パソコンで、「黄斑変性症」になるかも | 日本のお姉さん

パソコンで、「黄斑変性症」になるかも

女子のプチ不調の一因は「ブルーライト」?
日経ウーマンオンライン(日経ヘルス) 4月24日(火)14時38分配信

画面から出ているブルーライトを計測したデータ

 仕事でパソコンの前に座っている時間が長くなると目の疲れや肩の凝りがつらくなる、就寝前までスマートフォン(以下スマホと略)を使っていた日はなかなか寝られない、という人はいませんか?

【詳細画像または表】

 南青山アイクリニック東京(東京都港区)の井手武副院長は「それはブルーライトが原因かもしれない」と指摘する。「ブルーライト」って何だろう?

 「注意が必要な光線」といったら、女性の頭に真っ先に浮かぶのは、肌老化の原因になる「紫外線」ではないだろうか?ブルーライトはこの目に見えない紫外線の隣に位置しやや波長が長く、目に見える域に入ったあたりの光(可視光線)の中では一番エネルギーが強い。


 ブルーライトは昼間の太陽光にも含まれているが、急速に私たちの生活を取り巻き始めている“LEDをバックライトに使用している”IT製品、PCやスマホ、タブレット端末などの画面からも出ている。デジタル機器が普及し、いつでもどこでも使えるようになった半面、私たちは屋外より屋内でブルーライトに接触する時間が一気に長くなっているというわけだ。

 それでは、急速に浴びる機会が増えたこの光の特徴は?

 ブルーライトには、上の図に示した可視光線の中でも波長の長い赤色光や真ん中にある緑の光などに比べて像がボケたり、チラつきやすいという性質がある。これはブルーライトが散乱するから。そのため、PCやスマホ画面上の文字に一生懸命ピントを合わせようとすることによる疲れに、ブルーライトが加わって目は疲れきってしまう。

 井手副院長によると、最も多い自覚症状は

・ピントが合せにくい
・光をギラギラと感じる
・文字がチカチカする
・線を目で追いにくい

 といったものだという。

 実際にどのくらいのブルーライトが画面から出ているのかを計測したデータがある。上の三つのグラフは、画面からどのくらいの強さの光が出ているか調べたもの。

 左は旧来型の液晶PCの画面の光。青色の部分にも山があるが、緑色部分にピークがある。一方、右側の2つはLED液晶スマートフォンの画面と、同じく最新型の液晶PCの画面のデータだ。どちらも、他の色に比べブルーライトが突出して高くなっていることがわかる。

 「PCやスマホで密なコミュニケーションをしているんだから、疲れ目は現代人が避けられない不調」などと侮ってはいられない。


ブルーライトは網膜に影響を及ぼして、「黄斑変性症」といった目の疾患に関係するかも、とする研究もある。


井手副院長も「黄斑変性症は老人の病気というイメージだが、ブルーライトによるダメージの蓄積でリスクが高くなる可能性がある。パソコンもスマホもない時代を生きてきた今の高齢者より、これからも長時間使っていくであろう若い人は注意が必要」と警鐘を鳴らす。

●ブルーライトの害を防ぐには?●

 では、どうしたらブルーライトの害を抑えることができるのだろう。

 現代の生活を考えると、ブルーライトを出す機器を遠ざけたり、使用時間を極力減らすといった対応は難しい。そこで、電子機器メーカーや眼鏡メーカーなどで研究が進められ、パソコンの画面に貼るフィルターや、ブルーライトをカットするレンズを使ったPC用のメガネなどが登場している。すでに社員のPC作業用に導入している企業もあるようだ。このような対策グッズには実際、どのくらい効果があるのだろう?

 そんな関心を持った井手副院長は自身のクリニックで、実験を行った。

 日常裸眼で生活している被験者22人を2グループに分け、一方にブルーライトを約半分にカットするPC用メガネをかけ、もう一方はかけないままパソコン作業をしてもらった。その後で目の疲労度を調べる検査(フリッカーテスト)を行うと、PC用メガネをかけたグループの方が疲労度は低かった。また、「ピントが合わせづらい」「光がギラギラする」などの自覚症状もPC用メガネを使用したグループの方が軽かったという。

 さらに、井手副院長監修の下、コンピューター・ソフトウエア企業の大手マイクロソフト社日本法人の社員124人が参加して、PC用メガネ着用の有無でPC作業による眼精疲労がどう変わるかを実証する試験が2011年10月に行われた。その結果、PC用メガネをかけた週の終わりと、かけなかった週の終わりでは、「ストレス」「目の奥が痛い」「首肩や背中腰の痛み」といった眼精疲労に関係すると思われる項目の多くで、メガネをかけた週のほうが自覚症状が改善していた。

●ぐっすり眠れない、翌日だるい原因にも ブルーライトが関係?!●

 PCやスマホをベッドの中まで持ち込んで、それこそ「眠る直前」までやっている人はいませんか?

 睡眠障害やうつ病治療の第一人者、杏林大学医学部精神神経学教室の古賀良彦教授は、「質の良い睡眠のためには、規則正しい生活とバランスのいい食事が欠かせないが、PCなどの長時間使用によるブルーライトの影響も見逃せない」という。

 「そもそもブルーライトは太陽光に含まれる波長であるためか、体内時計の働きとリンクしている。昼夜を問わず、ブルーライトを浴びれば、体内時計のリズムの乱れを引き起こし、睡眠の質を悪くするだけでなく、昼間の活動性を低下させる可能性もある」と説明する。

 つまり、ブルーライトが自然な睡眠を阻害する可能性があるというわけだ。

 古賀教授は20~30代の女性被験者6人に4日間、睡眠前に1時間スマホを使ってもらう試験を行なった。その際、2日間はスマホ使用時にブルーライトをカットするPC用メガネを着用、残りの2日間は素通しするメガネを着用してもらった。そして、体の活動性を測る腕時計型の機器・アクティグラフを用いて、試験期間中の体の動きを比較をした。

 その結果、睡眠中の最長睡眠期間(熟睡して体がほとんど動かない時間)はPC用メガネをかけたときの方が長くなることがわかった。

 夜しっかり眠れているためか、翌日の活動性(体の動きの活発さ)もPC用メガネをかけた時のほうが高かった。

 古賀教授は「生活の中にブルーライトを発する機器が急速に増えている今、良質な睡眠と体内時計のリズムを維持するために、ブルーライト対策が必要」だと言う。

 なかなか解消しない眼精疲労、不眠に悩んでいる人は、自分が日々どれだけブルーライトを浴びているか、チェックしてみてはいかが?

ブルーライト対策
●モニターを見る総時間数を減らす
●就寝前にデジタルモニターを見ない
●ブルーライトから目を保護する対策をとる
●PC用メガネの着用
●モニターに保護用シールを貼る