復興には、数兆円必要かもしれない。 | 日本のお姉さん

復興には、数兆円必要かもしれない。

Twitterで、池田信夫さんや早野龍五さんのツイートをずっとフォローすると
役立つそうです!!
地震の跡地は政府が全て買い上げて、(また津波が来る道だから。)
高台に新たに家を建ててやるべし。
関西電力は、東京に電力を分けてあげると言っていたが
関西人もいくらでも節電するから、早く手を売ってちょうだい。
原発は、3号機も爆発したなら2号機だって爆発するのでは?
みんなをもっと遠くまで非難させなくていいのだろうか?
1号機の爆発だけでも、被爆した人がでたのに。

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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』

   Q:1203 政府、国民は、復興・救済にどのくらいの資金を用意すべきか


   ◇回答

    □水牛健太郎 :日本語学校教師、評論家
    □北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト
    □金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
    □真壁昭夫  :信州大学経済学部教授


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        ■■ 編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:1202への回答、ありがとうございました。みなさんはどこでどういう状況
であの強い地震に遭遇されたのでしょうか。わたしは、ちょうどホテルに投宿して部
屋に入った瞬間でした。建物が崩壊して瓦礫の下に埋まったときのことを考え、とり
あえず水と簡単な食料とブランデーを準備して、比較的頑丈そうな机の下に身を隠し
ました。ですが、超高層ビルが崩落した場合は、水も食料も関係ないかとも思いまし
た。揺れは、これまで経験したことがないほど大きく、しかも長く続き、パニックに
ならないよう心がけました。ホテルの館内放送がすぐに繰り返し流れ、耐震構造なの
で心配ないと繰り返されたので、だいぶ安心できました。その後も、ホテル側の対応
は見事でした。

 しかし、その後のニュースを見るのが辛かったです。はじめてわかったのですが、
自身も大きな揺れを経験した場合、被災地の映像を見ると、恐怖がよみがえってくる
のです。その夜は、ホテルの部屋が確保されていたので、帰宅難民と呼ばれた人たち
に比べると、わたしは恵まれていました。出版社の友人たちを泊めようと考えました
が、電車が止まり、道路は大渋滞で、交通が麻痺していたので、ホテルまでたどり着
けないとのことでした。

 現在の懸念は、原子力発電所です。東京電力も、政府も、できるだけ早く正確な情
報を公開すべきです。情報がないと、疑心暗鬼が広がり、さらに危険な状況が生まれ
ます。

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■今回の質問【Q:1203】

 政府、国民は、この大災害からの復興、被災者の救済に、どのくらいの資金を用意
すべきなのでしょうか。


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                                  村上龍
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 ■ 水牛健太郎 :日本語学校教師、評論家

 まず、ご遺族・被災者の皆様に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。地震
と津波の恐ろしい映像を目にするたび、戦慄を新たにしています。

 さて、復興・救済に用意すべき資金ですが、いくらと具体的に申し上げることは、
たとえ概算であっても、土木などの公共事業の専門知識が必要だと思われ、私の手に
あまります。その上で、復興において貴重な考え方だと思うことは、「原状復帰」に
こだわらないことです。

 津波に見舞われた地域は、報道された専門家の意見によれば70センチ程度地盤が
沈下したといいます。そのために水が引かず、水浸しの状態になっています。壊滅に
近い街の状況を見るにつけ、原状復帰は極めて困難です。

 それに加え、今回の被災地のほとんどは過疎地であり、ただでさえ若い働き手が不
足していますが、今回の被害により、人口の流出がさらに加速する可能性が高くなっ
ています。昭和30~50年代に形成されたと見られる街並みは、今回の地震・津波
以前に既に、人口の現状と合わなくなっていたはずです。また、地域の産業であった
漁業も、後継者不足は深刻なものがあります。

 元の場所に戻ってできるだけ元に近い生活を営みたいと考えるのは自然の情であり、

本来国は最大限の努力をすべきなのですが、それが実際に可能なことなのか、また望
ましいことなのかは考える余地があります。水浸しになった場所に街を再建し、担い
手もほとんどいない漁業を多額の補助金を出して再興すべきなのでしょうか。

 言うまでもなく、国家財政はひっ迫しており、日本経済の勢いも以前とは比べ物に
なりません。阪神淡路大震災時よりもさらに国力は低下しています。いかにお金をか
けずに被災者の生活を保障し、未来を切り開いていくかを考えざるを得ません。それ
を考えると、「原状復帰」の考え方からは離れて、むしろ安全な高台に近い場所に、
現在の人口構成に見合った新しい街を新しい発想で再建すべきだと思います。

 関東から東海・南海地域にかけて、近い将来巨大地震が予想されています。震災後
の街の再建は、関東に住む私たちにとっても決して対岸の火事ではありません。「原
状復帰にこだわらず、その時の実情に合わせた未来志向の街づくりをする」ことは、
今後予想される震災においても重要な基本的な考え方だと思います。

