政府が持っている通貨発行権を行使して「政府紙幣」(つまりお金)を刷りまくれと | 日本のお姉さん

政府が持っている通貨発行権を行使して「政府紙幣」(つまりお金)を刷りまくれと

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成24(2012)年1月23日(月曜日)貳
      通巻第3543号 増ページ特大号

 「2012年、世界経済に何がおこるか分からなくなった」
  ジョン・スティグリッツ(ノーベル経済学賞)も悲観論に傾き、ユーロ破産を予測
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 日本でも有名な欧米の経済学者やエコノミストが多いが、「三月までにギリシアはデフォルトに陥り、ユーロ共通債はその後に実現するだろう」と予測したのはビル・エモット(『日はまた昇る』の著者で英誌『エコノミスト』編集長)だった。

 ジョン・スティグリッツ(コロンビア大学教授。ノーベル経済学賞)が、日本で注目を集めている理由は、かれが政府紙幣発行を推薦しているからで、日本の景気回復には日銀券のほか政府が持っている通貨発行権を行使して「政府紙幣」(つまりお金)を刷りまくれと、と提唱する。

日銀、財務省が歯牙にもかけない議論をアメリカの権威が言い出したときは、日本の財務省が慌てたという話も聞いたことがある。

 さてスティグリッツ博士によれば、世界経済の均衡作用が加速し、それが2012年には政治的緊張を運ぶだろうと言う。

第一に米国経済の縮小と失業増大にもかかわらず政府支出が議会でおさえ混まれている。
 第二に欧州はユーロ救済の妙案がなく、統一通貨システムが崩壊の危機にたったこと。
第三に新興国家群は先進興業国家の消費の活性化に支えられていたが、これを失うと内国需要が弱く、経済が失速気味となる。

 「2011年という年は米国から楽観論が消え、アメリカンドリームを描くことさえ夢となり、JFKが言った『夢』をアメリカ人自らが放棄し始めた年として記憶されるのではないか」(アルジャジーラ、1月22日の報道から引用)。
 かくいうスティグリッツはつぎのように続けている。

 「2012年はもっと悪い環境がつづき、欧米の景気後退は引き続き、加えて異常気象、環境汚染が深刻化するだろう。オバマ政権の均衡予算は増税をうながし、失業を増やすが、環境プロジェクトなど長期的取り組みが経済政策に繁栄されるという長期プログラムが実現すれば、景気回復の可能性はある。太平洋を挟んだ両方(欧米)は、政治とイデオロギーに囚われすぎて、減税によるサプライサイド経済学の復活を阻んでいる」

 要するに財政支出を増やし長期雇用を重視する経済政策を拡大推進することが有効だろうと主張しているのである。
増税反対、雇用促進、予算による景気刺激策拡大、これらはすべて日本にもあてはまる。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成24(2012)年 1月23日(月曜日)
      通巻第3542号 
 サウス・カロライナ州共和党予備選はニュート・ギングリッチがおさえ


  茶会とエバンジュリカルの基礎票はなぜニュートに流れたのか?
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 もともとサウス・カロライナ州は保守の強靱な地域であり、リベラルな政治家は嫌われる。
 だからサウス・カロライナでは勝てるというのが、まだ望みを捨てないサントラムとロン・ポールの自信だった。意外にも、本命ロムニーに14%前後の大差をつけて、ここは保守派のなかの保守、ニュート・ギングリッチ(元下院議長)がおさえた。

 ニュートは州都コロンビアで記者会見し、「この結果はワシントンdcと東海岸のリベラルなものの見方を逆転した意義がある」とした。
 また「ロムニーのような金持ちが庶民の懸念は分からない。この流れは次のフロリダへ続く」と勝利の挨拶を結んだ。

 票が伸びなかったサントラムとロン・ポールも、結果にとまどいを見せながらも、次のフロリダ州への続投を宣言し、ロムニーを含む四人の主力候補はそれぞれがフロリダ遊説に向かった。

