民主党の「お荷物」小沢 鳥越俊太郎さんは間違っている
わたなべ りやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」 2160号
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民主党の「お荷物」小沢
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渡部 亮次郎
<小沢元代表 政倫審「拒否」
民主党の小沢一郎元代表は20日午前、自らの政治資金問題で衆院政治倫理審査会(政倫審)の土肥隆一会長が求めていた通常国会冒頭の政倫審出席について、事実上拒否する考えを伝えた。
岡田克也幹事長ら執行部はこれを受け、政倫審での小沢氏の招致議決に踏み切る方針。ただ野党側の反発に配慮し、議決は24日の国会召集日以降に先送りした。
執行部は議決の方針は維持しており、同党は政倫審委員から小沢氏系の議員を排除するなど、単独議決に備える一方、小沢氏が強制起訴されれば、離党勧告などの処分に踏み切る方針だ。>
(毎日新聞 1月20日(木)10時22分配信)
政権奪取の最大功労者が、まるで政権党の「お荷物」か湿った「不発弾」みたいになってしまった。ご本人は「チャーチルになる」と言っているそうだ。70過ぎて首相に返り咲いたのにあやかろうとしているのだろうが、端で見るところ、前途遼遠だ。
わたしは小沢の選挙区たる岩手県で政治記者を4年経験した。だが知っているのは先代の小沢さん。その頃の一郎氏は多分、学生だったろう。その後、岩手を後にしてから先代が急逝したので、自動的に一郎が二世代
議士になった。
親父さんは藤山愛一郎派だったが、一郎は田中角栄の世話(カネ)になったので、後の田中派に所属。角栄は一郎に幼くして死んだ息子(正法=まさのり)の成長した姿を見る思いで可愛がった、という。
だが、これは田中の秘書だった早坂茂三が、でっちあげた「伝説」らしい。角栄の引退で行き場を失った早坂が、次に擦り寄るべき実力者一郎を大物に見せるための作文だった。生前の早坂の述懐である。
角栄は大金を集めたが、散財も激しかった。その結果、自民党の大方を手中にし、ライバル福田赳夫を完膚なきまでにやっつけて総理総裁になり「今太閤」とまで言われたものだ。
しかし角栄や金丸信に可愛がられたとはいうものの、カネの使い方は習わなかったのか。土建屋と公共事業を「操作」してカネを集めたようだが、使う相手は自分だけ。更に党のカネすら私したと噂するものさえいる。これを東京地検が暴けなかった。だから俺は潔白だと嘯き続けている。
父親はカネには執着したという噂はない。それなのになぜ息子は蓄財に夢中になるのか。「いや、親が執着できないほど実はカネに不自由したから、敵討ちをしているのだ」と言う人もいる。
この問題については検察審査会の主張が通って、1月中にも強制起訴されるから、真相が明らかになるだろうと言う人がいるが、プロの特捜部が寄ってたかって洗っても起訴できなかったものを、弁護士たちが有罪に出来るとは思えない。何年かけても無駄だろう。
菅はじめ民主党の幹部たちは小沢を追い出せば内閣や民主党の支持率が急上昇すると思い込んで「しゃかりき」だが、わたしは小沢切りを仮に断行できたとしても支持率回復は不可能だと思う。国民は今や、政権交代は失敗だったと反省しており、鳩や菅が無能力なことを見抜いているからである。
小澤は離党も脱党もしない。これをやっても従(つ)いてくるものが皆無であることを知っているからである。1人1区の小選挙区制度の下で、政党の公認を取れなければ落選する以上、離党は自殺行為だからである。
それにしても小澤は竹下派を出て政界の孤児となりかけながら、遂に政権交代を実現、民主党の大恩人と成るべきが、いまや「お荷物」か「湿った不発弾」になってしまった。
「チャーチル」になると言っても、自身、あまりにも薄汚れてしまって魅力が無い。強制起訴される公判に何年が費やされるか知らないが、裁判ストレスは、それでなくとも弱っている心臓には酷く響くことだろう。
(文中敬称略)2011・1・20
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鳥越俊太郎さんは間違っている
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岩見 隆夫
ディベート(討論)能力が著しく衰えていることを、最近強く感じる。
相手の主張を十分ソシャクしたうえで、自分の説を組み立てる、という当然のことができない。
討論の主戦場である国会でも、同じ傾向が顕著だ。双方、自説を繰り返すばかりで噛み合わず、ついには不規則発言が飛び出して、閣僚更迭などという騒動にまで発展する。
