頂門の一針
首相視察が混乱拡大との見方も
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渡部 亮次郎
「政府、後手の対応 首相視察が混乱拡大との見方も」と産経新聞が批
判的に報じている。
今度の天災に当って菅首相は野党各党から「政治休戦」を取りつけるっ
とともに、災害現場への視察は現場の混乱を回避する為、当分避けるこ
とを申し合わせた。
まるで野党の目を盗むように、福島第1原発の視察を無理やり敢行した。
その結果と言っても過言ではないタイミングで爆発がおきてしまった。
菅首相の意図は、天災を利用して内閣の支持率を上げることだった。そ
の腐った根性に天は「天罰」を下した。菅首相の不純な意図は天災が一
転して「人災」となった。
<菅直人首相は12日夜、福島第1原発について「一人の住民も健康被害
にならないよう全力で取り組む」と強調した。ただ、原発で爆発が起き
たことで、政府の危機管理能力が問われることになった。
「最悪の事態を想定」(枝野幸男官房長官)してきたはずなのに、退避
指示の範囲を徐々に広げた。爆発の事実を発表したのも発生から2時間
以上たってからで、官邸の混乱ぶりがうかがえた。
しかも首相が12日朝現地を訪れ、1時間近く視察したことは現場の作業
を遅らせる一因になったとの指摘もあり、責任を問われかねない。
「国民の安全を第一に考えて対策を取ってきた。周辺住民が健康被害に
陥らないよう全力を挙げたい」
12日夜の会見で、首相は原発への対応をこう強調した。ただ、爆発とは
言わず「新たな事態」と形容するにとどまった。
首相は12日午後の与野党党首会談で原発に関し「危機的な状況にはなら
ない」と強調していた。会談中に官邸側は「会談後、首相と官房長官の
会見を行う」と発表した。爆発が起きたのは会談の最中だった。
会談終了から1時間半以上たって単独で会見した枝野氏は首相が会見を
いったんキャンセルした理由について「首相は、メディアを通じてメッ
セージを伝えるのは大変重要だと思っていたが、それ以上にこの事象
(爆発)にしっかりと対応することが重要だとなった」と釈明した。
12日朝、首相は原発視察に先立ち、記者団に「現地で責任者ときっちり
と話をして、状況を把握したい。必要な判断は場合によっては現地で行
うかもしれない」と意気込みを語った。
政府関係者によると視察は首相が突然言いだした。枝野氏も12日未明の
会見で「陣頭指揮を執らねばならないという強い思いが首相にあった」
と説明した。
しかし、現場はすでに放射性物質の一部放出をしなければならない事態
に陥っていた。そこに首相がヘリコプターから降り立ったため、現場担
当者も首相の対応に追われた。
退避指示も当初「風向きなどを考えて」として3キロから始まり10キロ、
20キロと範囲を広げた。
枝野氏は「専門家が詳細な分析をしているので、周辺住民は落ち着いて
対応してほしい」と言いながら、退避指示の拡大などのメディアへの情
報提供が遅いことには「間違いのない情報を伝えないといけないから」
と強弁した。>(産経ニュース 2011.3.12 23:21 )
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空母と揚陸艦が必要だ
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西村 眞悟
3月11日の東北太平洋地震について、被災地に未だに陸路救援隊が入れ
ないでいる。それ故、未だ行方不明者の数、死者の数が計数出来ない。
ということは、この寒さの中で、何処にどれだけの人が救助を待ってい
るのかを把握できずに3日目を迎えているということだ。
陸路被災地に入れないときには、海から入るしかない。その海から入る
手段として、空母および揚陸艦がどうしても必要である。
現時点においては、海上自衛隊の「おおすみ」や「ましゅう」という輸
送艦に、まとまった歩兵部隊と消防レスキュー隊、医師・看護師団を積
んで被災沖に急行し、ヘリで歩兵を被災地に運び、行方不明者捜索と救
出に当たらせるべきである。
さらに、今のところ日本にある空母は、アメリカ軍の空母だけだから、
アメリカ政府の申し入れを受けて、その空母に、陸自の歩兵部隊、消防
のレスキュー隊そして医師・看護師隊を乗せて被災地沖にて、救助救命
活動に当たるべきである。
我が海自の「おおすみ」も「ましゅう」も、アメリカの空母も、救助基
地と病院の機能をもつ船である。
それを、菅総理は、初めは五千の自衛隊員の出動、翌日へりで見て回っ
てから五万人規模の出動を指示したという。
翌日、のこのこ被災地の上を飛び回る前に、当日の地震発生直後の津波
が陸を襲う映像を総理は観たのか観なかったのか。また彼の、部下の一
人として、あの黒い高さ10メートルの津波の映像を観なかったのか。
あの映像を観れば、直ちに、海からの大救助部隊の編成と出動を総理大
臣は発令すべきだった。総理も、官房長官も、糊の貼った防災服を着て
いるが、かっこをつけているだけではないか。彼らの糊の貼った防災服
を映像を観る度に、腹立たしい。無念である。
実は、我が国の災害では陸路ではなく、海路からの救出体制の整備は常
に教訓として残されてきた。昭和32年の伊勢湾台風、平成7年の阪神淡
路大震災が記憶に新しい。伊勢湾台風のときは、アメリカ軍のヘリ空母
キャサージーが、海からヘリを飛ばして救助に当たってくれた。
阪神淡路大震災のときは、アメリカが空母インディペンデンスの派遣を
申し出てくれたが、村山富市馬鹿総理は断った。神戸市も、自衛艦の入
港自体に難色を示した。
そして、今、菅○○総理だ。何故か、○○の時に限って大災害が我が国
を襲う。
東北地方のみならず、天変地異が、我が国政治を襲っている。天網恢々
疎にして漏らさずというべきか。
国民の命を守るためにも、どうしても、戦後政治から脱却しなければな
らない。
一人でも多くの人々の救出を節に祈りながら、被災した人々に心よりお
見舞い申し上げます。
2011.03.13 Sunday name : kajikablog
