こんな状況に誰がしたんですか。
一時帰宅に同意書「役人仕事だ」と住民反発
読売新聞 5月11日(水)0時25分配信
福島県川内村へ10日に一時帰宅した住民に対し、国側が「警戒区域が危険であることを十分認識し、自己の責任において立ち入ります」などとする同意書に署名を求めた。
一部の住民から反発の声があがり、遠藤雄幸村長も「同意したうえで一時帰宅するのだから、改めて署名を取る必要はない。役人仕事でやめたほうがいい」と批判した。
原子力災害現地対策本部長の池田元久・経済産業副大臣は報道陣に対し、「(警戒区域内では)責任を持って安全に気をつけて行動してもらいたいとの趣旨だった」と説明した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110511-00000047-yom-soci
一時帰宅の福島・川内村住民、政府の「自己責任」押しつけに激怒…震災から2か月
スポーツ報知5月11日(水)8時3分配信
福島第1原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」内にある福島県川内村の住民54世帯92人が10日、警戒区域に入り、一時帰宅した。同区域内に指定された9市町村では初めて。午前中の説明会で国側が「(住民らは)自己責任で立ち入る」との同意書への署名を求めたことに、住民からは「責任を押しつける気か」などと反発の声が上がった。防護服を着た住民は、わずか2時間の“滞在”で、自宅から思い出の品などを持ち出した。11日で、東日本大震災からちょうど2か月を迎える。
待ち望んだ一時帰宅に先立ち、住民らは福島第1原発から20キロ圏外にある“中継基地”の村民体育センターにバスで到着した。川内村などによると、警戒区域から避難している約120世帯のうち、原発から半径約15~20キロに家がある54世帯の21~85歳の92人が参加。原則1世帯1人だが、多くが2人参加を申請した。
村民らは政府が用意したバスに分乗。それぞれの自宅近くへ送られたが、午前中に行われたセンターでの説明会で不満が爆発した。国側が「(住民らは)自己責任で立ち入る」とする同意書への署名を求めたことに「責任を押しつける気か」と住民は強く反発。「国や東京電力は責任を取らない気か」「私たちは被害者なのに」と怒りの声を上げ、国側は「十分、注意してほしいとの趣旨だ」と釈明に追われた。東電の担当者が放射線対策の防護服や線量計の使用法の説明を始めると、村民の1人が「おまえは誰だ、名乗れ」と大声を上げ、担当者が「申し遅れました」とわびる一幕もあった。
政府の現地対策本部担当者は、同意書について川内村と相談して決めたとし「放射能汚染を含めたリスクが存在することを、村民に了解してもらうことが目的」と説明したが、政府の責任回避とも取られかねない手法に、不満が漏れた。
白い防護服姿の村民らの滞在時間は約2時間。持ち出し品は、1世帯で縦横約70センチの透明のポリ袋1枚に入る分量に限定された。夏物の衣類や貴重品、思い出の写真などを持ち出す人が目立った。新潟県に避難中の秋元トヨ子さん(67)は、夫のために日本酒を持ち出したが、食品のため没収。「がっかりした。今度はいつ帰れるのか」と肩を落とした。
対策本部によると、滞在中に受けた個人の累積放射線量は暫定値で最低1マイクロシーベルト、最高で10マイクロシーベルト。一時帰宅した場所付近の空間放射線量は毎時0・12マイクロシーベルトから5・80マイクロシーベルトだった。92人全員が放射性物質の除染の必要はなく、汚染した持ち出し品もなかった。また、福島県と環境省は、警戒区域内で犬9匹と猫3匹を保護し運び出した。
わが家に行くだけなのに、防護服姿で手には線量計、時間制限付きという理不尽。川内村の遠藤雄幸村長は「こんな状況に誰がしたんですか。一日も早く、元の生活に戻りたい」と漏らした。
◆警戒区域と計画的避難区域 災害対策基本法は、生命や身体への危険を防止するため必要な場合、市町村長が「警戒区域」を設定し、区域内への立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできると定めている。無断で立ち入ると10万円以下の罰金などが科されることも。今回は原子力災害対策本部長の菅首相が、4月22日に福島第1原発から半径20キロ圏内の9市町村を警戒区域に設定。20キロ圏外でも1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある地域は、指定から1か月をメドに避難を求める「計画的避難区域」に設定した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110510-00000284-sph-soci