言論界も例外でない。テレビでおなじみの鳥越俊太郎さんは、古くからの友人ではあるが、先日、民主党の小沢一郎元代表の〈政治とカネ〉をめぐる批判に対して、
〈きちんとした検証抜きのレッテル貼りは、言葉のファシズムではないのでしょうか〉
と書いているのを見て、唖然とした。鳥越さんが『毎日新聞』に連載している〈ニュースの匠〉というコラム(1月10日付)のなかである。
ファシズムとは極めつきのレッテル貼りではないか。私のように、新聞、雑誌、テレビで小沢さんの批判を続けてきた者にとっては、突然、ファシスト呼ばわりされたような気分で、驚き入るばかりだ。ここは一言しないわけにはいかない。
鳥越さんはベテランのジャーナリストでありながら、ディベートの原則を踏みはずしている。小沢批判側の主張をまったくソシャクしていない。
〈言葉のファシズム〉と結論づける前提として、鳥越さんは、
〈私自身は二つの事件(西松建設違法献金事件と資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件)を巡る東京地検特捜部の動きとマスコミの連動を当初から検証していますが、特捜部が見立てをし、その通り捜査を行ったものの、結局はその見立ては何ら証明されず、最後は不起訴に終わった、いわば“巨大な虚構”に過ぎませんでした〉
と決めつけた。虚構とは実体がないことである。それを根拠に騒ぎ立てるのはファシズム、というのが鳥越さんの立論だ。実際に虚構なら、そういう主張もありうるのかもしれないが、果たして虚構だろうか。さらに、こう続けている。
〈“虚構”は転がる過程でマスコミを通じて大音響のこだまを生じさせ、首相から大阪のおばちゃんまで、何かといえば「政治とカネ」というようになりました。小沢氏のどこが、なぜ問題なのか?〉
私は一ジャーナリストとして、言葉のファシズム、などという恐ろしい表現は一生に一度使うことがあるかどうかと思っているが、こういう鳥越流の、検察捜査の失敗→虚構→マスコミの過熱→ファシズム、という論の組み立て方には、すかすかのスイカを外見上、おいしいスイカに見せるような危うさがある。いかにも短絡的なのだ。
◇不起訴イコール虚構とはとんでもない短絡である
まず、虚構論である。小沢さんは、西松事件では、
「一点のやましさもない」
と繰り返し、陸山会事件では、
「信頼する秘書にすべて任せてきた」
と述べているが、鳥越さんはそれを信じているらしい。私は信じていない。長年、政治記者として小沢という人物を観察してきた確信である。
鳥越さんは不起訴イコール虚構と断じた。とんでもない短絡だ。これまで検察が狙いをつけ追及したが、起訴に至らなかった大物政治家は何人もいる。ほとんどは小沢さんと同様、嫌疑不十分によるものだった。潔白ではなく、虚構でもない。
小沢さんの不起訴処分が決定した日、東京地検の特捜部長は、
「検事の数ほど意見があった」
と言い、処分をめぐって内部に対立があったことをほのめかした。虚構でないことの重要な裏づけだ。
次に、鳥越さんの主張は、検察不信が小沢擁護に直結しているように読み取れる。それは明らかにおかしい。〈特捜部の見立ては何ら証明されず……〉と鳥越さんは言うが、〈何ら〉は間違いだ。
疑いはいろいろあったが、起訴に至らなかった、検察内部には起訴論もあった、というのが真相である。不起訴処分の背景は、検察の捜査能力の不足によるのか、首脳陣の政治判断か、あるいは実際に違法性が乏しかったのか、ヤブのなかだ。
鳥越さんが検察不信のわりには、小沢さんの不起訴を頭から信じているのは解せない。不起訴に疑問を持ったから、検察審査会は二度も〈起訴相当〉を議決したのであって、検察不信なら検審に共感を示すほうが筋が通るのではないか。
だが、そんなことよりも、鳥越さんにぜひソシャクしていただきたいのは、いわゆる小沢問題の問題性である。〈政治とカネ〉は象徴的な断面でしかない。
小沢さんの政治感覚は古すぎる。いにしえの専制的なボス支配に近い。
それを議会制民主政治に当てはめるには、
(1)権力闘争に勝って、支配権を握る
(2)そのために、選挙戦を制して多数派を確保しなければならない
(3)選挙に勝ち抜くには、大量の資金調達が必要である
─という三段論法的な政治手法を取る以外にない、と小沢さんは信念的に考えているようだ。
この手法はほかの政治リーダーにとっても避けて通れない道のりである。
だが、ほかのリーダーとの違いは、小沢さんは手段を選ばないような強引さで突っ走ってきた点だ。その一つの表れが〈政治とカネ〉の疑惑にみられる突出した金権体質であり、剛腕といわれるゆえんだ。
