もみがらを食べていた犬ーごん太
山際澄夫ブログから転載。↓
まずは以下の文章をじっくり読んでください。
<飯舘村を勝手に応援する会>23.5.21
※以下は署名者のお一人である柘植裕子さんからのものです。柘植さんのご主人は獣医さんで福島市内で動物病院を開業しておられ、今回の震災でも被災した動物の世話をしておられます。
●ごん太
柘植裕子(CHOSUN BAND RESEARCH代表)
震災以来、何頭になるだろうか?楢葉からレスキューが電話をかけてきた。「犬おねがいできますか?」・・連休明けで手術と外来は、すでにいっぱいだ。「血がぽたぽた落ちるほ
ど出ているんですが」う~ん、たいへんだなと思いつつ引き受けた。
昼には犬2匹と猫4匹を積んだ車が到着したが、うちで引き受ける犬は、見てみると酷 い。
首の周りは、血膿が毛にこびり付き、ツララのようになった先端からも滴り落ちている。臭いも蛆の湧いている独特のものだ。抗生物質を打った程度ではおさまりそうにもない。
麻酔をかける外科的処置が必要のようだが、この臭いと、黒豆大のマダニが全身に数え きれない程くっついてるようでは、入院用の犬舎には、入れることができない。とりあえず、診察台のわきに、簡易のケージに入れたまま毛布をかけて順番を待ってもらうことにした。
しかし、彼の(オスだったので)順番は、夜の7時になってしまった。
汚いから最後に なったのではない。
臭いのだから、早く手当して臭いを取りたかったが、彼は、衰弱しているにもかかわらず唸るし咬もうとするので、麻酔をかけるのに人手が必要なためだ。さ て、始めたものの、膿は固く固まり、バリカンが入らない。
丁寧に鋏を入れて毛を始末していくと傷口が出てきた。案の定、蛆がわき、溜まった膿がどろっと流れ出てくる。
大きな穴が4か所。やっぱり咬まれ傷だ。
レスキューの話では、彼を保護した家の周辺には、愚連隊のように徒党を組んだ犬が4, 5匹うろつき、彼は、牛のいる牛舎の藁に隠れていたのを見つけだされたということだ。尻尾も皮膚がぼこぼこになっているので毛刈りをしてみると散々咬まれていた。まるで集団リンチを受けたかのようだ。
さて、困った。彼の唸りは、怯えからくるものなのか、性質が荒いのか、場合によって は、せっかく傷の処置をしても治るまでの傷洗浄が出来ないかもしれない。ましてや里親のなり手もいなければ、安楽死をしなければならなくなる。
皆で悩む・・・しかし、歯を見ると、そう歳をとっているようでもないし、と悩んだあげく、まあなんとかなるか、と 最後までしっかりと手術を終えた。
朝、彼を診に行くと余程疲れ切っていたのか、まだぐったりとしていた。
簀子の下の受 け皿を見ると、いかに彼が過酷な環境にいたのかを知ることになった。便が大量にあった のだが、そのほとんどが種もみだった。
もみ殻をかぶったままなので当然未消化のまま排泄されていたが、どんなに空腹だったか、どんなにお腹が痛かっただろうかと思うと不憫で涙がでてきた。
水を入れてやると、オズオズとしながらもおいしそうに飲んだ。
餌は、消化器障害用の 処方食を開けてやると夢中になって食べた。
なんとなく、彼との距離が少し近くなったような感じがして、「これなら、治療をさせるようになるかも知れない」と安心できた。午後は、外に出してやろうと、つけっぱなしにしていた胴輪のリードを引くが、脚をふ んばって出ようとしない。
まだ警戒心が強いようなので、美味しいもので歓心を買おうと、一時間おきにチーズを一かけ、煮干しを一匹と、だんだんに私を「美味しいものをくれるおばさん」と印象付けるようにした。
努力のかいあって、夜には、やっと外に連れ出すことが出来たが、今度は、またふんば って病院に入らない。
無理をして咬まれるのも嫌だし、だいたい、震災の翌日に猫に咬まれた傷がやっと治ったところなのに、まったく、お節介なばかりに、どうして面倒なこと引き受けたのだろうと後悔する。
夜になりレスキューより電話がある。犬を保護した家のご主人から連絡があったとのこ とだ。
こちらに連れてきたその日に、楢葉に様子を見に行った近所の人が、レスキューの張り紙を見て飼い犬が保護されたことを知ったようだ。
飼い主の携帯番号を聞いて、今後の相談に電話をかけた。
名前を聞くと「ごん太」だそうだ。
年齢は6~7歳。生後一週間でもらってきたごん太 を哺乳瓶で育てたそうだ。
ごん太の怪我の状態を報告すると、突然の号泣。
