「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」  | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成24(2012)年6月6日(水曜日)弐
         通巻第3674号 

 あの強硬発言「尖閣諸島に中国軍の軍事施設を建設せよ」の羅援将軍
  今度は米国の「シャングリラ対話」に正面から挑戦的強硬発言を繰り出した
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 米軍の艦艇の60%は、以後アジアに展開されることになった。
 対中東から対中シフトである。イラク、アフガンからも撤兵も今後、早く進む。

 パネッタ国防長官はインドからシンガポール、ベトナムを歴訪し、「シャングリラ対話」と称する一連の対中軍事対応を関係国と討議した。「大きな成果があった」と米国メディアは書いた。

 一方、中国は「なにゆえに米国はこれほど中国に敵対するのか」と言い出した。真っ正面からの米国批判である。
 タカ派軍人のなかで劉亜州(空軍中将、軍学校政治委員)、熊光楷(引退組、対日工作に辣腕)、朱成虎(先制核攻撃論が有名)が後方に遠ざかったが、ニュー・フェイスは羅援(少将)である。

 この羅援はかつても「日本が東シナ海の資源を確保すれば資源小国が資源大国となるではないか」とあからさまな対日侮辱発言を繰り返し、12年3月21日には「尖閣諸島に中国軍を派遣し、あそこに中国軍の施設を作れ」と放埒な発言を展開した。
かなりの反日派軍人として知られる。

 羅援の対米反論は次の要旨である。
 「過去十三回の米国ペンタゴン報告『中国の軍事力』は中国の防衛力を、まちがった方向に評価しているが、アジア太平洋における米軍の配置は十分すぎるほどであり、これ以上、米軍が軍事力を高めるのは対中対話という流れに逆行している」と嘯く。

 羅援の主張するデータは恣意的数字だが、こう続けるのである。
「米国は世界一の軍事費を誇り、表向き6870億ドルというが、軍人恩給などをふくめると8360億ドルとなり世界最大、装備は世界最高である。中国軍は2011年度の国防予算は930億ドルにすぎず、GDP比でいえば中国は1・5%、対して米国は4・8%である」(中国は公表軍事費の三倍が実態というのが世界の常識)。


 ▼取り残された焦燥感が逆バネの強硬発言を産む?

 羅援少将はさらに続けて言う。
 「すでに太平洋における米軍の存在は突出していて、駐屯兵力135300人、戦闘機618機、艦艇80隻。比較して在欧米軍は駐屯兵力が85700人、戦闘機290機、艦艇20隻でしかなく、この対比をもってしても中国を仮想敵国と位置つけているではないか」

 「そのうえに米国は最新鋭ジェット戦闘機、ステルス機の開発に余念がなく、世界最大の軍事大国であることに疑念の余地がない。第一列島線とかの命名は、その先は禁止区という意味である(そんなことを中国は言われる筋合いはないというニュアンス)」

 このような強硬発言は軍内タカ派のガス抜き効果があるが、朱成虎以来の強硬派が登場したのである。

 07年7月5日、中国外交部における記者会見で朱成虎は言い放った。
「たとえ米国が500発のミサイルと飛ばして我が中国の西安から東を灰燼に帰そうとも、わが軍は西安以西に一億の民があって報復するだろう」。
この朱は毛沢東の僚友だった朱徳将軍の息子、「核兵器の先制攻撃の辞さず」と強硬な発言で有名になった。

 羅援は羅青長の長男である。
 羅青長は四川人、長征に参加した古参幹部で毛沢東、周恩来がゲリラ戦争時代に秘密工作に従事し、党中央調査部長(これが国家安全部の全身)、つまり軍特務のボスだった。羅青長は表向き全人代常任委員をつとめたが、台湾工作など秘密工作が多い大幹部のひとり、その長男であるからには劉源、劉亜州、朱成虎らと同じく太子党である。

◆書評 ◇しょひょう ◇ブックレビュー ★
 日本人と台湾人を精神的に結びつけているのは武士道精神だ
  李登輝元台湾総統が大震災以来しょげている日本人を鼓舞する著作


李登輝『日台の心と心の絆』(宝島社刊)
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 日本と台湾の人々の心を結びあわせているのは日本精神である。
それは武士道精神である。世界政治が混迷し世界経済が低迷し、日本はなかなか復活できないで喘いでいるが、日本にはこの混迷に打ち勝つ日本精神があるではないか、と李登輝閣下は強くたくましく日本人に訴える。
 うろたえないで、たじろがないで、後ろを見ないで、そして日本よ、起ち上げれ!
 李登輝元台湾総統、いまも日本に対しての愛情溢れる発言はやまず、そして多くに日本人に勇気を与えている。
 前作『武士道解題――ノブレス・オブリージェとは』(小学館)のなかで、なぜ武士道かを探索して、「日本及び日本人対してだけではなく、わたし自身に向けての問いでもありました」と正直に心境をつづる李登輝閣下は、「各個人が生き方の心得と言うべきものを再認識しなければならないと信じる」として次のように言われる。
 「武士道を再評価しようといっているのは、日本人本来の精神的価値観をいま一度想起して欲しいと切望しているからです。民族固有の歴史とは何か、伝統とは何かということをもう一度、真剣に考えて欲しいのです」
「一国の文化の形成というものは、『伝統』と『進歩』という一見相反するかのように見える二つの概念を如何にして止揚すべきかという問題に帰する」。
 
