宮崎正弘の国際ニュース・早読み 日本はまったくお呼びもかからない! | 日本のお姉さん

宮崎正弘の国際ニュース・早読み 日本はまったくお呼びもかからない!

愛読者、まもなく18000名の「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
       平成23年(2011)5月30日(月曜日)通巻第3335号   

 IMF専務理事人事、ラガルド(仏財務相)が有力と下馬評は言うが。。。
  黒馬(ダークホウス)に周小川(中央銀行総裁)とクリントン(米国務長官)
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 ラガルド仏財務相が正式に次期IMF専務理事に立候補したとき(5月25日)、世界の世論は「おそらく波乱無く、問題もない」と予測した。
 こういう事態が引き起こされたのはスカロス・カーン専務理事のセックスス・キャンダルによる。下半身の醜聞を追求しないフランスでも、この恥知らずな醜態は隠せなかった。

そもそもブレトンウッズ体制の基礎にあるIMFと世銀は欧米がなかよくシェアする指定席だった。
IMF首脳人事の投票権の31%を欧州諸国が、17%を米国が握る。だから伝統的に欧米でIMF,世銀のトップを分け合い、世界経済の政策協調を主導してきた。IMFは欧州から。世銀は米国から。
 したがって順当にいけば次はフランスから。サルコジ現政権の財務相をつとめるクルスチーヌ・ラガルド女史なら最適という下馬評がたった。

 ラガルドは弁護仕上がりだが、元シンクロナイズ・スィミングの選手。しかもヨガの修練を積んでいる変わり者。ギリシア、ポルトガル債務危機に辣腕をふるった。

 IMF専務理事は強大なポストであり、バブル時代の日本でさえ、自ら望んだことはなく、欧米は日本の出鼻をくじき、政治的に押さえ込むためにMIGA長官を新設した。MIGAなる組織は粗製濫造、表向き多国間債務保証機能を有するとされるが、事実上、なんら強大な権限もないお飾り。

往時の状況下で、勃興すさまじかった日本の経済力を制御させるために、欧米が意図して新造しただけだった。(ついでに言えば、初代MIGA長官となったのは当時、野村證券副社長だった寺沢芳雄氏、その後「日本新党」から参議院議員。いまは引退して豪に暮らす)。


 ▲嗚呼、日本はまったくお呼びもかからない!

 にわかに先行きに暗雲が広がった。
 メキシコ中央銀行総裁のカルステンスが正式に立候補したほか、イスラエル中央銀行総裁のフィスチェルも立候補を模索している。
 ラガルド優勢状況が怪しくなった。

 第一に米国オバマ政権が依然としてラガルド支持を明示していない。
そればかりか次期政権残留を望まないヒラリー・クリントンが、IMF専務理事のポストに魅力を感じているとするウォール街の観測もある。
しかも彼女は言ってのけたのである(ウォールストリートジャーナル、5月30日付け)。「伝統的にこうした国際機関のトップに女性が就くには欧州で抵抗があるのではないか?」と。

 第二に中国の動向が、極めつきに「政治的鵺」の動きを示している。
 中国は「もはやIMF世銀体制を欧米が主導する時代ではない。これは不平等であり新植民地主義であり、すでに中国の四大国有銀行のうち三行の時価総額は世界ランキングで十位以内に入っている。新興経済諸国がトップの人事を得ることもあり得るし、もし平等の精神を言うのであれば、中国にも権利がある」
と豪語して、ラガルド優勢の状況に切り込んだのだ。

 アルジャジーラ(5月30日)に依れば、中国は非公式に対抗馬擁立に動き、水面下でブラジル、ロシア、インド、南アと連絡を密にしているという。中国が擁立候補として打診しているのは周小川(人民銀行総裁)である。

