しと)之を害すればなり、
姦言を文(かざ)り、近事を{手偏+庶}(と)り、時勢を窺伺し、便に
趨り隙に投じ、富貴を以て志と爲す、此を利祿の蠧(と)と謂ふ、
耳剽(じへう)して口衒(こうげん)し、色を詭り辭を淫にし、聖賢に
非ずして而も自立し、果敢大言して以て人に高ぶり、而して理の是非を
顧みず、是を名を務むるの蠧といふ、
鉤{手偏+庶}(こうせき)して説を成し、上古に合するを務め、千儒を
毀{此/言}(きし)し、以謂(おもへ)らく我に及ぶ莫き也と、更に異
議を爲して以て學者を惑はす、是を訓古の蠧といふ、
道徳の旨を知らず、雋飾(てふしよく)綴緝(てつしふ)して以て新奇
となし、齒を鉗し舌を刺して以て簡古と爲し、世に於て加益するところ
無し、是を文の蠧といふ、
四者交々作(おこ)りて聖人の學亡ぶ、必ずや諸(これ)を身に本づけ、
諸を政敵に見(あら)はし、以て物を成す可き者は、其れ惟(たゞ)聖
人の學乎、聖道を去って而して循(したが)はず、而して惟(たゞ)蠧
にこれ歸す、甚しい哉惑へるや、と。>
蠧は害をなすむしけらのこと。最初の利祿の蠧は至るところにゐるので
よくわかる。姦言をかざりといふのは、民主黨のマニフェストの如きも
のか。近事や時勢のことをもっぱらとするといふのもその通りであるし、
富貴を以て志と爲すといふのは、今の教育制度そのものであるやうに思
はれる。
名を務むるの蠧といふもの、耳剽とは耳できいただけで深く考へずにと
いふほどのことのやうだ。聖賢に非ずして而も自立し、果敢大言して以
て人に高ぶり、而して理の是非を顧みずといふところは勿論、深く考へ
た論だとも思はれなかったので『現代かなづかひ入門』などを數へても
よいかも知れない。
訓古の蠧、これは意味が判らないといふのではないけれど、適當な例が
思ひ浮かばない。
最後の文辭の蠧といふもの、これはどういふものを言ったものか。書か
れてゐることからすると今ならマスコミにあてはまるやうに思はれる。
鉗齒刺舌以爲簡古、要するに口を緘し、語を發しないやうにすることだ
から、我が國の漢字制限假名字母制限こそさうだと言ひたい。
民主黨政權になってからよく見るやうになったが記者會見で手話通譯が
つく。これも以って簡古と爲す類だらう。手話通譯が必要な、つまり耳
の聞こえない記者がゐるとも思はれないのだが、表音主義者はかかる見
てくれの行爲(トークニズムと言はれた)に走る傾向がある。
市役所の窓口の案内にハングルや簡體字が併記してあるのもさうだ。最
近かかった或る大學病院は、十種類ほどの言語で表示があった。
たとへば實際にギリシャ語しかできない患者がゐたとして、ギリシャ語
で診察できる體制になってゐるかといふと、そんなことはないわけで、
だから token (代用硬貨など)と言はれるのであるが、とにかく實質的
な意味のない表示言語の數を競ふやうなところが殖えてきてゐる。
コミュニケーションが重要だとする風潮ともあふからだと思ふ。自治基
本條例がはやるのもそんなものかもしれない。
しかし、その原動力は、憲法改正の機運の高まりを食止めんとして、現
行憲法に無數の錘を結びつけることにあるやうに思はれる。そして、そ
の錘の無内容さが現行憲法體制の虚妄を一艘はっきりと映し出してゐる
やうに思ふ。
[自治基本條例}
『運命』を讀むと建文帝は文の人、璽(なんぢ)將士、燕王と對壘する
も朕をして叔父を殺すの名あらしむなかれと命じ玉ふたものだから、現
場の將兵は、體當りした船長を釋放するがごとき愚を何度も繰り返さざ
るを得ず、ついに帝位を簒奪されるに至るのである。
しかし、帝位についてある立場をとるといふことが如何なるものである
かは現代人の想像を絶するところ。方孝孺は九族まで誅されながら太祖
の長子につながる第二代を倒したものを、それが同じ太祖の第四子であっ
ても認めることはなかった。
皇統を論ずるとき、民意などといふものを引合に出してもらっては困る。
そんな輕いものではない。
憲法を論ずるときも四蠧に害されることなくやってもらひたい。憲法改
正が所謂現代假名遣でなされるならばこんなグロテスクなことはないと
新保氏は言ふ(産經新聞5月8日)。
憲法改正が國語の問題でもあることが大新聞で取り上げられたことをま
づはよろこびたい。おそらく此の問題には保守の人も、さうでない人も
氣がついてないところがある。さうでなければ、自治基本條例のやうな
ものが、雨後の筍のやうにあちこちででてくるはずがないのだ。
