立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害 | 日本のお姉さん

立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害

阿比留瑠比さんの「国を憂い我と我が身を甘やかすの記」

超短信・また空しく時間を無駄にしました
2011/05/18 18:54

 ついさっきまで、菅直人首相の記者会見に出席し、1番前の列に座って手を上げ続けましたが、またしても指名されず、質問はできませんでした。4月12日の記者会見を最後に、産経は一度も質問できていません。

 さすがは国民の声に耳を傾け、情報公開が旨だと掲げる菅政権です。言っていることとやっていることがこれほど徹底して違うと、いっそ清々しいくらいです。

 と、記者会見の途中から何だか笑えてきました(笑っている場合ではありませんが)。菅政権のデタラメを知りながら民主党の議員の皆さん、いま声を上げずにいるあなた方は、この菅政権と「同類」「仲間」「同じ穴のナントヤラ」という決して消えない烙印を今、押されつつあるのですよ。

 このままでは、生きている限り、「ああ、あの無能で卑怯な…」とひとくくりにされるのです。私の知ったことではありませんが。

 「政(まつりごと)を為すは人に在り」(中庸)

 …最近はこういう言葉ばかり頭に浮かびます。つくづく空しいなあ。

菅首相を激励した孫社長とチャーチルと
2011/05/16 12:12


 さて、菅直人首相は14日夜、東京・赤坂の日本料理屋でソフトバンクの孫正義社長と会食をしましたね。孫氏については、今回の東日本大震災に当たって私財100億円を寄付するという義挙を行った人なので、あれこれ言いたくないのですが、この会食の際に菅首相を元気づけるという愚挙に出ました。

 同席していた福山哲郎官房副長官の説明によると、孫氏はこう語ったそうです。

 「嵐のど真ん中で船長を代えると言われても困る。そんなことはありえない。とことん頑張ってください。」

 震災発生以来、この一見良識のように見えて、実は的外れで根拠のない言説のなんと多いことか。朝日新聞や毎日新聞は一生懸命「今は総理を代えるべきときではない」とお題目を唱え、有害無益の菅首相を支えようとしていますが、それは国家国民に対する犯罪行為だとすら感じます。

 西岡武夫参院議長は、孫氏とは逆にこう指摘しています。

 「『急流で馬を乗り換えるな』という言葉があるが、急流を渡れず流されているのであれば、馬を乗り換えなければならない」

 至極真っ当で当然のことであると考えます。第一、危機の時代だからリーダーを代えないという考え方は、一見もっともらしく感じられる部分もありますが、過去の例を見ても正しくありません。孫氏は「ありえない」と言ったようですが、歴史上、いくらでもある話というのが事実でしょう。

 日本の歴史を振り返っても、国家存亡の危機にあった先の大戦中、東条英機元首相は辞任し、小磯国昭元首相、鈴木貫太郎元首相と代わってわけですが、何がなんでも東条氏が続けた方がよかった、と言えるでしょうか。

 英国では、第二次世界大戦の最中の1940年5月、ドイツとの融和路線・政策で失敗したチェンバレン元首相が辞任し、チャーチル元首相が後を襲っています。チャーチル氏の著書「第二次世界大戦」によると、5月8日の議会で、ロイド・ジョージ氏はこうチェンバレン氏を追及しました。

 「私は、首相こそ犠牲の模範を垂れるべきであることを厳粛に言う。なんとなれば、この戦争において、首相がその任を犠牲に供すること以上に勝利に貢献することはないのである」

 もちろん、過去の戦争と現在の震災復旧・復興とは異なりますが、英国の勝利は、優柔不断なチェンバレン氏が身を退いて、チャーチル氏が首相に就いたことよって導かれた部分もあるはずです。

 一方、わが国の現状はどうでしょうか。ちょっと話は飛びますが、美人を形容する言葉に、次のようなものがありますね。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」

 これに対し、最近聞いたところでは、菅首相の現在を表す言葉には、こんなものがあるそうです。言い得て妙であります。

立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害

 こんな存在をかばってどうしようというのでしょうか。理解に苦しみます。…ところで、月刊文藝春秋6月号の元テレビ朝日ロンドン支局長の廣淵升彦氏のコラムによると、チャーチル氏は海相時代の1914年11月、第一次世界大戦の最中にこう演説したそうです。

 「The maxim of the British people is "Business as usual" 」(我らイギリス人の至宝ともいうべき言葉は「何事もふだんのとおり」である)

 日本も見習いたいものだと感じました。

花岡さん、ご冥福を祈ります。
2011/05/16 07:54


 産経の元論説副委員長で政治評論家の花岡信昭さんが急逝されました。あまりに突然のことに言葉もなく、ただただ安らかにお眠りくださいというしかありません。

 私にとって、同じ社の同じ政治部の大先輩にあたるのですが、一緒に仕事をしたことはなく、実は接点はあまり多くありませんでした。とはいえ、時折いただくトラック・バックや、たまたま地下鉄車内や路上で会った際には、温かいお言葉とご叱咤をいただきました。感謝しています。

 ……記憶をたどり、いくつかエピソードを紹介しようかとも考えましたが、また後日に譲りたいと思います。

 本当に、これまでいろいろとありがとうございました。
五百旗頭氏「今の首相がバカかどうかではない」…。
2011/05/13 18:00


 本日、政府の復興構想会議の五百旗頭真議長(防衛大学校長)が都内で講演と記者会見を行ったのですが、その中で実に意味深な一言があったので報告します。まあ、その結論に必ずしも同意はできませんが、五百旗頭氏の本音というか立ち位置がある程度うかがえるセリフです。

 五百旗頭氏は、日本の歴史には今以上の国難がたびたびあったとして、次のように語ったのですが、ここに出てくる「今の首相」って、あのハートフルで誠実な人柄で知られる菅直人首相のことですよね。

Q 歴史家の五百旗頭さんに聞きたい。今回の地震をなにになぞらえるか?

五百旗頭氏 日本の歴史について躍進期がある。決定的なのは663年の白村江の戦いで、大和の2・7万の大軍が朝鮮半島に繰り出した。そして唐・新羅の迎え撃ちに遭って一日で惨敗した。その後、必ず唐・新羅が攻め込んでくると思い、防人を置いて、のろしの通信網をつくった。真剣に安保を考えながら、それ以上の努力をしたのは敗戦によって唐文明のすごさを知った。
710年に平城京をつくった。これは唐文明のミニュチュア。日本の文明水準は世界水準に達した。平安時代は平穏で、戦国時代には国は乱れに乱れて、「もうこの国はおしまいだ」と、「どうしようもない」と。今の総理がバカかどうかとかそういう問題のレベルではない。国中、血で血を洗う争乱で誰も責任を持てないのか、というほどの悲惨さだった。その中でも銃がやってくると50年のうちに世界一の保有国、生産国の水準になってしまう。国難の中、再建に向かう日本の姿は歴史の中で何度もあったし、これをよみがえらせたいのが歴史家としての夢だ。(了)



 …まあ、五百旗頭氏は、過去にはもっと大変な混乱・混沌もあったし、菅首相の資質を問うべきではないと言っているようですが、はからずも、菅首相を自分自身が、あるいはその周囲がどう見ているかを明らかにしてしまった形です。ある意味、当然と言えば当然ですが。

 本日は時間がないのでここまで。