 あわてたラガルドは、急遽ブラジル、中国、インド、中東訪問を決め、最初の訪問国ブラジルへ向かった。中国がIMFの人事を巡る投票権ではまだ僅か。2012年から6%になる程度だが、BRICSがくむと手強い。
中国はBRICSをIMFに代替できる経済システムにできないかも模索している。経済の世界覇権をねらう野心も背後にほの見える。
それにしても、日本はまったく蚊帳の外、欧米の顔色をうかがい、中国の動きをむしろ羨望しているのではないのか。
これでは世界第三位のGDP大国が泣くだろう。
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  ★◎ 読者の声 どくしゃのこえ ドクシャノコエ 読者の声 ◎★
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(読者の声1)『ニュースウィーク』(日本語版)の最新号(6月1日号)は中国特集で「嫌われる中国の正体」です。
知られざる大国の内幕を100の厳選ニュースとした多角的な中国批判ですが、このなかに「五毛党」とか「村上春樹現象」とかも、俎上に載っていますが、宮崎先生の分析とすこしニュアンスが異なるようですが、もしお読みになっているとすれば、感想をお聞かせください。
   (HJ生、大阪)


(宮崎正弘のコメント)同誌二十五周年記念の中国特集で、読み応えがありますが、週刊誌ゆえに何事も総花的で分析は切り口は鋭く、しかし中身は浅い(失礼)。
 さて御指摘の「五毛党」ですが、これは小生も頻用する「五毛幇」というのが一般的で五毛党、五毛組と呼ばれていることもあります。太子党が「党」(パルタイ)ではないように比喩のニュアンスの差でしかありません。
 村上現象は、率直に言って「もう古い話」です。数年前、中国では渡邊淳一ブームでした。つぎに村上春樹ですが、これは世界的な現象で、とりわけ中国だけということもなく、また急速に下火になるのは、中国的です。
 同誌が数行の指摘をしている「東野圭吾現象」は凄いですよ。
これって、日本版シドニー・シェルダン的で、ひょっとして中国語訳も「超訳」かも知れませんが。。。
 市場的な視点で申し上げますと、中国の日本文学関係では、なんと東野圭吾ひとりで、日本人作家全部の半分の売れ行き。残りのシェアを渡邊淳一、村上春樹、山岡荘八など人気作家ぜんぶ足して、なんとかという状況のようです。
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●毎日一行◎ 白川日銀総裁よ、IMF専務理事に立候補せよ!
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(読者の声2)宮崎先生お留守の間も、国威無き頓珍漢の論議を繰り返していますが、日本民族の宗教・文化・伝統を蔑ろにしている政府で日本国が守れるのでしょうか。
 日本民族の宗教・文化・伝統を身に着けていない帰化人政権だからやむなしの感はありますが、どうして自ら日本国の壊国者であることを表明している者の下へ、一部の日本国民は集い支持しているのでしょうか。
不思議な国の不思議な人たちですね。
私は、民主党所属の議員も支持者も日本人の敵、として大嫌いです。何時も真っ向から遣り合っています。一方通行の貴方とは真ともな話ができない、と直ぐに逃げられますが。
日本の行く末を阿倍仲麻呂の仍孫か雲孫あたりに占ってもらいたいですね。それにしても玄宗に重用されていた阿倍仲麻呂は何故貧しかったのでしょうか。原因は玄宗皇帝の失脚でしょうか。久し振りに玄宗皇帝、楊貴妃、安禄山の物語を思い出しました。
   (北九州素浪人)

(宮崎正弘のコメント)昨晩、あの雨の中、教科書を作る会の会合があり、出席すると自民党の文科大臣経験者も出席していて、くわえて元民社党委員長の塚本三郎先生、84歳にも関わらず名古屋から出席されて熱弁をふるわれました。
 じつは、小生もこの会にでるために日程をやりくりして帰国したので、参加した意義がありました。
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<< 今月の拙論と予定 >>
(1)「震災以後、日本の思想が変わる」(「北国新聞」コラム、5月30日)
(2)「グアンタナモ・ファイル」(『月刊日本』六月号、発売中)
(3)「中国ジャスミン革命ははじまっている」(『撃論』、富国強兵号、発売中)
(4)「日本再生の条件」(『ジャパニズム』創刊号、発売中)
(5)「中国新幹線を乗りつくす<8>旧満州の荒野」(『エルネオス』、六月号)
(6)「大震災後、中国の反応の異常さ」(『新日本学』夏号、6月5日発売)
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 577回】                   
――だから、どうだっていうんデス・・・
 『従考古資料中看商周奴隷社会的階級圧迫』(顧維勤 中華書局 1975年)
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 この本は、「地下から出土した考古資料を通じて、読者に我が国奴隷社会の具体的情況の一端、ことに奴隷階級が強いられた圧迫と搾取の情況を紹介し」、「すべからく人類社会は絶えることなく不断に将来に向かって発展する。新しい社会制度は、必然的に旧い社会制度に打ち勝たなければならない」ことを熱く語る。

