カダフィ大佐がいないとリビアは、簡単にはまとまりません。
リビアも、イランのようにイスラム過激派の国になるのか。↓
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<リビア>イスラム法重視の国づくりに 評議会議長が言明
毎日新聞 10月24日(月)10時37分配信
【テヘラン鵜塚健】リビアの反カダフィ派統治機構「国民評議会」のアブドルジャリル議長は23日夕(日本時間深夜)、北東部ベンガジで「全土解放」を正式に宣言し、国づくりの方向性に関して「シャリア(イスラム法)を基盤とする」と語った。今後正式に発足する新政権が、どこまで政治にイスラム色を反映するかが注目される。
議長は、元最高指導者、カダフィ大佐が死亡したことについて、「今回の革命は、神のご加護によって達成された」と賛美した。イスラム法を重視した法体系を構築する意向を示し「イスラム法に矛盾する法律は無効とする」とした。イスラム教の理念を厳格に適用し、預金や貸し付けの利子がない「イスラム銀行」を開設することも明らかにした。
旧カダフィ政権はイスラム原理主義組織を弾圧してきた。中東の民主化運動「アラブの春」で独裁政権を倒したエジプト、チュニジアでもイスラム系組織の政治への影響が強まる傾向にある。
また、アブドルジャリル議長はこの日、集まった聴衆に向けて「すべての国民に対し、寛大さと和解を求めると同時に、憎しみやねたみを消すことを願う。それが革命の成功と未来のリビアを占う鍵だ」と語った。カダフィ派との戦闘に参加した軍人や市民の昇進、厚遇も約束した。
議長は、反カダフィ派を支援した北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)、アラブ連盟(22カ国・機構)に感謝を述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111024-00000015-mai-int
宮崎正弘のメルマガの読者のコメント↓
(読者の声2)リビアのカダフィ大佐について、日本で聞かれるのはほとんど欧米の論調ばかりですが、わずか数%だった識字率を男子90%以上、女子も70%へ引き上げ、女性の社会進出にも力を入れるなどアラブ社会では革新派といえます。
こちらのブログにカダフィ大佐の功績がまとめられています。
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65671198.html
そのなかから抜粋します。
(引用始め)「カダフィの功績(1)多民族国家でまとまらなかったリビアを、独裁体制とはいえ長期的に安定化させた。(2)王制を打倒。形式的とはいえ直接民主制の導入。(3)石油産業の国営化による収益で国民に厚い福祉。教育・医療などが無料。経済も含んだ統計指標で開発度がアフリカでトップクラス。(4)女性の教育を支援
カダフィ大佐によるリビアの統治。(1)建前上、代議員が存在せず、直接、国民の声を政治に反映させるとする「直接民主制」の国家を建設。(2)40年以上の治世で、王政時代から顕著だったとされる(リビア国内での)東西対立を押さえ込み、(多民族国家の)国民を「リビア人」として統合してきた。(中学時代の教科書でリビアの首都がトリポリ・ベンガジと二つあるのが不思議でした)
カダフィによる、リビア国民への『厚い福祉』。教育・医療・国が運営する各種サービスは、ほとんどが無料だった。これは、国営化した石油産業からの莫大な収益による。このお蔭で、アフリカ諸国の中で、リビア国民の就学年数・平均寿命・一人当たりGDPなどの統計指標は、全てトップクラスだった。
リビア(社会主義人民リビア・アラブ国)。人間開発指数(HDI、UNDP,2010年)は、169か国中53位で、アフリカの中ではトップクラス。平均寿命が74.5歳と先進国並み。一人当たりGDPも年170万円で、アフリカにしては異様に高い。問題は平均教育期間が7.3年(日本は12年)カダフィを支持する声。アメリカ在住のアラブ系女性の新聞投書。「反カダフィ勢力がカダフィ政権を打倒することに反対しているのはリビアの女性たち」。カダフィが負けると昔のイスラム教の民族衣装に戻ることを懸念。『アバヤ』はイスラム文化圏の女性の伝統的民族衣装で全身を黒色の布で被うスタイル。
リビアでは女性の方が男性よりも高等教育の奨学金制度を利用。多くのリビア女性が科学者、大学教授、弁護士、医師、政府職員になっている。
カダフィ政府は一貫して女性がその生き方を自由に選べるような政策。イスラム教の導師の中にはこの政策に反対する者もいたが政府はその声を抑制」
(引用終わり)
上記の評価をサウジアラビアと比較するのも面白いかと思います。
サウジでは2008年に女性専用大学の起工式が行われたようですが、リビア・イラク・イランでは女性の高等教育は当たり前。サウジではファイサル国王当時は抑えられていた宗教保守勢力、イラン革命とソ連のアフガン侵攻に対抗する形で宗教保守勢力の活動がおおっぴらに認められるようになり、パキスタンやアフガンの宗教的過激派への資金援助、サウジ国内では女性の公職追放といった事態に至ります。
サウド家の支配が磐石かといえばそうでもなく、サウジ国内の多くの部族長(豪族)は金で懐柔するしかない。国王の妻たちの門閥が政治に介入してくるあたり、韓国歴史ドラマのようでもあります。
カダフィ大佐が「アラブの狂犬」といわれたのも、アラブ流の大ぼら吹きの表現がそのまま翻訳されたためでしょうか。エジプトのナセル、イラクのフセイン、みなよく似た表現です。東アジアでも北朝鮮など年中、戦争を叫んでいますが誰も相手にしません。
1967年の六日間戦争でもナセルの勇ましい叫びとは裏腹、シナイ半島のエジプト軍は水の備蓄もなく、イエメン派遣軍を呼び戻すこともしなかったあたり、アラブ流のはったりが本当の戦争につながってしまったのでしょうか。
アメリカ在住のアラブ系女性の懸念、「カダフィが負けると昔のイスラム教の民族衣装に戻る」というのは真実をついているのかもしれません。
民主政治の土壌のないリビアでは、カダフィ排除が民主化ではなく、宗教的保守化につながる公算の方が大きいように思われます。
(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)欧米マスコミの歴史観と政治観でカダフィを総括する危険性。なるほど、卓抜なご指摘でした。