それは南シナ海で中国との間に領土問題を抱えるASEAN諸国に
とっても、モデルケースとなるかどうかは別として、勇気を与える
ことになっていた筈です。
しかしながら、大事は去りました。
しかも日本が折れたことでこの問題が終結したのではなく、
中国側が新たな攻勢に転じています。
「謝罪と賠償」要求がそれです。
これまで頑な日本側の姿勢を改めることができなかった分、
つまり面子を潰され続けた分、中国側の事後攻勢は苛烈な
ものになることでしょう。
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私は今回の事件を、歴史的事態と捉えていました。
恫喝に屈することなく「日本の司法に基づいて粛々と対処」
することで、まずは尖閣問題での良き前例をつくり、今後への
アドバンテージとすることができる、というのがひとつ。
そしてより重要なのは、中国の恫喝に屈しないことで、「特亜に
おもねる日本」という構造から脱却することができるという点です。
日本には脅しが通用しないんだということを世界に示し、敗戦
から一貫してきた望ましくない姿勢から一変する、ある意味
「戦後」を終わらせる、という日本史的な、正に画期的事態を
現実のものとする可能性を今回の一件は秘めていました。
温家宝が出てきた、外交部が「日中共同声明」を持ち出した。
……と来たあとに、フジタの社員4名が中国国内で逮捕され
たというニュースに接したとき、逮捕された中の人には申し訳
ありませんが、私は快哉を叫びました。
なぜならこれは北朝鮮の常套手段であり、また中国が、
米国との政治的取引のために民主化運動家を釈放したり
するのと等質なものだからです。
日本が折れなかったからこそ、中国は米国並みの扱いで
対処するしかなかった。要するに中国の外交政策の中で、
日本の格を上げざるを得なくなったということです。
しかしながら。……もうやめましょう。愚痴になるだけですから。
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いまこのブログを読んで下さっている皆さんも怒りと失望で
やるせない気持ちになっていることでしょうが、
どうか察して下さい。
私は、私の生あるうちに、今回の一件で日本が初志を貫徹し、
より良い日本へと一歩前進することを見届けたかったのです。
(良かった。これなら次世代にしっかりとバトンを渡せる。
先代にも少しは顔向けができる)
と安堵できる状況を、自らの目で見ておきたかった。
無念です。