イスラエル、サウジの情報筋はチュニジア、エジプト政変の背後はイランと分析
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)2月1日(火曜日)
通巻第3219号
イスラエル、サウジの情報筋はチュニジア、エジプト政変の背後はイランと分析
ヨルダンもイェーメンも危殆に瀕し始めた
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カザフスタンの独裁者ナゼルバエフは、大統領選挙を繰り上げて実施すると急遽発表した。冷戦終結からすでに20年、この男もカザフスタンに強権的独裁政治を強いて、富を一族が独占してきた。
チュニジアについでエジプトがこけると、拍手喝采はイランである。
これは民衆の勝利ではない。シーア派の勝利、イスラム原理主義過激派の政権掌握を意味し、イランの影響力はいや増すことになる。
レバノンはすでにヒズボラに取られ、ガザはハマス。両テロリストの背後にあって指揮しているのはイランである。シーア派はイラクも抑えてしまった。米国は壮大な徒労を強いられ、得たものはなかった。
アフガニスタンも、米軍とNATO引き上げの日程がみえ、カルザイはさかんにテヘランを見ている。カルザイがワシントンを裏切る日も近いような気がする。
米国とイスラエルとサウジアラビアは、このイスラム原理主義過激派の政権がドミノのように樹立していく様を傍観するだけ、「民主化」要求の隙間をイランの陰謀につかれた格好である。
そうだ。ベトナム戦争で「反共」の戦いと錯誤したマクナマラは戦後二十年以上経ってベトナムへ赴き、あれは共産主義との戦いではなかった。ナショナリズムとの戦争だったと悔悟した。
チュニジア、エジプトは表面的に「民主化」へのステップを西側は愚直に錯誤している。
気がつけば、アラブ世界にイスラム原理主義過激派が誕生するという悪夢は、すぐそこにある。
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戦後日本の欺瞞はなにが元凶で、道徳の喪失はいかにおきたか?
著作の行間からはみ出るように福田恒存の箴言がうなりを上げる
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福田恒存評論集(20)『私の英国史』(麗澤大学出版会)
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「暗渠で西洋と繋がっている」と三島由紀夫に指摘され、ふたりの論争が展開されるのだが、じつは「暗渠」ではなく、『下水道』と三島は言ったらしい(『憂国忌』四十年シンポジウムでの遠藤浩一の指摘)。
福田はなぜ英国史を書いたか。シェイクスピア全訳の余滴だろうか。本書を読むとすべて納得がいく。
これは評者(宮崎)が学生時代、中央公論からでてきた『歴史と人物』に連載されていたもので、担当が平林孝だった。平林氏は、評者とも一緒に台湾へ行ったことがあるが、早稲田国策研究会出身で、後日は櫻井よしこ女史担当でもあった。ガンで急逝されて、はや十年近くなる。
脱線した。
本書には「道徳心恢復の為に」「日本よ、汝自身を知れ」「反核運動の欺瞞」「罪なき者、まづ石を投げよ」など文春版の全集に未収録作品も納まっている。
ともかく福田氏の著作はどのページを開いても箴言が溢れている。
倫理、道徳などと日頃獅子吼する一番手はマスコミである。しかし、日本で道徳心に一等欠けるのは、このマスコミ人という傲慢で欺瞞的な種族である。
福田はこう書いた。
「もしこの世で最高の道徳とまでは言はぬにしても、それを目ざして鋭意努力しているものがあるとすれば、それはまさに新聞を措いて外には例がない。それゆえ、新聞は天皇制が打倒されようと、憲法が改められ旧憲法が復活しようと、日本がロシアに占領され、共産圏入りしようと、アメリカの完全な属国になろうと、その他の如何なる天変地異が起ころうとも、そのつど日本のある限り永続し、常に最高の道徳を示して止まぬのであろう(中略)すなわち、新聞倫理は二成(ふたなり)倫理であろうからだ。二成とはいうまでもなく男女両性をそなえていることである。戦争中は全新聞が一丸となり、国民を戦争に駆り立てたが、戦争が終わると、その中心人物は馘首され、或いは第一線を退き、その替わりにそれまで無傷だった新部隊が戦列について平和、反基地、反戦、非核、反核を唱える」(376p)
そして、次のようにも言われる。
「戦後の日本は、良かれ悪しかれ、アメリカの庇護のお陰で、危険を暗渠から暗渠に廻し流しして来たからである。が、国民の政治的不信感は『爆発寸前』にある、少なくとも新聞ジャーナリズムは輿論を「代表」して絶えずそれを言い続けてきた。かりにその通りだとしても、その不信感が顕在化しないのは、経済的豊かさのためであり、これまた良かれ悪しかれ、日本民族の家族的和合=許し合い=馴れ合いという習慣がアメリカの庇護のもとで殆ど本能化しているからである」(332p)
ここにもでてくる。「危険を暗渠から暗渠に廻し流しして来た」。それが戦後日本の姿である。
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(麗澤大学出版会)http://www.rup.reitaku.jp/
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ウィキリークスでここまで分かった世界の裏情勢』(並木書房)を早速、拝読しました。
アサンジ本人の回想記やウィキリークスの元相棒の本より早い!「世界一早く」出版されましたね。
それにしても、あまりにも面白くて仕事を中断してしまいました。ここまで分析する知識はマスコミにも大学にもいないでしょう。宮崎さんの独壇上です。
(RW生、江東区)
(宮崎正弘のコメント)拙速も、ときに良薬? ご感想有り難う御座いました。
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●毎日一行◎ 米国の魂胆は次期後継を前原、TPPを実現させる腹づもりでは?