現代日本はハイテクという進歩にとりつかれ伝統を顧みない風潮があり、経済大国をつくりあげる原動力は進歩であっても、「そのために国家や国民にとって最も大切な『伝統』まで捨て去ってしまったら、どうでしょうか。それは本来の意味における進歩ではなくなってしまう」
のではないのか、と何回も呼びかけられるのである。
 本書は李登輝総統自身が時間を割いて執筆され、日本各地においておこなわれた講演の記録と、日本の雑誌に寄稿された論文の集大成ではある。
このうちの後藤新平論ともう一本は評者(宮崎)も直接、講演会場へ出向いて聞いている。本書では最後に語り下ろしインタビューが台湾在住作家の片倉佳史氏によってなされ、全体を端正な整合性を伴って盛り上げる編成となっている。
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 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 759回】            
    ――南僑機工の“亡霊”たち


  △
小雨が降り始めた?町の表通りを小走りで駆け抜け、路地の先に店を構える新華書店の支店に飛び込み10冊ほど本を買う。ちょうど昼時で食事中だったが、珍しいことに店員は食事を中断し、嫌な顔もせずに応対してくれた。

ふと前方を見ると、店の前に広場があり、正面の壁には4,5m×30mほどの巨大な写真が貼られている。
毛沢東を中心に右に朱徳、劉少奇、周恩来、陳雲、陳毅、毛の左には民族衣装を着た独立ビルマ初代指導者のウ・ヌー首相夫妻と思しき人物、その左に同じく民族衣装の3人の男性が立つ。中国側は全員が人民服だ。写真の上には「中緬建交六十周年 充分発揮?町橋梁紐帯作用(中国・ビルマ国交樹立60周年 両国を結ぶ?町の橋梁紐帯作用を充分に発揮させよう)」との文字が見える。彼らが49年の建国直後に両国の国交を結んだ功労者ということだろうが、あるいは偽造写真の可能性もなきにしもあらず。

公園を後に、買い込んだ本の包みを小脇に抱え小雨の止みかけた表通りを歩くと、大部分は目下建設中の店舗。程なく宝石の土産物屋として開店し、各地からやって来る観光客相手にニセモノ、紛い物を売りつけることだろう。これもまた「政経合一」が“売り”の管理体制を布く「?町経済開発区」の現在の姿だ。

!)町を離れ次の目的地である瑞麗に向かう。途中で昼食時間となり、道路沿いの小型体育館のようなレストランに立ち寄る。三方に壁はなく風が吹き抜けて心地いい。
残る一方には4,5m×15mほどの真っ赤な幕が引かれている。幕の左端は南僑機工の生みの親といわれる陳嘉庚の等身大よりやや大きな全身写真で、右端は?緬公路の路線図。ど真ん中に大きく左から右に「“重走南僑抗日?緬路萬裏行進”活動 歡迎宴會 中共徳宏州委 州人民政府」と記されている。

「南僑の抗日?緬路を重(たず)ね走(ある)く万里の行進”活動」を中共徳宏州委と州人民政府とが宴席を設けて歓待したのだろう。
「里」と書くべきところを「裏」としているところがゴ愛嬌だ。どっちも「li」の音だから間違ってしまったということだろうが、そこがなんとも間が抜けていてオカシイ。

じつは1年ほど前の2011年6月、マレーシア、シンガポール、中国などから集まった80人ほどが22輌の四輪駆動車に分乗し、南僑機工に縁のシンガポール怡和軒倶楽部を出発しマレーシア、タイ、ラオスを経て雲南入り。以後、昆明から?緬公路を西に向かい、保山から龍陵、芒市を経て?町に。

もっとも大部分は往時の?緬公路ではなく、上海と瑞麗を結ぶ高速国道320号線を走ったはず。全工程36日。盧溝橋事件の起きた7月7日には、昆明で集会を開き、南僑機工による抗日運動への貢献を讃えて気勢を挙げたらしい。

この活動への最大のスポンサーはマレーシアで海鴎集団なる企業集団の総裁を務める陳凱希。マレーシアと中国との友好を掲げる馬中友好協会の秘書長だそうだが、どうやら背後には共産党の教育・宣伝中枢である中共中央宣伝部(中宣)と雲南省政府が控えているように感じられる。

