「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成24(2012)年5月22日(重要!!)
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年5月22日(火曜日)弐
通巻第3656号
NATOのシカゴ首脳会議はアフガニスタンからの撤退を再確認し
嘗てのNATOは形骸化、機能不全が顕在化し、やがて廃棄物になるのか?
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シカゴは大荒れだった。
NATO首脳粉砕を叫ぶ暴力的なデモが荒れ狂い、ボーイングは操業を停止した。
オバマ暗殺を狙ったとされるテロリスト数名が拘束され、オランド仏大統領は遅刻し、なかでも椿事はNATOに関係のない日本の外務大臣が呼ばれて、アフガニスタンへの拠金をねだられた。
「オバマの演説が終わる頃を計算してオランドが会場入りしたのは、フランス兵3400名の年内撤退で延期を要請するオバマに言質を取られたくない用心のため」(ワシントンタイムズ、22日)
この北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は5月20日から開催されたが、直前までキャンプディビッドではG8,野田ーオバマ会談もおこなわれた。
シカゴでのNATO首脳会議で何が決められたか。
ラスムセンNATO事務総長は「2018年に完成する欧州ミサイル防衛(MD)の初期運用の開始」を宣言した。これはNATOが増強中の「スマート防衛」の一環。
具体的にはイランの長距離弾道ミサイルに備え、イージス艦や早期警戒レーダーなどを連携稼働させて敵ミサイルを撃墜するという欧州全体の防衛構想である。
すでに初期段階では早期警戒レーダーをトルコに設置したほか米海軍のイージス艦2隻を地中海に配置している。NATO海軍本部はトルコのイズミール。
つぎにポーランドとルーマニアに迎撃ミサイルを配備するが、ロシアの反発が強く、イラン迎撃用という説明を疑っている。プーチン露大統領がG8を蹴飛ばした(代わりにメドベージェフ首相が出席)直接の理由がこれで、反逆としてか、オバマは九月のウラジオストックのAPECを欠席する。
▼アフガニスタンから「逃げ出す」ことを「撤退戦略」と言い換えて
さてNATO首脳会議では2011年のリビア軍事援助空爆行動でNATOは上空からの監視・偵察態勢の不備が明らかとなり、このためて無人機5機を購入する。他方、ラスムセン事務総長はシリア情勢に懸念を示したが、「NATOがシリアに介入する意図は全くない」とした。
加盟28カ国の首脳が出席したが最終日には「アフガニスタン撤退戦略」が議題となった。
NATO宣言は「国際治安支援部隊(ISAF)」のアフガニスタンにおける活動が2013年半ばまでに戦闘主体から、アフガン治安部隊、警察の訓練、支援主体に切り替わる基本方針を明記した。さらに2014年末までにISAFは戦闘任務を終了、アフガンに治安権限を移譲して撤退する。従ってNATOは「アフガン治安部隊の維持にかかる費用の財政負担」(41億ドルを想定)を日本などに求めるのだ。
だからNATOのメンバーでもない日本が呼ばれた。ほかに豪州も財政分担金1億ドルを表明した。インド、ブラジルなどは無関心だった。
玄葉外相はシカゴのNATO首脳会議でアフガニスタンに関する日本政府の立場を表明し、「2015年以降も治安維持のための(財政)支援を行う考えがある」とした。ただし、玄葉外相は「アフガン自身の治安能力の向上が不可欠だ。我が国は2015年以降も治安部隊に対し、適切な支援を継続していく」としたうえ、7月に東京で開催する「アフガン国際会議」で、日本以外の各国も資金支援を行うよう求めた。
イスファン・タルーハが書いた。
「NATOは世界最強の軍事同盟から西側の衰退を示すかのように退化し、廃棄物となるのか」(TIME、12年5月28日号)。
「ヒトラーもソ連もいなくなったらNATOの存在意義は何かという問いにラムスセン事務総長は『コソボ、ソマリアの平和維持、イランへの備え、そして新しい安全保障上の脅威に対処する世界防衛のハブがNATOだ』と答えたが、それは対外的説明であってもNATO内部、とくに加盟国を十全に説得できない。リビア空爆で英仏は張り切ったが、しょせん米軍頼りだった。シリアには介入せず、NATOがインポであることを証明したし、そもそも米国は大西洋から太平洋に関心を高めている。NATOは無用の長物化するのか」。
こういう辛辣な見方をTIMEがしていることを銘記しておこう。