だが、その一方で、冷静で客観的な装いを凝らした歴史記述の合間に、「右派日和見分子陳独秀」「革命陣営内部に身を潜めていた機会主義の頭目であり反革命修正主義分子で時代を逆戻りさせ、孔子を讃え国を売ろうとした陳独秀、瞿秋白、王明、劉少奇ら」「トロツキスト分子陳伯達」「ブルジョワ階級の野心家、陰謀家、両面派、叛徒、売国泥棒ヤロー林彪」などというハシタナイほどの罵詈雑言が、呆れるほど頻繁に飛び出しもする。

なんとも奇妙な本と思うが、四人組が毛沢東の威光を背景に恣に権力を揮っていた時期の出版であることを思い起こせば、その奇妙さも納得できようというものだ。
 
この本が口を極めて罵る陳独秀、瞿秋白、王明、劉少奇、陳伯達、林彪は、1921年の結党以来、共産党は毛沢東の正しい指導の下で一貫して正しく革命の道に邁進してきたという“毛沢東絶対無謬史観”からすれば、誰もが毛沢東に楯突いた断固として許し難い不倶戴天の敵であり、極悪非道の大反革命者であり、未来永劫に亘って人民の敵でなければならなかったのである。
 
そこで、たとえば林彪に対しては、「林彪が建設を目指した『真の社会主義』とは、何と社会主義の新中国を半殖民地半封建の旧中国に変質させることである。林彪が口にした『迫害を受けた人』とは、既に打倒された地主、金持ち、反革命分子、破壊分子、右派、それに反革命修正主義分子のことでしかない。
林彪は彼らの『解放』を目指し、毛主席指導の下で我が党・我が軍・我が国人民の手によって打倒された地主ブルジョワ階級に再び肩入れし、反革命修正主義分子を再登場させ、一握りの地主・金持ち・反革命分子・破壊分子・右派分子を焚き付けて革命的人民に反抗し、千百万(あまた)の共産党員と革命者の胴体から首を斬り落とそうとした。

林彪の陰謀が達成されていたら、中国は直ちにソ連修正社会帝国主義の植民地になり、数限りない労働人民は再び苦痛を嘗め罪を受け、2500年昔の奴隷社会における奴隷と同じように圧迫され搾取され、こき使われ、牛馬のような生活を強いられただろう。このような歴史の逆転は、解放された中国人民にとって甘んじて受けられるものではない」と執念深く過激に煽り、躍起になって読者の“注意力”を刺激する。

 だが、つい数年前まで「毛主席の親密な戦友」と全土を挙げて熱狂的に讃え、共産党の規約で毛沢東の後継者と定められたにもかかわらず、その林彪が目指した「真の社会主義」「迫害を受けた人」「解放」が、この本が指摘するようにどうしようもなく反社会主義的だったなどと、いったい誰が信じただろうか。

この文章のなかの林彪の2文字を劉少奇に置き換えれば、66年から69年にかけての文革最盛期に全土に示された劉少奇批判の告発文と大差のないことに気づけばこそ、林彪批判にみられる荒唐無稽なバカバカしさ、胡散臭さに、人民は鼻白む思いを抱いたに違いない。「イイカゲンにしてくれ」と。

権力闘争のために歴史をネジ曲げることは歴史への冒涜であり小賢しい猿知恵と思えるが、彼ら民族の歴史書が勝者の勝利宣言であることを考えれば、これもアリ、だな。
《QED》