4月21日に楢葉への立ち入りを禁止されるまでは、4~5日に一度は自宅に戻り、10数頭いる牛や鶏、ごん太の世話をしていたそうだ。
いつも後ろ髪を引かれながら避難所に戻るのだが、 おいて行かれるごん太は、車を追い、その後しょんぼりとうなだれる姿をみて可哀想でならなかったこと。
最後の21日は、「もう来ることが出来ないから、かんべんしてくれな・・」と言い、車 に乗り込んでも一切ごん太は振り返らなかったと・・夫婦で泣きながら家を後にしてきたことを話してくれた。
怪我の様子を聞いた飼い主は、「そんなにひどい怪我をしているなら、いっそ安楽死してくれたほうが・」と言った。
しかし、少し努力すれば治らない怪我ではないことを告げると、現在の避難の状況をはなしてくれた。楢葉の自宅なら犬など問題なくいくらでも飼うことができるが、どの程度で楢葉に帰ることが出来るのか、はたして帰郷そのものが叶うのかどうかもわからず、楢葉には、政府からも具体的な話が殆どされていないこと等を考えると、ごん太を引き取ることは、到底出来ないことだと理解できた。
飼い主は、声の様子や口調から私とそう変わらない年齢だと思うが、臆面もなく涙声だ。私まで悲しくなり涙声になっていた。これ以上引きずると、話が前に進まなくなるので、 元気よく「ごん太くんの怪我は責任をもって治します。
せっかく一度は助けられた命なのだから寿命を全うさせてやりましょう。
可愛がってくれる里親を必ず探しますので、ご自分たちの生活を立て直すことに専念してください。いつでも面会は、できるようにしておきますので」と電話をきった。
で、その後のごん太は、というと、きょうで5日めになる。隔離入院室を一匹で陣取っ ているごん太は、野犬にいじめられたためか、それとも哺乳瓶で育った後遺症か、外に散歩に連れ出しても周囲を見る余裕も外の新緑のにおいもそっちのけで、出すものを出すと、一目散に病院の玄関に戻るや、あっというまに自分の入っている犬舎に滑り込む。呆れるほどの速さで。
朝晩の食事以外は、ずーっと眠りこけている。
安心して眠っている姿を見ていると、この2か月が余程不安だったのかと不憫に思う。しかし、犬や家畜のこととはいえ、地震、津波の被害だけでも大変なストレスだったが、 その上の原発事故は、新たな別れや諦めを無理強いさせている。
起きてしまったことなのだから諦めろというのか。
当院だけでもこのような話は、ごん太だけではない。
明日は、 川内村からペットが保護されてくる。やっとだ、2か月も放置されていた。獣医が当番で健康診断にあたる。
全部がもとの飼い主のもとに戻れるとはかぎらないし、そもそも、健 康であるはずがない・・と思う。
(追記)
ごん太の家の牛は、黒毛和牛で柵の中に放牧にしてきていますが、周辺に野犬化した犬 がうろついていました。
ごん太を連れ出したのが6日ですから牛もどうなっているか。
農 家にとっては、大変な財産でもあり、簡単に安楽死と言われても困ります。
大動物の安楽死は、簡単に総理大臣が言っていましたが、大変です。
筋弛緩剤は、正確 に静脈注射にしてやらないと意識がありながら窒息状態にするという点ではかえって虐殺になり、技術も必要で大変です。
特に、豚などは、とても力があり凶暴です、保定出来る檻と人員も必要ですし、被災でちりじりになっている酪連や家畜保健所の獣医を集めなければならないし、飯館の無計画避難と同じく無計画安楽死プロジェクトということになりかねません。
生きているものに生かされている私たちは、動物に対して感謝と畏敬の思いをもたない と、いつかバチが当たる、すでに口蹄疫などは、そうだとおもっています。
命をいただくことに無頓着な政府に呆れます。
福山官房副長官は、泣きながら「必ず助ける」と言いました。政治家の軽いウソのつきっぷりに怒っております。
豚の畜舎での安楽死など慣れれば見られますが、初めて見る人は、寄ってたかって殺し ていると感じるかもしれません。
獣医にそのつもりがなくても、やり方は、そういうことです・・人が多くの生き物によって生かされていることをもっと実感してほしい。
特に政治家のみなさんには。大動物も小動物も、完璧とはいかずとも、役に立っている事をしているのは、ほとんど が民間ボランティアと寄付、自腹でやっているのです。
すでに、3か月にもなろうというのに、錦の御旗をかかげるだけで仕事らしい仕事を何もしていない(言い過ぎではない!)