(註 イスファン・タルーハはタイムの花形記者。エール大学卒業、アジア関係記事でTIMEのレポーターとして活躍中)
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(読者の声1)貴誌前号の藤岡信勝先生からの声明文ですが、「先立ち記者会見を開きました。5月15日になって、出席の承諾をしていた山口清明議員は、欠席に転じた理由を書いた文書を公開しました。
これは、私が本日記者会見を開くことを知った故の対抗措置だと考えられますが、「市長発言を撤回」しなければ議論に参加しないという、詭弁に満ちたものです。特定の結論を前提して相手に押しつけ、それを呑まないからという理由で事実の討論から逃げ出すという、こうした態度は、日本共産党の議論否定の独裁的体質を表しています」
とありました。
これは、「独裁的体質」も、何も、「コミンテルン日本支部=日本共産党」は…南京大虐殺(datusha)を捏造した側、つまり、敵側に立つて、我々=日本国民と戦つてたんだから、当然でせう。
そこが分りにくいのは、日本が戦争に負けたため、戦後、我々に「敵の正義」が押しつけられ、国民の敵=アカであつた「日共」は敵に解放され、彼等が「敵の正義」を担いで現在まで跳梁跋扈してるからです。
「南京大屠殺」の捏造には、シナ事変当初から「日共」が関はつてゐます。
一例を挙げましょう。
南京虐殺を最初に著作にしたといわれるティンパリーの『戦争とは何か?』は北村稔氏や東中野修道氏によって、国民党宣伝部の意向によって書かれたということが判明しています。
昭和13年に出ている、その日本語版には鹿地亘と青山和夫の2人の「日本共産党員」の序文がついています。
これだけで、どういう意図の下にこれが書かれたかは分かろうというものです。プロパガンダなのです。
書いてある内容はグロテスクとしかいいようのないおぞましいものですが、日本の飛行機は「日機」と書かれ、日本留学経験のある中国人によって書かれた可能性が高いのです。
ですからティンパリーは英訳に使われただけという可能性もあります。
だから、問題になっている靖国のA級戦犯でも、それはいい悪いの問題ではなく、A級戦犯はどなた様の代わりに絞首刑になったのかっていうのが基本です。
日本が終戦を迎えるために、それから講和条約を結ぶために、どなた様の代わりに絞首刑になったのかっていうことです。
とすれば、犯罪人ではなくて、A級戦犯こそ日本の皇統を助けた人々です。
皇室を助けたのは彼らなんです。
だから、その恩義をいまの日本人に教えなければいけない。つまり、すべての基本は「尊皇」なんです。
B:では、その「尊皇」というのは、どういう意味ですか? どういうようなことを指して……。
T:「尊皇」というのはね、よく民族主義と言うでしょ。で、日本の民族主義はなにかというと、アイヌもいるし、沖縄の人もいるし、それからご存じのように半島から来てる人もいる。私の祖先の地の福岡なんていうところは半島にいちばん近いところで、福岡へ行ったら、半島に遠い意識なんてあんまりないですよ。このような日本の民族がまとまっていく基はなにかといったら、それは天皇しかない。皇室の純血しかない。
つまり、天皇の血。それを守っていくということが日本のかたちなんです。皇室を守るということにみんなが集中しないと日本というのはない。これが「尊皇」です』
(引用止め)
「呉竹会」のサイトにはアジア各国への独立支援の歴史についても、GHQによるレッテル貼りに反論する形で「頭山満の人と足跡」を記しています。
『1915年には、孫文の紹介で国外退去命令を受けていたインドの独立運動家ラス・ビハリ・ボーズとも会い、頭山は支援を決意、 すぐに、新宿の中村屋へ匿い、後に相馬俊子と結婚を仲
介、帰化をして、 インドカリーを伝えられたことは有名な話ですが、 ボーズは、講演活動などで走り回り、1941年にタイでインド独立連盟の大会を開くなど独立運動に邁進します。「独立したら頭山先生をインドに連れて行きたい」がボーズの口癖だったそうですが、1944年に喀血して闘病生活に入り、 翌年1月にインド独立の姿を見ることなく58歳で亡くなってし
まいます。
そのボーズの紹介で、1923年に頭山は、アフガニスタンのプラタップと会い、 歓迎会を開いて援助を約束します。そして、アフガニスタンが統一されると 「わが明治維新の当時を想わしむ」との賀詞を
国王に送っています。
支援の対象はフィリッピン、ベトナム、エチオピアと、その輪を広げて行きますが、1924年の11月には孫文が最後の日本訪問を行い、神戸で頭山と会見します。お互いに日中関係が憂慮すべき事態となっているのを受けての 会談でしたが、
