ニュー縄文塾通信(5) 中村 忠之 | 日本のお姉さん

ニュー縄文塾通信(5) 中村 忠之

ニュー縄文塾通信(5)

 縄文暦12012年3月7日

 編集発行者  中村 忠之

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     【 謹 告!】   
 3.11東日本大震災一周忌にあたり、犠牲者に謹んで哀悼
の意を捧げ、併せて同震災、並びに福島原発事故罹災者の皆
様に、心よりお見舞い申し上げます。
                  中村忠之 敬白
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           目 次
◎<近 況 雑 感>              中村 忠之
◎ !!時事 縄文!?爺々 冗文?? (5) 
    日本の技術は地に落ちたか?     中村 忠之
◎イノベーション主導企業成功の裏を探る   好打 献
◎日本人の意識の分裂            SK老

 

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         <近 況 雑 感>
3月5日は、二十四節気の啓蟄(冬眠していた虫が目覚め
て地表に現れるの時節の意)だったが、ここ最近、詳しい気
象の予知が可能なこととと、異常気象が多いため、こんな自
然の季節感などなくなってしまった。

 実は昨年一杯で、縄文塾通信の打ち切りと併せて、毎月一
回我が家で開いていた、旧中学同期生との「洋酒の会」も打
ち切らして貰った。ところがすでに3月、もうすぐ81回目
の誕生日が迫っている。

 それに3.11からはや1年、満身創痍のこの身体で何とか
傘寿という日本男性の平均寿命を昨年オーバー出来たのは、
「原爆被爆」のお陰説を公然とほざいて憚らないのだが、そ
れにもう一つ、いろんな意味でこの広島という地が、気候や
天災の面から見ても、日本一よい場所だったからだと信じて
いる。

 風水学的にも世界最高の霊地だという説を公言している人
もいる。もう少し生き永らえての話だが、機会があったらぜ
ひ触れてみたいものだ。

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!!時事 縄文!?爺々 冗文?? (5)


  日本の技術は地に落ちたか?
                    中村 忠之

 20年も続くデフレそれに円高によって、日本のものづくり
企業の業績は低迷を極めている。たとえば、パナソニック・ソ
ニーに代表される電気関連から、3・11の影響を大きく受け
た自動車業界までもが低迷している。遂に日本技術力の黄昏が
来たのだろうか。

 たとえば大の方では、福島原発事故に続き、先般のJX日鉱日
石エネルギー水島製油所の海底トンネル、日本の誇る海底掘削
機シールドマシンに海水や土砂がなだれ込むという信じられぬ
事故が起きた。

 一方小の方だが、日本の威信を賭けて設立された、マイクロ
チップメーカー「エルピーダメモリ」が、韓国サムスン・LP
電子の後塵を拝して行き詰まり破綻した。こうした悲観的事実、
本当に日本のテクノロジーは光を失ったのか?


 そこで言いたい。否! 決してそんなことはない。それでも
やっぱり日本のお家芸はものづくり。かつて李御寧(イ・オリ
ョン)は、日本人は小さいものづくりで優れているとして、
『「縮み思考」の日本人』というベストセラーを書いた。しか
し実際日本テクノジーは、大=スーパーマクロ・テクノロジー
からウルトラマイクロ・テクノロジーまで、その卓抜性は自他
共に認めるところである。しかもその殆どすべてが民需品であ
るところは世界に誇っていい。


「2番目ではダメでしょうか?」という言葉を跳ね返して世界
一のスーパーコンピュータ“ 京(けい) ”、それに小惑星
「いとかわ」探知機“ はやぶさ”で、日本の実力を遺憾なく
発揮したではないか?