                     日本語学校教師、評論家:水牛健太郎

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 ■ 北野一   :JPモルガン証券日本株ストラテジスト

 失われた人命は、いくらお金を積んでも戻っては来ません。その意味では、測り知
れない損失を我々は被ったことになります。ただ、生産設備や社会資本(以下、ス
トック)は、作り直すことは可能です。その復興にいくら資金が必要か。棄損された
ストックの総額がいくらになるのか分からないので、なんとも言えませんが、阪神大
震災を参考に簡単に計算することにします。

 兵庫県の県民経済計算によりますと、震災前の1991年度から1993年度の総
固定資本形成(住宅投資、設備投資、公共投資などの固定資本の追加分)の平均値は、

5.9兆円です。それが、震災にあった1994年度に、5.6兆円に落ち込んだあ
と、1995年度は7.4兆円、1996年度は7.9兆円、1997年度は6.8
兆円に膨らんだあと、1998年度は5.7兆円に戻ります。復興需要は1995年
度から1997年度にかけて3年間続いたことになります。

 この1995年度から1997年度にかけての総固定資本形成から、1991年か
ら1993年までの3年平均(5.9兆円)を差し引いた金額は、それぞれ1.6兆
円、2.0兆円、0.9兆円になります(四捨五入の関係で数字はぴったり一致しま
せん)。合計すると、4.5兆円。ざっくりとした話になりますが、阪神大震災の場
合には、失われたストックの復元に、これだけの資金が必要になったと言えるでしょ
う。

 ちなみに、1995年度の兵庫県の県民総支出は21.2兆円です。今回、被害が
集中している岩手県、宮城県、福島県の2007年度の県民総生産は、それぞれ5.
0兆円、9.0兆円、9.1兆円で、三県合計で23.2兆円となります。2007
年度の兵庫県の県民総生産は、21.1兆円です。仮に、この県民総生産に比例した
ストックが、それぞれの震災によって損なわれたとするなら、今回の復興需要は、阪
神大震災当時より少し多い4.5兆円~5.0兆円程度と言えるのではないでしょう
か。1年あたりでは、1.5兆円になります。

 なお、1995年度の兵庫県の総固定資本形成、7.4兆円の内訳は、民間部門が
5.1兆円(69%)、公的部門が2.3兆円(31%)です。この公的部門の比率
が、今回も同じだとすると、年間約5千億円(1.5兆円×31%)の資金負担が3
年続くということになるでしょうか。もっとも、民間部門の復興費は、税負担のよう
な格好にはならないでしょうが、明らかにストックが失われているのですから、何ら
かの形で、費用負担が発生すると思います。

 ところで、以上の計算には被災者の救済に必要な資金は入っておりません。ただ、
被災者の救済に当たっておられる方々は、菅首相をはじめ基本的には公務員です。危
険手当のような追加的な費用の発生が想定できますが、それほど巨額には上らないの
ではないでしょうか。

 なお、経済成長率についても、阪神大震災のケースを参考にすると、震災が発生し
た1994年度の兵庫県の経済成長率は、前年度比ー3.1%と全県平均の+1.0
%を大きく下回りましたが、復興が始まった1995年度は、兵庫県が+5.0%と、

全県平均の+1.9%を大きく上回りました。今回も、復興需要によって、フローで
みた経済成長率は高くなるでしょうが、あくまでも失われたストックの復元に費用が
発生しているということになります。

 以上は、阪神大震災時を参考にラフに計算したもので、今回に当てはまるかどうか
は何とも言えません。それにしても、福島原発については、情報が錯綜しました。私
は、Twitterで、池田信夫さんや早野龍五さんのツイートをずっとフォローしており
ました。彼らが発信する情報は、非常に役に立ちました。

                 JPモルガン証券日本株ストラテジスト:北野一

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 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

 現在3月13日(日曜日)の午後8時半に、このメールを書いています。日経電子
版午後8時13分の特報道で、明日14日(月曜日)に東電は計画停電を実施、と伝
えています。一方、既に社内の緊急メールでは、「14日は平常通り営業、全員出社」

という通知を受け取っています。明日は、通常通り電車が動いていれば、始発かその
次辺りで出社するつもりです。

 恐らく、ほとんどの会社勤めの方は、会社からの緊急連絡の有無に関わらず、同様
に行動されるでしょう。その結果、明日の始業時間前後は、首都圏での大規模停電の
発生のリスクは最大となるでしょう。今回の大規模地震の発生後、この週末の土日の
時間的余裕はまさに天恵ともいうべきものでしたが、残念ながら十分に活かされな
かったようです。

 首都圏での大規模停電などの混乱が生じれば、日本の国内総生産を約500兆円と
しても、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏のシェア約3割とすれば、営業日での一
日当たり約6千億円が損失に曝されます。しかし、それ以上に、大震災の復旧活動の
ためも貴重な電力の供給に支障が生じることの潜在的な影響は測り知れません。