思い出探し、ペットと再会 暑い防護服、我が家にわずか2時間 福島・川内村
産経新聞 5月11日(水)7時57分配信
散りゆく桜、人けのない山里に響く鳥やカエルの鳴き声…。他市町村に先駆け、福島県川内村で10日に実施された初の一時帰宅。久々に自宅に戻った住民らは思い思いに持ち出し品の整理にあたった。わずか2時間の滞在。中には目的を達成できず、肩を落とす住民の姿もあった。防護服の着用はとても暑い。こうした帰宅が今後も繰り返されることになりそうだ。(小野田雄一)
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◆結納の写真
住民が立ち入った警戒区域の民家は、石垣や屋根が崩れ、ブルーシートが掛けられた家もあり、震災の爪痕が残る。警戒区域に入り、山あいの道を走ること約30分。車窓から見える畑には何も植えられておらず、春というのに灰色じみていた。
住民らはマイクロバスでそれぞれの自宅まで送られた。バスを降りる前には、東京電力の社員が放射線量を測定した。
「このアルバムを取りに来たんだ」。同県郡山市の避難先から約45日ぶりに自宅に戻ったという農業、小林信一さん(65)は、戸棚から出した写真アルバムを眺めて目を細めた。
アルバムは次女の一枝(かずえ)さんの結納時のもの。一枝さんは3月26日に結婚式を挙げる予定で、すでに親類や友人に招待状を発送していたという。しかし原発事故ですべてが白紙になった。
現在、一枝さんは婚姻届を出した夫とともに同県白河市に住んでいる。「何としても式を挙げてやりたい。親の務めだと思う」。ポリ袋に印鑑やアルバムなどを詰めながら力を込めた。
◆見知らぬ犬
生命保険や火災保険の証書を取りに来たという林業、大和田亥三郎(いさぶろう)さん(76)、ロクさん(74)夫妻が自宅に戻ると、犬と猫が飛びついてきた。ペットの雄犬のココ(6)と雄猫のメコ(3)。ココは亥三郎さんに体を擦りつけ、クーンクーンと絶えず鼻を鳴らした。
4月22日の警戒区域指定の直前、夫妻は自宅に戻り、餌をありったけ置いてきた。約20日ぶりの再会にもかかわらず、2匹は元気いっぱいだった。しかしペットの連れ帰りは行政側が別途行うため、この日連れ帰ることはできない。
ロクさんが驚いたのは、ココの傍らに見知らぬ黒い雌犬がいたこと。体は痩せ、首輪がずり下がっている。耳には何匹ものダニが寄生し、体をふくらませていた。飼い主が避難する際、連れて行けずに野に放したのだろう。
黒い雌犬はロクさんが縁側の戸を開けると、すぐに家に入ってきた。ざぶとんに座り、まるで自分の家のようだ。ロクさんは「あんたどこの子なの。家族が誰もいなくなっちゃって、寂しかったねえ…」。そういって優しく頭をなでた。亥三郎さんは「早くもう一度、みんな元通りに一緒に住める日がくるといいが」と顔色を曇らせた。
◆牛の姿なく
牛の畜産を営む秋元哲雄さん(74)とカツ子さん(73)夫妻は、警戒区域の指定前、飼育していた肉牛10頭を牛舎から出した。餌がなくなり、餓死させたくなかったためだ。一時帰宅で牛を見つけるつもりだったが、数十分間探し歩いても、牛の姿はどこにもなかった。
カツ子さんは自宅に戻り、「どこか山の方で群れを作って暮らしてるんでしょう。足がもう棒のように疲れました」とふくらはぎをさすった。哲雄さんも「警戒区域外に住む村民が牛を最近出荷したところ、高値で売れたと聞いた。うちはそもそも警戒区域内なので出荷すらできない。原発の事故は非常に残念です」と肩を落とした。
カツ子さんは庭に咲く花を見つめながら「きれいに咲いたのに、見る人がいないんじゃかわいそう」と力なく笑った。何年もかけて手入れした庭には、ドウダンツツジや桜、桃、チューリップなどの花木が、いつもの年と同じように美しい花を咲かせていた。
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【用語解説】警戒区域
災害対策基本法は、生命や身体への危険を防止するため必要な場合、市町村長が「警戒区域」を設定し、区域内への立ち入りを禁じたり、退去を命じたりできると定めている。無断で立ち入ると、10万円以下の罰金などが科されることがある。原子力災害対策特別措置法では、原子力災害対策本部長が自治体などに必要な指示を出すことができると明記。今回、本部長の菅直人首相が4月22日、福島第1原発から半径20キロ圏内の9市町村を警戒区域に設定した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110511-00000101-san-soci