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大型スーパーから冷凍食品や食パンが消えた
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古澤 襄
東日本巨大地震で"津波被害”の大きさに息を呑んだ。その次に襲ってき
たのは福島第一原発の周辺で、70人以上が放射能を被曝した怖れ。
12日夜遅く、横浜に住む長女から「茨城県は風向きで放射能被害を受け
るので、パパとママ、それに愛犬バロンを連れて一時避難してきたら・
・・」と言ってきた。気持ちは有り難いが、茨城県民が一斉に他県に逃
げることになれば、日本中が大騒ぎになる。
12日は災害用の食糧やローソクを求めて近くの大型スーパに行ったら、
岡田幹事長の一族が経営しているイオン・ジャスコは休業。仕方がない
ので西友に行ったら、店の中は買い出し客でごった返していた。
6つあるレジには50人以上が並んでいて、待ち時間は2時間以上になる
という。およそ300人がレジに並ぶというのだから尋常ではない。
どこのスーパーでも停電の影響で冷凍ものは販売中止。食パンも業者か
ら納入が途絶えたので、店頭から姿を消していた。そのあおりで乾麺も
売れ切れ。食糧がなくなるという風評被害が広まっている。流通業界に
も影響が及んでいる。
2階の書斎は積んであった本の山が倒壊して、片付けるのに2日はかか
ると思っていたが飛んでもない。3日目になっても半分ぐらいしか片付
かない。新年いらい禁煙していたが、本の山をみている中にタバコが必
要になった。一服つけてみても溜息をつくばかり。
目にみえない形で巨大地震の影響が庶民の生活を直撃している。今もか
なりの余震があった。震度4とか5では驚かなくなった。その慣れが怖
ろしい。
<原子力安全・保安院は13日、東京電力福島第一原発の周辺で、70人以
上が放射能を被曝(ひばく)した恐れがあることを明らかにした。保安
院が福島県などから受けた報告をまとめると、福島県双葉町の住民9人
から放射能を計測。
そのほかに、双葉高校のグラウンドで移動に利用したヘリコプターを待
機している際に被曝した可能性があるのが約60人いるという。
放射能を浴びた経路や時間は調査中としている。
◇
枝野幸男官房長官は13日朝の記者会見で、福島県双葉町内でバスで避難
した9人が被曝(ひばく)した可能性があることを明らかにした。福島
第一原子力発電所1号機(福島県大熊町)からの放射性物質の放出によ
るとみられる。衣類や皮膚など身体表面の汚染を除去し、内部被曝がな
いかどうかを調べているという。(朝日)>
2011.03.13 Sunday name : kajikablog
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巨大地震を新聞はどう伝えたか
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花岡 信昭
観測史上最大というマグニチュード8・8は、すさまじい衝撃だった。
阪神淡路大震災を思い出したが、あのとき、東京での被害はなかった
(と思う)。
今度は北海道から沖縄まで日本全土が地震と津波の襲撃を受けた。
都区内のわがオンボロマンションも、揺れた揺れた。新聞や本、資料な
どを積み重ねるクセがあるものだから、すべてなぎ倒されて、室内はめ
ちゃくちゃだ。やっとパソコンのまわりを片づけて、なんとかキーボー
ドに向かう態勢だけはできた。
それにしても、奇妙な符合だ。自然災害だからいつ起きても不思議では
ないのだが、3月11日という日は、政治情勢からみても重要なことが予
定されていた。
菅首相は在日外国人からの献金を認めたが、外国人とは知らなかったの
で辞任する必要はないと午前中の国会で答弁した。
石原都知事は都議会で4選出馬を表明した。地震はその直後だった。
被害の全体像はまだはっきりしていないが、かつてない規模の大災害と
なりそうだ。
となれば、ここは与野党休戦だ。政局の攻防戦を展開していていいはず
がない。
統一地方選の日程も変更されるかもしれない。
そこで、12日付朝刊で各紙はどう伝えたか。
新聞記者をやっていた経験からいうと、こういうときの1面見出しは、
編集トップ(編集局長、局次長、整理部長、担当部長ら)がよってたかっ
て議論し、最後はその場の一番上位の決断に従う。
整理部長というのはこういうときにこれぞという見出しをつけることを
生きがいとする。
とにかく10年に1度あるかどうかの特大見出しなのだから、思い切りどー
んといかなくてはいけない。そのときの判断としては、字数をできるだ
けしぼることだ。
そうすると、ひとつの文字を大きくできる。そのうえで、全体像をばさっ
とおさえる劇的な表現を考える。
5紙の1面トップ、白抜き横見出しは以下の通りだった。いずれも東京
発行最終版。
朝日「東日本大震災」
毎日「東北で巨大地震」
読売「東日本巨大地震」
産経「列島最大激震M8・8」
日経「東日本で巨大地震」
それぞれ微妙に違っていて、相当の議論をやったのだろうなと思わせる。
字数をしぼるという点では産経はだめだ。M8・8まで入れたため、冗
長になった。最大激震という言葉もなんのことか、すっと分からない。
東北で・・というのも不満がある。東京でもあれだけの騒ぎになったの
だから、ここは東日本という表現を用いたい。
そこで、読売の「東日本巨大地震」、ないし朝日の「東日本大震災」を
取りたい。迫力という点では巨大地震ということばのほうが大震災より
もぐっとくるようにも思う。
日経は「で」がよけいだった。どうせいくのなら1文字でも少ないほう
がいい。
テレビで見ているのだから新聞はいらないという向きがあるが、これは
間違いだ。
読者は新聞の大見出しを見て、中身を読んで、改めて自分自身のそのと
きの驚きを振り返り、被害の凄さを知って、「安心する」というのもお
かしいが、納得するのである。
新聞にはその機能がある。プロ野球のナイターをテレビで見て、さらに
翌朝のスポーツ紙で確認し、ひいきのチームが勝ったことの喜びを思い
