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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年4月10日(火曜日)弐
通巻第3619号
中国経済は三年以内にハード・ランディングへ向かう
急速な消費の冷え込み、資本配分の不均衡は不良債権を激増させた
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アジア経済の著名な経済学者ジム・ウォーカー(香港「アジアノミクス」CEO、前CLSAチーフ・エコノミスト)は「中国経済は三年以内にハード・ランディングするだろう」と予測した(ウォールストリートジャーナル、中文版、4月10日)。
消費が衰え、バブルから醒めつつある中国で、「これから起こるのは通貨緊縮による消費激減である。ところが中国経済の構造は、消費が拡大するという前提で投資が行われた。典型例は豪への鉱山開発など海外鉱区買収、豪華品の生産増、設備投資拡大など一部アイフォンの需要もあるが、短期的であり、内需拡大は明らかに衰退過程にある」
こう語るウォーカーは続けた。
「この空前の消費のおちこみは直近に19都市を調査しても明らかであり、セメント、鉄鋼の需要激減などから判断しても近未来は悲観的にならざるを得ない。広域で経済が失速しており、この六月から急減現象が出現する。資本の配分の不均衡が顕著になる。不良債権は25%から40%に増加している」と悲観的な立場を明らかにしている。
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胡耀邦はなぜあれほどの親日家だったか
蒋介石は日本の軍人を一貫して敬愛し、畏怖していた
黄文雄『日本人こそ知っておくべき 世界を号泣させた日本人』(徳間書店)
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まだ五万人ほどの台湾軍人が駐屯していた時代に金門へ行ったことがある。全島が軍事要塞。あちこちに歩哨が立ち、神経が張り詰め、ぴりぴりしていた。島の裏側に潜水艦基地があり、そこも見学し、洞窟の中で食事をした。わずか三、四キロ沖合が大陸の厦門市である。双眼鏡から厦門の砲台が見えた。
それから数年して(ということは二十年前あたりか)村松剛氏と台湾へ行った折、金門へ行く予定だったが濃霧のため飛行機が飛ばなかった。
八年ほど前にまた金門へいく機会があった。
驚いた。軍人は数千人規模に減っており、緊張感はゼロに近いばかりか、厦門との間にフェリーが往来し、すっかり観光拠点化していたのだ。軍人相手のバアも、ゲーム屋も大方は店じまい、替わりにグルメの海鮮レストランが花盛りだった。そのおり金門の県知事にあうと、「近未来に金門と厦門に橋を架けて繋がる」と発言したので、また驚かされた(馬英九政権はこの橋梁プロジェクトに前向き)。
直後に今度は福建省厦門へ行った折、コロンス島から反対に双眼鏡で金門を見た。ドイツの砲台跡の戦争記念館にも大きな双眼鏡があって、ここから見ると金門を警備する台湾兵士の表情まで見えるので、またまた驚かされる。
さて。
1949年、金門の古寧頭に毛沢東は一個師団の上陸を命じた。共産軍は100隻のジャンク船で上陸作戦を展開するが、台湾軍によって殲滅され、以後、中国は台湾軍事作戦を諦めた。
ただし金門を挟んでの国共内戦の終幕版=砲撃戦は長期にわたって続けられ、石原裕次郎主演で映画にもなった。読売新聞記者が砲弾にあたって死亡する事件もおきた。古寧頭記念館へ行くと、その展示もあった。
だが当時もいまも古寧頭記念館で一言も触れられていない「事実」がある。
それはこの毛利vs陶の厳島戦争のような、敵をいちど上陸させて殲滅するという、きわどい軍事作戦を立案し、蔭で台湾軍を指導したのが日本の軍人=根本博中将であったことだ。
近年、門田隆将氏がノンフィクション(『この命、義に捧ぐ』、集英社)を書いて、ようやく人々の知るところとなった。
また蒋介石の要請に応じ、中華民国の軍隊を整備し教育し立て直すために、日本の軍人が協力を惜しまなかった。それが「白団」。
他方、林彪や膨真から口説かれて、戦後の中国空軍をたちあげたのはほかならぬ日本の航空隊である。
林弥一郎以下300名は瀋陽の東南で捕虜となったが、林彪の懇請を受け、新中国誕生の陣痛期にあたると解釈し、パイロット、整備士、管制官などを養成した。
いま、この記念館が訓練学校のあった黒竜江省密山市に建てられており、昨春、高山正之氏らと現地に見学に行った。当時の飛行機の実物大模型が数機飾ってあった。
さてさて、本書はこういう知られざる日本人の物語である。それも近年は誰もかたることがなかった熱烈な日本人の熱血である。
歴史家=黄文雄の眼光がするどく随所に目配りされている。
胡耀邦がなぜあれほどの親日家だったか?