 まずもうすぐ開業になる、「武蔵国」にちなんで634mと
いう世界一高い自立式電波塔“東京 スカイ・ツリー ”がある。
下町墨田区人口は大幅増だというし、すでに予約申込が30万
件を超えたという。
 
 また先日完成を見た、中央防波堤外側埋立地と江東区若洲間
を繋ぐ「東京ゲートブリッジ」だが、橋の全長=2.6km 重量
=約3万6000トン 高さはその下を通る大型船舶のため、 87.8
m(25階建てビル相当)という、すごい大型技術の集積である。

 実は先日両側の橋梁部分を繋ぐ中央部分の接続の状況をテ
レビで紹介していたが、固定用のいくつかのボルトとナット用
穴の許される誤差は2mmという超マイクロ・テクノロジーで
ある。こんな技術、日本以外いったい何処の国が持っていると
いうのだろうか。おそらく事例を挙げたら枚挙にいとまないこ
とだろう。

 このタワー&ブリッジのいずれにしても、東京都を襲うとい
われる首都直下型地震に耐える免震・耐震能力を持っていなけ
れば、建築できるはずがない。実は、こうした大から小までの
需要を支えるボルト・ナット/チェーン/ワイヤーなどの部品
が、あらゆるサイズのオーダーに対応できる国は日本しかない
のだという。
  
 ここで読み取れるのは、日本の技術は大と小が見事に融合・
一体化したもので、品質自体いまだに世界に冠たる実力である
事を再確認すべきであり、我々日本人、わずかなミスに落ち込
んでいる場合ではない。なにしろ日本人の技術は、あの東日本
大震災に当たって、世界中を驚嘆させたすばらしい人間性・絆
によってはぐくまれ成長したところにあるのだ。

 テレビでもそうだが、いつまでもバカらしい「なんとか中島」
の報道ばかりせず、日本が元気になるものを取り上げて頂きたい。


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 イノベーション主導企業成功の裏を探る

                     好打 献

 日本のソニー、パナソニック、シャープといった“弱電大手
企業”が次々と苦境に陥る中で、円高を始めとする「日本経済
の六重苦」とも言われる最悪の事業環境下にあって、同じ電気
産業でも強電の日立、東芝といった“総合電機大手”が健在振
りを発揮していることには、大きな理由がありそうです。

同じ弱電業界でも、米国のアップル、グーグル、フェイスブッ
クなどは、対照的な高成長、高収益を続けている現実に目を向
けますと、表面的に伺える一面と、隠れたもう一つの、意外な
要因という二面性に着目させられます。

 先ずは、イノベーション主導か否かという一点です。そもそ
も資本主義経済環境下では、イノベーション力を発揮した企業
には、根強い需要が付くことで企業成長を促し、報酬としての
高収益を取らせることで、技術や社会を進歩させる仕組みが存
在する訳ですから、それを欠けば、競争力を失うのは当然の結
果とも言えましょう。

 商品の付加価値に差がなくなる、即ち「汎用化」(コモデテ
ィー化)してしまうと、際限なき価格戦争を余儀なくされるの
で、原料費、労務費、物流費などの外的経済要因の影響を諸に
受け、有名ブランドといっても、已む無く敗北に追い込まれて
しまいます。商品に付加価値を持たせるとは、製品というハー
ドに、差別化されたユニークなソフトを盛り込むというイノベ
ーションが不可欠なのです。

 イノベーションを生み出すには、様々な要素がありそうです。
最初に思い付くのは、若い起業家のリーダーシップというポイ
ントを挙げておきます。昔なら、ソニーの井深氏、パナソニッ
ク創業の松下氏、シャープの早川氏たちや、コダックのイース
トマン氏らは、いずれも20代後半から30代前半で起業され
ました。

 現代では、米IT企業とて、マイクロソフトのゲイツ、アッ
プルのジョブズ、グーグルのペイジ・プリン両氏、フェイスブ
ックのザッカーバーグら各氏は、いずれも20代前半で起業し
ていますし、アマゾンのベゾスやオラクルのエリソン両氏も3
0代前半で創業しております。

 日本でも、楽天の三木谷、ユニクロの柳井、ニトリの似鳥、
日本電産の永守各氏らは、皆20代から30代中盤までに創業
しています。勿論大器晩成型のイノベーターも皆無とは言えま
せんが、あくまで一般論的に言ってみるならば、非連続な価値
創造に挑戦するリーダーは、失敗を怖れず大胆で気力を充実さ
せ、やや軽率ながら若いエネルギーを燃やすタイプの方がより
成功率が高いように思えます。

