福島50(フィフティ)の今日とおととい | 日本のお姉さん

福島50(フィフティ)の今日とおととい

原発作業員、体内被曝量「わからない」 検査求める声(1/2ページ)

フクシマ50、続く苦闘 蓄積する被曝量、不安とも戦う(1/3ページ)
2011年4月10日9時0分
高濃度の汚染水を入れる予定の集中廃棄物処理施設の地下2階。まだ30センチほどの水がたまっている=8日、福島第一原発、原子力安全・保安院提供
 いったい終わりは来るのだろうか――。東京電力福島第一原発で続く過酷な作業は、収束の道筋すら見えないまま1カ月を迎える。「フクシマ50」と海外メディアから称賛された作業員たち。不安と苦悩を背負い、見えない敵と戦い続ける。
 「再登板もあるかもしれない」。首都圏に住む東京電力社員の妻は4月、夫からこう打ち明けられた。震災の数日後から福島第一原発に詰め、最近ようやく東京に戻ったばかり。現場を離れても勤務は連日早朝から深夜まで続き、家族と話す時間はほとんどない。
 「いまは平気でも、この先、健康は大丈夫?」。妻は心配する。
 現場では当初、放射線量を管理する線量計が足りず、180人が線量計を持たずに作業したこともあった。食事は朝が乾パンと野菜ジュース、夜が缶詰と非常食のご飯。作業の合間に床で雑魚寝という劣悪さだった。
 現在、食事は3回に増え、一部は数十キロ離れた宿に泊まれるようになった。東電関係者によると、線量計も全員に行き渡るようになったが、「これまでにどれだけ放射線を浴びたのかわからない」と不安を訴える作業員は少なくない。
 3月下旬に作業拠点となっている「免震重要棟」の放射線量が高くなり、作業員に動揺が走った。
 免震棟は外気を取り込まない空調があり、壁も厚い構造になっているが、東電は対策として換気フィルターを交換。窓などから透過力の強いガンマ線が入らないよう、77枚の鉛の板を窓枠に合わせて設置した。
 社員を派遣している企業の関係者は「鉛のスーツを着せたいぐらいだ」と話す。第一原発には内部被曝(ひばく)量を計測する「ホールボディーカウンター」と呼ばれる機器もあったが被災して使えず、検査車両で代替している状態だ。
 「何年かたって症状が出る作業者が現れるのではないか」。過去に原発作業員の労災問題を担当した鈴木篤弁護士は心配する。
鈴木弁護士が担当したのは1977~82年に第一原発で配管工などとして勤務した男性。退職後に多発性骨髄腫と診断され、2007年に死亡した。被曝によるものと労災認定されたが、損害賠償を求めた訴訟では東電が責任を認めず、請求は棄却された。
 「被曝と、事後に発症した病気との因果関係を科学的に立証するのは極めて困難。いま、現場で作業する人たちは自ら予防する余裕すらないだろう。国や東電は十分な予防措置と、万が一の時の補償をしっかり検討していく必要がある」と話す。(佐々木学、板橋洋佳)
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 「そっちは何人出すんだ。覚悟を見せろ」
 地震発生直後、原子炉メーカー「日立製作所」のグループ企業の会議室。福島第一原発で作業にあたる部門の担当者が、技術管理をする社員に詰め寄った。離れた場所から指示を出すのではなく、現場で危機感を共有し、難局を乗り越えようと訴えた。激しい応酬の末、多くの技術系社員が現場に入った。
 社員の生命に関わる任務だけに、同社の中堅幹部は「重い決断だった」と振り返る。

