<リビア>反体制派110人釈放 民衆デモ抑制にアメ | 日本のお姉さん

<リビア>反体制派110人釈放 民衆デモ抑制にアメ

<リビア>反体制派110人釈放 民衆デモ抑制にアメ
毎日新聞 2月17日(木)7時40分配信
 【カイロ支局】チュニジア、エジプトの長期政権崩壊後、リビアで民衆デモが発生したことは今回の中東激震の大きさを象徴している。同国は1969年にカダフィ大佐がクーデターで政権を掌握して以来、徹底した長期独裁政治を敷いてきた。エジプト政変後、治安部隊が警戒を強める中で発生したデモは民主化要求の大きさを示すものだ。

 カダフィ政権は今回の事態を重大視、イスラム過激派とされ拘束された110人の政治犯を釈放するなど、政権は「アメとムチ」で反政府感情を抑えにかかっている。一定のガス抜きはできるが、40年以上にわたる独裁への潜在的不満は強く、治安部隊の出方次第で民衆の怒りに火がつく可能性も少なくない。

 昨年12月以降、チュニジアやエジプトでデモが発生してきたが、住民監視が徹底しているリビアは比較的静かだった。人口が少なく、石油による外貨収入があるためエジプトなどに比べ生活苦を感じる人が少ないことや、これまで政府が反政府運動の芽を摘んできたため運動が起こりにくい状況があった。

 カダフィ大佐はナセル・エジプト元大統領(在任1954~70年)のアラブ民族主義に影響を受けクーデターを成功。03年に政策を転換するまで反米姿勢を堅持、シリアのアサド、イラクのフセイン両元大統領と並びアラブ諸国で最も強圧的な政治体制を維持してきた。

 注目すべきはデモが同国第2の都市ベンガジで発生したことだ。ここはイスラム原理主義者が多く、カダフィ政権への不満が最も強い都市とされている。

 大佐はナセル氏を継いだサダト元エジプト大統領(同70~81年)がナセル路線を親米・イスラエルに転換したことに強い反感を持っていた。サダト氏を暗殺したジハード団はリビアで訓練を受けたとの情報もある。訓練地ともいわれるのがベンガジだ。

 ベンガジはリビア東部の中心都市でエジプトに比較的近い。サダト氏暗殺後もエジプトを追われたイスラム過激派が逃げ込み、住民の一部に過激なイスラム思想を植え付けたともされる。住民にはイスラム主義を抑え込んできたカダフィ政権に反発があり、政権は常にベンガジの反政府運動を警戒してきた。

 今回のデモが政権運営に影響するかを予測することは難しい。リビアは最近、欧米との関係を改善しているが、周辺国に比べ依然、閉鎖的で、欧米の世論を気にしていない。治安部隊による徹底した抑え込みも容易だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110217-00000004-maiall-int

バーレーンでの反政府デモ続く-犠牲者への追悼も
ウォール・ストリート・ジャーナル 2月17日(木)9時51分配信

 【マナマ(バーレーン)】ペルシャ湾岸の産油国バーレーンでの反政府デモは16日、3日目に入り、首都マナマの中心部にある「真珠広場」のデモ隊による占拠が続いた。また、15日の治安部隊との衝突での2人目の犠牲者を追悼するデモ行進が行われた。

 7つの反体制グループをまとめるために設置された委員会は19日の大規模デモを呼びかけた。これには少なくとも5万人が参加すると見られている。

 多くの人が病院の遺体安置所前に集まり、15日の衝突での犠牲者が棺に入れられて大型四輪駆動車で運ばれるのを見送った。数千人が犠牲者の写真を掲げたり、「神は偉大なり」「ハリファ首相に死を」などと書いたプラカードを掲げたりしながら、棺のあとに続いた。治安部隊はデモ隊から1キロほど離れた所にとどまったままだった。

