日本がすっかり汚染列島になってしまうのが危険 武田邦彦
科学者の日記110512(2) 明るい未来は自分で作る
おそらく冷静に事態を見つめ、未来の日本社会を思い浮かべることができないのでしょう。
政府や文科省の発言を聞いていると、「我慢しろ、止める、文句言うな」など暗く、後ろ向きのものが多いように感じます.
その一つが「福島を見捨てる」という大方針です.
「そのぐらい、健康に関係ない」、「30キロ圏内は待避」、「児童や20ミリまでOK」、「校庭の土をひっくり返して地下水を汚す」など、いずれも極めて後退的な結果をもたらし、福島を見捨てることになります.
福島の人(もちろん、茨城、栃木なども同じ)は、放射性物質で汚染された大地で人生を送りたいのではなく、東電によって汚された大地を返してもらう権利があるのです。
東電は、原発で収入を得て年俸4000万円を取っていたのに、
東電は、60京ベクレルを漏らしてもバスを用意しません。
東電は、水を汚してもペットボトルを用意しません.
東電は、土地を汚しても元に戻すこともしません.
東電は、児童が被曝していても疎開の学校を用意しません.
東電は、それでも重役が報酬を受け取っています.
最近では見ることができないほどの悪質な会社です.
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東電はどうなっても良いのですが、福島は元に戻さなければなりません。
悪質な会社にひっかかったという感じですが、回復方法はあります.
なぜ、政府も福島県もすぐに手がけないのでしょうか?
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畑を耕して野菜を植え、田んぼを作り、小学校を開校する前にやることがあります。それは「綺麗にしてから」ということです。
どんなものでも、汚れることがありますが、汚れをそのままにしてやる人はいません.まずは汚れをとって、それから取りかかるのが常識です.
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「放射性物質」は「放射線」ではなく「粒、粉、チリ」です。だから、まずそのチリを除いてから生活し、学校を開き、農業を進めたらどうでしょうか?
自衛隊、ボランティア、農家、サラリーマン、今まで日本にお世話になった老人などが総出で、まずは「福島を清掃する」ことから始められることを推奨します.
いかに「1年100ミリシーベルトまで大丈夫」と言っても、それを信じる外国人はいません. もしも福島を綺麗にしなければ、福島の子供の健康が損なわれると共に、経済的にも大きな損害が続くでしょう.
1年20ミリなどという基準は世界では通用しません.それはすでに、外国の論評でも明らかです。
そうなると、今後、30年、福島には外国からの観光客や外資系の会社は来ないし、福島産の農作物ばかりではなく工業製品も輸入規制にあうでしょう。
日本人なら、あるいは福島の人が可哀想だからということで、福島の農産物を買うかも知れません.でも、外国人はそんなことは考えずに「何ベクレルですか」と聞くだけです.
そんなときに数値を示さずに「安全です」などと言っても、信じてもらえないのは当然です.逆に「土地が汚染されているのに、なぜ野菜だけ綺麗なのですか」と聞かれて困るだけです.
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原発から半径20キロの地域から、除染した方が良いと思います.
まずは、道路、公共施設、学校、重機が使える田畑や平地から始め、次に森林を伐採し、草を刈り取って原発の横に焼却場を作り、全て焼いて葉についている放射性物質をフィルターでトラップします.
まずは出来るところから手をつけるだけで、放射性物質は2分の1から3分の1に減るでしょう.
除染する目的、それは「故郷を取り戻す」ということであり、「日本はこのぐらいではへこたれないぞ」という力を示すことです.
もし、「原発事故があっても、1年以内にクリーンな大地を取り戻す日本」ということになれば、それはとても良いことだからです.
もちろん、福島市、二本松市、郡山市はもちろん、いわき市も白河市も関東のホットスポットも、自治体は行動を起こしてください。「これぐらい」などと言っていると30年続きますから、「あそこは汚れている」ということになるだけです。
先祖代々の故郷を綺麗にすることはできるのです!!
