エルバラダイ(元IAEA事務総長)が突然の帰国「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)1月28日(金曜日)
通巻第3213号
エジプト政変第二幕。エルバラダイ(元IAEA事務総長)が突然の帰国
「ムバラクは引退せよ、暫定救国政権なら引き受ける」と帰国声明に熱狂と批判
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エルバラダイ元IAEA事務総長が滞在先のウィーンからエジプトへ帰国した。
新しい政変劇第二幕があいた。
カイロ空港で内外記者団に囲まれたエルバラダイ元IAEA事務総長は「ムバラク大統領は三十年もエジプトのために奉仕した。もう、引退せよ。救国統一戦線による暫定内閣が発足するなら、貢献する用意がある」と発言した。
熱狂と批判の渦が同時におこった。
批判の声のほうが強いのは、第一にノーベル平和賞受賞というだけで、国際的には有名だが、エジプトになにか過去の貢献したのか? 第二に三十年以上にわたって海外に暮らしてきた人間はエジプトの内政を知らないし、欧米の民主主義環境への認識とエジプトを重ねての改革志向は基本的に謝りであるとする複雑な批判だ。
第三にすでにエルバラダイは82歳。そもそも原子力監視などと地味な仕事は、カリスマ性がないではないか、と政治プロの批判が目立つ。
エルバラダイ元IAEA事務総長の帰国を歓迎するのは一般民衆、ノンポリ、若者のツィッター派など、つまりは淡い期待とかすかな希望を彼に託している。政治力が未知数であり、修羅場をくぐる体験がすくないことなど問題にしていない。
一方、かれを警戒するのはムバラク与党、ビジネス・エリートなどのエジプトエスタブリシュメントと、意外にも最大野党「ムスリム同胞団」である。
反政府運動の主導権をにぎろうとしている野党は混戦しているが、少数野党の連合がおおきな波になってエルバラダイをかつぐことに、最大野党「ムスリム同胞団」は不満である。
もうひとり、エジプトの有名人がいる。
ガリ元国連事務総長だ。
しかしガリはムバラク政権で外務大臣をつとめ、かれの家系はその前の王朝に繋がり(父親は王朝の首相だった)、しかもガリはキリスト教コプト教徒だ。エジプト政治が受け入れる素地を基本的に欠いている。
かくしてカイロは今日も熱い。
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(読者の声1)今週の『週刊新潮』(2月3日号)巻末の「変見自在」のタイトルは[害人記者会]。
コラムニストの高山正之氏が、日本外国特派員協会に巣食うアングロサクソン人たちの悪辣非道さを描いていて痛快です。
ところで一つ訂正するべき箇所があります。
「もう3年連続の赤字と朝日新聞にあった」とあるところです。
2010年12月4日朝日新聞夕刊は「3年連続の赤字」という中見出しを付けていますが、本文では「今年度(2011年3月期)は3年連続の赤字を見込む」とあります。とにかく協会のトップがこういう内情をペラペラ記者にしゃべること自体阿呆の極みです。
自分がどんなに内部の抵抗勢力に抗して頑張っているか外部にアピールしたいが為にインタビューを受けたのですから状況判断力に欠けています。
朝日の若い記者の掌の上で踊らされたわけです。このトップは有楽町まで歩いてきて給湯室で半裸になって体を拭うという赤貧ぶり。前原外務大臣が協会で講演した際にガールフレンドを外相のいる控え室に入れた公私混同氏です。
正会員になれない準会員は協会の運営にタッチ出来ませんが会費の八割以上を負担させられ彼らはこれを「思いやり予算」と呼んでいます。日本人スタッフたちは労働基準法を無視した待遇をしばしば受け、堪えかねて東京労働局に駆け込んだスタッフもいます。
有楽町電気ビル二十階は今尚被占領地域であり続け大東亜戦争戦勝国のアングロサクソン人(要は食い詰めた外人ジャリナリスト)たちが支配しています。
戦争に負けるとは辛いことだということを体験実感されたい方は入会したらよいでしょう。この記事に「関係者はあと数年で消滅と泣きを入れる」とありますが現在黒転していますので外人記者クラブが消滅することはありませんが。。。
(有楽生)
(宮崎正弘のコメント)あの倶楽部の実態は拙著『米中対決時代がきた』(角川書店、)に挿入したのですが、その後もますますジャーナリズムの質が劣化し、率直に言って「あそこには情報がありません」。
ホントに日本人の賛助会員制度でなりたっているのが実態でしょう?
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◎毎日一行◎ カイロ証券市場は21%の暴落。ムバラク政権の前途を占う?
