外国には分かるチュウゴクの落ちぶれよう
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年6月27日(水曜日)
通巻第3696号 <前日発行>
貯炭場に異様な在庫、電力消費は劇的に落ち込んでいる
それでも中国経済が8%成長という公式数字は真赤な嘘、恥の上塗り
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恥がないのだから恥の上塗りをしても反省がないのは仕方がないことかも知れない。
拙著『ウィキリークスでここまで分かった世界の裏情勢』(並木書房)のなかでも指摘しておいたが、李克強が「中国の国家統計局の公式数字は誰も信用していない」という発言がなされた。
そのとき対談した相手の米国大使がワシントンへ暗号電報を打った。ウィキリークスにその『秘密』が漏洩した。
まさかと思うことはない。情報は支配者が独占し、捜査するものであり、民には知らしむべからず、というのは独裁制度の原則ではないか。
中国のトップが自国の経済統計を信じない。「あれは信用に値しない」と言った李克強・副首相は、それではどの数字を信用するかとして、続けてこう言っていたのである。「電力消費量」「貨車運搬量」。そして「銀行ローンの支払い」。
この三つは真実に近い。
小誌はこれまでにも住宅バブルの破綻については縷々説明してきたので、三番目の「銀行ローンの支払い」は、この稿では除外する。
電力消費と貨車運搬量の直近統計をみると、みごとなほど鮮やかに中国経済の失速ぶりが浮かんでくる。
▼秦皇島も天津も貯炭場に石炭が一杯。火力発電量が減っている証拠だ
江蘇省と山東省の電力消費が前年比10%以上もの激減ぶりを示した(ヘラルドトリビューン、6月25日)。基幹産業が集中する沿岸部の工業ベルト地帯で10%の電力消費減は何を意味するか。
秦皇島の石炭備蓄場所、つまり貯炭場では950万トンの石炭が積み上がり、出荷が控えられている(08年リーマンショックのとき、930万トン在庫の記録があり、このワースト記録を破った)。
つまり火力発電所からの需要が減っているからで、貨物で運搬される石炭の移動、つまり貨車運搬量が連動して減る。天津などほかの貯炭場もしかり。
実態経済の本物の数字、これからもどんどん出てくるだろう。
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書評 ◇
巷間まかり通るアイヌの歴史はねじ曲がった嘘が多い
松前藩より裕福だったアイヌは鉄砲を多く所有していた
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的場光昭『アイヌ先住民族、その不都合な真実20』(展転社)
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いやはや、目から鱗が二十枚も落ちた。
いかに我々がアイヌに無知だったか。アメリカのインディアンのような先住民族と勘違いしてきたことか。
アイヌへの甚だしき無知を、その果てしなき蒙昧を知らされる。
評者自身、アイヌの集落を見学したのは高校一年生の夏休み。爾来、半世紀近く、アイヌとは無縁でいた。関心も薄く、よもや、この少数民族問題と北方領土問題がむすびついていたとは考えたこともなかった。
問題の所在は夥しくあるが、最大最悪の問題とは、我が国の国会決議で『アイヌを先住民族』としたことにある。
これは「国連宣言」を前提としての全会一致の決議だったが、誰もアイヌの歴史を知らずに、催眠術でもひっかかったかのように決議してしまったのだ。
「国連宣言」にいう先住民族とは、植民地化され、人権や基本的自由を剥奪された民族を指し、同時にそれらの先住民族は独自の文化伝統を有しており、侵略者によって集団虐殺や家族の崩壊に到った人々、文化的虐殺をうけて、差別された人々などを意味する。
国連の言う先住民族とアイヌとはまったく定義が異なり、同一視は無茶である。
近年の歴史の研究で日本では、アイヌはいたく保護され、松前藩の武士より裕福な人々が多く、かつ日本語を自ら学び、昭和三十年の調査でもアイヌ語を喋る人はごく少数だった。ロシアの侵略によってロシア正教に改宗したアイヌはロシア国籍となった等、かれらに都合の悪い真実が、次から次へと明るみに出た。
たとえば「シャクシャインの乱」と言われる和人 vs アイヌの戦いは、砂金利権をめぐる商い上のもつれから起きた抗争で民族間の抗争ではなく、350人の犠牲の多くは和人、アイヌは砂金利権を拡大し、松前藩より多い鉄砲をもっていた。道南の多くの地域では和人とアイヌが混在して暮らしていた。
したがって一部の歴史家の書いたアイヌの歴史はまったくの嘘の固まりである。
もし先の国会決議を廃棄しなければ、アイヌ語の公用語化、(台湾の高砂族のように)議会での特別枠、数兆円の「補償」と天皇の謝罪要求など、アイヌ先住民族運動の野望が実現してしまうという。
目から鱗が二十枚! 驚くべき実態が浮き彫りになった。
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(読者の声1)アフガニスタンに次々と石油、鉱物資源、金、レアメタルの鉱区が発見されており、その殆どの開発権利を中国が買い、或いは入札で中国が落札しているという報道がありますが、どの程度、本当なのでしょうか?
アフガニスタンのカルザイ政権を支援した欧米は、このまま手を加えて見ているのでしょうか? 不思議です。
(TY生、武蔵野)
(宮崎正弘のコメント)その報道はニューヨークタイムズの本日付け(6月26日)でもあります。詳しくは改めて解説しますが、北部アフガニスタンはドスタム将軍が支配し、独自通貨も出すという「独立国家」つまり「アフガニスタン・ドスタム自治区」同様な状況です。石油鉱区が発見されたのは、この辺りです。
中国はおそらくカルザイ政権には内緒で、秘かにドスタムとも取引して鉱区開発に乗り出したのでしょう。
またアレキサンダー大王時代から存在が知られていたアフガンの銅鉱山は、すでに三年も前から中国が開発しており、鉱物担当大臣に、中国が3000万ドルの賄賂を贈り、強引に鉱区開発権を奪ったことが判明しています。
その鉱区をまもる兵士は米国が訓練し、日本が経費を負担し、しかもなお、来月あたりに開催される「アフガニスタン支援国際会議」は日本で行われ、その経費は日本が負担するのです。そして裨益するのが中国。
カンボジアもそうでしたね。地雷を埋めて武器をポルポトに与えたのは中国、ポルポトは北京の傀儡。そしてカンボジアに平和がきたのは、日本の経済支援と、国際会議を日本で開催したことが切っ掛けでした。いまカンボジアは中国の浸透ぶりが甚だしく、そのうちアンコールワットのあるシェムリアップへも北京から直行便が飛ぶのでは?
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