それは彼が当時の日本人医師の献身的努力によって命を救われたことがあるからである。稗田憲太郎は張家口中央委学院の院長として赴任し、わずか三ヶ月後の終戦により共産軍の医師とならざるを得なかった。
当該医学院は接収され「ベチューン医学院」と改称された。ベチューンはカナダ人医師だが毛沢東に気に入られ、記念病院が作られる。
稗田憲太郎は、その医学院の中心人物として「病理学、寄生虫学、組織細胞学、解剖学」などを教え、多くの医者を育てたのだ。稗田の活躍で多くの中国人が救われた。
稗田は1953年に帰国し久留米大学医学部長、日本学術院会員。1971年逝去。
1984年に胡耀邦が来日して、未亡人と娘等を中国大使館のレセプションにまねいたことがある。そのとき胡耀邦がこう言ったのだ。
「1946年にベチューン医学院に入院したとき、稗田医師の治療を受けた。わたしも子供もその恩を忘れることができません」
このような知られざる日本人の活躍が満載され、ぐいぐいと勇気が湧いてくる本になっている。
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(読者の声1)貴誌4月6日(読者の声4)の続編です。
宮崎先生のお奨めに従い、高橋洋一『借金1000兆円に騙されるな!』を早速読んでみました。この本はタイトル通り、国の債務残高が千兆円に迫り、「日本の財政は破綻する」とか「日本の国債は暴落する」とかの言説の嘘を数字を使って実証的に暴く説得力ある著作とみました。
説得力のないムード的言説のいいかげんさを「文系的」と表現されており、経済事象の正しい判断の基礎は数学的・理系的な思考力であるとされる。
この本の大部分は日銀の誤った政策への批判に費やされており、政府のやろうとしている増税政策にも批判の矢が飛ぶ。半日で一気に最後まで面白く読了しました。
さて、先の投稿で文系と理工系の議論に火をつけてしまったようですが、その議論自体を目的とする積りは毛頭ありません。
反例を個別に挙げれば文系、理工系を問わず優秀な人材は優秀であり、ダメ人間はダメであることは言を俟たない。従ってこれ以上この議論には立ち入りません。
ただ高橋洋一氏の立論の原則に従い、前回の小生の記述「文系の多い政治家」の部分を実証する必要性を感じて以下の通り調べてみました。又比較のためチャイナの例も示します。
日本の野田内閣の18閣僚の内、理工系出身は6名。医学系と農学系の2名を除く4名が本来の理工系となる。理工系率は22%。一方、かの国の中央政治局常務委員9名のうち文系は李克強のみ。残り8名が全員工学系出身である。理工系率は実に88%である。
この差だけからでも両国のGDP成長率の差を説明できるのではなかろうか。成長率8%の秘密は数値に明るく適切な指示を出せる指導層の厚さにあるとも言えそうではないか。
年率8%とは10年で倍増する数値である。日本は既にGDP数値で抜かれ、10年後の開きは倍になるのだろうか。
無為無策の日銀と増税しか頭にない政府のおかげで10年後の日本は失われた30年を嘆くことになるだろう。
(ちゅん)
(宮崎正弘のコメント)ちょっと大事な点があります。
中国の大学に文系も法経も殆どありませんでした。次の第六世代まで同じことで、
文系の大学、あるいは新設学部は、猫も杓子も大学へ行きだした、この十年のことです。温首相はちなみに鉱山学部、ですから宝石の鑑定ができます。李鵬も水利系、ですからダムの設計ができるし、江沢民はロシア留学の機械工学で、工場長あがり。あの時代の中国は法治国家でもないし、文学に親しむ余裕など、なかったのです。
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(読者の声2)慰安婦問題に関連して海外で日本人に被害が及んでいる、などの報道を見ると、日韓とも左巻きのマスコミが諸悪の根源であることがわかります。
