アジアの街角からー 『シロアリ』の駆除を ─── 紋起さん | 日本のお姉さん

アジアの街角からー 『シロアリ』の駆除を ─── 紋起さん

坂の上の雲を ▽▼
☆ 『シロアリ』の駆除を ───────────────── 紋起さん

11月27日に行われた大阪のダブル選挙の結果は、橋下包囲網側の完敗であった。

知事選では、維新の会の松井一郎氏が200万票、対する包囲網側の倉田薫氏が120万票であり、市長選では、橋下徹氏が75万票、包囲網側の平松邦夫氏が52万票と大差での橋下側の勝利であった。

一体この選挙は、どういう勢力を代表する者同士の争いだったのだろう。
そのことに関しての論述が殆どないのが全く不思議である。週刊文春や週刊新潮と

いう全国屈指の売上部数の週刊誌を、まるで選挙の怪文書として使用することまで行って橋下徹という特定候補を葬り去る必要性がどこにあったのだろうか。

だから、その裏で動いた組織等を調べかつ論じる事もなく、単なる橋下氏対大阪市役所利権団体の勢力争いに矮小化することは、ことの本質を隠蔽するためになされているように思えるのである。

この件に関連する先日の稿「自治体変革も西からとなればよいのだが」でも書いたように、既存政党=民主、自民、社民、共産--が一丸となって橋下維新の会に立ち向かったのだが、

共産党に至っては、当初から進めていた独自候補の擁立を断念して平松市長の支援に回った。共産党が大阪市長選で独自候補を立てないのは18年ぶりだと新聞等は報じている。-^ーーー選挙に関するデータを見ておこう。

まず投票率だが、

大阪市長選挙は、40年ぶりに60%を超えた。前回の2007年に平松氏が立候補して関心を呼び43.6%にアップしたのだが、今回はそれを17%も上回った事になる。

今まで、投票所に行かなかった人達が大挙して投票したと言う事だ。知事選の投票率は、52.9%で前回より4%ほど向上した。まあ、府民・市民の関心があったと言う事は確かである。

毎日新聞社の出口調査により有権者の投票行動に関するデータを見てみよう。

「府内の投票所60カ所で計3000人から回答を得て、このうち大阪市長選に
ついて分析した。性別では男女それぞれ6割が橋下氏を選んだ。年代別では、20代、30代の7割が橋下氏を選び、40~60代でも6割が支持した。

平松氏は70代以上でほぼ互角の支持を得たにとどまった」ーーー新聞の分析
を簡略化して言えば、若い人が橋下氏を支え、包囲網側は、高齢者が支持して
いたと言う事である。

支持政党との関係で見ると、

「橋下氏が民主、自民支持層のいずれも5割近くに食い込み、無党派層も6割を取り込んだ。大阪維新の会支持層のほぼ全て、みんなの9割近くを固めた。

自主投票とした公明の支持層からも4割の支持を得た。平松氏は共産支持層の8割に浸透したが、民主、自民の支持層では5割にとどまった。社民支持層は9割近くを取り込んだ。」ーーー包囲網側の政党支持者で、平松氏を強く支持したのは、社民党と共産党の支持者で、民主、自民支持者のうち半分が橋下氏に流れているのである。

投票に行った有権者の支持政党のシェアは、「支持政党は、維新が全既成政党を上回り、2割近くに達した。自民、民主、公明、共産と続き、無党派は4割だった」ーーーということだから、大雑把に言えば、無党派40%、既存政党40%、維新20%となり、橋下氏は62%位の得票率だから、維新の支持票と残り無党派層の6割と包囲網側の半分を得て当選した勘定となる。

だから、無党派層が投票に行ったから橋下氏が当選した訳ではない。包囲網側が勝つには、民主や自民の8割近くを固めねばならなかったが、それだけの力はなかったのだ。

なぜ、包囲網側の黒幕が週刊文春や週刊新潮らの週刊誌をも動かせる力がある
のに、大阪市の有権者を動かしえなかったのかと言えば、動かすに足る政策が
なかったということに尽きる。

包囲網側の攻撃手段は、橋下氏の政治姿勢に対して「独裁」「ファシズム」であり、怪文書並の出自だった。政策らしいものは、殆どなかった。

それに対して、橋下支持派は、矢張りこの4年近い知事としての実績--印象を含め--と話題になった度合いから、この男なら何かやってくれると信頼していたのではないだろうか。

逆に包囲網側では、知事時代の実績からこの男にやらせてはならないと考え、怪文書まがいの週刊誌発行に手を染めたのであろう。

橋下知事の実績の一部を以下に示す。

───職員給与・賞与・手当・福利厚生カット、退職金カット--全国初--→1300億円削減

───一般施策の経費見直し、建設事業費カット→1100億円削減

───大阪府負担の借金残高を3100億円削減、太田やノックが実施の赤字隠し手法を中止

───天下り先大阪府出資法人44→28に、赤字垂流し施設28を廃止・見直し

───府の全公金支出・予算要求をHPで公開(全国初)、情報公開度ランキング28→1位に

───府の監査に民間が参加できるようにしてチェック機能が向上
───東京都と連携して民間企業と同じ複式簿記の会計制度を導入
───知事交際費を廃止--全国初--

───国の直轄事業負担金制度見直しを訴え国に認めさせる

───関空と伊丹空港の経営統合を国交省に認めさせた、国交省の「大戸川ダム」計画を建設中止に追い込む。--国交省計画が知事の意見で凍結された、全国初--

───街頭防犯カメラ1700台・LED防犯灯1940器を設置、警察装備強化、青色防犯パトロール、 府庁「青少年・地域安全室」の新設など、様々な治安対策を実施

───結果、大阪府の犯罪件数は平成19年→22年で24%減少。全国の17%を上回る成果

───ひったくり件数ワーストを35年ぶり返上、街頭犯罪件数ワーストも11年ぶりに返上

───公共事業から暴力団排除(独自規定)を盛り込んだ「大阪府暴力団排除条例」を制定

───弁護士特性を活用、自ら草稿作成のナマポ対策の貧困ビジネス規制条例制定(全国初)