 フロリダは人口大州の重要拠点であり、共和党の党員だけでも190万、このうちの一割が1月31日の党大会で投票すると見られている。

金持ちと穏健派が多いため、保守派がすんなり勝てるか、どうかは疑問だが、現時点で共和党の合意は、もはや誰彼ではなく、オバマに勝てる候補選びに関心が移っている。


宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
      平成24(2012)年 1月4日(水曜日)貳
      通巻第3531号    
 未曾有の経済危機をのりきると自信満々の中国政府だが
  今度は低所得者向けマンションを3600万戸建設します、トサ
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 不動産価格暴落の歯止めにもっとも効果的な政策は?
それは低所得者向けマンションの増設である、と政策を変更した北京政府は一部の都市で(上海、広州、そして重慶市など)、郊外のあちこちに安普請マンションをつぎつぎと建設し始めた。
バブル崩壊と同時進行でつぎのバブルの準備でもするのだろうか。

 目的は二つあり、第一に社会騒擾を抑制する。「持つと持たぬ」とが貧富の差を激甚な格差をもたらし、民衆の不満は富裕層に向けられるからだ。暴動の抑止に低所得者向けマンションでごまかせるか、どうか。
 社会の安定を優先順位のトップに置くのは団派で、李克強らが、この政策の推進集団と考えられる。

 第二の目的は建設業界の不況入りを食い止め、ゼネコン、建材、内装、鉄鋼、クレーンなど建設機械産業の倒産を防止するためである。
この業界がはじき出すトータルは、じつに中国GDPの25%を占め、たとえば鉄鋼の消費は日米両国にドイツを足した消費量に匹敵するほどなのだ。
 つまり、この業界にはつねに刺激を与え続けなければいけない。
 既得権益の保護と景気浮揚を優先するのは王岐山らテクノクラート集団で太子党人脈と重複する。つまり低所得者住宅の建設ラッシュには、背後に次の首相を争う李克強と王岐山との権力闘争が露骨に絡んでいると考えられるのである。
 
 具体的計画では2015年までに全土に3600万戸を建設し、これまでマンションに住むことが不可能だった低所得者向けにリースする。
しかし3600万戸といえば、一世帯の家族が四人平均とすれば、1億4000万人であり、たとえ安マンションであれ、居住することが出来る。
 その数はインドネシアやバングラデシュ、パキスタンの人口に相当する天文学的国家プロジェクトである。
 さて、それで社会不安も暴動もなくなる?


 ▲待っているのは悲惨な近未来では?

 そうは問屋が卸すまい。
 なぜならマンションの購入が不可能な所得層はリースでマンションに住むことが出来るから大丈夫という政府の目論見は、はやくも潰えている。なぜ? 賃貸料さえ払えないのである。
(重慶で実際に月給2000元の人が入居した実例報告がある。家賃は540元。残り1460元から水道光熱費、管理費を支払い、携帯電話を支払い、バス代を負担するとなると、手元に残る食費は500元ていど。しかも入居したマンションは13平方メートル!)。

 どこも建設した後は閑古鳥が鳴いているとウォールストリートジャーナル(12月31日)が現場報告の記事を掲げた。

 第一に賃貸料が高い。第二に場所が遠すぎるので通勤が不可能に近い。第三に学校がない。公民館など公共の施設がない。第四に交通のインフラが整備されておらず、バス停の表示はあるが、実際のバスは走っていない。地下鉄が乗り入れるという計画の看板だけはなるが、いったい何時になるか、誰も知らない。
 
 一例としてウォールストリートジャーナルが見てきたのは重慶の典型プロジェクトだ。

 重慶の中心部から40キロも離れた農村を開拓して、55のマンション群を建設中。合計2万戸、なかには30階建ての高層マンションも含まれる。多くが2ベッドルーム(2DK)か1DKタイプだ。

 これは公共投資によるゴーストタウンの建設にほかならず、巨大な幽霊屋敷が都市近郊のあちこちに産まれ、要するに既得権益を保護するために、巨大な無駄な投資を繰り返し、投資効果は既存産業にカンフル注射を打ち続けているだけのことではないのか、とウォールストリートジャーナルは西側の投資基準、費用対効果から経済的に算定し、悲惨な近未来を予測している。