 マナマの中心部にある真珠広場には、さらにテントやにわか作りの屋台などが増え、夜を徹してここにとどまった人々の間にはお祭り気分も感じられる。活動家の演説がスピーカーを通じて途切れなく流れる中で、若者たちはおしゃべりをしたりダンスに興じたりしている。午後の祈りのあとに犠牲者追悼グループも加わり、広場の人の数は一段と膨れ上がった。

 ハマド国王はテレビで、2人の犠牲者に追悼の意を示すとともに、死亡原因やデモ隊への治安部隊の対応を調査することを約束した。国王がテレビ演説をするのはまれなことだ。国王はまた、報道規制の緩和や特別福祉支払いなどこれまでの約束履行を改めて表明した。

 シーア派アルワファクなど7つの反体制グループは16日、反政府運動とその要求をまとめるために委員会を設置したことを明らかにした。シーア派の他にスンニ派政治家も入っているこの委員会は同日から1日に1度は会合を開くことになった。国民民主行動(NDA)を率いるスンニ派のエブラヒム・シャリフ氏は「デモ参加者に何をしろと言うのではなく、彼らの要求をまとめる必要がある」と話した。

 チュニジアとエジプトの政府を追放し、アルジェリア、ヨルダン、イエメンでのデモを引き起こした中東での反体制運動は13日の抗議活動でバーレーンにも飛び火した。この紛争は不安定さの急速な広まりへの不安を高め、一連の動きを中東における国益を損なわない形にしたいオバマ米政権にとってジレンマを深めている。

 バーレーンはペルシャ湾の小さな王国で、質の高い銀行と、アルコールが禁じられている隣国サウジアラビアから訪れる外国人にバーが酒を提供することで知られている。同国の産油量自体は多くはないが、その周辺国は世界最大級の産油国だ。

 ペルシャ湾での地理的条件から同国は以前から米国の戦略的同盟国で、マナマには米海軍第5艦隊の司令部が置かれている。ただ、ここを母港としている米軍艦はない。

 バーレーンではスンニ派が長い間、経済、政治面で差別されていると訴えるシーア派国民に手を焼いてきた。シーア派の指導者らは政治的権利を要求する際に時として暴力も用いてきた。しかし、ハリファ一族を権力の座から引きずり下ろすには至っていない。

 デモ隊の参加者の多くは失業者か貧困層の人たちだが、職を持つ若者も参加している。参加者の数が減らないようにするためで、仏BNPパリバの支店で働く25歳の青年は「銀行で働いたあとまた真珠広場に戻ってくる」と話した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110217-00000005-wsj-int
イラン軍艦がシリアに向けスエズ運河通過へ=イスラエル外相
ロイター2月17日(木)6時44分配信

 [エルサレム 16日 ロイター] イスラエルのリーベルマン外相は16日、シリアに向かうイランの軍艦2隻が同日、スエズ運河を通過する予定であることを明らかにした。

 同外相はこれはイランによる「挑発行為」であると非難した。ただ、軍艦派遣はイスラエルへの深刻な軍事的脅威とはならないとみられる。

 リーベルマン外相はエルサレムで行った演説で「今夜、イランの軍艦2隻がスエズ運河を通過して地中海を航行し、シリアに到達する予定だ。長い間起きていなかった事態だ」と述べた。

 そのうえで「残念ながら国際社会からは繰り返されるイランの挑発行為に対応する準備が示されていない。イスラエルがこうした挑発行為を無視し続けることができないことを国際社会は理解する必要がある」と述べた。

 シリアはイランの同盟国で、イスラエルとは敵対関係にある。

 リーベルマン外相は世界の主要国に対し、速やかに対応しイランに自制を促すよう求めた。イスラエルのバラク国防相は、同国がすでに「中東の友好国」に警戒を呼びかけたことを明らかにした。

