「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23(2011)年12月1日(木曜日)
通巻第3505号
中国、三年ぶりに預金準備率を0・5%引き下げ
市場に610億ドルの資金余裕、不動産暴落を食い止める効果ありや?
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11月30日、中国人民銀行は預金準備率をリーマン・ショック以来三年ぶりに引き下げた。不動産価格下落ならびにデベロッパーの倒産を回避させるために、つなぎ資金の提供が主な目的とされる。
理論的数値を計算すれば、0・5%の引き下げは610億ドル(3900億元)の通貨供給が見込まれる。
とはいえ、預金準備率は21%で高止まりしており、香港のHSBC,スタンダードチャータード銀行などは、「一月に再度、切り下げがあるだろう」と予測している(ウォールストリートジャーナル、12月1日)。
さて、この決定は西側六カ国中央銀行のドル資金提供共同声明の数時間前に行われたところに奇妙な暗合がある。
当然、中国の金融情報筋は、FRB、ECB,スイス、英国、カナダ、日本が資金供給の協調体制を組むという動きを確実につかんでいて、先取りに動いたと考えられる。
しかし中国の中央銀行が西側と同じ動きを過去にしたことがない。
直前までにも王岐山・副首相は中国の金融緩和の可能性をしばしば発言してきた。景況感が50%を割り込み、沿岸部の製造業に倒産が顕著となって、ここのユーロ危機による欧米経済の沈降が加わり、中国としては、さらなる通貨供給拡大に迫られている。
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坪内隆彦『維新と興亜に駆けた日本人』(展転社)を読んで
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書評 玉川博己
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本書は坪内隆彦氏自身が編集長をつとめる『月刊日本』に連載してきた「日本文明の先駆者」の中から抜粋されたものを中心にまとめられたものである。私もこの連載はずっと愛読しており、以前からその出版を待ち望んでいただけに期待に違わぬ内容である。
坪内氏は3年前にやはり『月刊日本』誌に連載した「アジアの英雄たち」をまとめた『アジア英雄伝-日本人なら知っておきたい25人の志士たち』を出版しており、大変好評であったが、今回の著書はその姉妹作ともいうべきものである。
さて本書は西郷南洲、杉浦重剛、頭山満、内田良平ら明治維新以来20人の先駆的思想家の列伝となっている。筆者によれば「本書で取り上げる人物の多くは、肇国の理想を現代において実現しようとした先駆者である」という基準でその思想と行動を簡潔明瞭にまとめている。
上記にあげた西郷南洲などはまだ多くの伝記があってよく知られているが、それ以外のたとえば荒尾精や今泉定助などは戦後の日本ではほとんど忘れ去られた思想家である。また来島恒喜は狂信的テロリスト、植木枝盛はフランス革命風の自由民権運動家として誤った見方が定着してきた。
植木枝盛についていえば確かに戦前から明治維新を絶対主義的変革とみなし、きたるべき革命はまずブルジョア民主主義革命を経て社会主義をめざすという講座派マルクス主義(日本共産党の公式史観である)の立場からは、自由民権運動のヒ-ロ-として位置付けられ、その国権主義的側面は意図的に無視され、そういう植木枝盛像は戦後も学校教育の中で定着してきたのである。
坪内氏も、とくに戦後家永三郎による誤った植木枝盛論を鋭く批判しているがまさに正論である。自由民権運動とはその根底に日本の独立の希求と熱き国権意識があった。それゆえにその流れは玄洋社などに受け継がれ、また北一輝にも大きな影響を与えたのである。
昭和維新運動の特徴は社会変革意識である。大川周明も北一輝もまた他の思想家も決して資本主義を維持しようとしたブルジョワ反動主義者ではなく、むしろ資本主義の欠陥を社会主義的に是正しようとしたのである。
これこそ昭和維新運動の本質であった。
坪内氏もその先駆として維新の推進力となった水戸学には、何よりも社会の矛盾がもたらした貧富の差など今でいう格差社会に対する憤りがその根底にあったと述べているが、それゆえに水戸学は維新革命の原動力たり得たのである。
今泉定助の「世界皇化」論はかつて我々の民族派学生運動においても少なからぬ信奉者がいた。古書店で探し求めた今泉定助の著作はよく読まれたものである。私にとっても懐かしい。戦後においては今泉定助の思想は大川周明と同様に大東亜戦争における侵略戦争美化イデオロギ-と片づけられているが、もっと再評価されるべき思想家ではないだろうか。
坪内氏は明治維新以降における日本の革新思想の源流が肇国の理想と国体に対する信念にあったということを主張しており、それが本書を貫いているバックボ-ンであるが、私も全く同意したい。
国体意識なき政治思想、改革論などは歴史の屑箱に投じられるのみである。本書は是非とも若い世代の読者に読んでもらいたいと思う。