1980年代に詐話師・吉田清治が語る済州島での慰安婦狩りの話をラジオで初めて聞いたとき、真に迫った発言に日本軍はなんてひどいことをしたのだろう、と一瞬思ったものです。
しかし、ストーリーがあまりにも不自然、中帰連(撫順で洗脳された「中国帰還者連絡会」)の「三光」といい勝負ではないか、こいつは謝罪屋(日本が悪いことをしたと謝罪することで注目を浴びたい人間)なのではないか、との疑問もありました。
その後、秦郁彦氏の調査で、済州島の人は慰安婦狩りを全面否定していることが明らかになったにもかかわらず、ソウルのマスコミは朝日新聞ともども日本叩きに使えるならと慰安婦問題をどんどんエスカレートさせ、勤労動員の挺身隊まで慰安婦と混同させる始末。
まともな国の男なら未婚・既婚女性を衆人環視のなか多数拉致されるなど恥辱だと思うものですが半島の人間はそうではない。
女性蔑視で「試し腹」(未婚女性の妊娠能力を確認するために親族に娘を犯させる)のようなことが当たり前。
モノクロ時代の韓国映画では妊娠できない女性は人間扱いされない様子がよく描かれていましたから、慰安婦問題は慰安婦だった女性(多くは女衒に騙されたか、親に売られたのでしょう)をネタに日本にユスリたかりをしようという魂胆がみえみえです。
下衆なチンピラの脅しと思えば間違いない。
元慰安婦の女性が泣き叫ぼうとも「泣き女」の演技ですから無視するのがいちばん。
韓国政府が文句を言ってきたらどんどん対抗措置をとればよい。
ビザなし渡航の停止、日暮里や新大久保で毎日でも不法滞在者を摘発し強制送還する、などいくらでも方法はある。電子部品の輸出を止めたらサムスンもLGも即死するかもしれない。
韓国では売春業はかつてはGDPの5%を占めると言われるほど盛んでしたし、キーセン観光全盛のころには大統領から外貨獲得の尖兵として感謝され、一流ホテルでもどこでも立ち入り自由の特別扱いがあったほど。
そんな韓国で2004年に「性売買禁止法」が制定されるや韓国人男性の海外(ベトナム・カンボジア・フィリピンなど)での買春が急増、韓国人女性の遠征売春(アメリカ・オーストラリア・日本など)も急増しました。
しかもアメリカでは日本人を騙って客を取るというコウモリ商法ですから始末が悪い。
かつての台湾もホテルのロビーには化粧の濃い女性たちがたむろしていましたから似たようなものですが、台湾人の遠征売春など聞いたこともない。
ネットで有名な話ですが、「国名、出張」で検索すると普通は個人のブログや旅行会社がヒットします。ところが韓国だけは違います。実際にグーグルやヤフーで検索してもらうとわかりますが、ヒットするのはほとんど全て性風俗店。いわゆる「デリヘル」(昔のホテトル)という無店舗型風俗店ばかり。
韓国では売春婦が「売春させろ!」と定期的にデモをするほどアグレッシブ。
現地調達の服を着てほとんど韓国人に見られていたのに、日本人を見る機会が多い職業ゆえか一目で日本人と見破り日本語で話しかけてくる。
15分7万ウォン(当時のレートで7千円)。韓国や中国は若さ重視ですから年増は3万ウォンだと客引きのおばちゃんがいう。
ネットで調べたら今でも店は残っており値段も変わらない。
インフレ且つ円高ウォン安の韓国で風俗は価格据え置きとなると当然のことながら日本に出稼ぎ売春に来るのでしょう。
しかも日本では熟女需要があるから韓国で現役を退いたような年増でも十分通用します。
半万年の民族の誇りを宣伝しながら、恥とか矜持といった言葉とは無縁の韓国人。
70年前の慰安婦の嘘ともども、現代の慰安婦の実態を広報する必要があるのかもしれません。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)凄まじい限りで。。。。。『歴史通』今月号に加瀬英明、呉善花さんの対談があり(「本当は怖い韓流))、日本と韓国の男と女の違い。まったく興味深い内容でした。
