絶望感をにじませながら指摘 | 日本のお姉さん

絶望感をにじませながら指摘

エジプトの激変 イスラム原理主義台頭、脅威
産経新聞 2月4日(金)7時57分配信
 ■イスラエル危機感

 【カイロ=黒沢潤】エジプトのムバラク大統領が9月に予定される大統領選への不出馬を表明したことで、イスラエルに激震が走っている。エジプトは、アラブ圏内でイスラエルと「平和条約」を締結している数少ない国家で、イスラエルにとって重要な役割を果たしてきた。それだけに、エジプトにイスラム原理主義勢力が台頭すれば、地域情勢は激変する。イスラエル政府高官は、エジプトでの根本的な政権交代は「イスラエルの安全保障政策の大転換を招く」と深刻な懸念を表明している。

[フォト]投石する反政府デモの参加者

 「『自由』と『急進』のどちらをエジプトが選ぶのか。エジプトだけでなく、中東、イスラエルの未来にとっても重要だ」。イスラエルのネタニヤフ首相は2日、エジプトで非合法のイスラム主義組織ムスリム同胞団などが台頭することに強い警戒感を示した。

 イスラエルは1979年、アラブ国家では初めてエジプトと平和条約を締結。反ユダヤ人国家に囲まれる中東地域で「アラブの盟主」を自任するエジプトと共闘する意味は大きかった。しかし、「イスラエルの命綱」(外交筋)だったムバラク氏が現在の任期限りでの退陣を表明したことで、国家の安全が脅かされかねない状況となった。

 イスラエルは従来、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと対峙(たいじ)するため、レバノンとの国境沿いに兵力を配置。パレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスを封じ込めるため、ガザ周辺にも兵力を積極展開してきた。

 だが、ムバラク氏退陣後はエジプト・シナイ半島も注視せざるを得ない。エジプトは米国から年13億ドルもの軍事支援を受ける世界11位の軍事大国で、強力な米国製兵器の“矛先”が変われば、深刻な脅威となる。

 イスラエルにとってさらなる「悪夢」は、エジプトの新政権とガザのハマスの共闘だ。エジプトはガザに武器が流れ込まないよう曲がりなりにもガザ境界を監視してきた。武器が公然と流入すれば脅威は高まる。

 パレスチナとの和平交渉では、ムバラク氏がアラブ諸国との「仲介役」を務めており、ムバラク氏が政権から離れ、イスラエルが中東で孤立を深めることになれば、アラブ諸国からの圧力は強まりそうだ。

 ムバラク政権とイスラエルは、核開発を進めるイランを「共通の敵」として協調してきた経緯を持つが、ネタニヤフ首相は「今度はエジプトが『もう一つのイラン』になりかねない」と懸念を示した。イスラエル紙イディオト・アハロノトは2日、「米国がムバラク氏を見放し、エジプトに民主主義を根付かせようとするなら間違いだ」と強調した。盟友のムバラク氏を失うことで、窮地に立たされるイスラエルへの配慮が米側にないことへの不満を示した形だ。

 シェイクト元駐エジプト・イスラエル大使は「(ムバラク氏退陣後の)『エジプトの民主主義』実現という事態は確かに美しい。だが、ムバラク氏が権力の座に居続けることこそがイスラエルにとって真の利益となる」と、絶望感をにじませながら指摘している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110204-00000117-san-int