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(読者の声1)貴誌3504号「GV2氏(読者の声1)」に対しての貴見「戦前、世論をリードしたのは新聞ですし、その先頭にいたのは朝日新聞です」
と書かれましたが、その根は非常に深く古いものです。
大正七年に大阪朝日新聞が鈴木商店が米の買占めをしているというデマ記事を連日書き連ね、それを真に受けた民衆が鈴木商店に押し寄せ焼き討ちしました。
後で事実無根と分かると簡単な訂正記事で済ませました。一般市民を犯罪を犯すようにそそのかしたのですから、解散させるか、少なくとも3年間の発禁処分くらいにすべきところだと私は思うのですが、なにもなかったようです。
日清戦争後の講和会議に対してもマスコミが領土割譲を要求するよう国民を先導かつ煽動しました。
その結果、遼東半島を要求せざるを得なくなりました。当時の日本政府は領土を割譲させれば、国境警備のため多額の出費があるので、要求したくなかったのです。
三国干渉でほっとしたところ、その返礼としてロシアが旅順に軍港を造りました。あれがなければ、マスコミが煽動しなければ、日露戦争は日本の楽勝で、樺太全島と北満州までの鉄道利権が日本のものとなっていたはずです。
さて貴誌3503号(読者の声2)で「MU氏」が「貴誌3502号の『ST生様』への宮崎先生のコメントに関して、です。人民元暴落に関しては、以前から(最近のメルマガでも)言及されておられましたね。そうなると、我が国はますますデフレでシナに工場を持って行かれませんか?」
と書かれましたが、その心配はありません。
次の三つのことが起きるからです。
1.中国のインフレ激化
2.人民元の為替レート低下
3.ただしインフレ上昇率のほうが為替レートの低下率より大きいので、輸出価格は上昇し、中国企業の価格競争力は下がる。
後者(3)の理由は(a)中国の対外債務が少ないので為替レート低下は劇的にはならない。(b)代替輸出国がすぐには大きく育たないので中国企業がインフレ分を価格転嫁してもすぐには輸出が減らない。したがって程度の差はあれ、中国のインフレが世界中に伝播し累積債務の重みを、或る程度、軽減します。
(ST生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)先日、VOAは王岐山訪米の折の米中非公開会議で、王副首相が「向こう五年間に10兆元規模の財政出動をまたやる」と発言し、アメリカ人高官を驚かせたそうです。
五年間で10兆元というのは、年平均で2兆元。日本円換算26兆円ですが、購買力平価から言って、100兆円規模の財政出動になります。王岐山は次期政治局常務委員の有力候補として、まだ名前が残っており、辣腕家ぶりは世界のバンカー、財務官僚が認識しているところですから、思いつき発言とは言えないでしょう。
となると、つまり王岐山のいうように中国がまたまた財政出動をしてくると、貴見のインフレ激化、しかし輸出競争力は下がり、かつ人民元下落は緩やかという予測はあたりですね。
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(読者の声2)貴誌前号新聞をめぐる議論ですが、朝日新聞が戦前と戦後で価値観が違うといって非難する人がいます。
しかし新聞に信念を求めるべきではないと思います。マスコミの本質は金めあての「かわら版」屋ですから。過大評価です。
朝日の価値観ですが、戦前は健全な民族主義の価値観です。
戦後の価値観は、ソ連、そして中共の工作機関同様の売国利敵方針です。
朝日が戦争を煽ったという議論ですが、戦後の朝日の反戦価値観が戦争中の督戦価値観と違うことを非難しています。
反戦が正しいと言う価値観で、戦争中の督戦報道を非難しています。これは受け入れられない。
というのは、戦争中は督戦報道が正しいのです。世界中のマスコミは皆そうです。米国のNYタイムズ、ソ連のプラウダなど確認するまでもありません。
したがって朝日新聞はだから変節よりも、戦後占領軍に屈して売国報道に明け暮れてきた事をストレートに非難すべきです。
戦前、対日戦争を煽ったのは米国です。
1937年の支那事変前から米国では対日憎悪が大宣伝されていました。日本側では昭和天皇から一般庶民まで戦争を望む者はいませんでした。
特に軍人は対米戦をもっとも恐れていました。すでに支那事変が始まり泥沼化していたからです。
日本の戦争は自衛戦争です。だから勝算がなくても戦うのです。
1939年の超大国ソ連の恫喝に、屈せず断固戦った小国フィンランドがよい例です。
「人間は負ける戦争を何故するのか」が分からないと歴史は理解できません。
(東海子)
読者の声4)世界各国の外征軍は兵士の性処理対策を、それぞれの国内の売春関連法に基づいて行っていた。日本は公娼が認められていたので、慰安所がその戦地での営業として行われた。
アメリカは売春が合法でないので、現地調達方式をとった。ベトナムでは、米軍は現地の売春宿をキャンプの中で営業させ、その管理は旅団長責任で行っていたことが、スーザン・ブラウンミラーの "Against Our Will: Men, Women and Rape" というベストセラー
