チュウゴクが事故を隠蔽するのは毎度のこと | 日本のお姉さん

チュウゴクが事故を隠蔽するのは毎度のこと

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成23年(2011)8月17日(水曜日)
       通巻第3399号 
◎宮崎正弘のホームページ  http://miyazaki.xii.jp/
 
 渤海湾は以前から「ヘドロの海」と言われたが
  空前の原油流出事故が一ヶ月も隠蔽され、被害は東京都の二倍半の海洋に及んだ
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その「事故」は六月初旬に起きていた。
 ネット情報では、原油流出は6月4日、二週間後の7月20日にインターネット上の書き込みで発覚した。夥しい原油が渤海湾に流れている、と。

 現場は山東省沖の渤海に位置する中国最大の海中油田。なにかの理由で原油が流出し、当初は幅三キロほどの小さな原油流出事故とみられた。
 この原油堀掘現場はCONOOC(中国海洋石油)と米メジャーの「コノコ・フィリップス」の共同開発。

 ところが、事故発生から一ヶ月後、事故現場から200キロも離れた河北省楽亭県養殖中のホタテが大量死していた。
 7月5日になって、中国国家海洋局は初めて事故を公表し、原油が広がった面積は840平方キロと被害の規模を過小評価して、一応は公表した。

 1カ月も事故を隠蔽した当局と当該企業の遣り方は、中国の常套手段であり、いまさらという気がしないでもないが、沿岸住民の不信感が高まった。

 過去にも、新型肺炎(SARS)の流行、粉ミルクなどへの有害物質メラミンの混入、毒餃子事件等々。情報が隠された例は枚挙にいとまがない。
 しかもSARSの爆発的汚染のおりは中国各地で病院から医者と看護師らが逃げた。

 2010年に大亜湾原発(広東省、香港に近い)で放射能漏れ事故が起きたが、この時も情報は徹底的に隠蔽された。
 つい最近も、7月23日の新幹線事故で、あろうことかテレビカメラの前で事故車を埋めて証拠隠滅をはかろうとしていた。世界の人々は、唖然とした。

鉄道員の内部情報に依れば「事故車を埋めるのは常套手段であり、中国の鉄道省はいつもそうしてきた」という。

 現在のところ、汚染された海洋の面積は東京都の2・5倍にも及ぶ5500平方キロ、渤海沿岸に原油が漂着し、漁業、養殖、観光業に膨大な損害が出ている。被害額は50億円を超える。
 渤海湾は以前から「ヘドロの海」と言われ、河川から流れ込む大量の毒性廃棄物などで汚染され、しかも渤海湾内を環流するため、世界最大の汚染海域と言われてきた。
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西部邁、佐伯啓思『危機の思想』(NTT出版)
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 1755年のリスボン地震は欧州の思想界で一神教世界における神への疑念を生み、カントなど近代思想が芽生える嚆矢ともなった。
 2011年の東日本大震災は、しからば日本の保守思想をいかに変えたか、或いは、これからどう変貌を遂げるのか。或いはまた現在日本の曖昧模糊としての無思想という危機状況はまだ続くのか?
 九人の保守思想家が今後の日本の思想状況を解析予測し、競作する。
 編集は西部邁、佐伯啓思の両氏。加えての執筆陣は柴山桂太、中島岳志、東谷暁、藤井聡、富岡浩一郎、中野剛志、原洋之介の各氏。いずれも『表現者』の執筆陣でもある。
 開口一番、西部邁氏は次のように編集意図を説かれる。
「予想困難にして管理不能だという意味で、リスクならぬ危機の出来」だったのが東日本大震災であり、これがクライシスやカタストロフィに陥落するかどうかは「危機統治にかんする日本人の政治的能力の多寡による」だろう、とされる。
しかし嘗て我が国は明治維新を断行し、あるいは「関東大震災への復興対策や大東亜戦争後の敗戦処理のことを考えただけでも、日本民族にあって、(政治能力は)決して小さくはなかった」
 ところが、かの政権下では『改革』が『日本社会を混乱におとしいれ』たにも関わらず、それが「改革の不徹底」によるものという驚くべき『革命思想』が跋扈するにいたり、『日本国家の危機統治能力が最低限にまで落ちたということは「内部における危機」であり『人災』でもある。その人災が頂点に達したまさにその時に、800年に一度の大天災が『外部からの危機』として』やってきた。まさしく「天網恢々疎にして漏らさず」の事態である。
ITなどという技術知識ばかりで、HO(ヒューマン・オーガニゼーション)という実践知の枯れ果ててしまった我が国が危機を乗り越えるかどうかの瀬戸際にあるというのが執筆者らの基本認識である。
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(読者の声1)「原発と新エネルギー政策の論点整理 -戦略的最適解を明示せよ」
「将来的に原発依存率を徐々に下げ、新エネルギーの割合を高めて行く」
東日本大震災に伴う福島第一原発事故とその後の節電キャンペーンを受け、程度の差こそ在れ、今後の我が国の電力・エネルギー政策についての世論と識者の見解の大勢は、概ねこの範疇に収まるだろう。
 問題は具体的その方策と、タイムスケジュールをどう描くかだ。論点は次の3点である。
●少なくとも暫くは稼動させる原発の安全性を、どう担保するのか。
●原発を、最終的には廃止するのか、存続させるのか。
●新エネルギーへの費用負担をどう賄い、機器輸出等のメリットとバランスさせるか。