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人間には失敗はあるし、悪い奴もいる。
でも、それを素直に認める勇気を持ち、
どうしようもないときには逃げ、
出来るようになったら全力を尽くし、
そして故郷を取り戻す。
福島の人を助けること、
それは汚染された野菜を食べることではなく、
批判したり受け入れなかったりすることでもなく、
福島を綺麗にするのに力を貸すことだ、
それなら、日本人は全力を尽くすだろう.
でも、その福島がSPEEDIのデータを隠し、
野菜のベクレル表示をせず、
ウシや瓦礫を日本中に拡散することを続ければ、
あるいは日本人でも愛想を尽かすかも知れない、
自分たちの失敗は自分たちの世代で片付けておこう.
(平成23年5月11日 午前10時 執筆)http://takedanet.com/2011/05/1105122_9694.html
勝手に王様になった菅政権 民主・自主・公開の3原則
小佐古内閣官房参与が20ミリシーベルト事件で4月30日に辞任した後、 5月2日に記者会見が予定されていた。
その記者会見は官邸からの「守秘義務違反の可能性がある。懲役1年まである」という脅迫によって中止になったと、週刊誌「女性自身」が報じている.
巨大な問題が生じた。
【1】 政府による原子力基本法違反
原子力と言う巨大なエネルギーを扱うにあたって、議会は「原子力基本法」を作った。これは「国会」で議決されたものであり、「政府」は法律にそって運営されるものであり、みずから勝手に法律を無視することはできない。
原子力基本法のもっとも重要な原則は「民主・自主・公開」の3原則であり、この「公開」は「原子力に関するあらゆることの公開」であって、他の政府の業務と一線を画する.
国民はこの3原則を政府が守ることを前提に原子力を認めてきたのである.
それを「官邸」なるものが違反したのだから、懲役を受けるのは官邸の方だ。
【2】 政府による「守秘義務違反」の違反
公務員には守秘義務というのがあるが、それは無限の力を発揮するものではない。これについてはすでに裁判で多くの判例があり確定している。
それは「何を秘密にするか」ということは、公務員の上司が決めるのではなくて、その情報が真に「国民に対して秘密にするべきであるか」ということで決まるというのが判例である。
基本的には外国との問題のように日本が国として損をするようなものは守秘義務が発生するが、時の政府が損をするという情報は守秘義務の対象にはならない。
今回のことは、内閣官房参与の仕事に関することであり、放射線などの学術的なことでもあるので、国として損害を受けるというような政策を彼が扱っていたとは考えられない。
従って、官邸が辞任した内閣官房参与の行動について守秘義務をもとに脅迫したとしたら、まるで独裁政権のようなものである。
【3】 放射線防御の法律を破る政府
このブログで何度か書いたが、放射線防護の法律は1年1ミリを限度としている。
それに対して1年20ミリという基準は国内に全く強制力のない国際放射線防護委員会の勧告である。
国際放射線防護委員会がどんな勧告をしても、日本政府はそれに従う義務はない。事実、これまでも日本の国内の放射線に関する法律は、国際放射線防護委員会の勧告を受けて独自に委員会を開き、最終的には日本の法律の形となって初めて国内で効力を発する。
今回「国際放射線防護委員会」を隠れ蓑にして「ICRPが言ったから20ミリまでOK」という奇妙な論理を展開している.