本に書かれている。(P.95)
日本軍は兵士の性病対策に真剣に取り組み、世界各国の民間、軍の売春、性病管理のデータを集めてこれになったたことを証明する文献が、今回紹介する軍医少尉麻生徹男氏の提言論文『花柳病の積極的予防法』である。
これは前回紹介した麻生博士お嬢さんのまとめられた『慰安婦医療の係わりについて』(梓書院)の第2章として収められているものである。 これを読むと、日本軍は世界で最も良心的にこの問題に取り組んでいたことをうかがい知ることが出来る。そもそも慰安婦強制連行などという事は、法的にも社会状況からもありえないことであるが、実際日本軍の慰安婦管理自体がきわめてまじめに行われていた。
非難されるいわれは全くないのである。
文玉珠という元慰安婦は軍事貯金の払い戻しを求めて訴訟をしたが、貯金原簿が見つかり、なんと2万6千百45円の残高があることが判明した。2年半で預金がこれだけ預金したのだから少なくとも月千円は稼いでいたことになる。これは軍曹の給料30円の30倍以上である。これを「セックス・スレイブ」と呼び、アメリカ議会で非難決議を出したのだ。
これは「国際的な一大詐欺事件」と呼ぶべき犯罪行為といわなければならない。
下記の通りサイトに載せ、海外発信した。
(発信する会 茂木)
Following Dr. Amako's paper titled "Relationship between 'Comfort Women' and 'Medical treatment'," which was released on October, 2009 on our website, I would like to introduce to you Dr. Aso's paper titled "Positive Method for Prevention of Venereal Disease".
Dr. Aso, Dr. Amako's father, was an Army Medical Doctor attached to the 14th Clearing Hospital of Eleventh Army. He submitted this paper to a meeting on military medicine in Jinjiang on June 30, 1939.
His paper surveyed the rate of sexal desease inflection in militaries of Europe and America and proposed positive or proactive methods for prevention of veneral disease within the military. Dr. Aso's paper clearly showed that prior to World War II, prostitution and the spread of veneral disease were not problems limited solely to Japan but problems of great concern faced by all militaries.
Thus,“comfort girls” as noted in an official US document (United States Office of War Information, Psychological Warfare Team Attached to U.S. Army Forces, India-Burma Theater), were nothing more than prostitutes or professional “camp followers”and their presence should be judged within the context of prostitution at that time. If Japanese Army "comfort women" are to be called "sex slaves", then what should prostitutes who served to European and Amercan armies be called? Double standards should not be permitted.
Summary: http://www.sdh-fact.com/CL02_1/81_S2.pdf
Full text: http://www.sdh-fact.com/CL02_1/81_S4.pdf
Author profile: http://www.sdh-fact.com/CL02_1/81_S3.pdf
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