日本人からするなら南僑機工など遠く思い及ばない。
援蒋ルートも?緬公路も、ましてや騰越・拉孟・龍陵の玉砕も民族の記憶の彼方に消え去る一歩手前だ。だが“民族の怨念や敵愾心”に火を点けるべく、南僑機工の歴史が掘り起こされ、東南アジア華人青年を動員した反日運動は?緬公路を舞台に繰り返される。
知らぬは日本人ばかりなり。
《QED》
 
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 読者の声 どくしゃのこえ READER‘S OPINIONS 読者之声 
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(読者の声1)テレビ東京の番組を見ていたら森下仁丹のカプセル技術が紹介されていました。
胃酸で溶けないカプセルにビフィズス菌を閉じ込め腸まで届ける、レアメタルを取込む微生物をカプセルに閉じ込めることで都市鉱山からレアメタルを回収する、シロアリの卵そっくりなカプセルをつくり、擬似卵内部にシロアリ駆除剤を入れることで白蟻の巣も一網打尽にできるなど、身近なカプセルにこれほどのハイテク技術が詰め込まれているとは思いませんでした。
外部から招聘された社長が理系で、仁丹のコーティング技術を活かす方向に舵を切ったような番組作りでしたが、ネットで検索すると2005年あたりからシームレスカプセルの研究員を募集していました。
老舗ならではの既存技術をさらに発展させるものですね。韓国・中国は技術開発に金をかけず、日本人技術者をリクルートすることでしのごうとする。新日鉄は提携している韓国のポスコ(浦項製鉄)、さらには中国企業にまで「方向性電磁鋼板」の技術が流出したとしてポスコを相手取って裁判を起こしました。1970年代に日本の全面的な援助で建設された浦項製鉄所の完工記念式典には日本人は一切招かれなかったと言います。
昔の韓国は昼間でも抜き打ちで防空訓練が当たり前。そんな時、日本人技術者が席を離れた際に日本の技術書をコピーしまくったという。今回の事件は新日鉄の元社員グループによる技術流出のようですが、リストラの行き着く先は海外への技術流出かもしれません。
続いて上海の寿司事情、回転寿司も台湾系・香港系・シンガポール系とさまざま。
そんな激戦区に日本のスシローが出店、日本ならではの鮮度管理としてICチップを内蔵した皿がレーンを350メートル以上回ったら自動的に廃棄される安心・安全のシステムで挑むという。
中国市場なら鮮度が落ちたら半額とかのほうがよほど売れそうな気がしますが、どんなものでしょうね。
  (PB生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)中国の寿司は中味が寿司もどき、あれ寿司ではないですね。中国人が食せるのはマグロ、鮭、勘八くらいで、あとはカリフォルニア巻き風のへんてこなものばかり。それの一部マヨネーズで食べてますよ。ウニをたべている中国人を見たことがないし、そもそも回天寿司にウニはおいてない。
 上海でもそうですが、ガラス張り、中国のおける寿司は一種スティタス・シンボル。若い女性には健康食という信仰です。

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(読者の声2)『正論』7月号を読んで感じたことを投稿します。とくに石原都知事が表明した尖閣諸島購入計画を巡って興味深い対照的な記事を目にしました。
1つは尖閣諸島がその行政区画に入る石垣市長の「石原構想に全面協力、尖閣は我らが守る」というインタビュー記事は心強い。
戦後レジームに侵され、ねじけた頭の左翼市長でなくてよかったと思う。他方松原某という東大教授の石原都知事を貶めたよう言説にはうんざり。この先生は都知事の動きを、「国政時代に目立ったことができなかったという敗北感があるのではないか。それ故、都政を使って国に個人的なリベンジをしたいとの動機が強いのではないか」と書く。この下司の勘繰りの如き心根の卑しさはどうだろう。石原都知事が4月16日、ワシントンで尖閣諸島購入構想を発表後1ケ月半で既に10億を超える寄付金が寄せられているという全国民的支持には松原某は一切触れないという姑息さにも呆れる。
また正論7月号には石原都知事と阿含宗管長桐山靖雄氏との特別対談も興味深い。二人の愛国者同志の覚悟が伝わる。
ところで石原都知事の産経6月4日コラム「日本よ~尖閣について、さまざま~」の中で彫刻家平櫛田中の次の言葉を引用されました。
「俺がやらなきゃ、誰がやる。今やらなけりゃ、いつ出来る」
この言葉が英訳されアメリカ人にも知る人ぞ知るということがあったのではないかと思わせるTV放映(Eテレ スーパープレゼンテーション)を観たからです。
ミック・エベリングなる映像制作株式会社のプロデューサーが語るプレゼンテーションの最後に恰好つけて次の言葉で締めくくる。
「If not now, then when? If not me, then who?」
どうだろう、平櫛田中の言葉そのまんまではないか。これがバクリでなくて何であろう。
(ちゅん)。

(宮崎正弘のコメント)石原発言以後、短時日裡に十億円をこえる購入資金援助寄付があつまり、この勢いですと、購入予定金額を軽くこえると思います。眠っていた日本人の精神が、ようやく目覚め始めたようです。
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