 米政府は、イランの軍艦について認識していることを明らかにしたものの、それ以上の詳細には言及していない。

 イスラエルのイェディオト・アハロノ紙によると、シリアに向っている2隻の軍艦は、MK―5フリゲート艦と補給艦。同紙は、1979年のイラン革命以降、同国海軍の軍艦がスエズ運河を通過したことはないとしている。

 イスラエル政府高官は同紙に対し、2隻の軍艦は1年間シリアの港にとどまるとした上で、イランが地中海に軍艦を展開することは正当化できないと話した。

 
スエズ運河当局者は、軍艦の同運河通過にはエジプトの国防省と外務省の許可が必要と指摘した。現段階では両省ともイランの通過許可申請について明らかにしていない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110217-00000813-reu-int
露の大使館前で日本国旗燃やされる、生卵も
読売新聞 2月17日(木)0時57分配信

 【モスクワ=寺口亮一】モスクワの在ロシア日本大使館は16日、大使館前で15日夜に抗議活動を行っていた男女7人のロシア人活動家が日本の国旗を燃やし、警備施設に生卵を投げつけていたと明らかにした。

 大使館は16日、ロシア外務省に対し遺憾の意を伝え、適切な対応と再発防止を求めた。これに対しロシア側は、「今回の事案を残念に思う」として、必要な措置を講じると応じたという。

 日本大使館前では、7日の「北方領土の日」に、都内のロシア大使館近くでロシア国旗が破かれるなどして以降、抗議活動が断続的に続いていた。

 ラブロフ外相は日本側に対し、ロシア国旗を「侮辱」した責任者の刑事処分を求めていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110217-00000068-yom-int
中東・北アフリカに広がる混乱、国別の状況は今
CNN.co.jp 2月15日(火)12時12分配信
(CNN) 独裁政権を崩壊に追い込んだチュニジアやエジプトの民衆デモが周辺諸国に広がっている。各国・地域の状況をみてみる。

アルジェリア 
先週末のデモを受け、当局は14日、20年続く非常事態宣言を「数日中に」解除すると述べた。反体制派組織によると、12日の首都アルジェのデモでは約100人が逮捕された。

バーレーン
国営通信によると、13日のデモで警察が襲撃を受け、少なくとも警官3人とデモ参加者1人が負傷した。14日にもデモが計画されている。

エジプト
銀行職員によるデモの影響で14日も銀行の閉鎖が続いている。証券取引所も新たな通知があるまで再開されない模様だ。警官らも待遇改善を求めてデモを行っている。警官の一部は報道陣に対し、先週デモ隊を狙撃したのは当局に命令されたためだと話している。

イラン
首都テヘランで14日、数万人規模の反政府デモが行われ、デモ隊と治安部隊が衝突。半国営ファルス通信によると、銃撃を受けて1人が死亡、複数が重傷を負った。目撃者によると少なくとも40人が拘束された。

イラク
45%の失業率や貧困、食料・電気・水不足に不満を訴える数千人規模のデモが各地で行われている。マリキ首相は自身の報酬を半減し、14年の任期満了後は再出馬しないとしている。

ヨルダン
相次ぐ反政府デモを受け、アブドラ国王は先週、バヒート新首相率いる新内閣を任命した。メンバーには野党勢力数名も含まれており、国王側はこれを機に改革を目指すとしている。
リビア
カダフィ大佐の統治が約40年続くリビアでも14日、フェイスブックを通じて平和的なデモの開催が呼びかけられたが、実施されたかどうかは不明。

パレスチナ
自治政府のファイヤド内閣が14日総辞職し、報道官によると、アッバス議長はファイヤド氏に組閣を指示した。自治政府は先日にも、9月に選挙を行う方針を発表している。中東諸国と同様のデモは起きていないが、イスラエルとの和平交渉でパレスチナ側が大幅な譲歩を提案していたとの内容を示す秘密文書が、衛星放送アルジャジーラによって暴露されたことを受け、自治政府への批判が高まっている。