「中国東北部の権益」についての孫文からの申し入れを、 頭山は断る形で別れることとなり、その後行われた神戸高等女学校での大亜細亜問題と題する講演で孫文が「今後日本が西洋覇道の犬となるのか、東洋王道の干城となるのかは日本国民の慎重に考慮すべきことである」と演説し、歴史に言葉を刻んだことはつとに有名な出来事となりました。
この演説から4ヵ月後に孫文は「革命いまだ成らず。同志すべからず努力すべし」と最後の言葉を残して病没。
1925年3月12日、58歳でした。
翌年、孫文の後継者として蒋介石が国民軍総司令官に就任しますが、2年後に下野して頭山を頼って来日、頭山邸の隣家で起居します。しかし、頭山らに激励を受けて帰国し、孫文の宿願であった北伐を成功させるのです』
南シナ海での中国の横暴にフィリピンはなすすべもない。
かつて米軍を追い出したツケとはいえ、南シナ海のシーレーンは日本にとっても死活問題、巡視船の供与や米海兵隊と自衛隊がフィリピンの訓練施設を共同使用を検討する、との報道もありました。
尖閣衝突事件以降、民主党政権の悪しき政治主導に歯止めがかかり、実務レベルでどんどん話を進めているようにも思えます。民主党が野党だったら絶対に反対するような事案も今ならすんなり通るのかもしれません。
世界ウイグル会議のメンバーにビザが下りたこと自体、チャイナスクールの地盤低下の現れなのでしょうか?
さて貴誌前号の(読者の声3)で「固有名詞を上げての論にしていただきたいと思います」とありました。
それこそ「どこかの国」では固有名詞を上げて、全然別の事柄を非難する、指桑罵槐(しそうばかい)なのに、それと知らず固有名詞を上げられて慌てふためく国もある。要は国語力の問題でもあり、異文化理解の問題でもあります。
暗喩・隠喩・ほのめかし、といったものが無くなればもはや日本語ではありません。
国語力を養うためにも、ワンパターンな新聞記事ではなく、しっかりした日本語の小説なり随筆なりを読んで欲しいものです。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)呉竹会は随分と若い人があつまります。縁の下の力持ちが、かなりの数ですが存在しており、それこそ右から左まで多士済々。元社会党代議士から元全共闘なんて履歴の人々が混ざっているのは、頭山さんの人徳でしょうね。亡くなった花岡信昭氏も呉竹会のこと、一所懸命にやっておられました。そういえば、明後日、花岡さんの一周忌ですか。
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(1)「中国の新権力構造図解 習近平の弱さ」(『SAPIO』、6月6日号、発売中)
(2)「次の中国軍を率いるのは誰と誰か」(『月刊日本』6月号、22日発売)
(3)「王立軍事件から薄失脚まで」(『エルネオス』6月号、元木昌彦氏との対談、月末)
(4)「カリブ海のリゾート開発も中国」(『共同ウィークリー』、5月7日号)
(5)「環日本海ルートのいま」(『北国新聞』、北風抄コラム、5月8日付け)
(6)「近刊『習金平』<矢板明夫>を論ず」(『正論』六月号、発売中)
(7)「習近平は日本に何を要求してくるか」(『撃論プラス』、発売中)
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http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2012_CMPR_Final.pdf
「中国の軍事力 米国防省年次報告」(PDF57ページ)
宮崎正弘のロングセラー
『国際金融危機 彼らは「次」をどう読んでいるか』(双葉社新書、840円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4575153877/
『2012年 中国の真実』(ワック、930円、新書版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4898316557/
『中国大暴走 高速鉄道に乗ってわかった衝撃の事実』(1365円、文藝社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4286114228/
『中国は日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店 1260円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4198631565/