 但し、若手のリーダーが極めて短期で記録的な成長を遂げ脚
光を浴びながら、まさに、これからと言う時に地獄を見たケー
スも枚挙に暇がなく、その代表的な例は、光通信の重田、ライ
ブドアの堀江の両氏で、お二方とも20代前半で起業していま
した。

 破綻の決定的な要因は、イノベーションを実現した企業家に
取って、必要不可欠なサポーター、アドバイザーと言った指南
役を持たない猪突猛進型経営であったことなのです。ヒーロー
となるリーダーは若くても、その周辺にベテランなり、ご意見
番が居て、陰になり日向になって支えていることは、とても重
要な経営要素なのです。

 アップルを大企業に成長させたのは、半導体元祖企業フェア
チャイルドやインテルの幹部経験者だったマークラ氏の支えに
よるものだったし、グーグルにはサンやノベルの経営者を歴任
したシュミットが、そしてフェイスブックには、ペイパルを成
功させたシールらの中高年各氏が、夫々影で支えて居たことは、
あまり知られていませんが厳然たる事実です。

 日本でも、これまでは、井深+盛田、松下+高橋、本田+藤
沢の名コンビ相互の補完経営は有名でしたし、現代でも、楽天
とライブドアの成否を分けたのは、アドバイザーの質と量の違
いだと言われています。携帯ゲームのグリー社飛躍の影に、業
務提携したKDDIの中高年経営幹部が居たようです。

 このように、必ずしも「人」を社内に得なくとも、企業間の
提携などでも良いから、事業経営サイドに、冷静なご意見番が
不可欠であることは、間違いなさそうです。ベンチャー企業に
投資するベンチャーキャピタルが行う支援活動の中で最重要な
のが、若くて経営経験の無い起業家をサポートする有能な経営
メンバーを揃えることなのです。

 こうした観点からみても、「日本でベンチャーが興らないの
は資金が付かないから」「個人補償なしで銀行融資は得られな
い」「最近の日本にはイノベーターが居なくなった」とかの主
張は間違っており、ハイリスク・ハイリターン案件への投資は、
銀行ではなく、ベンチャーキャピタルの役目であり、シリコ
ンバレーのみならず、日本にもそうした融資チャンネルが無い
わけではないのです。問題は、そうした投資に値する会社が見
当たらないことにありそうです。

 もう一つの問題は、大企業化してしまった元ベンチャー企業
がイノベーションを起こすパワーを無くしてしまったケースか
(有能な若手が入社しないか、頑迷固陋なトップや無能管理職
が有能若手やイノベーションの種や芽を潰してしまっているの
か)、あるいは、折角の若者起業が零細規模や下請け中小企業
に留まり、リスクを取る有能な中高年支援者を欠いているとか、
と言ったところにあるのではないでしょうか。

 ヒューレットパッカード社のベテラン技師だったウォズニア
ック氏がパートタイマー(後に正社員)として、アップルの共
同創設者ジョブズ氏の片腕を担ったように、中高年と若者がタ
ッグを組むとか、大企業がもっと積極的に社内外のベンチャー
を育成する(ソフトバンク創業以前から孫氏を助けたシャープ
佐々木元副社長の例)などの波及進化が求められていると考え
ます。
 
 歴史に学ぶとするなら、かつて欧州を追い越した米国の20
世紀型優良イノベーションIT企業が、日本先端企業に敗れ去
った際、リストラに追い込まれた中高年たちが、既述の様にシ
リコンバレーの若手を陰で支え、21世紀型最新IT先端事業
で、再び世界のリーダーシップを取り戻したことを、想起すべ
きでしょう。若者の単騎独行を諌め、風向きを見極め、変化対
応の知恵袋となる中高年とのドッキングが、イノベーションを
成功させる鍵であることが、次々と証明されつつあります。

 昨今、中国や韓国と差別化出来なくなった日本の弱電企業に
しても、既述の様に前世紀末から今日に至る米国と同じ道を辿
る他無いのかもしれません。ここでは、新興のイノベイティブ
企業へのベテラン人材のシフトが問われています。

