性根の腐った悪い独裁者はどこでも嫌われる
社員すら倒産望む「タニマチ社長」の手腕
配信元:
2011/07/09 12:47更新
【疑惑の濁流】
「老舗IT企業の豪腕経営者」「社内独裁者」「政界のタニマチ」-。
1億1300万円を脱税したとして法人税法違反(脱税)容疑で逮捕されたソフトウエア興業前社長、丸山三郎容疑者(64)は、さまざまな異名で知られた。
野田佳彦財務相ら与野党議員に献金をばらまき、霞が関の官僚を接待。
そして周囲をあぜんとさせる派手な私生活。
「カネと欲と権力を一手に握ろうとした」(知人)という男に、東京地検特捜部のメスが及んだ。(岡嶋大城)
■社内に「開かずの間」 次々と女性が…
白髪交じりの丸顔に紺のスーツ。紳士が白昼堂々、女性を部屋に連れ込む様子はたびたび目撃された。
場所は9階建てのソフトウエア興業神田事業所(東京・秋葉原)だ。その部屋は、社員の間で通称「開かずの間」と呼ばれた。紳士は丸山容疑者。「60歳を超えた男が会社内に女性を連れ込む姿が、思い返すも痛々しかった」。元社員は振り返る。
部屋の中をはっきりと確認した社員はいないものの、社内では有名なエピソードという。
昼とともに夜も精力的だった。
接待の相手は政治家や高級官僚だ。彼らとの徹夜でのマージャンを得意顔で話すこともあった。
「おれは人脈があって政界や官界に顔が利くんだ。元国税庁の○○さん。国交省の○○さん、財務省の○○さん、総務省の○○さん…」。各省庁幹部を、さも親しい友人の名前を呼ぶかのように社内で披露した。
ワンマン社長にして艶福家。献金を繰り返した政界のタニマチ。いくつもの顔を持つ丸山容疑者とは、一体何者なのか。
■才気あふれる社長…長者番付の常連に
民間信用調査会社や関係者によると、北海道出身の丸山容疑者は高校卒業後、航空自衛隊などを経て大手コンピューター会社の富士通に入社。黎明(れいめい)期のIT業界の将来性に目を付け、昭和49年にソフトウエア興業を設立した。
特許庁など官公庁のシステム開発事業のほか、携帯電話やカーナビなどのソフト開発事業を幅広く手掛け、小さな事業所を社員3千人規模の会社にまで急成長させた。平成15年は約2億2800万円を納税するなど、高額納税者公示制度が廃止されるまで長者番付に何度も登場した。
「個性的でカリスマ性に富む」。関係者は異口同音に丸山容疑者の性格を語る。経営者としての手腕は衆目の一致するところだ。
ところが会社が成長し、社員も増える一方で、不可解な増え方をしたものがあった。
それは社員寮だった。
■裏金作りの舞台装置
社員寮が首都圏を中心に全国に建設されていったのは、10年ほど前からだ。“表向き”は社員の福利厚生のためで、全国で20棟以上に上った。
ただ、社員の誰もが入居できるわけではない。
「繁華街に近い東京や大阪の寮に一般社員が入居することは困難で、丸山容疑者ら幹部のお気に入りの社員しか利用できなかった。丸山容疑者や身内の別邸として利用されていたケースもあった」(元社員)
郊外の寮は入居しやすいが、通勤の不便さが伴うため空き部屋が多かったという。
これら社員寮は脱税の舞台装置だったとされる。建設費を水増し発注してキックバックさせた疑いが強いのだ。
丸山容疑者は平成11年、社員寮建設の発注元として関連会社のソフトウエア興業設備を設立。腹心の一人、鈴木一夫容疑者(55)=同法違反容疑で逮捕=を役員に据え、裏金捻出を仕切らせたとされる。
こうした動きを察知した国税庁は、東京地検特捜部と連携しながら、実態解明に乗り出した。
だが、ここでも“丸山人脈”が生きたという。
「証拠がなければ大丈夫です。ただ十分気をつけてくださいね」
関係者によると、東京国税局が関連会社のソフトウエア興業設備に強制調査に入った昨年3月、知己の国税OBが丸山容疑者にそっと捜査情報を漏らしたこともあったというのだ。
丸山容疑者は今年6月23日に幹部社員を集め、脱税疑惑を報じる新聞を手にしながら「こんなことは知らない。気にするな」と声を張り上げた。
だが、捜査の手は止めようもなかった。
特捜部はその翌日、法人税法違反の疑いで丸山容疑者ら4人を逮捕。
同社が社員寮を建設した際、千葉県の建設会社「マルタカ」に建設費を水増しして発注。
実際の工事費用と発注費用の差額を還流させる方法で平成19年3月期の所得約3億7900万円を隠し、法人税約1億1300万円を免れたとされる。
関係者によると、丸山容疑者らは冊子発注などでも裏金を捻出していたとみられ、「裏金の総額で100億円に上るのではないか」と話す元社員もいる。
■接待攻勢…政界での華麗なる人脈
一方、政官界との窓口になったのは、丸山容疑者側から派遣され、20年ほど前に自民党元衆院議員の私設秘書を務めた経験のあるソフトウエア興業役員、原子誠一容疑者(46)=同法違反容疑で逮捕=だった。
丸山容疑者は約10年前から、中央省庁の高級官僚やOBと酒食をともにする関係を築き上げた。軌を一にするように、丸山容疑者側から与野党政治家側への資金提供も始まった。
産経新聞の調べによると、政治献金や政治資金パーティーのパーティー券購入名目で政治団体に資金提供を受けた政治家は、計10人に上る。
野田佳彦財務相や仙谷由人官房副長官、二階俊博元経産相など与野党問わず大物議員がズラリと並び、提供額は少なくとも計434万円に達している。
事件発覚後、野田財務相は丸山容疑者らと年1、2回程度、会食していたことを明らかにし、「何らかのお祝いだとか、いろいろな名目は立てていると思う」と述べ、丸山容疑者側が料金を支払う接待だったことを認めた。
これまで明らかになった政治家側への資金提供は、政治資金規正法に基づいたもので違法性はないとされる。
東京地検特捜部は、政治資金収支報告書に記載のない「裏献金」がないかどうかも視野に入れ、慎重に捜査を続けているもようだ。
■暴露合戦…社員のはけ口は「掲示板」
〈社員だけど、さっさと潰れること期待。いつぐらいに潰れるのかな〉
〈ボーナス削って愛人に金渡すだろ〉
インターネットの掲示板には、丸山容疑者への批判や内部告発が数多くつづられている。
脱税疑惑が明らかになり丸山容疑者の逮捕が近づくにつれ、掲示板の書き込みは勢いを増した。
それもそのはず。過剰な社員寮建設や不況の影響でグループの借入金は400億円近くまで膨れあがり、数年前からボーナスはゼロ。
労働組合の結成すら許されず、待遇改善を訴えた社員に対しては丸山容疑者が「お前のような奴はさっさと辞めてしまえ」と容赦なく怒鳴り散らした。
机が壁際に移動された社員もいたという。
政官界工作と金策に明け暮れた「元祖ITの寵児(ちょうじ)」は、裸の王様だったのか。「女、カネ、権力。
圧倒的な力を持つ丸山さんに誰も何も言えず、独裁者のもとで社員はただ気の毒だった」。元社員はぽつりと振り返った。
インターネットの掲示板に社員の不満が出ていたので
脱税していることがばれたのかな。
まるで、最近のチュニジアやエジプトやリビアみたいじゃん。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/517219/