シリア
周辺国の民衆デモを受け、シリア政府は物価を低く抑えるための補助金の給付を停止するとした従来の方針を撤回した。米紙ニューヨークタイムズによると、フェイスブックで5日に計画されていたデモは実施されなかった。

スーダン
各地でデモ隊と当局の衝突が相次いでいる。人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、ハルツームなど北部の都市で1月末に行われた反政府デモで、当局が過剰な武力を行使したと非難。複数が逮捕され、うち20人の行方が現在も不明との目撃証言もある。

チュニジア
ベンアリ大統領を失脚に追い込み、周辺地域にデモが広がるきっかけとなったチュニジアだが、以来、同国から大量の不法移民が押し寄せているイタリアが不満を募らせている。14日には欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表がチュニジアの政府や民間人リーダーらと会談した。

イエメン
首都サヌアでは14日の時点で、反政府派(約200人)と政府支持派(約300人)の衝突が少なくとも3日間続いている。双方が投石したり刃物を振り回したりしており、数百人が逮捕された。32年間政権の座にあるサレハ大統領は、13年の任期満了で辞任し、再出馬はしないと宣言している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110215-00000011-cnn-int
中国の消費者物価、4.9%上昇=インフレ圧力根強く―1月
時事通信 2月15日(火)11時39分配信
 【北京時事】中国国家統計局が15日発表した1月の消費者物価指数は、前年同月比4.9%上昇した。上昇率は昨年12月(4.6%)から加速したが、11月(5.1%)を上回るとの見方も多かっただけに、「予想よりは落ち着いた数字」(中国証券大手)との見方も出ている。前月比の上昇率は1.0%。
 しかし、インフレ懸念は根強い。中国では各地で干ばつや寒害などが続き、農業生産への影響が懸念されている。国際穀物価格も高騰しており、今後、物価を押し上げる恐れがある。1月の食品価格は前年同月比10.3%の大幅上昇だった。
 巨額の財政出動や金融緩和で生じたカネ余りの弊害も解消されていない。米国の量的金融緩和を受け、大量の投機資金が不動産市場などに流入しており、資産バブル懸念も一段と強まっている。住居費は同6.8%上昇した。
 卸売物価指数の前年同月比伸び率は6.6%と、8カ月ぶりの高水準となった。原材料価格の高騰や賃金の上昇が企業経営を圧迫しており、小売価格への転嫁が進めば、物価上昇ペースがさらに加速する可能性もある。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110215-00000057-jij-int

<国連安保理>タイとカンボジア衝突 抑制求める声明採択
毎日新聞 2月15日(火)10時19分配信
 【ニューヨーク山科武司】国連安全保障理事会は14日、国境の山岳寺院周辺の領有を巡るタイとカンボジアの軍事衝突に関し、両国に「最大限の抑制と、事態の悪化を招くすべての行動を避ける」よう求める報道向け声明を採択した。

 安保理には両国外相も出席し、それぞれの立場を説明した。会合後、タイのカシット外相は記者団に「(タイ・カンボジアの)2国間協議は機能している」と述べ、来週にもASEAN議長国インドネシアも交えた協議が開かれるとの見通しを示した。

 一方、安保理で国連の監視団や平和維持部隊の派遣を求めたカンボジアのホー・ナムホン外相は「2国間協議は08年から停滞している。第三者、ASEANの仲介は望ましい」と語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110215-00000023-mai-int

<エジプト>ツタンカーメン副葬品が盗難 混乱に乗じ略奪
毎日新聞 2月14日(月)10時54分配信
 【カイロ樋口直樹】大規模な反政府デモが続いたエジプトの首都カイロのエジプト考古学博物館から、「黄金のマスク」で有名な古代エジプト王ツタンカーメンの副葬品など18点が盗まれていたことが13日、分かった。ザヒ・ハワス文化財担当国務相が発表した。博物館は先月末に盗難に遭ったが、被害の全容が明らかになったのは初めて。

 盗難に遭ったのは、女神に担がれたツタンカーメン像や、魚に銛(もり)を打ち込むツタンカーメン像の一部など。いずれも金箔(きんぱく)を施した木製品で同王の代表的な副葬品。また、ツタンカーメンの父でエジプトに一神教を導入しようとした異端の王アメンホテプ4世の石灰岩像など、極めて貴重な文化財も盗まれていた。

 ツタンカーメンは紀元前1300年ごろに在位。若くして死去したといわれる。1922年にエジプト南部ルクソールの「王家の谷」で発掘された墓からは、王のミイラにかぶせられた「黄金のマスク」をはじめとする美しい副葬品の数々が発見された。盗掘を免れた王墓は極めて珍しい。

 エジプト考古学博物館は、反政府デモの拠点だったタハリール広場に面している。AP通信によると、デモ隊と治安警察が激突した先月28日、混乱に乗じて少数の略奪者が博物館の非常階段で屋上に上り、ガラス張りの天井を破ってロープで館内最上階に侵入したとみられている。

 ハワス国務相は「略奪者の捜査を既に開始した」と述べた。考古学博物館は現在閉館中で、兵士らによる警備が続いている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110214-00000006-mai-int

「ピラミッドに戻ってきて」=大打撃の観光業者訴え―エジプト
時事通信 2月15日(火)5時43分配信
 【カイロ時事】エジプトの首都カイロ郊外のギザにある三大ピラミッド周辺で14日、政変の影響で海外からの観光客が途絶え、大打撃を受けている観光ガイドら数百人が集まり、「戻ってきて」と観光の再開を訴えた。AFP通信が伝えた。
 ムバラク独裁政権が倒れた政変で、観光客約100万人が出国したとされ、ピラミッド周辺はこの日も閑古鳥が鳴いていた。ガイドの一人、ハシェムさんは「ここには恐れるものはない」と治安の良さを強調。別の男性は「革命(政変)はエジプト人が自由という価値観を共有していることを示しており、観光客を呼び込む誘因になる」と期待感をにじませた。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110215-00000020-jij-int

盗まれた古代エジプト文化財の一部発見、博物館周辺で
ロイター 2月15日(火)9時29分配信
 [カイロ 14日 ロイター] エジプトの反政府デモのさなかに首都カイロの考古学博物館から貴重な文化財が盗まれた事件で、ザヒ・ハワス文化財担当国務相は14日、盗品のうち数点を発見したと明らかにした。

【ビデオ】ツタンカーメン像など盗難 エジプト混乱時の博物館(字幕・14日)

 見つかったのは、約3000年前のひつぎの一部など。ハワス国務相はロイターに対し、「なくなった8点のうち2点が博物館の外で見つかった。捜索を継続し、さらなる発見につなげたい」と話した。

 ツタンカーメン王の木像やアメンホテプ4世の石灰岩製の像などは依然行方が分からないという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110215-00000388-reu-int

複雑系理論で「次のエジプト」を予測できる?
ギズモード・ジャパン 2月10日(木)11時5分配信
以前から懸念は示されていたようです。

「文明と野蛮の間には、食事数回の違いしかない」という格言があります。つまり、ちゃんと食べることができなくなると、法も秩序も崩壊し始め、やがて文明が成り立たなくなってしまうということです。現在エジプトで起きている混乱の背景にも、食料問題があります。

今回の内乱が起こる前から、複雑系の研究者たちがある警告をし続けていました。それは、世界中の金融・エネルギー・食料システムの緊密な関係がもとで、政治的に不安定な状態が引き起こされるだろうということです。そして今まさに中東で、その懸念が現実のものになっているのです。

でも、研究者たちはただ危険性を叫んでいるだけではありません。彼らの研究でシステム間の複雑な関係をうまくモデル化できれば、次にどこで同じような現象が起こるかを予測できるかもしれないのです。