現行の原発の安全性
当面稼動させる原発の安全性を担保するには、ストレステストも必要だろうが、それより何よりグダグダの原子力村の体制一新、体質激変が不可欠である。
漸く来年4月に向け、原子力安全・保安院を経済産業省の下から出し、原子力安全委員会と統合し、「原子力安全庁」(仮称)として環境省の外局とすることが政府内で決まったようだが、倒錯した組織体制を正常に戻すこのような当然のことは即時に行うべきだ。
加えて、経産省、保安院、安全委員会、東電の歴代幹部に場合によっては刑事罰を含む何らかの相応のペナルティーを加えて一罰百戒としなければ、たとえ組織を改変したとしても、予見出来た津波や電源喪失への対策を怠っていた無責任体質は到底改まるものではない。

また、軍事作戦で言えば、ストレステストが図上演習だとすれば、防災訓練は実地演習である。
今回の原発事故で電源車が到着したがケーブルの長さが足りない、プラグの形態が異なり接続が出来ない等の初歩的なミスが重なったことを考えれば、「原子力安全庁」の発足を待たずに、第三者による複数の想定事故シナリオを基にした実地訓練を直ちに繰り返し行うべきだ。
なお、このような原子力行政を行ってきた自民党の政治責任と共に、特に初期対応に重大な疑義のある菅首相、情報の意図的隠蔽を図った枝野官房長官等については、ずばり刑事責任が問われるべきだ。
枝野氏等の場合、パニックを起こさせないという目的(ある意味、「未知との遭遇」「ET」世代の発想とも言える)があったが、それと被曝被害との軽重が裁判の場で明らかにされるべきだろう。
以上のような最低限の事を行わずに、現行の原発の安全性は担保されまい。

将来の原発廃止か?
少なくとも現行型の原発は、国内では政治的に新設する事が不可能と言われており、最新の北海道の泊原発を最後に最長40年で引退する事になる。
 一般論で言えば、エネルギー源は多様であった方が当然ながらエネルギー安全保障に資する。
また、安全のために、電気料金がたとえ現行より2倍になっても、それだけ取れば絶対的に現代生活が成り立たない訳ではない。
しかし、現行でも韓国(政府補助があるにせよ)の3倍と言われる電気料金が更に値上がりし、エネルギーコストが諸外国と比べ高く成り過ぎると産業空洞化を招いてしまう。