首相とか政府というのは、王様ではない。
つまり、何でも力を持っているわけではなく、法律の範囲内で行動できるだけだ。それも国民からの付託である。
今回の福島原発のことで、「非常時」ということを理由に、まるで独裁政権のような決定が次々と行なわれている。
一方では、政府は「非常時」ではないとしている。つまり、「漏れた放射線は健康に障害がない」し、さらには小学校の児童すら1年20ミリシーベルとまで浴びてもよいので、問題は生じていないことになる。
民主党は初めて「国家権力(そんなものは民主主義では存在しないが)」を手にして、王様になったようだ。
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私たちが知らなければならないこと、
1) 原発が危機に陥ったら、数時間前には国民に知らせなければならないこと、
2) 放射線が風に乗って来るときには、その警戒警報を出すこと、
3) 内部被曝を含めて国民がどのぐらい被曝したかを示すこと、
4) 原発から離れていても、雨などで放射線量が高いところは警告を発すること、
5) 野菜などについては規制値以下でも、業者に表示を命じること、
などがあるが、国民を守る立場の政府が、国民が自らの健康を保つために知らなければならないことを隠し続けているのは、本当に困ったものである。
5月11日に、神奈川県産の茶葉のセシウムが基準以上になった。このようなことが「突然」明らかになるのは、毎日の情報提供が不足していることを意味している。
(平成23年5月12日 午前7時 執筆)
http://takedanet.com/2011/05/post_3723.html
武田邦彦
科学者の日記110513 3号機の爆発と原発問題
福島原発1号機や3号機が不安定で、原子炉に水がなかったり、汚染された水が漏れたり、温度が上がったりしています. 東電の計画も遅れ勝ちになっています。
それもあって、福島原発の状態を心配している方が多いので、ここで現在の福島原発状態とその他の原発問題について少し触れてみたいと思います。
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現在日本の原発中で最も危ないのは、福島原発ではなく、北陸の方でトラブルに巻き込まれている高速増殖炉「もんじゅ」でしょう。
「もんじゅ」はかつて冷却剤として使っていたナトリウムが漏れるという事故を起こし、10年ぐらい止まっていました。
それが、やっと技術的にも社会的にも解決して、2010年に運転の準備を始めたところ、その準備中に重たいもの(燃料を引き上げるもの)を炉の中に落とし、それが引き上げられないために、どうにもならない状態になっていると言われています。
この事故は少し報道されていますが、全国的にはほとんど知られていません.
日本は民主主義ですから、政府が箝口令をひかれているということはないでしょうし、報道の自由があるのでNHKが報道を控えていることもないと思いますが、情報が入ってきません。
事態はひどく深刻で、責任者が自殺しています.
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高速増殖炉は、 ナトリウムを減速材に使っている炉で、フランスもフェニックスという名前の高速増殖炉を開発していましたが、今では中止しています。
フランスができないから日本もできない、ということではありませんが、事故後10年も検討し、万を辞して運転の準備を始めたら途端に、トラブルに巻き込まれたというのですから大変なことです。
高速増殖炉についてはもう少し情報を取ってこのブログにも書いていきたいと思っていますが、落ちたものを拾うのに失敗して、にっちもさっちもいかないこと、地震が予想される地盤の上にあること、構造が複雑で事故に弱いこと、さらにはプルトニウムを使っていることなど、危険が満載されています。
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次に危ない原発は、福島原発でも浜岡原発でもなく、わたくしは日本にある「その他の原発」と考えています。
福島原発はすでに破壊されていますし、浜岡原発も地震についての設計はかなり安全です(それでも、不完全なので私は浜岡原発は止めるべきと考えています)。
これに対して、日本の他の原発は、震度6の地震が来たら損傷を受けると予想されますので、福島原発よりもはるかに厳しい状態にあるということがいえるでしょう。
特に、日本海側にある原発が破損すると放射線物質は、偏西風に乗って日本全体に及びますから、これはもう大変なことになると考えられます。
なぜ、地震で、柏崎、福島、女川、東通と4つ(100%)破壊されたのに、まだ日本の原発が運転されているのか、私は理解に苦しみます.