出す、あの感覚だ。
<<前原氏の外相辞任が象徴する政権の末期症状>>
【日経BPネット連載・時評コラム拙稿「我々の国家はどこに向かって
いるのか」3月10日更新分】巨大地震によってちょっと事情が違ってき
ましたが、再掲します。
前原誠司氏が政治献金をめぐる不始末で外相を辞任、後任に松本剛明副
大臣が昇格した。半年で外相が交代するというのは、菅政権の末期的症
状を象徴する事態ともいえる。
前原氏の献金問題は4日の参院予算委員会で自民党の西田昌司氏が暴露し
たものだ。西田氏は前原氏と同じ京都を地盤とし、国家観の明確な保守
派政治家だ。
かつては旧社会党などに「爆弾男」などと称される政治家がいて、こう
した爆弾質問をぶち上げたものだが、近年では珍しい。西田氏は特大ホ
ームランを打ったわけで、一躍、菅政権を追い詰めた男として名前が残
ることになるだろう。
前原氏の献金問題は、京都市内で焼き肉店を経営する72歳の女性から、5
年間で5万円ずつ計25万円の個人献金(寄付)を受けていたというものだ。
この女性が在日韓国人であったことから、外国人からの政治献金を禁じ
た政治資金規正法に違反するとして問題化した。
政治資金規正法は「規制」ではなく「規正」という表現を使っている。
これは議員立法で、所管官庁の規制を受けるのではなく議員自らが襟を
正そうという意味合いを込めたものだ。
政治資金規正法では第22条の五で、「何人も、外国人、外国法人又はそ
の主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織(一
部省略)から、政治活動に関する寄附を受けてはならない」と定めてい
る。
日本の政治家である以上、外国人から政治献金を受けていたら、その国
との関係をめぐる政治的判断をする場合、誤解を受けかねないという判
断に基づく規定だ。金額の多寡が問題なのではなく、「質的制限」規定
である。
前原氏の政治団体「まえはら誠司後援会連合会」の政治資金収支報告書
にこの寄付が明確に記載されていた。
前原氏はその女性について、在日韓国人であることを認め、「中学生の
ころからの知り合いだ」「献金を続けてくれていたことは知らなかった」
と釈明した。
5年間で5万円ずつ計25万円が明らかにされたが、これは収支報告書の保
存義務期間によるもので、実際にはもっと以前から献金が行われていた
のかもしれない。
前原氏は献金を受けていたことを知らなかったと「故意ではない」こと
を強調している。政治家の常識では毎年、決まった額を献金してくれる
人は必ずチェックするものだという指摘もある。そうでないと、その人
に会ったとき、礼を失することになりかねないからだ。
この一件は告発されたから、今後は検察当局がどう判断するかにかかっ
てくる。政治資金規正法違反となれば、5年以下の禁固または50万円以下
の罰金刑となり、罪が確定すれば公民権停止5年間の対象ともなる。
故意か過失かはともあれ、やはり前原氏としては、とりわけ外国とのか
かわりを担当する外相という重要ポストにある以上、ここは辞任の選択
肢以外になかった。
前原氏の辞任に対して、評論家の一部などには「反応が過剰すぎる」
「在日韓国人も税金を払って日本人と同じ社会生活をしており、献金を
禁じるのはおかしい」などという議論がある。
この焼き肉店主が涙ぐんで「献金が禁じられているとは知らずに申し訳
ないことをした」と述べたことが伝えられ、同情論を誘うことにもなっ
た。
そういう「情」の部分の反応は分からないでもないが、ここは、揺るが
せにはできない一線である。在日外国人の地方参政権にもつながる問題
で、「国家意識」が問われる局面だ。
前原氏は菅首相退陣といった事態になったとき、後継候補の一番手につ
けていたのだが、この事態によって、当面は「ポスト菅」の可能性はな
くなった。だが、政治家の出処進退としては、これによって政治生命を
つないだという見方もできよう。
前原氏の外相辞任は国際的にも波紋を広げた。8日付の英紙フィナンシャ
ル・タイムズは「漂流する日本」と題した社説を掲げた。外相辞任、政
治指導力の欠如により日本外交の信用が失われたとし、「日本は漂流の
危機にある」としている。
民主党政権は、鳩山前首相が「普天間」で失敗し、菅首相は「尖閣」を
めぐる一連の事態で対応力の欠如を印象付けた。そこに共通するのは
「国家はどうあるべきか」という冷厳な認識の欠落だ。
前原氏の外相辞任はそうした脈絡で受け止められている。国際政治の舞
台での威信低下である。
あえていってしまえば、子ども手当などバラマキ型公約の破綻といった
「内向き」のテーマはどうとでもなる。国際社会での日本の位置づけと
いう重いテーマに対して、民主党政権が対応できていないという側面は
もっと深刻視されていい。
菅政権になって閣僚の辞任は3人目である。さらには、年金問題をめぐっ
て、細川律夫厚生労働相の進退問題も浮上した。こちらも政権のあり方
としては情けない問題である。
サラリーマンの夫が脱サラした場合などのさい、主婦は国民年金への切
り替えが必要だが、これを忘れていたり知らなかったりした人たちの救
済問題が急浮上した。前任の長妻昭氏が細川氏に引き継ぎをせず、課長
級の判断で一律救済を決めたというのだから、年金行政の不可解さがま
たもや明らかになった。
こうしたことが起きた背景は「年金男」長妻氏に対する官僚たちのサボ
タージュがあったためとも見られるが、それにしてもほめられた話では
ない。
政府は関係閣僚会議で課長通達による救済策を廃止し、新たなシステム
を打ち出したが、野党は細川厚生労働相の辞任を前提としなければ協議
には応じないとして紛糾した。
年金問題は旧社会保険庁の失態、体質をいまだに引きずっているという
ことが改めて明らかになったともいえ、これまた政権末期症状を象徴す
る事態となった。
といった次第で、菅政権はいよいよ追い詰められたという印象が濃い。
だが、前回コラムでも触れたように、菅首相が自ら退陣を表明するとい
った事態にならない限り、野党自民党に「解散に追い込む」だけの戦略