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 737回】
――鉄は熱いうちに打て、脳筋(のうみそ)は柔らかいうちに鍛えよ
『?水大戦』(施進鐘 上海人民出版社 1976年)
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冒頭の「編者的話」で「この本は物語の形式を借りて、この戦争の前後の経緯について少年児童向けに紹介している」と説明しているが、「この戦争」とは、じつは前回(736回)で扱った?水の戦だ。「少年児童向け」というだけあって、判りやすい文章に加え勇壮なイラストが多く、まさに手に汗握りながら「弱小な東晋軍が敵方の錯覚と油断を利用し、強大な前秦軍を打ち破った」情況、いいえるなら弱軍でも強軍を負かすことができる秘策が、少年児童の柔らかな脳にシッカリと刷り込まれるよう工夫されている。
「?水大戦の物語は、いまから1500年以上昔に遡る。西晋滅亡の後、我が国の歴史の上では何回目かの混乱の時に当たる。西北辺境の多くの少数民族は機に乗じて黄河流域に侵入した」と書き出された物語は、歴史上では五胡十六国の時代と総称される100年以上続いた混乱の時代のなかで「黄海の水際から新疆の最果てまで、四川盆地から蒙古の草原まで、広大な北部中国を凡て版図」とした「大秦大王」の符堅を登場させる。
じつは彼は西北辺境の異民族である?族の指導者で、前秦を「五胡十六国」のなかで最も広い国土と人口を擁する最高最強の国力を持つ国家」に仕上げた。
一方、「北方に居住する多くの漢族は、少数民族貴族の残虐な統治に耐えられず、潮のように長江を越えて南方に移住した」。そのうちの司馬一族が現在の南京を都とし東晋を名乗ることになる。
「南方に移住した北方の漢族は次々に武器を持ち、(東晋の)北伐軍に加わった。北方に残った老百姓(じんみん)も北伐軍と密接に連携して抵抗したが、東晋の統治者が動揺や妥協を繰り返したことで数次にわたる北伐も凡て失敗に終わった。東晋は北方の失地を取り戻せないままに」、とどのつまりは僅かな土地に逼塞せざるをえなかった。
ここで一気に決着をつけるべく符堅は大軍を動かそうとするが、皇太子の符宏が「陛下、なぜ、いま彼らを撃つのでございますか。もし破れでもしたら、人民を煩わせ痛め、そのうえ陛下の威信に傷がつきます。攻撃しないのが得策ではござりませぬか・・・」と諫めるが、「天下の大事、お前ら如き青二才に何が判る」ととりあわない。
かくて堂々の大軍が東晋撃破に進発するが、「時は盛夏。八月の太陽はジリジリと人馬を焦がす。天空には一変の雲もなく、地上には風も吹かない。まるで灼熱地獄のようで、兵士の喉の渇き、空腹に襲われ疲れきっている」。だが、指揮官は馬を駆って隊列を前後に行き交い「絶え間なく鞭を振るい、兵士に急速前進を強要する。兵士たちは遠い故郷を思い描き、心は悲憤に溢れ、さらに歩みは重くなる」。意気消沈で戦意喪失というわけだ。
前秦軍は長距離の行軍で人馬は共に疲労困憊のうえに、兵站線が延びきってしまい兵力集中は不可能。東晋軍は「有利なこの機に乗じて敵の先鋒を急襲し、彼らの戦意を殺いでしまえば、我が方が一気に主導権を握ることが出来る」と作戦決行だ。「老百姓は感激の涙と共に家畜や食糧を差し出し、前進する東晋軍を激励した」。勇気百倍で戦意旺盛。
かくして「多くの内部矛盾を抱え、社会に厭戦気分が満ち、表面的には強大だが実は脆弱」な前秦百万の軍勢に、「将卒凡ての心が一つになり、人民から熱烈な支持を受け」た東晋軍の八万は果敢に戦いを挑む。?水大戦の結末は、自ずから明らかだろう。
油断と驕慢は大国の病理であり最大の敗因。やはり成功は失敗の父だった。
《QED》
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