 また、日本経済あるいはグローバル経済への影響という観点からは、14日の最大
の課題は東京の金融市場の取引を維持すること、つまり流動性を確保することです。
先週末の段階では大規模地震の被害の規模、特に原子力発電施設への影響などの情報
が不十分である一方、海外市場での反応も比較的冷静なものでした。その中での日本
の金融市場の動向が注視されている状況と言えます。その中での、東京市場のインフ
ラである電力の供給に不安を抱えるということは測り知れないリスク要因です。今回
の大災害からの復興費用なども、最終的には金融市場からの調達によることとなりま
す。金融市場の流動性と安定の維持は至上命題のはずです。

 こうした中で、明日14日の週明けをどのような体制で迎えるのか、という点が、
政府および財界の首脳の間で十分に検討されたのかが不明です。厳然とした事実とし
て電力の供給力と想定される需要の間に大きなギャップが生じているのであれば、経
済活動の調整が必要だったのではないでしょうか。多くの方がこの時間に思っている
のではないでしょうか。「われわれは明日、会社に行くべきなのか?」と。杞憂に終
わることを祈っています。

                外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

 はじめに、この想像を絶する災害の犠牲になられた方々に、心よりお見舞いを申し
上げます。そして、現在こうして、無事に日常を送れるわが身の幸運を感謝する次第
です。

 今回の大地震とそれに続く大規模な津波については、その映像を見るだけでも恐ろ
しく、辛い出来事でした。今までに体験した中で、最も恐怖を感じた事件であったこ
とは間違いないと思います。しかも、現時点では、まだ大規模な余震の発生が続いて
おり、避難所等に取り残されている人がいるようです。救済すべき被災者の数は、こ
れからさらに増えることでしょう。

 また、今回、福島県にある原子力発電所は大きな被害が出ています。既に、放射能
が一部漏出するなどの事故が発生しているようです。それについても、被害の範囲が
どこまで拡大するか、今のところ、特定ができる状態ではないと思います。その他に
も、港の防波堤や堤防の決壊など、枚挙に暇がないほど被害が広範囲にわたっていま
す。しかも、その全貌が、未だにつかめていないのが実情だと思います。

 被災者の救済や、今後の復旧に、一体どれぐらいのお金が必要になるかは、正直
言って、見当もつきません。救済と復興の範囲をどこまで見るかによっても、その負
担額は異なると思いますが、多くの時間を要することは間違いないでしょう。また金
額ベースで見ると、おそらく、数千億円の単位ではなく、数兆円、あるいは、さらに
大きな金額になるのではないかと思います。いずれにしても、わが国の負担は膨大な
ものになるはずです。

 この大災害は、数百年に一度、あるいはそれ以上の規模だったことは間違いありま
せん。特定の広い地域で多くの被災者が出て、災害を受けた街のいくつかは壊滅的な
打撃を受けたところもあるようです。しかも、私たちは、その災害の現場を、メディ
アを通して自分の目で見てしまいました。それによって、大きな精神的な痛手を受け
ている人は多いと思います。現在の状況を考えるとやや尚早かもしれませんが、今回
の大災害で、わが国の本当の実力=パワーが試されるような気がします。

 重要なポイントは、私たちが今回の災害で、「もう駄目だ」と思ってしまうか、あ
るいは、「希望を捨てずに、もう一度立ち上がろう」という、精神的なエネルギーを
持つことができるか否だと思います。仮に、絶望感に打ちひしがれたままだと、わが
国の復興はかなり難しくなるのではないでしょうか。その場合には、わが国は次第に
エネルギーを消耗して、国のモメンタムを失うことになってしまうかもしれません。

 逆に、私たちが希望を持ち続け、復興に向けて力を結集することができれば、たぶ
ん、復興を果たして、次なるステップに進むことができるのではないかと思います。
その進路の分岐点になる重要なファクターは、私たち日本人が、自分たちの持ってい
る実力を信じて、力を合わせて前に向かって進むことができるか否かだと思います。
私は、その点に関してあまり悲観的ではありません。何とか、なりそうな気がしてい
ます。

 確かに、原子力発電所の事故やそれに伴うエネルギー事情、さらには、国のリーダ
ーであるべき政治の頼りなさを考えると、状況が厳しいことは間違いありません。た
だ、1970年代のオイルショックの時、多くの企業や人々が協力してエネルギー節
約を行い、オイルショックのハードルを乗り越えました。あの時を考えれば、電力が
不足する状況も乗り越えられるのではないでしょうか。

 冷静に考えれば、政治に期待ができないのは、今に始まったことではありません。
ずっと以前から、そうした状況が続いています。ですから、どうせ頼りないのであれ
ば、政治などに期待しなければよいのです。自分たちの力で、前に進むことを考える
べきです。問題は、私たち自身が、そうした意識を持って生きられるかどうかだと思
います。やや楽観的ですが、たぶん、できそうな気がします。希望を持ち続けること
が重要です。

                       信州大学経済学部教授:真壁昭夫

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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )