頂門の一針ー人災の元凶」菅前首相に反省なしー | 日本のお姉さん

頂門の一針ー人災の元凶」菅前首相に反省なしー

「人災の元凶」菅前首相に反省なし
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 阿比留 瑠比

責任転嫁、自己正当化、そして「記憶にない」。国会の東電福島原発事故調査委員会による菅直人前首相の参考人聴取は、事故対応で采配を振るった最高責任者(原子力対策本部長)の無反省さを改めて見せつけた。

事故拡大を防げなかったことも、付近住民に適切な避難指示を出せなかったこともどこか人ごと。自らが「人災の元凶」だったとの自覚はない。

「私が知りうる限りのこと、考えたことについてできる限り率直に答えたい」

菅氏は冒頭こそ神妙な面持ちだったが、その後はのらりくらりと質問をかわし、2時間50分間の質疑の大半をいかに責任逃れするかに費やした。

事故調委員は、菅氏が法的根拠と責任の所在が曖昧な指示を繰り返した
ことを問題視したが、菅氏は「記憶にない」と強弁し、いったんは事務方に責任をなすりつけた。

「原子力事故にあたってどのような権限が首相、本部長としてあるのか、詳しい説明を聞いたことは覚えている限りない」

ところが、委員が平成22年10月に中部電力浜岡原発事故を想定した防災訓練に首相として出席したことを指摘すると豹変(ひょうへん)。「もっと早くからしっかりとした説明を受けて知っておいた方がよかった」と釈明した。

一事が万事この調子だった。菅氏は答弁用のメモを周到に準備していた。
27日の国会事故調での枝野幸男官房長官(当時)の参考人聴取などをインターネット放送で視聴し、理論武装に励んだことは想像に難くない。

再臨界ない「知っていた」 海水注入中止指示で

だが、物事は「隠すより顕る」。言葉の端々から不誠実な態度がのぞく。

緊急事態宣言発令の遅れについては「特に支障はなかった。理由があって引き延ばした気持ちはない」。第1原発1号機への海水注入に懸念を示した自らの言動が東電に「官邸の意向」として伝わっても「全く理解できない」-。

事故直後、無資格(後に内閣官房参与)で官邸に招き入れた情報処理の専門家である日比野靖氏が第1原発に電話で「極めて初歩的な質問」(委員)を行い「仕事の邪魔」をしたと追及されるとこうごまかした。

「やや抽象的なお尋ねで答えに困る。内容的にはっきりしないので答えようがない…」

もともと原発事故が起きるまで菅氏に原子力政策への定見はなかった。
若いころは原発に懐疑的だったというが、昨年1月の施政方針演説では「私自らベトナムの首相に働きかけた結果、原発施設の海外進出が初めて実現します」と原発ビジネス推進の旗を振った。

事故発生直後に「自分はものすごく原子力に強い」と自慢したかと思うと、昨年8月の福島復興再生協議会では「放射能をどう考えてよいのかなかなか理解できない」と言い放った。

そして事故調では日本だけでなく世界に向かって「脱原発」を高らかに訴えた。脱原発論者さえもこう受け止めたに違いない。「お前が言うな!」と。

言っていることはブレ続けても「反省のなさ」だけは首尾一貫している。
哲学者、ニーチェはそんな菅氏の人間像をずばりと言い当てている。

「『それは私がしたことだ』と私の記憶は言う。『それを私がしたはずがない』-と私の矜持(きょうじ)は言い、しかも頑として譲らない。
結局-記憶が譲歩する」

自らの過ちを認めようとしない人ほどたびたび過ちを犯す。そんな菅氏を民主党最高顧問(新エネルギー政策担当)に任じた野田佳彦首相も人ごとでは済まされない。

産経ニュース 2012.5.28 23:20