今、やるべきことは量的緩和、成長戦略、増税をパッケージで実施することだと思います。
もっともだ~。量的緩和、成長戦略など何一つやってないからね。
よけいなことばっかりやって、、、。
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2012年4月11日発行
JMM [Japan Mail Media] No.683 Monday Edition-2
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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』
Q: 増税しても財政再建はできない?
◇回答
□中島精也 :伊藤忠商事チーフエコノミスト
■今回の質問【Q:1258(番外編6)】
名目成長率を欧米並みの3~4%にしないかぎり、どんなに増税しても財政再建は
できないという意見(竹中平蔵氏:日経ビジネス2012年4月12日号)があります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20120323/230167/?ST=pc
この意見は正しいのでしょうか。
村上龍
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■ 中島精也 :伊藤忠商事チーフエコノミスト
チャーチルの「成長は全ての矛盾を覆い隠す」はけだし名言ですね。私の知人の欧州
委員会の局長も日頃から「成長しないと欧州債務危機などの問題は解決しない」と経
済成長の重要性を幾度も繰り返しております。しかし、ユーロ圏では相対的に余裕の
あるドイツ政府がなかなかこの考えを理解してくれない、すなわち、ユーロ圏周縁国
を救済するために、自ら機関車役を果たそうという気が全くないと嘆いております。
さて、「成長なくして財政再建なし」は日本についても当てはまります。竹中教授が
主張するように名目成長率3~4%を実現できれば、増税分に相当する自然増収が見
込まれるので、増税の必要がないというのは確かでしょう。しかし、問題はいかにし
て3~4%の名目成長を実現させるかです。名目成長率をデフレーターの上昇率と実
質成長率に分けて考えてみましょう。
先ずはデフレーターをいかに引き上げるか、いわゆるデフレ脱却の方策です。2月に
日銀が「中長期的な物価安定の目途」として当面は消費者物価上昇率1%を目指すと、
デフレ脱却の意志を公表しましたが、相変らず世間の日銀への批判は根強く、デフレ
の根源は日銀の消極的な金融緩和姿勢にあるという厳しい見方もあります。そこで、
日銀はインフレターゲットを採用してより大規模な量的緩和を実施すべしという声が
高まっています。
ただ、日本のデフレが長期化している原因ですが、やはりグローバル化の影響は見逃
せません。ポスト冷戦以降、お隣の中国から安価で大量の労働力が供給される事態と
なったことから、日本の製造業は中国に工場移転するか、日本に残るかの厳しい選択
を迫られてきました。日本に残る場合は価格競争上、圧倒的に不利ですから、賃上げ
などの余裕はありません。
一方で、生産性は上げなければいけませんので、単位労働コストは低下します。この
ように価格の重要な構成要素である賃金コストがデフレと深く結びついているのです。
よって、今後とも日銀が更なる金融緩和を推し進めたとしても、グローバル化に伴う
国際競争力の維持で製造業が四苦八苦している状況に変化がないとすれば、賃上げが
期待できませんので、デフレーターの押し上げはなかなか容易でないということが読
み取れます。
次にいかにして実質成長率を引き上げるか、これも頭の痛い問題です。日本は人口減
少社会に入って行きますので、成長の3要素(労働力、資本ストック、全要素生産性)
の1つである労働力が成長にマイナスに働いてきます。よって、この困難な状況でも
実質成長率を引き上げようとすれば、生産性を上げることが最も重要な施策だと思わ
れます。イノベーションを刺激する施策、いわゆる成長戦略ですが、規制緩和、市場
開放、人と技術への思い切った資源配分を実施することで潜在成長率を引き上げるこ
とが求められます。しかし、経済財政諮問会議などの場で活発に議論してきましたが、
ほとんど実現していないのが実情です。
このようにデフレーターや潜在成長率の引き上げは「言うは易く、行うは難し」の面
が強いのです。よって、理屈の上で、名目成長率を引き上げれば増税は不要というの
は分かるのですが、現実問題としてはそうは上手く行かないのが正直なところかと。
90兆円(実質96兆円)の予算で40兆円しか税収がないという異常な財政事情を
考えれば、増税無しで済ませるほどの余裕はないように思われます。
もちろん、名目成長率を引き上げるための努力、金融量的緩和、成長戦略などの施策
を積極的に推進することは当然ですが、さはさりながら3~4%の名目成長率を実現
するのが容易ではないという現実に照らせば、増税を避けるという選択肢は今の日本
の財政事情を考えるとないように思われます。今、やるべきことは量的緩和、成長戦
略、増税をパッケージで実施することだと思います。
伊藤忠商事チーフエコノミスト:中島精也
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