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【知道中国 578回】               
      ――無産階級文化大革命的白髪三千丈式形容詞の“砲列”
         『挑山担海跟党走』(湖北人民出版社 1973年)
  
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 この本の初版出版は1972年12月で、第2版が73年9月。時期的には林彪事件も公表され、四人組主導の国を挙げての林彪批判キャンペーンもはじまっていたはずだが、行間にそんな雰囲気は感じられない。当然のように、ひたすら以って毛沢東への賛仰・賛歌だ。

「工農兵詩選」と銘打たれたこの本には40編を超える労働者・農民・兵士による作品が収められている。当然のように最初の頁には、『毛主席語録』から引用された次の2つの文章が麗々しく掲げられている。

「我らの文学芸術は凡て人民大衆のためのものだ。先ず労働者・農民・兵士のためのものであり、労働者・農民・兵士のために創作し、労働者・農民・兵士が利用するのだ」「文芸を革命機器全体における1つの枢要な構成部分としえたらな、人民を団結させ、人民を教育し、敵に打撃を与え、敵の有力な武器を消滅させ、人民が真情と道徳を一つにして敵と戦うことを手助けする」・・・

そこで、この本にみえる作品――それこそが「労働者・農民・兵士のために創作」され、「労働者・農民・兵士が利用する」「労働者・農民・兵士のため」の「文学芸術」であり、「革命機器全体における1つの枢要な構成部分」である「文芸」であるはず――を鑑賞してみたい。

試しに書名となった長編詩の「挑山担海跟党走」を読んでみたい。「山を背負い海を担って党と共に歩く」とは、なんとも稀有壮大で奇想天外な心意気だ・・・まあ、正気の沙汰とはいえそうにない。

とはいうものの、そういったら身も蓋もない。そこでともかくも読み進むと、これでもか、これでもかと現れる毛沢東賛歌。「翻身(奴隷から人間に生まれ変わる意味)したのも毛主席あればこそ、ご恩は海より深く紺碧の天より広く大きく、風に跨り波を切り前進する、嗚呼、革命路線の灯台よ」「労働者・農民は共産党にぴったり寄り添って、魔鬼宮殿(あくまのやしき)を焼き尽くせ。東の空が紅く炎え、雷の響き天を衝き、新しい天下が生み出される」「宝の本(『毛主席語録』)を開いて道筋を探れば、革命航路に灯台の灯り、自力更生で港を築き、天より大きな困難もなんのその」「偉大な領袖毛主席、気高い心に巨きな気迫、文化大革命発動すれば、紅い暴風天下を揺るがす」「万条の紅河は渦を巻き、凡ての滓を流し去る、労働者階級先陣競って闘い挑み、黒い陣営蹴散らし進む」「長江の流れは東海の水に繋がり、港は続くアジア、アフリカ、ラテン・アメリカ、革命の深情を地球の果てまで届ければ、世界を包む友誼の花よ」「五洲(せかい)の頸木を断ち切って、四海(せかい)のヘドロを取り除き、人間(このよ)にもたらせ天堂(きょうさんしゅぎ)を、地獄(このよ)を劫火で焼き尽くせ」「天下(このよ)を一つに立ち上がる、団結力はいよいよ強く、共に唱おう《国際歌(インター)》を、迎えよう、紅日が天下の隅々までてらすその時を」

「挑山担海跟党走」に続くのが「人民は最も毛主席を敬愛す」「毛主席が歩いた鉱山の道」「毛主席の温情は天より大きい」「紅い太陽の輝きが我が家を照らす」「毛主席に捧げる歌」「入党のその日に」「毛主席が私を大学に」など、歯の浮くような毛沢東賛歌の連続だ。

それしても、あの時代、こんな文芸が「人民を団結させ、人民を教育し、敵に打撃を与え、敵の有力な武器を消滅させ」ると、誰が信じていたのか
・・・面従腹背・変幻自在。
《QED》

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【知道中国 579回】                       
 ――立て、全人民よ! 熱烈にバアさんに学べ!
         『向優秀的共産党員学習』(上海人民出版社 1970年) 