があるのかというと、これまた疑わしい。
「3月危機」といわれる政局の焦点は、予算関連法案の年度内成立が不可
能となった段階での首相問責決議案の提出に絞られつつある。
予算本体の年度内成立は確定したが、関連法案をすべて年度内成立にこ
ぎつけられるかどうかはまず不可能だ。そのため、国民負担が増えてし
まう不動産取得の登録免許税の軽減措置、輸入品の関税などについて
「つなぎ法案」を議員立法で提出してしのぐという案が有力だ。
これを野党が呑んだとしても、特例公債発行、子ども手当支給などの重
要法案の年度内成立は無理だ。そこで、野党側が菅政権にとどめをさそ
うとするのが参院での問責決議案提出である。
衆議院での内閣不信任案提出となると、民主党から大量の造反が出れば
別だが、現状ではあっさりと否決されてしまう可能性が高い。不信任案
否決となれば、信任されたことになってしまう。
そこで与党過半数割れの参院での問責決議案が有力な手段として浮上し
ているわけだが、これもタイミングが難しい。もともと法的拘束力はな
い。だが、問責決議が可決されれば、野党側は問責を受けた首相のもと
での審議には応じられないという態度に出て、国会は完全に空転する。
そうなれば、菅首相には内閣総辞職か衆院解散しか打つ手がなくなると
いうものだ。
3月24日には統一地方選の第1弾である知事選が告示(投票は4月10日)
される。天王山の東京都知事選はいまだにどういう構図になるかはっき
りしない。「自民vs民主」という対決構図にはならない可能性もある。
年度末の国会の法案処理と統一地方選の攻防が複雑に重なって、あまり
体験したことのない神経戦が展開されることになりそうだ。
民主党内は四分五裂の状況だ。菅首相の求心力は確実に急降下している
のだが、この首相は意外なまでの粘り腰を見せている。一方で小沢一郎
氏系議員たちの動向も不透明だ。
不透明きわまりない攻防戦をちまちまと続けていては、国民の政治不信
は高まる一方だ。ここは与野党それぞれの勢力が思い切りぶつかり合っ
て、ダイナミックな政界再編の渦を起こしてほしいと期待したい。
★★花岡信昭メールマガジン903号【2011・3・13】★★転載許諾済
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スキャンダル倒閣
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山堂コラム 361
6日辞任した前原外務大臣の後任に松本剛明副大臣が昇格。銀行員あが
りの二世議員。おそらく日本国外務大臣の大役は務まらんだろう。
前原辞任で菅内閣は「飛車落ち」などと言われたが、新外相はせいぜい
「と金」。飛車の代わりにはならんわなあ。
菅のヘボ将棋――「角」は斬られ与謝野の片肺飛行。たちがれ日本から
の借り物で、それでもって今度は「飛車落ち」。
端歩(はしふ)ばかり突いて凌いできた盤面も、いよいよ飛車角落ちの
王手。香車の一突きで御臨終。「詰めるのはまだまだ。統一地方選のあ
とまで待ってやる」などと、公明党にまで舐められる始末。
前原大臣の辞任は、所謂在日から政治献金を貰ったと参院予算委員会で
指摘されたため。指摘したのは京都の自民党・西田昌司参議院議員。こ
ちらも二世。
オラその二世様との付き合いはない。が、「東寺の歌奴」こと先代の鶏
屋吉宏氏とは彼が京都府議会議員時代からの付き合い。ブンヤと地方議
員の単なる遊び仲間だったが、なんと歌奴が参議院議員に当選しおって
よ、コケコッコー。
しかも所属する芸者置屋、本人あまり所縁のない清和会(当時は安倍晋
太郎会長)に行くという。その置屋こそ、何をかくそうオラが京都に行
く前からの担当派閥よ。
4年前に亡くなった親父さんの後を継いだ昌ちゃんは、いまや清和会も
清和会。パリパリの安倍晋三・慢性腸カタルグループを代表する硬派の
論客、最右翼。縦横無尽の大暴れ。
左巻きからピンクがかった奴ばらを遠慮会釈なく糾弾し、ばっさばっさ
と斬りまくる。新撰組の沖田総司、いや昌司。加茂の川原にゃ千鳥も騒
ぐ。
自民党ならみな逃げ回っていた「人権擁護法案」にも堂々反対の烽火を
上げた。親父の盟友だった野中広務・推進派親分。捻じ込んできてもシ
レッとしていたで、大したもんよ。
されど京都の土地柄について言おう。洛中の京童(きょうわらわ)は実は
新撰組や政治家を一段下に見降ろすところがある。政治家、ましてや総
理や外相になろうなんてえのは、よほどの変わり者の偏屈原。泪羅(べ
きら)の渕には波騒ぐ・・・
なるなら学者か坊さんよ。祇園で一番もてるのも、かつては太秦の勝新
太郎。映画は凋落したがいまもなお、変わらずもてるは坊さんで、政治
家行けば塩パッパッ。
京都出身と言われる大物政治家、だいたい見てみい、みな他所者。戦後
唯一の総理となった芦田は福知山、前尾は丹後の宮津の出。地元の顔た
る知事だって現職・山田は兵庫県。かの蜷川に至っては江戸っ子やで。
植木光教、田中伊三やんとか、永末英一いうのもいたがの。たいていは
ハトの伝でいうと「最低県外」。
ちと脱線したが、京都の若き政治家。南区と左京区の戦い、さあお立会
い。在日ガイコツ人の政治献金問題で主要閣僚の首とったインパクトは
大きい。このあとも菅が退陣するまで、閣僚の問責などドミノ倒しの野
党攻撃は続く(地震で拍子抜けしたが)。
しかし今度の戦い。ちと気になることもある。というのは、自民をはじ
め各野党、正攻法の政策論争でなく、だんだんと個人攻撃、というか細
かい揚げ足取り、スキャンダ糾弾に指向し始めたこと。分からんではな
いが、これ両刃の剣。政治資金規正法では脛に傷のない政治家はおらん
のとチャウか。
自民党がすぐに政権奪還出来るかどうかは別にして、これ攻守ところを
変えれば、野党に戻った民主党は憎さ百倍、怒りのアフガン。個人攻撃
は熾烈を極める。
国会論戦の場が国際情勢や国民生活からまるで乖離した「不毛のどづき
合い」が激しくなるは必定。日本国民の政党政治不信をますます昂進す
ることになる。政権復帰する気があるならば、このこと心して攻める必
要があるで。そう、もっと余裕の先斗町、北野天神上七軒へおいでやす。