現在、システムの複雑な相互依存状態には明暗両面があることが見えてきています。つまり、急速な変革あるいは革命を生み出すこともあれば、全体が崩壊してしまうこともあるということです。現時点でエジプトでは日常生活のあまりに多くのことが相互に結びついているので、これから明暗どちらに転ぶかはまったくわからない状態になっています。

エジプトにおいては、食料は政治的問題です。エジプト人は小麦の世界最大の輸入者かつ消費者であり、しかもそのほとんどは貧しい人たちです。

その結果として、エジプト政府がパンに多額の補助金をつぎ込んでいます。政府は輸入小麦が到着する港やそれを運搬するトラック、製粉工場や製パン所も運営しています。「そうしたヒエラルキー・システムは安定してもいるし、不安定でもあります。」と語るのは、ニューイングランド複雑系研究所(マサチューセッツ州ケンブリッジ)所長のヤニール・バー・ヤム氏です。


・頂点のないヒエラルキー

上の発言でバー・ヤム氏が言わんとしているのはこういうことです。つまり、エジプトはヒエラルキーのトップがしかるべき位置にいるときは問題なく、多少のことがあってもすぐに元に戻れます。でも、トップがなくなれば(つまり現在エジプトで起こりつつあることですが)、システム全体が崩壊の危機に直面します。

崩壊の兆候と思える事態も起こっています。エジプトの首都カイロではパンが希少になりつつあり、パン店は小麦粉が足りないために店を閉め始め、さらにはパンの価格を上げようとしたパン店主が殺されたという報告もあります。でも輸入された小麦は港に留まったままで、その積込みや運搬はされないままになっているのです。

経済の相互依存関係によって、混乱はさらに深まります。食料があるところでさえ、エジプトの人々がそれを買うお金はほとんどないのです。企業や銀行が機能を停止し、ATMにも現金がなく、賃金も支払われなくなるためです。

状況は「非常に深刻だ」というのはウォータールー大学(カナダ・オンタリオ州)教授のタッド・ホーマー・ディクソン氏です。彼は複雑な近代システムにおいては食料不足や貧困を含むストレスによって、壊滅的な崩壊が引き起こされる可能性があると警告していました。「システムが壁に突き当たる前に仕事が元通りになるかにすべてかかっています」とホーマー・ディクソン氏は言います。言い換えれば、今止まっている企業や銀行が早々に機能を回復しなければ、飢餓が急速に広がり、文明秩序の崩壊が起こりうるということです。

救いもある、と前出のバー・ヤム氏は指摘しています。それは、ヒエラルキーのトップを入れ替えれば、物事はやり直せるということです。


・食料が引き金に

エジプトの混乱は、チュニジアが突然20年以上続いた独裁政権を手放したことから始まりました。が、混乱の原因の一部は食料価格にもあります。昨年12月には、FAO(国連食糧農業機関)による食料価格指数は史上最高になっていました。

そのため、アルジェリアやモロッコ、ヨルダン、イエメンのデモでは、高すぎる食料価格についても抗議されていました。最近、日本の野村證券が食料価格のインフレの危険性が高い25カ国のリストを発表したのですが、それらの国は食料を輸入に頼っており、なおかつ国民が収入の3分の1以上を食料に費やしてしまっています。その中でエジプトは危険性が6位になっていました。モロッコ、アルジェリア、レバノンは上位5カ国に入っており、チュニジアは18位でした。

数十年に及ぶ独裁政権から来る抑圧状態によって、中東全体が「自己組織化された危機的システム」になってしまったのかもしれない、とバー・ヤム所長は言っています。抑圧状態が続くことで、そのシステムは比較的小さな出来事から連鎖的に引き起こされる変化に対し脆弱になります。バー・ヤム氏とそのチームは、世界の相互関連する経済システムの数学的モデルを作ることで、次に不安定な状態になりうる地域を予測することを目指しています。


参照サイト: http://www.newscientist.com/ [New Scientist]

Debora MacKenzie - New Scientist(miho)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110210-00000303-giz-ent