現行式の原発に代えて、万が一の事故時の放射性物質汚染が、現行原発の1000分の1とも言われる「トリウム式原発」、緊急時には水没させ核反応を止めるという「地下式原発」もしくは両者の組み合わせが、政治家を含めた原子力関係者から提唱されている。(ネガティブな方向からの検証は、まだ不十分である)
一方、新エネルギーとしては、太陽光、太陽熱、風力、波力、深海水温差、地熱、オーランチオキトリウム等のバイオ、メタンハイドレード等がマスコミにも盛んに取り上げられるようになっている。

また当然ながら、既存の火力発電、水力発電が予見し得る将来に渡って大きな比重を占める。
 原発は、神でもなければ悪魔でもない。 しかし、その使い方、運用の仕方により、神にも悪魔にも成り得る。原発も太陽光等の新エネルギーも、結局、生活・経済のための道具であり手段であり、安全性とコストの総合力でどれが優位かが問われる。

 今後のエネルギーのベスト・ミックスは、将来の原発全廃も含めた選択肢の中で安全性(具体的には、事故発生確率及び、致命的な事故に至ったときの最大被害規模)、生産コスト、エネルギー安全保障の3点から国民的議論の下、決められるべきだ。

新エネルギーへの費用負担
この中で、新エネルギーの生産コストと費用負担が取分け焦点となるだろう。
ドイツの例を見ると、再生可能エネルギーの高コスト電力での経済的デメリットを、風力発電装置、蓄電装置、スマートグリッド等の生産輸出で補いバランスさせているスキームとなっている。
オバマが考えているのも、これに電気自動車等を加えた図だ。
中国は安い人件費で太陽光パネル等の輸出大国となる事を目指しており、半ばそれを実現させている。
 日本もこれらを研究し、緻密に計算して対処し、伍して勝ち抜かねばならない。でなければ、新エネルギーへのシフトは、スペインの太陽光発電政策の破綻のように頓挫し成り立たない。

そのためには、将来、装置やシステムが国策的輸出製品に成り得る種類の再生可能エネルギーには電力買取り価格を当初は高めに設定し徐々に逓減させて行く等の戦略的政策と、国産装置使用以外には電力買取りのメリットを付けない等のシビアな対応が必要だろう。また、再生可能エネルギー発電の全量買取り制度導入と平行して、発送電分離による競争原理で電気料金を下げる事は必須である。

なお、新エネルギーとCO2削減等の環境問題は表裏一体だが、両者は微妙にズレがある。
例えばCO2の地中閉じ込め技術は、環境対策には役立つが国のエネルギー安全保障には役立たない。
一方、メタンハイドレート(新エネルギーに位置付けるかどうかは別にして)は、国のエネルギー安全保障には役立つが環境対策には役立たない。勿論、両方を兼ねるものを追求するのが一番よいが、CO2等の温室化効果ガスによる地球温暖化説には異論が出されていることを考えれば、今後国際社会の中で梯子を外される恐れがあり、ポジションを環境ではなく、新エネルギー寄りにシフトさせておく必要があろう。

ところで、菅首相が漸く退陣を決めたようだ。
筆者は、菅氏は只で辞任することなく、最後は城に火を放って少数の近衛兵だけ従えて早馬で城抜けする、即ち脱原発解散とともに脱党、脱原発新党を立ち上げて、郵政選挙を真似た本人のイメージする天下分け目の関が原をやりたいのだろうと見ていたが、北朝鮮関連の献金問題でそれどころではなくなったのか。
これにより、新エネルギー政策を比較的冷静に議論する余地が出来た事は、国民にとって良い事である。
民主党代表選挙及びそれに続く首班指名は、増税翼賛派 VS 復興成長派の戦いになる様相だ。
それと共に、各候補者には、合理的で現実的かつ具体的な、特に収支計算と日付入りの総合エネルギー政策を打ち出し競うべきだ。
東日本大震災と福島第一原発事故で大きな打撃を受けた日本が浮上する契機は、そこにある。
  (KS生、千葉)
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