 それとも、社内創造力を、尚一層活性化させることでイノベ
ーションを成し遂げている総合電機大手企業のように、ソフト
力をつけて付加価値を上げることで、新興国に物真似を許さず、
差別化出来る様に再チャレンジすれば勝ち残れるでしょう。

それには、若者と中高年の連係プレーで、トップや投資家を揺
り動かす必要があります。あるいは、徒に規模を求めずとも、
コアビジネスを永続的に研ぎ磨き、革新し続ける老舗企業のよ
うに「適者生存原理」で創業の使命を全うするのも一手でしょ
う。

 要するに、ビジネスの世界にあっても、所詮は人間社会の基
本的ルールが支配しているのですから、二者択一の論理に囚わ
れてはなりません。拙速と巧遅、創造と守成、攻勢と防衛、変
幻と不易、突進力と制動力、若気と老成、荒削りと円熟、ヒラ
メキと胆識、型破りと器量、闘争心と協調性、知と情、等々、
いずれにおいても、二者並存、共生とバランスが必至の条件と
なります。

 現下の大乱気流時代に「イノベーション主導企業」として
「適者生存を全うする」には、時流を読み、“果敢にチャレン
ジする若いエネルギー”と、その影で、“賢く支えられる老成
の複雑系識見”が必要にして十分条件であろうかと思量する次
第です。 

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   日本人の意識の分裂

SK老

 この一年間、被災地の片隅から世の中を傍観していて気付い
たことがある。被災者と行政の乖離だ。都会人と地方人と言っ
たほうがよいかも知れない。

 前置きが長くなるが、お許し願いたい。

 困難の時にあっても社会秩序を保ち、共通の目的のために力
を合わせる日本人の能力(ガバナビリティ)は自然と伝統の中
で培われたものだろうと前回の雑感に書いた。ハンチントンは
その著「文明の衝突」(1998)で日本を一つの独立した文明圏
と見なした。

 言い換えれば、日本列島は、「ガラパゴス」同様、地理的に
孤立しており、その生態系はヒトを含めて独特の進化を遂げて
いるということだ。昔、日本海は多くの人間が行き来出るほど
広くはなく、文物の交流が可能な程度に狭かった。そのお陰で、
日本人は自分にとって好ましいものは入れ、好ましからざる
ものは拒絶する取捨選択権を持っていた。

その基準は、日本の自然と伝統に適しているかどうかだ。日本
の自然は神々の御在所であり、神々に連なる皇室を中心に日本
の伝統は紡がれてきた。そこに生まれた文化は、当然ながら、
地域限定であって、普遍性はない。そこで通用する常識や行動
様式もまた然り。

「日本の常識は世界の非常識」とは竹村健一の名言だが、彼
の言わんとするところは、だから「世界の常識に従え」ではな
く、「自らの非常識を自覚しろ」ということだろう。そもそも
世界共通の常識などというものは存在しない。常識とは地域限
定であり、時代限定であり、集団限定である。
それをあるかのように錯覚し、グローバルスタンダードとかグ
ローバリゼーションなどを喧伝している人はアメリカの催眠術
にかかっているだけだ。

 ところで、自らの「非常識」を強烈に意識し、世界の常識を
断固拒否している民族がいる。ユダヤ人だ。一見正反対だが、
日本人はユダヤ人に似ている。最初にそのことを指摘したのは
イザヤ・ベンダサンこと山本七平だ。両者の共通点は「一民族
一宗教」で、その宗教を布教することはない。

 最大の違いは、ユダヤ人が2000年近く(66~1948)国土を持た
なかったのに対して、日本人は国土を離れたことがない点だ。
その結果、日本人は第一次産業(農業・漁業・林業)の民とな
り、ユダヤ人は第三次産業(商業・金融・情報)の民となった。
また、それぞれの宗教について、ユダヤ人は自覚的だが日本人
は無自覚というのも面白い。

 ユダヤ人は、国土を失い(ディアスポラ=離散)、「他国」
の都市で暮らしていたため、自らの「非常識」を強烈に意識し、
「他国」の常識を拒否することによって、そのアイデンティ
ティを守り続けてきた。