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(読者の声2)宮崎正弘さんの最新著『オレ様国家 中国の常識』(新潮社)を早速、拝読しました。
全篇息をもつかせぬ面白さで一気に読ませて頂きました。
私が最も感銘を受けたのは最終頁。
「満洲族、蒙古族、ウイグル、チベットの民が以後どれほどの苦しみに呻吟し、いまも中華帝国の圧制に苦しんでいるか。もし日本にかれらに対する歴史的責任があるとすれば、そういう塗炭の苦しみ状態に中国の庶民、農民と少数民族を追いやった責任、つまり日本が戦争に敗れたことにある」
と述べられた箇所です。
これまで実に多くの中国本、中国批判本が出ていますが、歴史の本質をかくも鋭く的確に論じたものはありません。
大東亜戦争の戦争目的は自存自衛と大東亜共栄圏にありましたが、最もその中心命題であったはずの支那人民の解放(欧米帝国主義と共産主義からの)が実現できなかったことは遺憾といわざるをえません。
一方、ドイツによる戦争目的であった欧州統一とソ連ボルシェビズム打倒は、皮肉にもソ連の崩壊とEUの成立によって実現しました。ドイツは勝利したのです。
歴史は長期的視点に立ってみなければなりません。中国共産党の暴力による人民と少数民族の圧制は必ずやそのうち崩壊すると確信しています。
(武蔵国杉並住人)
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(読者の声3)偶然、書店で手にした新潮社の『波』。電車のなかで読み始めたら、高山正之さんの書評が目にとまりました。宮崎正弘さんの『オレ様国家 中国の常識』を批評しているのですが、なんと洒脱で諧謔が込められ、しかも本質を突いておられる。宮崎さんの本も面白いですが、それを論じた書評の白眉と思いました。
(SY生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)『波』における高山さんの拙著への評ですが、いかにも辛辣な氏らしく諧謔的であり、しかし中国の本質をえぐる筆法。この書評のおかげで新潮社の担当者によりますと、拙著も健闘しているそうです。
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(読者の声4)英国BBCの国際放送が予算削減でかなりの規模縮小のようです。
「英BBC、海外向けラジオを一部廃止に イギリスのBBCは、政府の大幅な歳出削減の影響で、多くの国で親しまれている海外向けラジオ「BBCワールドサービス」の一部を廃止すると発表しました。
BBCは26日、海外に向けて放送しているラジオ「BBCワールドサービス」のうち、ロシア語やセルビア語など12の言語について、ラジオ放送あるいは、ラジオとインターネット放送の両方を廃止すると発表しました。ヒンズー語など6つの短波放送も廃止されます。
イギリスの外務省が予算カットの一環で、これまで提供していた日本円にして年間300億円あまりの資金をゼロにすると決めたからです。「短波放送の廃止で1300万人のリスナーを失います。彼らはインターネットでラジオを聴ける環境ではないのです」(ヒンズー語放送の担当者)
「ワールドサービスは、学校のない地域や貧しくて学校に行けない層にとって、学校のようなものなのです」(アフガニスタン向け放送の担当者)。
1930年代に放送を開始したワールドサービスは、イギリス外交のツールとして機能すると同時に、報道の自由が制限されている国では貴重な情報源として聴かれ、ひいてはそれがイギリスの影響力にもつながっていました。
「イギリスの影響力を高めるという面でワールドサービスのようなソフトパワーは、防衛力のようなハードパワーよりずっとカネがかからないのに、政府はまるでわかっていません」(ウェストミンスター大学、スティーヴン・バーネット教授)
イギリスの歳出削減は、この国が誇ってきたステータスや影響力といった分野にも影響を及ぼしつつあります。(27日07:39)」
http://www.mbs.jp/news/jnn_4635481_zen.shtml
「5カ国語の放送停止=予算抑制の一環-英BBC」
【ロンドン時事】英BBC放送は26日までに、政府が進める公共支出削減を受けた予算抑制策の一環として、BBCワールド・サービスが提供している32カ国語による放送のうち、アルバニア語など5カ国語の放送を停止する方針を明らかにした。
停止されるのは他にセルビア語、マケドニア語と、アフリカ諸国向けのポルトガル語、中南米カリブ地域向けの英語放送。これにより年4600万ポンド(約60億円)の経費節減が可能となるが、同時に650人に上る職員が解雇される見込み。(2011/01/26-22:12)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&rel=j7&k=2011012600996
NHKの国際放送の予算を見ると187億円のようです。(国際放送番組の制作と送出)
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/yosan/yosan23/pdf/youyaku.pdf
中国はアフリカや太平洋の島嶼国に衛星放送受信設備を設置しCCTV9を配信していますが、あくまでも対外宣伝の一環です。「宣伝の有効性を高めよ」――温家宝首相の指示
http://www.jamco.or.jp/2008_symposium/jp/003/index.html
BBCの宣伝といえば第一次大戦ではドイツは人の脂で人造バターを作っている、第二次大戦でユダヤ人の脂で石鹸を作っている、ユダヤ人の皮でランプシェードを作っているとかありましたが、いまではプロパガンダとして否定されています。ナチスのガス室についてもBBCはずいぶん宣伝していたようですが、ジョージ・オーウェルが疑問を呈していたように矛盾する証言ばかり。多くのユダヤ人が収容所に送られ亡くなったのは事実としても、ガス室の話は南京事件や朝鮮人慰安婦強制連行のようなプロパガンダなのかもしれませんね。
(PB生)
(宮崎正弘のコメント)つぎはNHKも?
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< 宮崎正弘のロングセラーズ >
『猛毒国家に囲まれた日本』(佐藤優氏との対談、海竜社、1575円)
『上海バブルは崩壊する』(清流出版、1680円)
『増長し無限に乱れる「欲望大国」中国のいま』(石平氏との対談。ワック、945円)
『絶望の大国 中国の真実』(同じく石平氏との対談。ワック、933円)
『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』(徳間書店、1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
◎宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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