(了)
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渡部 亮次郎
「政府、後手の対応 首相視察が混乱拡大との見方も」と産経新聞が批
判的に報じている。
今度の天災に当って菅首相は野党各党から「政治休戦」を取りつけるっ
とともに、災害現場への視察は現場の混乱を回避する為、当分避けるこ
とを申し合わせた。
まるで野党の目を盗むように、福島第1原発の視察を無理やり敢行した。
その結果と言っても過言ではないタイミングで爆発がおきてしまった。
菅首相の意図は、天災を利用して内閣の支持率を上げることだった。そ
の腐った根性に天は「天罰」を下した。菅首相の不純な意図は天災が一
転して「人災」となった。
<菅直人首相は12日夜、福島第1原発について「一人の住民も健康被害
にならないよう全力で取り組む」と強調した。ただ、原発で爆発が起き
たことで、政府の危機管理能力が問われることになった。
「最悪の事態を想定」(枝野幸男官房長官)してきたはずなのに、退避
指示の範囲を徐々に広げた。爆発の事実を発表したのも発生から2時間
以上たってからで、官邸の混乱ぶりがうかがえた。
しかも首相が12日朝現地を訪れ、1時間近く視察したことは現場の作業
を遅らせる一因になったとの指摘もあり、責任を問われかねない。
「国民の安全を第一に考えて対策を取ってきた。周辺住民が健康被害に
陥らないよう全力を挙げたい」
12日夜の会見で、首相は原発への対応をこう強調した。ただ、爆発とは
言わず「新たな事態」と形容するにとどまった。
首相は12日午後の与野党党首会談で原発に関し「危機的な状況にはなら
ない」と強調していた。会談中に官邸側は「会談後、首相と官房長官の
会見を行う」と発表した。爆発が起きたのは会談の最中だった。
会談終了から1時間半以上たって単独で会見した枝野氏は首相が会見を
いったんキャンセルした理由について「首相は、メディアを通じてメッ
セージを伝えるのは大変重要だと思っていたが、それ以上にこの事象
(爆発)にしっかりと対応することが重要だとなった」と釈明した。
12日朝、首相は原発視察に先立ち、記者団に「現地で責任者ときっちり
と話をして、状況を把握したい。必要な判断は場合によっては現地で行
うかもしれない」と意気込みを語った。
政府関係者によると視察は首相が突然言いだした。枝野氏も12日未明の
会見で「陣頭指揮を執らねばならないという強い思いが首相にあった」
と説明した。
しかし、現場はすでに放射性物質の一部放出をしなければならない事態
に陥っていた。そこに首相がヘリコプターから降り立ったため、現場担
当者も首相の対応に追われた。
退避指示も当初「風向きなどを考えて」として3キロから始まり10キロ、
20キロと範囲を広げた。
枝野氏は「専門家が詳細な分析をしているので、周辺住民は落ち着いて
対応してほしい」と言いながら、退避指示の拡大などのメディアへの情
報提供が遅いことには「間違いのない情報を伝えないといけないから」
と強弁した。>(産経ニュース 2011.3.12 23:21 )
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空母と揚陸艦が必要だ
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西村 眞悟
3月11日の東北太平洋地震について、被災地に未だに陸路救援隊が入れ
ないでいる。それ故、未だ行方不明者の数、死者の数が計数出来ない。
ということは、この寒さの中で、何処にどれだけの人が救助を待ってい
るのかを把握できずに3日目を迎えているということだ。
陸路被災地に入れないときには、海から入るしかない。その海から入る
手段として、空母および揚陸艦がどうしても必要である。
現時点においては、海上自衛隊の「おおすみ」や「ましゅう」という輸
送艦に、まとまった歩兵部隊と消防レスキュー隊、医師・看護師団を積
んで被災沖に急行し、ヘリで歩兵を被災地に運び、行方不明者捜索と救
出に当たらせるべきである。
さらに、今のところ日本にある空母は、アメリカ軍の空母だけだから、
アメリカ政府の申し入れを受けて、その空母に、陸自の歩兵部隊、消防
のレスキュー隊そして医師・看護師隊を乗せて被災地沖にて、救助救命
活動に当たるべきである。
我が海自の「おおすみ」も「ましゅう」も、アメリカの空母も、救助基
地と病院の機能をもつ船である。
それを、菅総理は、初めは五千の自衛隊員の出動、翌日へりで見て回っ
てから五万人規模の出動を指示したという。
翌日、のこのこ被災地の上を飛び回る前に、当日の地震発生直後の津波
が陸を襲う映像を総理は観たのか観なかったのか。また彼の、部下の一
人として、あの黒い高さ10メートルの津波の映像を観なかったのか。
あの映像を観れば、直ちに、海からの大救助部隊の編成と出動を総理大
臣は発令すべきだった。総理も、官房長官も、糊の貼った防災服を着て
いるが、かっこをつけているだけではないか。彼らの糊の貼った防災服
を映像を観る度に、腹立たしい。無念である。
実は、我が国の災害では陸路ではなく、海路からの救出体制の整備は常
に教訓として残されてきた。昭和32年の伊勢湾台風、平成7年の阪神淡
路大震災が記憶に新しい。伊勢湾台風のときは、アメリカ軍のヘリ空母
キャサージーが、海からヘリを飛ばして救助に当たってくれた。
阪神淡路大震災のときは、アメリカが空母インディペンデンスの派遣を
申し出てくれたが、村山富市馬鹿総理は断った。神戸市も、自衛艦の入
港自体に難色を示した。
そして、今、菅○○総理だ。何故か、○○の時に限って大災害が我が国
を襲う。
東北地方のみならず、天変地異が、我が国政治を襲っている。天網恢々
疎にして漏らさずというべきか。
国民の命を守るためにも、どうしても、戦後政治から脱却しなければな
らない。
一人でも多くの人々の救出を節に祈りながら、被災した人々に心よりお
見舞い申し上げます。
2011.03.13 Sunday name : kajikablog