 彼らは典型的な都市型人間だ。都市には自然がない。否、自
然を排除した空間が都市なのだ。都市型人間は自分を環境に順
応させるのではなく、自分に合わせて環境を作り出す。

 その特徴は、個人主義(人は神とのみ我-汝の関係にある)、
原理主義(絶対真理や正義を求める)、法治主義=人間不信、
自己中心主義、拝金主義(流浪の民にとって不動産は無意味)、
喧嘩好き(口も手も)、等々。

 こう並べてみると、日本人が正反対だということがわかる。
日本人は典型的な地方人・田舎者であり、自らのアイデンティ
ティについて無自覚だ。しかし、東日本大震災で大きな被害を
受けた地域の「庶民」が示した冷静沈着な行動の根底には地方
独特の共同体意識、集団主義、相互信頼、損得抜きの商売、等
々があったと思う。

 地に足をつけて生活をしている地方人は現実主義者であり、
自分を環境に順応させる。環境が変われば自分も変わる。地震
や津波は初めてではないし、放射能は初めてだが、実感として、
実害がない。

 そこで、震災直後の地方人は、まず今日を、そして明日をど
う生きるかを考えたはずだ。

 掘っ立て小屋を建てて雨露をしのぐ。壊れた家を修繕する。
畑に残った野菜を食べながら、種をまき、苗を植える。船・網
を修理して漁に出る。家畜にエサをやり、乳を搾り、卵を集め
る。

 要するに、できるだけ早く元の生活に戻ろう。これが昔なが
らの日本人の復興様式だ。土地を捨てようなどと考える人は圧
倒的少数のはずだ。

 ところが今回の災害にあっては、地方人の自助努力は、空中
に(高層ビル)住む都会人の善意(?)によって禁止され、一
部住民は強制移住させられ、地域共同体は崩壊の危機に瀕して
いる。

 津波の被害にあった地区に家を建てるな。
山を切り開いて住宅地を作れ。
放射線を浴びた農作物は食べるな、売るな。
米の作付けは止めろ。
家畜にエサをやるな。
魚介類を獲るな、出荷するな、食べるな。
汚染地区から離れろ。

これらの命令はすべて空中から発せられた。

 理想主義者である都会人は、この災害を機に、被災地をユー
トピアに変えようとしているかのようだ。しかし、それはギリ
シャ語でou(無)topos(場所)という意味だ。

 福島県知事は「放射能ゼロ」を目指すなどと言う。太陽系を
脱出する積もりだろうか。太陽系の熱源は核分裂(地底のマグ
マ)と核融合(太陽)だ。どこに行っても放射線からは逃れら
れない。そこで放射線ゼロの空間を作るとは典型的な都市型人
間の発想だ。

 ところで、避難先の住民はどのような生活をしているか。マ
スコミで報道されているのとは別の一面がある。いわき市内の
一部の例ではあるが、「ペット」のように大事にされている。
冷暖房完備、テレビ・冷蔵庫付きの住宅は無料。光熱水道料金
は東京電力負担。各種補償や手当で、赤ん坊から年寄りを含め
て5人家族なら、およそ100万円の現金収入がある。

 お陰でパチンコ屋の駐車場はいつも満杯。新聞の折り込み広
告はパチンコ屋が群を抜いて多い。(北朝鮮のテポドン開発も
弾みがつくことだろう。)競輪場も一日当たりの売り上げが前
年比1.7倍だとか。しかし、地元住民との交流はない。

 やっかみ半分だが、地元民は彼らにあまり好意を持っていな
いようだ。行政は避難者の要望には何でも対応するが、年来の
地元の要望は予算不足と利用に後回しだと不満だ。勿論、避難
者の気持ちも一様ではない。

 生活が保障されているなら、それよいではないかと思うのが
都会人型。社会から隔離されているのは嫌だ、早く家に帰りた
いと思うのが地方人型だ。しかし、原発関連企業は開店休業だ
し、田畑でも海でも仕事は許されない。帰宅すれば、現金収入
の大半は打ち切られる。帰るに帰れないのが現実だ。

 知らず知らずの間に、日本人の意識が大きく分裂しつつある
ように思えてならない。

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