政府には、怒りを通り越して、「もういい!あんたらがやらなくても自力でやるっ!」と考えています。
ほんとうに、愛情が感じられないのです。
郡山の被災者が、ボソッと「菅直人というの は、殺風景な男だな・・」と言っていたそうです。
■署名者87人に荒木和博「飯舘村を勝手に応援する会」の署名者が87人になりました。ありがとうございます。(署名者 アイウエオ順)相澤宏明(展転社会長)荒木和博(拓殖大学教授)家村和幸(日本兵法研究会会長)生島馨子(特定失踪者家族)伊藤田雄三(救う会大分代表)稲信子(栃木県護国神社宮司夫人)稲寿(栃木県護国神社宮司)稲恭宏(東京大学医学博士病因・病理学/免疫学)稲川和男(映像教育研究会代表)井上時男 (元昭和女子大学教授)井上寶護(国柱会講師)上岡利正梅原克彦(前仙台市長)大内保治(きまぐれ書房店主)大久保通禮(福島を人道科学で支援する会東京本部事務局)大西宣也(町田市議)大野トシ江(群馬ボランティアの会(横田ご夫妻ら拉致被害者家族を支援する群馬ボランティアの会)代表)大野敏雄(群馬ボランティアの会事務局長)大森勝久(評論家)小田嶋匡甲斐直樹柿澤紀子鍛冶俊樹(軍事ジャーナリスト)加藤哲史(展伝社営業部)金子宗徳(里見日本文化学研究所主任研究員)上條義昭(弁護士)川崎正風(救う会山口幹事)川添友幸(国境なき記者団日本)菊北田 徹舊事希軍(陰陽道陰陽會陰陽頭)窪田 哲夫(元鉄道労働組合中央執行委員)小林秀英(雪蔵山十善院住職)斎藤吉久 (宗教ジャーナリスト)桜佐藤正行(地球2001事務局長)佐藤守(軍事評論家・元空将)佐波優子(キャスター)白石念舟(結草居代表)陶久敏郎(救う会徳島会長)鈴木信行(維新政党・新風代表)須田政男(須田商事代表取締役社長)関谷悦史(日本兵法研究会事務局長)曽田英雄(特定失踪者問題調査会常務理事)高澤 一基(前板橋区議会議員)高田純(札幌医科大学教授/放射線防護学)高森公嗣( 財団法人海洋バイオマス推進機構東北事務局)竹田光江田母神俊雄(元航空幕僚長)柘植裕子(CHOSUN BAND RESEARCH代表)角田晶生(フリージャーナリスト)中尾新也(画家)中曽千鶴子(日本シルクロード科学倶楽部副会長)中野隆男(シーメット医総研代表取締役)西尾友子(ユウプロモーション代表取締役社長)西村幸祐(評論家・ジャーナリスト)西村眞悟(前衆議院議員)野伏翔(演出家・映画監督)馬場秀一(BarOffRoad店主)日垣隆(作家・ジャーナリスト)平野隆之(Eヤク代表)深田匠(政治学者)福井 義高(青山学院大学教授)福島央之藤岡信勝(拓殖大学客員教授)藤永剛志(救う会宮城幹事)藤野義昭(弁護士)藤本隆之(展転社代表取締役)舛谷政雄(秋田市民)町田皇介(上尾市議会議員)松尾和幸三浦小太郎(評論家)三井勝生(元靖国神社権宮司)南木隆治(元大阪府立高校教諭)三宅博(前八尾市議会議員)武藤政春(上尾市議会議員)村尾建兒(戦略情報研究所取締役)茂木勝彦(元民社党群馬県連委員長)茂木弘道(世界出版代表取締役)本山貴春(NPO法人ディベイトジャパン専務理事)森田佐和子山際澄夫(ジャーナリスト)山本和幸(NPO法人ディベイトジャパン事務局長)横島章(宇都宮大学名誉教授)吉田好克 (宮崎大学准教授)和田知文渡邊裕一(写真家)
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※このメールは「飯舘村を勝手に応援する会」に署名された方及び報道関係、議員など関係者の方々に署名者の一人である荒木和博よりお送りしています。
お問い合せ等ありましたらご連絡下さい(kumoha351@nifty.com )
※上記の「飯舘村を勝手に応援する会」からのメールを私のホームページに掲げましたところ、南三陸町の支援者から動物病院にせめて餌でも支援できないかと問い合わせがありました。柘植さんに聞いてみましたら「受け入れていただける」ということですので、支 援できるかたは私にメールをください。柘植さんの連絡先をお知らせいたします。(山際澄夫)
その後の「ごん太」と救出にあたる動物病院の現状柘植裕子さんのメールから
① <その後のごん太>>
田舎では、犬とはいえ愛玩の対象だけではありません。
番犬としての役目もちゃんと果たしてきたのです。
ごん太は、飼い主から先週電話があり、知り合いが犬を置ける避難所なので面倒を見てもらえそうだ、とのことでした。
傷は、まだ完治まで2度の手術をしなければならず飼い主の元にもどるまでは、一月以上はかかります。
しかし、飼い主の生活が安定すればなんとかなりそうです。
ただし、楢葉ですから、いつ自分の家にもどれるのか?