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大型スーパーから冷凍食品や食パンが消えた
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古澤 襄
東日本巨大地震で"津波被害”の大きさに息を呑んだ。その次に襲ってき
たのは福島第一原発の周辺で、70人以上が放射能を被曝した怖れ。
12日夜遅く、横浜に住む長女から「茨城県は風向きで放射能被害を受け
るので、パパとママ、それに愛犬バロンを連れて一時避難してきたら・
・・」と言ってきた。気持ちは有り難いが、茨城県民が一斉に他県に逃
げることになれば、日本中が大騒ぎになる。
12日は災害用の食糧やローソクを求めて近くの大型スーパに行ったら、
岡田幹事長の一族が経営しているイオン・ジャスコは休業。仕方がない
ので西友に行ったら、店の中は買い出し客でごった返していた。
6つあるレジには50人以上が並んでいて、待ち時間は2時間以上になる
という。およそ300人がレジに並ぶというのだから尋常ではない。
どこのスーパーでも停電の影響で冷凍ものは販売中止。食パンも業者か
ら納入が途絶えたので、店頭から姿を消していた。そのあおりで乾麺も
売れ切れ。食糧がなくなるという風評被害が広まっている。流通業界に
も影響が及んでいる。
2階の書斎は積んであった本の山が倒壊して、片付けるのに2日はかか
ると思っていたが飛んでもない。3日目になっても半分ぐらいしか片付
かない。新年いらい禁煙していたが、本の山をみている中にタバコが必
要になった。一服つけてみても溜息をつくばかり。
目にみえない形で巨大地震の影響が庶民の生活を直撃している。今もか
なりの余震があった。震度4とか5では驚かなくなった。その慣れが怖
ろしい。
<原子力安全・保安院は13日、東京電力福島第一原発の周辺で、70人以
上が放射能を被曝(ひばく)した恐れがあることを明らかにした。保安
院が福島県などから受けた報告をまとめると、福島県双葉町の住民9人
から放射能を計測。
そのほかに、双葉高校のグラウンドで移動に利用したヘリコプターを待
機している際に被曝した可能性があるのが約60人いるという。
放射能を浴びた経路や時間は調査中としている。
◇
枝野幸男官房長官は13日朝の記者会見で、福島県双葉町内でバスで避難
した9人が被曝(ひばく)した可能性があることを明らかにした。福島
第一原子力発電所1号機(福島県大熊町)からの放射性物質の放出によ
るとみられる。衣類や皮膚など身体表面の汚染を除去し、内部被曝がな
いかどうかを調べているという。(朝日)>
2011.03.13 Sunday name : kajikablog
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巨大地震を新聞はどう伝えたか
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花岡 信昭
観測史上最大というマグニチュード8・8は、すさまじい衝撃だった。
阪神淡路大震災を思い出したが、あのとき、東京での被害はなかった
(と思う)。
今度は北海道から沖縄まで日本全土が地震と津波の襲撃を受けた。
都区内のわがオンボロマンションも、揺れた揺れた。新聞や本、資料な
どを積み重ねるクセがあるものだから、すべてなぎ倒されて、室内はめ
ちゃくちゃだ。やっとパソコンのまわりを片づけて、なんとかキーボー
ドに向かう態勢だけはできた。
それにしても、奇妙な符合だ。自然災害だからいつ起きても不思議では
ないのだが、3月11日という日は、政治情勢からみても重要なことが予
定されていた。
菅首相は在日外国人からの献金を認めたが、外国人とは知らなかったの
で辞任する必要はないと午前中の国会で答弁した。
石原都知事は都議会で4選出馬を表明した。地震はその直後だった。
被害の全体像はまだはっきりしていないが、かつてない規模の大災害と
なりそうだ。
となれば、ここは与野党休戦だ。政局の攻防戦を展開していていいはず
がない。
統一地方選の日程も変更されるかもしれない。
そこで、12日付朝刊で各紙はどう伝えたか。
新聞記者をやっていた経験からいうと、こういうときの1面見出しは、
編集トップ(編集局長、局次長、整理部長、担当部長ら)がよってたかっ
て議論し、最後はその場の一番上位の決断に従う。
整理部長というのはこういうときにこれぞという見出しをつけることを
生きがいとする。
とにかく10年に1度あるかどうかの特大見出しなのだから、思い切りどー
んといかなくてはいけない。そのときの判断としては、字数をできるだ
けしぼることだ。
そうすると、ひとつの文字を大きくできる。そのうえで、全体像をばさっ
とおさえる劇的な表現を考える。
5紙の1面トップ、白抜き横見出しは以下の通りだった。いずれも東京
発行最終版。
朝日「東日本大震災」
毎日「東北で巨大地震」
読売「東日本巨大地震」
産経「列島最大激震M8・8」
日経「東日本で巨大地震」
それぞれ微妙に違っていて、相当の議論をやったのだろうなと思わせる。
字数をしぼるという点では産経はだめだ。M8・8まで入れたため、冗
長になった。最大激震という言葉もなんのことか、すっと分からない。
東北で・・というのも不満がある。東京でもあれだけの騒ぎになったの
だから、ここは東日本という表現を用いたい。
そこで、読売の「東日本巨大地震」、ないし朝日の「東日本大震災」を
取りたい。迫力という点では巨大地震ということばのほうが大震災より
もぐっとくるようにも思う。
日経は「で」がよけいだった。どうせいくのなら1文字でも少ないほう
がいい。
テレビで見ているのだから新聞はいらないという向きがあるが、これは
間違いだ。
読者は新聞の大見出しを見て、中身を読んで、改めて自分自身のそのと
きの驚きを振り返り、被害の凄さを知って、「安心する」というのもお
かしいが、納得するのである。
新聞にはその機能がある。プロ野球のナイターをテレビで見て、さらに
翌朝のスポーツ紙で確認し、ひいきのチームが勝ったことの喜びを思い
