中国、こんどは南沙、西沙、中沙諸島を統括し「三沙市」に-盗んだ領土に政府を置くのは、]侵略]
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年6月28日(木曜日)
通巻第3698号
いつも身勝手な中国、こんどは南沙、西沙、中沙諸島を統括し「三沙市」に
あの反日軍人、羅援少将が吠えた。「当然だが軍管区分区を設営する」
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1992年、江沢民政権は突如、「領海法」を設定し、尖閣諸島は中国領だと言い出した。国内平定が終わって、チベットとウィグルを武力で押さえ込んだ自信を背景に、もてあます軍事力を、これからは対外領土の分捕りに振り向けようというわけだ。
南沙(スプラトリー)群島は南シナ海の要衝、貨物船、タンカー、LNGの通り道、日本の安全保障にも直結する。
中砂諸島は主としてフィリピンと抗争を繰り返し、黄岩島を巡って漁船の衝突事件から中国海軍は艦船を派遣し睨み合った。
西沙(パラセル)諸島はベトナムの東、つねに衝突を繰り返した場所だが、12年6月21日、中国はこの西沙群島の永興島に新設する「三沙市」の市政府を置く、と発表した。
市に格上げし、市級であつかうというのは政治的に強い意図がある。
それにしても盗んだ領土に政府を置くのは、侵略というのではありませんか?
中国海軍は90年代央から南沙、西沙諸島を侵略し、珊瑚礁を埋め立て、掘っ立て小屋から、いまや滑走路を建設。堂々と侵略した島嶼を「鄭和の時代からここは中国領だった」と言って不法占領をつづけている。
同諸島の領有権で、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンと争うことになるが、高等な外交戦略からいえば、このような他人の主張を顧みない、露骨な軍事力誇示は、中国軍の独走を物語り、同時に江沢民が軍を統制できておらず、いや軍の追随するかたちであることを示唆した。
江沢民の軍との妥協路線は、後継の胡錦涛ともなると、ステルスの実験を知らされず、キラー衛星の打ち上げ日時も知らされず、尖閣諸島での日本との激突も追認するかたち。つまり江沢民のときよりも、胡錦涛は軍事指導権を奪われているのである。
軍の暴走、独走と言われる所以だろう。
▼軍人のなかのタカ派は反日派の代表選手でもある
さて尖閣諸島を軍事占領せよ、と嘗て呼号した反日派軍人の代表選手の一人が羅援少将だ。
中国軍事科学院世界軍事研究所副部長の羅援(少将)は「三沙の島嶼面積は狭いが、南沙、中沙、西沙のみっつの群島をもって「三沙市」と決められた以上、一個師団なみの軍管区分区の設営は当然の流れであり、完璧な軍事施設を敷設することになる」と発言した。
このために「防空識別区」を設定し、ベトナム空軍の領空侵犯に対応し、また「空中警示区」と「領空防衛区」を設定し、領海を侵犯する漁船などを取りしまるが、「これは国際法を遵守し、外国船舶の公海上の航行の自由を守護するためになされる」と嘯く始末(多維新聞網、6月21日)
とりわけベトナムと争う領海・領土抗争は、中国が既に永興島にレーダーサイトも備える軍事基地をおいてジェット戦闘機を配備しており、燃料タンクも備わっている。
ベトナムに近い南子島と双子島上空は、ベトナム空軍が上空500メートルの高度でミグ戦闘機2機を巡回させ、中国との対峙姿勢を崩していない。
ベトナムはあれほど憎んだ米軍とさっと仲直りし、米軍空母がベトナム沖に現れ、そしてベトナム高官は米空母に招待された。
なお東沙諸島は台湾が実効支配している。
尖閣諸島の領有権を台湾も依然として主張しているのは、こうした文脈からである。
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 770回】
――「只許州官放火、不許老百姓点灯」という伝統
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さすがに休みだけあった、広々とした構内には人影は見られない。だが、この芒市人民政府の住人である地方幹部がいつもはどんな態度で業務を執行しているか。その片鱗のようなものを窺うことは出来そうだ。
たとえば「芒市人民政府領導工作動態」と「芒市人民政府弁公室領導工作動態」と記された表示板である。前者には上から市長、常務副市長、副市長(5人)、後者には上から主任、党総支部書記、副主任(2人)、副主任(信訪局局長)、党総支部副書記、副主任(4人)の名前と役職名が記されている。ということは、ここに記された市長以下7人の幹部と主任以下9人の実務責任者の総計16人が芒市人民政府の中核を構成し、芒市人民を差配している。芒市人民の上に君臨しているということになるわけだ。