 △
 この本が出版された時点では、毛沢東と林彪の間の権力を巡る闘いは、まだ表面化してはいない。暗闘の段階だったろう。
公式には「資本主義の道を歩む劉少奇」を打倒し、前年に開かれた第9回共産党大会で林彪は毛沢東の後継者の地位を確保している。まさに毛=林派によって導かれた文革路線は順風満帆で勇壮闊達。向かうところ敵なし。

加えるに、この本の出版元は超過激路線を突っ走った江青派の拠点もあった上海の人民出版社。ならば、書名を見ただけでも、この本の内容が容易に予想できるはず。

 冒頭に『毛主席語録』からの「私はこういったスローガンに賛成だ。つまり『一に苦を恐れず、二に死を恐れず』」という一節が引かれたこの本には、毛沢東の教えを荒唐無稽なまでに謹厳励行した優秀無類な13人の共産党員の“超感動的な物語”が納められている。

なにはともあれ、「一に苦を恐れず、二に死を恐れない共産主義の戦士」「革命の車をしっかりと引っ張り、一気に共産主義に突き進め」「プロレタリア階級の先鋒戦士 三大革命運動の闘将」「党にとっての好き娘」「一生を党の指示のままに捧げる」「一心不乱に社会主義の道を歩く鉄の意思」「元気溌剌の共産党員」「人民のために死して後已む」「プロレタリア教育革命に英雄的に献身した先鋒戦士」「毛主席への忠義は最高の党性」「毛主席に無限の忠誠を誓う良き党員」「社会主義の商業陣地を死守する先鋒戦士」「天目山上の青松」と、13人の「優秀な共産党員」を讃える報告の表題を並べただけでも、自らの人生を、滅私奉公ならぬ滅私奉毛に燃やし尽くした凄まじくも神々しいい姿が行間から立ち現れてくるのを、否が応でも感ぜざるをえない。たとえば「元気溌剌の共産党員」は・・・。

 この時、彼女は71歳で地区革命委員会委員を務め、その上級に位置する県革命委員会副主任でもある。革命委員会とは、文革派の攻撃によって崩壊した共産党組織に代わって打ち立てられた権力機構のこと。つまり彼女は、地域の大権を掌握しているエライさん。そんじょそこらのバアさんとは違うのである。

 1954年春、彼女は毛沢東の農業集団化・共同化の呼び掛けに応じて近在の貧農らと農業生産合作社を組織した。だが「叛徒、内なる敵、労働匪賊の劉少奇が資本主義の復辟を目論み」、悪辣な手段を使って合作社破壊に乗り出す。
そこでバアさん、「解放前、ワシらは地主や富農に虐め尽くされ、絞り取られ、まるで牛や馬のような惨めな生活じゃった。毛主席サマがワシらを集団化の光明大道にお導きくだすったんじゃい。合作社は死んでも解散せん。毛主席がお導きなさる社会主義の路線を断固として進むんじゃ」と立ち上がる。

 以来、一貫不惑で「毛沢東命」。やがて文革ともなると、「彼女は必ずや毛主席を守り尽くすと念じ、劉少奇ら走資派に資本主義の復辟なんぞは死んでもさせるものかと、堅く心に誓」う。来る夜もくる夜も眠い眼をこすりながら、解放前の辛酸を舐め尽くした生活を憶い起こし、「共産党員が困難に出会った時は」と、貧農の先頭に立って闘いを続ける。

バアさんの物語は、「一心を革命に、一心を人民のためにという紅い心に二心はない。毛沢東思想を活学活用すべく、彼女のさらなる努力は続く。より確実で大きな歩幅で、彼女は継続革命の大道を勇猛果敢に前進する」の一文で閉じられている。

苦境にたじろがず逆境にうろたえず、周囲を励まし敢然と困難に立ち向かう――彼女の生き方は京劇の名作に登場する老婆に重なる。
71歳の「元気溌剌の共産党員」は中国人が思い描いてきた婆さんの理想像。かくて文革も頼みの綱は婆さんだった・・・らしい。
《QED》
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