 東電の協力会社から作業に参加した40代の男性は、「行きたくなかったが、断れば今後の仕事がなくなる」と打ち明ける。日当は1万数千円。「時給数万円で雇われた建設関係の作業員もいるらしいが、日頃から東電と協力関係にある我々は通常の日当で働いている」
 一方で、「自分たちしかいない」と責任感を持って志願した同僚も多く、「現場には団結感があった」と話す。
 ある下請けの工事会社では、高齢の専務や社長たちが作業に名乗り出た。「俺たちだって簡単なケーブルの敷設作業ぐらいはできる」。若い作業員の将来を思い、盾になると決意した。比較的安定している第二原発では、地元の高校を出て採用された若い女性も泊まり込みで勤務しているという。(小島寛明、小松隆次郎)
〈フクシマ50〉 福島第一原発では、東京電力のほか東芝や日立製作所など関係会社の社員たちが復旧作業を続けている。地震発生時には700人以上いたが、3月15日の2号機の爆発で大勢が退避し、約70人で作業を続けた。残った人数は当初「50人」と発表されたため、海外のメディアが「フクシマ・フィフティー」と報じ、広まった。
 東電によると、現在は約700人が復旧班、情報班、医療班、保安班などに分かれて勤務している。当初は10日以上泊まり込む作業員が多かったが、最近は5勤2休など交代で作業している。作業員の被曝(ひばく)量は年間100ミリシーベルトとされていたが、今回は250ミリシーベルトに引き上げられた。
http://www.asahi.com/national/update/0409/TKY201104090443.html


2011年4月12日3時1分

 高濃度の放射能に汚染された福島第一原発の復旧作業にあたる作業員の間で、放射能への不安から早期に体内の被曝(ひばく)量を検査するよう求める声が高まっている。第一原発の被災後、その検査が十分にできない状態が続いているという。

 体の表面についた放射性物質はシャワーで洗い流せるが、呼吸で体に入った放射性物質の一部は体内に蓄積される。東京電力などによると、体内の被曝量を測る機械「ホールボディカウンタ」は、第一原発内に4台設置されているが、被災後は使えない状態。機械を積んだ車両を他の原子力関係機関から借り、いわき市内で検査している。

 だが、復旧のため短期に作業員を大量動員した非常事態の中で、初めて原発内に入る作業員の入所時の検査は行われていない。成人男性の平均的な被曝量を見積もって、その後の被曝量の上積みを測るやり方にしているという。

 また、以前から原発の放射線管理区域内で働いていた作業員は、被曝前歴などを記した「放射線管理手帳」を持っているが、避難指示が出ている第一原発周辺に事務所がある企業が多く、手帳を取りにいけないまま作業に入っている人もいるという。

 こうした状況に加え、3月中は放射線量を測る携帯線量計が不足し、グループで1台だけ持たせる状態だった。このため、作業員から「体内の被曝量もどれだけになっているか、わからないのではないか」と不安を訴える声が出ていた。

 原発に入所後のホールボディカウンタによる検査は3カ月ごとと定められているが、作業員を派遣している協力企業幹部は「危険な環境にいる全作業員対象で、早期に検査を受けさせるべきだ」と強調。他の電力会社関係者も「現場に詰めっぱなしの東電やメーカー幹部の体も心配で、調べる必要がある」と話した。

安斎育郎・立命館大学名誉教授(放射線防護学)は「呼吸や食事などで放射性物質を体内に取り込む内部被曝は、放射線を体の中から長時間浴びることになるので極めて危険。専用のマスクなどでしっかりと予防することが重要だ。内部被曝は検査をしなければわからない。作業員の不安を和らげるためにも、ホールボディカウンタなどで検査しながら作業することが望ましい」と指摘した。

 東京電力広報部は「必要に応じて、定期的な検査も検討していく」としている。(小島寛明、奥山俊宏、佐々木学、中村信義)

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 〈ホールボディカウンタ〉 身体を透過してきた放射線を検出するなど精密な検査をする機械。各電力会社は、放射線管理区域内の業務従事者について、入所時、3カ月ごと(女性は1カ月ごと)、退所時などに体内の放射線量を測定している。

http://www.asahi.com/national/update/0411/TKY201104110626.html