出す、あの感覚だ。
<<前原氏の外相辞任が象徴する政権の末期症状>>
【日経BPネット連載・時評コラム拙稿「我々の国家はどこに向かって
いるのか」3月10日更新分】巨大地震によってちょっと事情が違ってき
ましたが、再掲します。
前原誠司氏が政治献金をめぐる不始末で外相を辞任、後任に松本剛明副
大臣が昇格した。半年で外相が交代するというのは、菅政権の末期的症
状を象徴する事態ともいえる。
前原氏の献金問題は4日の参院予算委員会で自民党の西田昌司氏が暴露し
たものだ。西田氏は前原氏と同じ京都を地盤とし、国家観の明確な保守
派政治家だ。
かつては旧社会党などに「爆弾男」などと称される政治家がいて、こう
した爆弾質問をぶち上げたものだが、近年では珍しい。西田氏は特大ホ
ームランを打ったわけで、一躍、菅政権を追い詰めた男として名前が残
ることになるだろう。
前原氏の献金問題は、京都市内で焼き肉店を経営する72歳の女性から、5
年間で5万円ずつ計25万円の個人献金(寄付)を受けていたというものだ。
この女性が在日韓国人であったことから、外国人からの政治献金を禁じ
た政治資金規正法に違反するとして問題化した。
政治資金規正法は「規制」ではなく「規正」という表現を使っている。
これは議員立法で、所管官庁の規制を受けるのではなく議員自らが襟を
正そうという意味合いを込めたものだ。
政治資金規正法では第22条の五で、「何人も、外国人、外国法人又はそ
の主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織(一
部省略)から、政治活動に関する寄附を受けてはならない」と定めてい
る。
日本の政治家である以上、外国人から政治献金を受けていたら、その国
との関係をめぐる政治的判断をする場合、誤解を受けかねないという判
断に基づく規定だ。金額の多寡が問題なのではなく、「質的制限」規定
である。
前原氏の政治団体「まえはら誠司後援会連合会」の政治資金収支報告書
にこの寄付が明確に記載されていた。
前原氏はその女性について、在日韓国人であることを認め、「中学生の
ころからの知り合いだ」「献金を続けてくれていたことは知らなかった」
と釈明した。
5年間で5万円ずつ計25万円が明らかにされたが、これは収支報告書の保
存義務期間によるもので、実際にはもっと以前から献金が行われていた
のかもしれない。
前原氏は献金を受けていたことを知らなかったと「故意ではない」こと
を強調している。政治家の常識では毎年、決まった額を献金してくれる
人は必ずチェックするものだという指摘もある。そうでないと、その人
に会ったとき、礼を失することになりかねないからだ。
この一件は告発されたから、今後は検察当局がどう判断するかにかかっ
てくる。政治資金規正法違反となれば、5年以下の禁固または50万円以下
の罰金刑となり、罪が確定すれば公民権停止5年間の対象ともなる。
故意か過失かはともあれ、やはり前原氏としては、とりわけ外国とのか
かわりを担当する外相という重要ポストにある以上、ここは辞任の選択
肢以外になかった。
前原氏の辞任に対して、評論家の一部などには「反応が過剰すぎる」
「在日韓国人も税金を払って日本人と同じ社会生活をしており、献金を
禁じるのはおかしい」などという議論がある。
この焼き肉店主が涙ぐんで「献金が禁じられているとは知らずに申し訳
ないことをした」と述べたことが伝えられ、同情論を誘うことにもなっ
た。
そういう「情」の部分の反応は分からないでもないが、ここは、揺るが
せにはできない一線である。在日外国人の地方参政権にもつながる問題
で、「国家意識」が問われる局面だ。
前原氏は菅首相退陣といった事態になったとき、後継候補の一番手につ
けていたのだが、この事態によって、当面は「ポスト菅」の可能性はな
くなった。だが、政治家の出処進退としては、これによって政治生命を
つないだという見方もできよう。
前原氏の外相辞任は国際的にも波紋を広げた。8日付の英紙フィナンシャ
ル・タイムズは「漂流する日本」と題した社説を掲げた。外相辞任、政
治指導力の欠如により日本外交の信用が失われたとし、「日本は漂流の
危機にある」としている。
民主党政権は、鳩山前首相が「普天間」で失敗し、菅首相は「尖閣」を
めぐる一連の事態で対応力の欠如を印象付けた。そこに共通するのは
「国家はどうあるべきか」という冷厳な認識の欠落だ。
前原氏の外相辞任はそうした脈絡で受け止められている。国際政治の舞
台での威信低下である。
あえていってしまえば、子ども手当などバラマキ型公約の破綻といった
「内向き」のテーマはどうとでもなる。国際社会での日本の位置づけと
いう重いテーマに対して、民主党政権が対応できていないという側面は
もっと深刻視されていい。
菅政権になって閣僚の辞任は3人目である。さらには、年金問題をめぐっ
て、細川律夫厚生労働相の進退問題も浮上した。こちらも政権のあり方
としては情けない問題である。
サラリーマンの夫が脱サラした場合などのさい、主婦は国民年金への切
り替えが必要だが、これを忘れていたり知らなかったりした人たちの救
済問題が急浮上した。前任の長妻昭氏が細川氏に引き継ぎをせず、課長
級の判断で一律救済を決めたというのだから、年金行政の不可解さがま
たもや明らかになった。
こうしたことが起きた背景は「年金男」長妻氏に対する官僚たちのサボ
タージュがあったためとも見られるが、それにしてもほめられた話では
ない。
政府は関係閣僚会議で課長通達による救済策を廃止し、新たなシステム
を打ち出したが、野党は細川厚生労働相の辞任を前提としなければ協議
には応じないとして紛糾した。
年金問題は旧社会保険庁の失態、体質をいまだに引きずっているという
ことが改めて明らかになったともいえ、これまた政権末期症状を象徴す
る事態となった。
といった次第で、菅政権はいよいよ追い詰められたという印象が濃い。
だが、前回コラムでも触れたように、菅首相が自ら退陣を表明するとい
った事態にならない限り、野党自民党に「解散に追い込む」だけの戦略
があるのかというと、これまた疑わしい。