───部落解放同盟に40年間無償貸与の「大阪人権センター」を解体。各種同和予算の削減

───教員に君が代の起立斉唱を義務づける条例制定(全国初)。朝鮮高級学校補助金を停止

───公立学校に塾講師等を派遣し無料補習授業。全国学力テスト小学校部門の大阪府順位は41→31位に

───大阪府議定数109から88に削減案を可決

これらの項目を見ると、支出の削減が多くある事が分かる。

橋下知事は、収入に合わせて支出する収支均衡化作業を、一貫して行っているように見える。

そのやり方は、それまでの知事がやれない領域までバッサリ削る前代未聞のもの
であった。

そのやり方に、悪寒を感じる層と、反対に喝采をする層とがあったことは確かである。

支出削減の具体的例として、「ワッハ上方」と言うお笑いに関連する資料館の廃止があった。

大阪はお笑いの中心だから、漫才や上方落語の資料を収集して保存・展示する場所を大阪府がビルの部屋を借りてお笑いの資料館として運営していたのだが橋下知事が就任直後の見直しで廃止したのである。

お笑いの芸人が、街角に立って反対の署名運動をしていたが、廃止は実行された。

テレビで知事と顔なじみの人達が反対を唱えているのをどう処理するかと思っていたが、廃止は実行され、公平にやるなという感じを持った。

この種の公費負担は、必要がないと思う。

もしどうしても必要なら、それなりの高給を得ているタレントなのだから、皆の寄付でそういう資料館を作り、運営すれば良いだけの話である。

それを安易に公的費用で負担させて、当たり前と思っているところに、この国のお上への依存体質が露呈しているのである。

国の政治では、40兆円の税収で90兆円を超える予算を平気で組み続ける感性なのだ。

こう言う国家運営が長く続くはずがないことは、全国民が分かっているのに、この袋小路から抜け出ることが出来ない。

その理由は、社会保障を切る勇気がどの政治家にもないからなのだが、橋下徹氏にはそれがあるのかも知れないと見える。


橋下市長が誕生し、大阪府と大阪市との二重行政が解消され、一方で大鉈を振るって経費削減や生活保護の認定基準の厳格化などがなされたら、戦後から続いてきた社会のシステムの全面改訂となる。

橋下包囲網は、この全面改訂を阻止したいグループで形成されているのではないだろうか。

既存政党の根っ子はバラマキである。

党により、税金をバラマク対象が少し異なってはいるが、赤字国債を大量に発行してでもバラマクことが党の存在意義となっている。

この面に関しては、共産党も同じ思想である。

しかし、橋下氏は税収を超えてのバラマキは次世代へのツケだと考えて極力止めようとしている。

橋下徹氏のブレーンは、作家で元経済企画庁長官堺屋太一氏とマッキンゼーの共同経営者を経て現在慶応大教授の上山信一氏であるという。堺屋太一氏との共著「体制維新──大阪都」は、内容の評判も高い。--まともなブロガーと私が思っている「Chikirinの日記」で、この本を推奨している。特に堺屋太一氏の時代を読む目の鋭さと確からしさを--
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20111115


堺屋氏が橋下氏を推奨する理由は「この国の政治家の多くは税金を使う側に立ってものを見るが、橋下氏は納税者側に立って物事を見るである。この視点の転換が、これからの日本に非常に重要だと思われる。1970年代からの日本は金の有り余る状態での政治であった。

その具体的な形が、かんぽの宿であったグリーンピアであったり、農道空港であったり、とにかく有り余る金を使ってその場さえよければと言う思想でやってこれた。

そして、子供手当も、高校無償化も、高速道路無料化・農家戸別補償も、形こそ違っているように見えるが、根本思想は、その流れのままでやっているのである。

また、役人は自分の権限が増えるのだから、この路線は絶対に失いたくないものであろう。

上山信一氏は、大阪市の改革を平松市長に敗れた関潤一市長の下で行っており
平松氏も後退こそすれ上山氏の敷いた路線で行ったので大阪市の財政は改善し
ている。

上山氏も納税者の立場でものを見る事が出発点である。現在は、維新の会の顧
問となっているが、大阪市の改革に再度チャレンジするのではないかと見られている。

橋下氏の改革は、納税者の視点での改革であり、包囲網側はたっぷりの税収を使う側の視点で考える組織の集まりであった。この差を選挙民は本能的に見抜いているので、若者は橋下支持が多く、70以上の高齢者は、平松氏支持が増えていたのである。

若者に過大な負担が掛る現状の社会システムに対して、変革行動すべきだと若者に警鐘を鳴らし続けている評論家の城繁幸氏が、大阪ダブル選挙の結果を見て、少し光明が見えたと評した意味も、現状の「高齢者の高福祉、若者の高負担」解消の小さな一歩と見たからであろう。

橋下氏が、大阪市役所の役人を評して、「シロアリ」と言ったらしいが、それは現在の霞が関と永田町の役人と政治家にも当てはまる言葉であった。


先ず、

大阪市から「シロアリ」の駆除を成し遂げてくれて、それが全国に拡散する事を切望している────。