創業者一族に絶対服従の企業風土がある会社では、同じような問題が起こっていないか?
毎日新聞 11月22日(火)11時27分配信
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大王製紙の井川意高前会長の自宅に入る東京地検の係官ら=東京都渋谷区で2011年11月22日午前10時25分、久保玲撮影
総合製紙大手・大王製紙の前会長による子会社からの巨額借り入れ問題で、東京地検特捜部は22日、私的な借り入れで子会社に巨額の損害を与えた会社法違反(特別背任)容疑で前会長の井川意高(もとたか)容疑者(47)を逮捕した。あわせて東京都内の自宅や愛媛県四国中央市の実家など関係先の捜索を始めた。前会長が子会社から引き出した計約106億円の大半は海外のカジノ賭博で使われたとみており、使途の全容解明を進める。
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逮捕容疑は、井川前会長が兼務していた連結子会社4社の会長としての任務に反し、今年7~9月ごろ、子会社側から7回にわたり無担保で計32億円を指定した口座に振り込ませ、同額の損害を与えたとしている。
前会長はこれまでの特捜部による任意聴取に対し、「資産があるので株などで弁済できると思った」などと積極的な犯意を否定しているとみられる。
同社関係者によると、前会長の借り入れは子会社7社から計26回にわたり計約106億8000万円に上る。子会社の幹部らに「明日までに自分の口座に振り込むように」などと一方的に指示し、大半をマカオなどの海外でカジノ賭博に流用した疑いがあるという。
一連の巨額借り入れが9月に問題化した後、同社が設置した特別調査委員会に対し、前会長は使途について具体的な説明を拒否した。一方で、前会長側は子会社と関連会社の株による弁済を申し出ていたが、資産評価の難しい非上場株が含まれることなどから、同社は受け付けなかった。その結果、同社は、現金で弁済されている借り入れ分を除き、85億8000万円を損害額として算定して、21日に刑事告発した。
1943年創業の同社は、井川家の伊勢吉氏、高雄氏、意高前会長の創業家3代が社長を務め、親族も経営の主要ポストに就いてきた。しかし、巨額借り入れ問題で意高前会長が9月に引責辞任し、高雄氏は10月に顧問職を解かれている。
総合製紙大手・大王製紙の井川意高(もとたか)元会長(47)=9月に辞任=による巨額借り入れ問題で、元会長が4月、父親の高雄顧問(74)から叱責され、約20億円を子会社側に返済していたことが同社関係者の話で分かった。元会長は2カ月後の6月、社長から会長に就任したが、取締役会では巨額の借入金は問題視されなかったという。
顧問は24日、毎日新聞の取材に「元会長の借り入れ問題は、3月の時点において大王製紙の取締役らも知っていた」と文書で回答した。同社は、内部通報があった9月に問題を把握し、調査を開始したと説明しており、認識の食い違いが浮上した。
また、同社の特別調査委員会に対し、子会社側が「元会長の指示のままに貸し付けていた」と答えていたことも判明。特別調査委は、問題の背景にオーナー企業特有の甘い体質があったとみて、詰めの調査を進めている。
同社や関係者によると、元会長は子会社7社から9月までに計83億5000万円を無担保で借り入れた。これとは別に、子会社数社から10年度に約22億5000万円を、顧問が代表取締役を務める関連会社「エリエール商工」(香川県)を迂回(うかい)する形で個人口座に入金させたという。
だが、顧問は今年3月ごろ、この迂回融資を把握し、元会長の株で弁償するよう叱責。元会長は個人で所有する大王製紙以外の株を現金化して約20億円を返済したという。
顧問は大王製紙創業者の長男で、社長や会長を歴任し、現在も社内に強い影響力を持つとされる。取材に対し顧問は「元会長個人の問題」としつつも、「父親として深く道義的責任を感じている」と文書で答えた。
同社は特別調査委が今月中にまとめる報告書を受けた上で、刑事告訴を検討している。
東京地検特捜部も会社法違反(特別背任)の疑いがあるとみて、同社側が任意提出した資料などを慎重に調べている模様だ。
毎日新聞 2011年10月25日 2時36分
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111025k0000m040130000c.html?inb=yt