原発が安全宣言をだしてくれるまで終わりのない日々が続きます。
ご支援をしていただけるというご提案を素直にお受けしたいと思います。立ち寄ってくる動物レスキューや、飼い主がもとの生活に戻れるまで犬を飼育してくれるホストファミリーの存在もあり、餌の寄付は、とてもありがたいと思っております。
ご負担をおかけするほどの寄付は遠慮したいと思いますが、ごん太や飼い主さんの惨状に涙を流していただいた方からのお気持ちは、心より感謝してお受けしたいとおもいます。本当に、少しでも結構です。
できれば、猫の餌もお願いしたいのです。
柘植さんのメールから
②<安楽死なんてたんたんと言うな>
今回の震災と原発災害は、避難地区などの獣医さんの移転も阻んでいます。
面倒を見ている動物の数も多くて簡単に引っ越し先が見つかりません。
立ち入り禁止区域で開業していた大動物の獣医(主人の同級生)は、自分の家畜すら捨てざるをえず、那須で個人牧場の雇われ獣医として仕事を始めました。自分の黒毛和牛を放置し、余所の牛を診る気持ちは如何ばかりか・・と。
3号機の真裏なので、MOX燃料が飛散したと、近所中が大変なパニックになったそうです。原爆が落ちたのか?と思われるほどの爆音と爆煙は大変な恐怖で、車の鍵穴に鍵が差し込めないほど動揺したそうです。
津波にのまれずに少しは家の破損があるようですが、家、診療所、医療機械、家畜もそのままの状態で財産を取りに戻れません。
牛は、どうなっているか?こんな人々や家畜を考えると、「陰湿な東電叩きをやっている」と言われても、はい、やめますとは言えません。
東電だけが悪いのではないことはわかっていますが、せめて、終息をみるまでは、原発で多くのものを諦めなければならない人と、東電の社員もせめて気持ちを共有してほしい、したふりでもいいのです。
もちろん政府もです。
総理や枝野さんが、たんたんと家畜は安楽死を実施、と会見で言った時、口蹄疫の時も同じだったと感じました。
柘植さんのメールから
③<原発事故は犬や猫の運命を変えた。動物病院はみんな救出された犬や猫を預かっているようです>
以前、飯館の肥育農家の番犬「たこ坊」(茶色のビーグルの頭がたこ焼きのようだったので) が牛舎で睾丸を蝮に咬まれ、信楽焼きのたぬきの金〇のようになったことがありました。
熱は出るし、金〇は歩行の障害になるし、と大変でした。
10日ほど入院して職務復帰をしましたが、今回の無計画避難指示で、すっかり白髪の爺さん犬になったのに宇都宮の親戚へ養子にだされました。
青空の下で放し飼いにされ、日向ぼっこが日課の隠居だったのに、いきなり都会でのつながれた生活を思うと可哀想でなりません。
当院で引き取ってやれたら良かったのにと思いますが、うちの病院も犬3匹、猫5匹が入院犬とは別に「居候」になりそうなために無理です。
※柘植さんからの情報は以上ですが、今回の大震災、それに原発事故にあたっての被災者や動物に対する日本の対応は、文明国で起こっていることとは到底思えません。
発生から70日以上経っても、
10万人を超える被災者は体育館の床の上ですし、
犬や猫、そして家畜は置き去りです。
体育館では多くのお年寄が亡くなっています。
置き去りにされた動物たちは、政府の最高指導部によって「安楽死」と発表されました。なんということでしょうか。
ふだん、学校でもマスコミでも何かというと「命を大切に」「命は地球よりも重い」などと、安っぽい台詞を口にするくせに、目の前で悲劇が起こっているのに「殺すな!」とも言えないのです。恥ずかしくないのでしょうか。
チェルノブイリの原発事故ですら家畜といっしょに逃げたと言われています。
いったい、日本の政府はお年寄りや動物を救うためにどんな努力をしたというのでしょうか。
それでも政府に代わって、私たちの社会の名誉を守るために多くの方が奮闘されています。
奮闘されている方に声援だけでも送りましょう。(山際澄夫)http://www.geocities.jp/s_yamagiwa2003/