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(読者の声2)先週の『週刊新潮』のグラビアには仰天です。「アキ菅」氏が国会本会議で棒読みする原稿ペーパーを大写しで見せてくれました。
A3だろうか大きな紙にわずか10行づつの巨大フォントで殆どの漢字にはルビつき。「先送り」「熟議」など小学生テストくらいの漢字だろうか。なぜか「地域主権改革の推進」にはルビがないが、強調して読み上げたいのか、ここだけマーカーペンで囲んである。
2,3ページ分が写っているが、詳細に拝見すると何となくこのご仁のアホさ加減と、取巻きにいいようにコントロールされている様子が垣間見えてくる。
横浜APECで胡錦濤に拝謁した際に膝に広げていた紙きれもこのよな体裁だったのか?「面白うて、やがて背筋が凍りつく」の感あり、でした。
ところで新書『ウィキリークスで・・・』を休日に楽しませていただいた。世界中の魑魅魍魎状況の最新アップデート。なんと1月14日のチュニジア大統領の亡命までもう活字になっている。
WikiLEAKSを巡るニュースについては是非続報を望みます。
(太平洋之鷲)
(宮崎正弘のコメント)擱筆した途端にエジプト政変でした。続編、機会あれば纏めてみたいところです。
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書評♪
飯柴智亮『日米同盟崩壊 もう米軍は日本を中国から守らない』(集英社)
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著者の飯柴さんは元米軍将校、アフガニスタンでも戦った。
かれはランボウを見て米軍兵士に憧れ、十九歳で渡米して、苦労の末、市民権を取った。99年に入隊、精鋭の82空挺団所属、それでアフガニスタンへ赴任という一風かわった、型破りの日本男児。
だから米軍という精鋭軍の、実際に戦闘した経験から見て、わが自衛隊はと言えば「おとぎの国の軍隊」でしかない、と率直な印象を語る。
じっさいに飯柴少尉は日米合同演習で自衛隊と何回も演習のやりとりを体験しており、暗号化も秘密保持もなされていない作戦指揮コンピュータ・システムなどにあきれかえっている。
だから力をうしなったメジャーリーガーのごとくに米軍の荷物になって、いずれ捨てられる運命が待っていると警告する。自衛隊は「ガラパゴス部隊」化しつつあり、武人の精神をわすれているのではないか。
大事なことは武士道精神だ、と。
著者はこう言う。
「現在の日本では、武力とはまるで悪いことのように解釈されています。よく考えてみれば、『武士道』『文武両道』『武芸』『武人』など『武』の字が付く単語に悪い意味のあるものはありません。つまり『武力』は悪い力を指すものではないはずです」と平明に訴える。
このままでは2050年を最長として日米安保条約はアメリカから棄てられるという。しかも台湾有事とならば、日本は確実に巻き込まれる。
「中国の属国にならないために何をすべきか、尖閣諸島に軍を常駐させるべきではないのか」
と主張は豪快に直球である。
入り組んで外交ルールとか、輻輳した法律を説いてまわる保守評論家や軍事評露のオタクたちにも、このような簡潔明瞭な国防論を読んで貰いたいと思った。
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宮崎正弘新刊案内 http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
新刊 明日2日発売(都内主要書店には並んでいます)
宮崎正弘『ウィキリークスでここまで分かった世界の裏情勢』(並木書房、1470円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4890632689/
宮崎正弘『オレ様国家 中国の常識』(新潮社、1470円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4103290617/
(上記サイトから申し込めます。全国主要書店にて発売中です!)
< 宮崎正弘のロングセラーズ >
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談、海竜社、1575円)
『上海バブルは崩壊する』(清流出版、1680円)
『増長し無限に乱れる「欲望大国」中国のいま』(石平氏との対談。ワック、945円)
『絶望の大国 中国の真実』(同じく石平氏との対談。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』(徳間書店、1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
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