自治基本條例、ウィキペディアの定義を借用すれば、住民自治に基づく
自治體運營の基本原則を定めた條例。自治體の憲法とも言はれる。名稱
は自治體によって異なり、まちづくり條例、まちづくり基本條例或は行
政基本條例などさまざま。
ネットで檢索すると、策定したところ、策定中のところと無數。自由民
主黨の作成したパンフレットによると策定した自治體182、北海道で33と
あるが平成21度のもの。NPO法人公共政策研究所といふサイトでは平
成24年3月7日現在で233、北海道で53とあるから約6割の増加だ。
故郷の町も現在住んでゐるところも、友人のゐるところも軒竝み策定中。
千に達するのもさう遠いさきのことではあるまいと思はれる。
昨年2月自治基本條令といふことをはじめて聞いたとき、ネットで地方
自治體の憲法のやうなものだと讀んで市長への意見書に次のやうに書い
た。
<そもそも今の憲法がすでにして問題。占領下の押し附け憲法だから改
正すべきだといふ議論も根強い。占領といふ異常なる時期に憲法のやう
な恆久的性格のものを制定すべきでなかったことは當然。
しかし、それを改正すべきかどうかとなると、にはかに贊成できない。
それは、現在が、占領下時代以上に文化的に不安定な時代であると思ふ
からだ。>
いま、ひっそりと、しかしネットでみると燎原の火の如く自治基本條例
制定の動きがひろがってゐる。筆者はこの運動が現時點を絶對視するこ
とにおいて戰後の國語改革と共通のものを感じる。だから、戰後の國語
改革が失敗であったと示すことができれば、この運動もまた沙汰やみに
できるのではないかと思ふのだ。
しかし國語のことを言ふまへに、自治基本條例をつくらうとすること自
體が問題だとといふことを言っておきたい。それは法三章といふこと。
法律が無くて濟むなら無い方がよいといふこと。
どうも命をかけての主張が根底にあるとは思はれないのであるが、制定
した條例の遵守を新人職員に宣誓させてゐるところもある。無内容であ
るから宣誓させても大したことがないとは言へない。言葉を輕んずる人
間を育てることになるからだ。
あってもなくてもいいやうなものと輕い氣持でつくったものでも、一度
條例となると、一人あるきする。嚴しい状況でつくられたものなら、緩
くすることができるとしても、逆は難しい。後代、惡法をつくったと、
當該市の歴史に汚名を殘すことにならうといふものだ。
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話 の 福 袋
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◎さて、ちょうど本日、中国の友人からメールで火事のニュースをもらったので、ここに翻訳して紹介します。日本語では新華社が数行報じていた程度だと思います。
天津で最近起きた火災について知っていますか?。
6月30日、天津薊県で最も大きいショッピングセンターで発生した火災は、午後2時から出火し、夜9時になってようやく鎮火し、死者もすごく多かった。
百度貼?という掲示板では現地の人が撮った写真がアップされていて、頼れる情報では、死者は少なくとも100人を超えているという。しかし、天津の新聞やテレビ局はどこも報道せず、後になって、さらっと死者10人、軽傷者16人と触れただけだった。
ネットでの投稿は削除されたけれども、現地人は、火災のときに屋上から飛びおりて亡くなっている人を見たと言っているし、一家全滅の家族もあるみたいだ。
また、火事の初期段階では、ショッピングセンターの社長は、それは商品が盗まれるのを恐れて、精算が終わらないと出られないように、入り口に鍵をかけて、人を外に出さないようにしていた。
この火災では、消防車は火が強くて消火しようもなくて、設備も粗末だったからなのか、火災の後で現場を封鎖して、厳しく人の立ち入りを禁止している。病院や遺体安置所には警察が監視して立ち入りさせず、家族に持ち帰らせたのは、最後に被害者1人当たり60万元の口どめ料のみ。
真相は永久に闇の中だろう。
これが中国で、真実はもっと厳しい。(T・M)
◎以下は現場の動画です
http://v.youku.com/v_show/id_XNDIyMTI3Mzk2.html?f=17804624
死者378人なんて数字も出ています。南京は多めに、地方政府不始末は少
なめに!