「3月危機」といわれる政局の焦点は、予算関連法案の年度内成立が不可
能となった段階での首相問責決議案の提出に絞られつつある。
予算本体の年度内成立は確定したが、関連法案をすべて年度内成立にこ
ぎつけられるかどうかはまず不可能だ。そのため、国民負担が増えてし
まう不動産取得の登録免許税の軽減措置、輸入品の関税などについて
「つなぎ法案」を議員立法で提出してしのぐという案が有力だ。
これを野党が呑んだとしても、特例公債発行、子ども手当支給などの重
要法案の年度内成立は無理だ。そこで、野党側が菅政権にとどめをさそ
うとするのが参院での問責決議案提出である。
衆議院での内閣不信任案提出となると、民主党から大量の造反が出れば
別だが、現状ではあっさりと否決されてしまう可能性が高い。不信任案
否決となれば、信任されたことになってしまう。
そこで与党過半数割れの参院での問責決議案が有力な手段として浮上し
ているわけだが、これもタイミングが難しい。もともと法的拘束力はな
い。だが、問責決議が可決されれば、野党側は問責を受けた首相のもと
での審議には応じられないという態度に出て、国会は完全に空転する。
そうなれば、菅首相には内閣総辞職か衆院解散しか打つ手がなくなると
いうものだ。
3月24日には統一地方選の第1弾である知事選が告示(投票は4月10日)
される。天王山の東京都知事選はいまだにどういう構図になるかはっき
りしない。「自民vs民主」という対決構図にはならない可能性もある。
年度末の国会の法案処理と統一地方選の攻防が複雑に重なって、あまり
体験したことのない神経戦が展開されることになりそうだ。
民主党内は四分五裂の状況だ。菅首相の求心力は確実に急降下している
のだが、この首相は意外なまでの粘り腰を見せている。一方で小沢一郎
氏系議員たちの動向も不透明だ。
不透明きわまりない攻防戦をちまちまと続けていては、国民の政治不信
は高まる一方だ。ここは与野党それぞれの勢力が思い切りぶつかり合っ
て、ダイナミックな政界再編の渦を起こしてほしいと期待したい。
★★花岡信昭メールマガジン903号【2011・3・13】★★転載許諾済
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スキャンダル倒閣
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山堂コラム 361
6日辞任した前原外務大臣の後任に松本剛明副大臣が昇格。銀行員あが
りの二世議員。おそらく日本国外務大臣の大役は務まらんだろう。
前原辞任で菅内閣は「飛車落ち」などと言われたが、新外相はせいぜい
「と金」。飛車の代わりにはならんわなあ。
菅のヘボ将棋――「角」は斬られ与謝野の片肺飛行。たちがれ日本から
の借り物で、それでもって今度は「飛車落ち」。
端歩(はしふ)ばかり突いて凌いできた盤面も、いよいよ飛車角落ちの
王手。香車の一突きで御臨終。「詰めるのはまだまだ。統一地方選のあ
とまで待ってやる」などと、公明党にまで舐められる始末。
前原大臣の辞任は、所謂在日から政治献金を貰ったと参院予算委員会で
指摘されたため。指摘したのは京都の自民党・西田昌司参議院議員。こ
ちらも二世。
オラその二世様との付き合いはない。が、「東寺の歌奴」こと先代の鶏
屋吉宏氏とは彼が京都府議会議員時代からの付き合い。ブンヤと地方議
員の単なる遊び仲間だったが、なんと歌奴が参議院議員に当選しおって
よ、コケコッコー。
しかも所属する芸者置屋、本人あまり所縁のない清和会(当時は安倍晋
太郎会長)に行くという。その置屋こそ、何をかくそうオラが京都に行
く前からの担当派閥よ。
4年前に亡くなった親父さんの後を継いだ昌ちゃんは、いまや清和会も
清和会。パリパリの安倍晋三・慢性腸カタルグループを代表する硬派の
論客、最右翼。縦横無尽の大暴れ。
左巻きからピンクがかった奴ばらを遠慮会釈なく糾弾し、ばっさばっさ
と斬りまくる。新撰組の沖田総司、いや昌司。加茂の川原にゃ千鳥も騒
ぐ。
自民党ならみな逃げ回っていた「人権擁護法案」にも堂々反対の烽火を
上げた。親父の盟友だった野中広務・推進派親分。捻じ込んできてもシ
レッとしていたで、大したもんよ。
されど京都の土地柄について言おう。洛中の京童(きょうわらわ)は実は
新撰組や政治家を一段下に見降ろすところがある。政治家、ましてや総
理や外相になろうなんてえのは、よほどの変わり者の偏屈原。泪羅(べ
きら)の渕には波騒ぐ・・・
なるなら学者か坊さんよ。祇園で一番もてるのも、かつては太秦の勝新
太郎。映画は凋落したがいまもなお、変わらずもてるは坊さんで、政治
家行けば塩パッパッ。
京都出身と言われる大物政治家、だいたい見てみい、みな他所者。戦後
唯一の総理となった芦田は福知山、前尾は丹後の宮津の出。地元の顔た
る知事だって現職・山田は兵庫県。かの蜷川に至っては江戸っ子やで。
植木光教、田中伊三やんとか、永末英一いうのもいたがの。たいていは
ハトの伝でいうと「最低県外」。
ちと脱線したが、京都の若き政治家。南区と左京区の戦い、さあお立会
い。在日ガイコツ人の政治献金問題で主要閣僚の首とったインパクトは
大きい。このあとも菅が退陣するまで、閣僚の問責などドミノ倒しの野
党攻撃は続く(地震で拍子抜けしたが)。
しかし今度の戦い。ちと気になることもある。というのは、自民をはじ
め各野党、正攻法の政策論争でなく、だんだんと個人攻撃、というか細
かい揚げ足取り、スキャンダ糾弾に指向し始めたこと。分からんではな
いが、これ両刃の剣。政治資金規正法では脛に傷のない政治家はおらん
のとチャウか。
自民党がすぐに政権奪還出来るかどうかは別にして、これ攻守ところを
変えれば、野党に戻った民主党は憎さ百倍、怒りのアフガン。個人攻撃
は熾烈を極める。
国会論戦の場が国際情勢や国民生活からまるで乖離した「不毛のどづき
合い」が激しくなるは必定。日本国民の政党政治不信をますます昂進す
ることになる。政権復帰する気があるならば、このこと心して攻める必
要があるで。そう、もっと余裕の先斗町、北野天神上七軒へおいでやす。
(了)