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浜岡原発は停止が決まりましたが、停止をしても崩壊熱は出続けますので2、3年は危険な状態が続きます。
福島原発の1号機は、5月8日、内部の高い放射線を持つ空気が大気中に放出されましたが、皮肉なことに、すでに現在までに60京ベクレル程度の放射性物質が大気中に放出されていますので、新たに放出される量は、今まで放出された量の1億分の1ぐらいになると考えています。
また5月12日には1号機の原子炉内部の水位がずいぶん低かったと発表されました。
もともと、1号機は最初の段階で燃料が壊れて下に沈んでいることが予想されていましたし、水位計は異常な値を示していましたので、この結果は驚くべきものではありません。
通常の状態で燃料が溶けるのと、いわゆる「メルトダウン」とは違いますので、これも「予想通りの合理的な結果」です。
3号機は温度上がって普通では危険な状態です。
しかし、これも3月の中旬に大爆発を起こしていますので、最大で同じ規模と考えられます. それは、3月の中旬に起きた爆発が水素爆発であるか核爆発であるかは明確でないこととも関係があります。
一説には、爆発後の爆風の速さが音速を超えていたことから、核爆発ではないかとみられています。
核爆発と水素爆発は、爆発の種類としては決定的に違いますが、原発があのように破壊された状態では、結果的に水素爆発も核爆発もそれほど大きく違うわけではありません。
つまり、原発というものを技術的に見たときには、この2種類の爆発の違いは大きいのですが、放射性物質で被爆する私たちから見ると(たとえば赤ちゃんをどこまで逃がすかというようなことでは)、あまり強い関係はないのです。
一応、危険がある可能性を頭の隅において、その対策を具体的に考えておいたほうが良いのですが、行動はまだとらなくても良いと思います.
4号機は、使用中燃料の貯水プールの下部が破壊されていますので、それを至急、補強する必要があります。5月中旬には補強が終わるので、これについては特に問題がないと考えています。
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原発について、日本人記者などを集めた記者会見が延々と行われていますが、わたくしは、これは政府が福島県やその他の地方の被曝の問題が深刻なので、それを隠すために行っている情報操作とも考えられます。
今、大切なのは「長期間続くと考えられる国民の被曝」に対する至急の対策であって、できるだけ早く福島や近県をクリーンにするために何とか日本全体で福島や近県を手助けすることだと考えています。
しかしその力が出ないのは、まだみんなが福島原発のことが気になり、議論がそちらに行っているというのが私の見解です。
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また、神奈川県の茶葉がセシウムで汚染されていたように、汚染は少しずつ外に広がっています。
これを何とかして止めなければなりません。ドンドン拡がったら、日本の農作物は食べられなくなるからです.
魚も油断できません.
その意味で、ウシや瓦れきを全国に持って行って処理することは全く非常識な行為であり、校庭の表土を天地替えすると地下水が汚れますし、汚染された汚泥をセメントで固めたりすると、それがどこに行くか判りません。
家畜を24都道府県に移動させる計画は、「産地」が判らなくなるという点で、日本の食材にさらに打撃を与えるでしょう.
原発の情報に気を取られると、日本がすっかり汚染列島になってしまうのが危険です。
(平成23年5月13日 午前8時 執筆)
武田邦彦
http://takedanet.com/2011/05/1105133_d590.html
汚染を広げないことが大事なので、ウシや瓦礫を
よそに持っていって処分してはいけないのですね。
しかし、だんだん放射能汚染にも慣れてきてしまって、
最近、風向きも気にしなくなったし、気象庁のホームページも
見にいかなくなったよ。くよくよしても、どうにもならないし、
どうにかなるのなら、専門家が政治家に教えてどうにかするようにしてよ。
原発の20km圏内にいる野良牛は殺されねばならないのか?
水やエサを与えずにじわじわ殺すよりは安楽死の方が
思いやりがあると思うけど、立派に生きている野良牛や
野良ネコや野良イヌはそのままにしてやってほしいよ。
だめなのかな。木や草を全て刈り取って焼いて放射性物質を
フィリターでトラップしたら、野良牛の食べる草はもうなくなってしまう。
必然的に野良牛は飢え死にしなければならないのか。