『オレ様国家 中国の常識』(新潮社、1470円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4103290617/
<宮崎正弘の対談シリーズ>
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談。海竜社、1575円)
『増長し無限に乱れる「欲望大国」中国のいま』(石平氏との対談。ワック、945円)
『絶望の大国 中国の真実』(石平氏との対談。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『世界が仰天する中国人の野蛮』(黄文雄氏との対談。徳間書店、1575円)
宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
(C)有)宮崎正弘事務所 2012 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
(呵々大笑)
(宮崎正弘のコメント)ついでですので司馬遼太郎の『故郷忘じがたき候』が、まっかな嘘であることを証明したエッセイが下記サイトにあります。
http://www.jiyuushikan.org/rekishi/rekishi226.html
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(読者の声2)「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル総裁らメンバーが靖国神社を参拝しましたが、ネットで調べたら「呉竹会」の案内とありました。呉竹会を調べると会長「頭山興助」。頭山満のお孫さんで顧問にペマ・ギャルボ氏の名前もあります。玄洋社繋がりだったと知り納得です。
宮崎先生も第4回呉竹会勉強会講師として紹介されていますね。
http://www.kuretakekai.jp/information/index.html
さらにネットで検索していくとベンジャミン・フルフォードによる頭山氏へのインタビューの要約がありました。
「天皇陛下万歳」と言える右翼が少なくなった。しかし日本という多民族国家から皇室
がなくなれば日本はバラバラになる。(呉竹会・頭山興助)」
http://www.asyura2.com/0601/senkyo19/msg/1124.html
2006年のものですが、反共右翼が必ずしも愛国者ではないことを指摘、一部引用します。
『ベンジャミン(以下B)
いまの日本の右翼は、本来の道から外れていると思います。国民を主導するはずの政府がアメリカの圧力に屈し、それによって国が衰退しているのに、右翼は立ち上がろうともしません。どうなっているんですか?
頭山輿助(以下T)
戦後ね、日本の愛国主義というか、国粋主義というのがアメリカによって禁止され、いわゆる皇国史観はタブーになった。いまでは、右翼という言葉すらはばかられるようになりましたが、本来の愛国者というのは、日本の場合、「尊皇」じゃなきゃならないんですよ。それが、戦後は尊皇運動家というのはアメリカの尻馬に乗って「反共右翼」というのになった。単なる反共の道具になったわけです。しかし、いまは反共もなくなったから、右翼がなにをすべきかもわからなくなってしまったんです。
B:そうですか。
T:戦後の右翼でいちばん有名な児玉誉士夫なんていう人は、反共の最たるものでした。それはもう、はっきり言えばアメリカのエージェントですね。エージェントというのは、エージェントにする側がプロであって、される方は素人でもいいわけです。こうなると、日本の右翼は昔とはまったく違ってしまう。だから、いまは、愛国者と思われている右翼の人間が必ずしも愛国者ではない時代ですね。それに、愛国者というのは、右翼じゃなくてもいいわけだから。
B:なるほど。
T:だけど、右翼の人たちだけが愛国者という言葉を使う。これが、1つの大きな問題です。いま、ぼくなんか、いろんなところによばれて懇談したり、大きな大会で挨拶したりしますが、「天皇陛下万歳」と言えない右翼が多いんです。たとえばいま、韓国の右翼とは反共では一致するけれども、「では、いっしょに天皇陛下万歳しようよ」と言ったら「イヤだ」と言うわけです。
B:なるほど。
T:ともかく、こういうことが、いまの日本の愛国者にはわからなくなってきている。
ぼくは、反共であることは人後に落ちないけれども、その前に「尊皇」がある。これがない愛国者というものは、日本の場合ありえないんですよ。