この表示板には日付が入り、日々の彼らの公務活動内容(在室、会議、出張、公休)が一目瞭然で判るようになっている。目にしたのは連休前の4月28日のもの。さすがに主任以下の実務責任者は在室となっていたが、市長以下の幹部全員は終日会議となっていた。いったい、どれほどの懸案があったのやら。おそらく「会而不議、議而不為、為而不省(会して議さず、議して為さず、為して省みず)」という伝統を弄び、連休の過ごし方でも自慢しあっていたのだろう。
ところで表示板を眼にして納得できたのが、信訪局局長の地位である。というのも信訪局局長が役職上、どの辺りに位置するか。これまで判らなかったからだ。
信訪局というのは一般市民が抱えた様々な問題を処理する部局であり、「恐れながら」と訴え出た公的機関に対する不満、公権力への苦情などを解決することになっている。なんとも恩情に満ちた制度だと感心しがちだが、実態はさにあらず。時には問題をもみ消し、訴え出た市民を押さえつけ、市政が順調に行われていることを取り繕うことをも厭わない。
地元の信訪局に駆け込んでも門前払い。一向に埒が明かないと北京に出向き、中央政府の信訪局に訴え出るような過激な例もないわけではない。だが、そんな“不埒な市民”を出したら市長以下の幹部のメンツにかかわるだけでなく、事と次第によっては彼らの出世に影響してしまう。そこで信訪局は北京にまで局員を派遣し、“不埒な市民”を捕まえて地元に引き戻し、犯罪者に仕立て上げて牢獄にぶち込んでしまうこともある。
信訪局局長は池波正太郎の描く鬼平こと長谷川平蔵に似ているようだが、それは表向きの顔でしかない。極論するなら芒市人民政府領導、つまり幹部のための“お庭番”の総元締めであり、市民にとってはコワ~い存在。だから幹部の将来は局長の胸のうちにあり。であればこそ、それ相応の地位ということになる。
眼を転ずると、そこには「行政機関八項工作承諾」の表題の下に、「(一)窓口では冷たく扱わない。(二)仕事は手早く遅延なく。(三)業務上の誤りは起こさない。(四)職務上野の秘密を漏洩させない。(五)団結を乱す言動をとらない。(六)違法・不法行為をしない。(七)役所に悪影響を与える行為をしない。(八)市民の不利益にならない」と大きく記されていた。日頃からマトモに「工作」していないからこその「八項」だろう。
昔から特権を振り回す州官(やくにん)と虐げられるばかりの老百姓(じんみん)の対比を「只許州官放火、不許老百姓点灯」と表現して非難・揶揄してきた民族だが、現在の州官たる地方幹部サマの執務態度は昔の州官とさほど変わってはいないようだ。
《QED》
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(読者の声1)宮崎さんの新著『中国が世界経済を破綻させる』(清流出版)のなかで、中国の異常ともいえる『金(ゴールド)買い占め』について鋭い御指摘がありました。今朝(28日)の日本経済新聞を読んで驚いたのは、すでに中国は産金ならびに金の購買で世界一であり、いずれ米国の備蓄を抜いて10000トンの備蓄を目指していて不気味だと報道しています。
このこととの関連は如何なのでしょうか?
(HJ生、横浜)
(宮崎正弘のコメント)中国の表向きの財テクに目を奪われてはならないと思います。
第一に中国は米国債最大の買い手です。
第二に日本国債もかなり所有していますが、ありあまる外貨準備のうち、国富ファンドを通じて、日本の株式をおよそ3兆5000億円も買い込んでいます。トヨタなど日本企業150社あまりの大株主でもあります。
第三にIMF改革を要求し、「SDRの通貨バスケットに人民元を加えろ」と王岐山副首相が欧米の国際会議ならびにG20の場で、強く要求しておりますが、ユーロ救済では消極的、その替わりに各国との人民元の通貨スワップを開始し(ついに六月からは日本とも)、着々と人民元の国際化の準備怠りなく、しかし国内経済がハード・ランディングしそうな雲行きで、オフショア市場の拡大拡充はちょっと遅れ気味です。
とはいえ深刻な問題は、上記の趨勢からの推測ではないのです。
中国の狙いは世界通貨派遣です。米ドルを駆逐し、基軸通貨の位置をもぎ取るのです。
この長期戦略の下で、金の大量の備蓄はセットです。
すでに2009年に上梓した拙著『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ)のなかで小生は次の指摘をしています。
「このような長期戦略のもとで中国は着々と年月をかけて、近未来には金本位制度による人民元(これを「華元」とよぶ)が米ドルに代替できる強い基軸通貨にしようという、破格の野心を持って未来りを見据えている」(同書16ページ)。
ですから日本経済新聞の指摘は遅きに失していると言わざるを得ませんね。
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