確か以前もネットカフェで火災が起きて、金を払わないで逃げるのを阻止するために入口にカギをかけて多くの死亡者を出した事件がありました。命よりも金が重たい拝金人災です。
中の様子↓
http://img0.ph.126.net/aSJnLUI83DIbxiv1LUflWA==/1033013164545817670.jpg
この国に進出している日本企業も金を払わなければ、カギをかけられて焼け死んでしまいますよ。(唸声)
◎日本と台湾、尖閣問題めぐり8日間に2度のもめ事―中国紙
【Record China】 2012年7月5日 17時57分
5日、中国メディアは、日本と台湾が尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題を
めぐり、わずか8日間の間に2度ももめ事を起こしたと報じた。
写真は尖閣諸島の位置を示す地図。
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2012年7月5日、中国共産党機関紙・人民日報系の国際情報紙・環球時報
(電子版)は、日本と台湾が尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題をめぐ り、
わずか8日間の間に2度ももめ事を起こしたと報じた。
台湾紙・中国時報によると、尖閣諸島の保護運動を展開する台湾の活動
家を乗せた遊漁船が4日、海岸巡防署(海上保安庁に相当)の巡視船の護
衛 を受けながら、尖閣沖を航行した。その際、大きな電光掲示板に「釣
魚島は中華民族の領土だ」と表示していたという。
これを受け、日本の対台湾窓口機関である「交流協会台北事務所」が台
湾外交部に抗議したが、台湾側は「釣魚島は中華民国の領土」だとし て、
これを拒絶した。台湾外交部の夏季昌(シア・ジーチャン)報道官もこ
れを認めた上で、「台湾当局は『主権は我が方、争いは棚上げ、資源は
共有、開発は 共同で』を原則に、いかなる譲歩もしない」と強気の姿勢
をみせている。
台湾当局の巡視船は、東京都議が漁船に乗って尖閣諸島周辺を視察した6
月26日にも、「定例巡視」と称して同海域を航行しており、この時も双
方が互いを「領土侵犯」だとして厳正な抗議を行っている。(翻訳・編
集/NN)〔情報収録 - 坂元 誠〕
◎原発国会事故調、最終報告 「規制当局と東電の立場逆転」
東京電力福島第1原発の事故を「人災」と断定した国会事故調の報告書
は、規制当局と事業者の立場が逆転し、「原子力安全の監視・監督機能
が崩壊した」ことを事故の根本的な原因と指摘。規制当局は規制の先送
りを許し、東電など事業者の「虜」になっていたと厳しく批判した。
「能力や専門性、安全への徹底的なこだわりという点で、国民の安全を
守るにはほど遠いレベルだった」
報告書は、経済産業省原子力安全・保安院などの規制当局の問題点を列
挙した。一つの例が、平成18年の耐震設計審査指針の改定に伴い実施
された、既存の原発の安全性を見直す「耐震バックチェック」だ。
東電の報告期限は当初は21年6月だったが、28年1月に先送り。1~3
号機の耐震工事は実施されず、保安院は遅れを黙認した。
20年には、米中枢同時テロをきっかけに策定された米国の原発のテロ対
策計画「B5b」について、保安院は米原子力規制委員会(NRC)か
ら説明を受けていたものの、国内の安全規制に反映しなかった。
報告書は、原発推進の経産省の一部だった保安院の組織優先の姿勢や専
門性の欠如が、既存の原発の稼働を維持したいという事業者の主張を
「後押し」したと分析。
「規制当局や東電経営陣が意図的な先送りを行うことで、安全対策が取
られないまま3・11を迎えた」ことが事故の「人災」の原因だったと
言及した。
既存の規制当局は再編され、9月までに原子力規制委員会が発足する予
定だ。ただ、報告書は「組織形態を変えるだけでは、国民の安全は守れ
ない」と注文をつける。「常に安全の向上に向けて自ら変革を続けてい
く組織への転換を」との提言を、規制委はどこまで実現できるか。わが
国の原子力への信頼回復の試金石となっている。
産経新聞 7月6日(金)7時55分配信
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反 響
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1)『撃論』第5号(オークラ出版、2012/6/25)の、
・憂国対談、セシウム避難の福島人は、脱原発(日本経済つぶし)の
共犯者。渡部昇一VS中川八洋、6-20頁。
・“阿片”「巨額な原発賠償」を吸飲した、福島県民の自堕落――強
制避難には罪なき東電は、賠償支払いを直ちに中止せよ。田母神俊雄、
21-29頁。
・“放射線のズブの素人”小林よしのり氏の戯言を嗤(わら)う。中
村仁信、118-27頁。
を多くの方に読んでいただきたい。発売中の雑誌なので引用ができない
のが残念です。(まこと)
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身 辺 雑 記
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4日の内科定期検診は「OK」でした。ただし、通風に繋がる尿酸値が上
昇した。原因は豆の食べすぎという、すなわち納豆の連食に有る、と指
摘された。1日おきに制限を指示された。
子どものころから納豆は食べなかった。それが血液をさらさらにする薬
ワーファリンを呑まされ、納豆となんとかは食べてはいけないという期
間が1年続いた。ことし4月からワーファリンがプラザキサにかわり、
納豆は食べてもよし、となったので食べて見たら美味しかった。
1ヶ月毎朝、シラスとまぜてらべ続けた結果がこれである。糖尿病にく
わえて通風が持病では人聞きが悪いから納豆は一日おきにすることにし
た。
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