40年近く前、〈田中支配〉が騒がれ、田中角栄元首相の失脚につながっていったが、それをしのぐ〈小沢支配〉を危惧する空気が、政界の内外に広がったのは当然で、戦後政治の学習効果である。私も危惧する一人だ。
虚構を転がす、というような見当はずれの呑気な話ではない。鳥越さんは〈大阪のおばちゃん〉を持ち出し、庶民レベルにも批判の目を向けているが、庶民はしばしば敏感だ。八割が小沢さんに不信の目を向けている。それはファシズムなんかであるはずがなく、素朴な不安だ。
<今週のひと言>
混迷NHKよ、大相撲を叱る資格があるのか。
(サンデー毎日 2011年1月30日号)
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花岡信昭氏の地頭(ヂアタマ)論 に附して
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上西 俊雄
2157號(1月17日)に轉載の花岡信昭メールマガジン878號は「地頭」に
ついての論。いろいろ考へさせられた。守護地頭のヂトウでなくヂアタ
マと讀む。いや文部省式ならジトウでなくジアタマと讀むと書かなけね
ばならないところ。このことがどれほど我國の教育を損なってゐること
か。
同じ日の日經朝刊に縣立浦和高校の關根郁夫校長の寄稿。「學校現場で
日々課題對應に追はれてゐると、ふと素朴な疑問がわく」として次のや
うにある。
<「目の前の教員たちは、朝早くから夜遲くまで子供たちのために働き、
歸宅後も教材研究に勵んでゐる。意欲も能力も高いのになぜ、教員に課
題があり資質向上を圖るべきだとといふ論調が主流を占めるのか。
「フィンランドに學べ」とよくいはれるが、もし土俵が同じであれば、
これだけ頑張る日本の教員は海外の教員に決して引けをとらないのでは
ないか、と。>
フィンランド詣ではPISAの結果はじまったこと。今回參加した上海はフ
ィンランドを拔いて一位であった。そして上海は漢字圈だ。漢字が桎梏
であるならば不思議な現象ではあるまいか。
しかし、さういふ風に問題をたてる人はゐないやうだ。フィンランド詣
でについて、時事通信のメルマガ「内外教育」第327號(6日)卷頭コラ
ムで前秀明大學特任教授糟谷正彦氏は次のやうに書いてをられる。
<學力水準の向上を圖るためには、地方分權と規制緩和で、學校の裁量
の幅を廣げて、あとは教師の指導力を高めるべきだといふのがマスコミ
一般の論調である。世界一の學力の國といはれるフィンランドでは、大
學院卒の教師が自由に教育してゐると喧傳される。
ところが、本誌(9月24日號)の「國支給の教材が支へる世界一の學力─
フィンランドを視察して─」といふ?山英男立命館大學教授の報告によ
れば、どうもさういふものではないらしい。
授業で使ふ標準的なプリントやドリルが素晴らしく、それを國が作成し、
支給してゐるとのことである。多くの日本人がフィンランドを視察して
いるにもかかはらず、先入觀を持って見てくるから、最も重要な點を見
落としてゐるやうである。>
先入觀、むかしは先入主と言った。最近、やっと先入主といふ言ひ方が
納得できるやうになった。拔きがたくなってゐる見方で簡單に變ること
ができない。
漢字が桎梏であり、假名遣はその時點での音韻にもとづいて最適なもの
に切替へるべきだとするのが戰後教育で植えつけられた先入主だ。ア行
と同じに讀むヰヱヲやハ行假名を不要とし、ジやズがあるからヂもヅも
不要とした。花岡さんはついうっかりヂをつかってしまったけれど、さ
ういふことをしないやうに文化廳が指令を出し、教員もそれを守るやう
に研修を重ねなければならない。まともな教育など出來るわけがないの
だ。
我國に正書法がないこと、これはローマ字の混亂をみてみれば判る。ロ
ーマ字の混亂はヘボン式とか訓令式とかいふだけの問題ではない。念の
ため記すけれど、ヘボン式は撥音をn と m と書分ける。
新橋は shimbashi と書くのがヘボン式。普天間はテレビで見るかぎり
futenma だからヘボン式ではない。ローマ字引きが營業的に難しくなり
かけた頃、研究社大和英がヘボン式で見出しを立ててゐたのを撥音に限
って、n だけで通すことにした。
米國國會圖書館では、この方式が日本で一般的だとと錯覺したのか、研
究社方式になった。平成16年、國土地理院院長通達でヘボン式に切替へ
ることになったけれど、その方式を定めた菱山論文ではヘボン式は撥音
を書分けることが必要條件。
これからの地圖では普天間 はfutemma となるわけだ。 もう一つ、平成
21年に出來た外國人のための『日本語學習・生活ハンドブック』では長
音は母音字を重ねて表すといふ新方式だ。文化廳國語科の制作だから、
文化廳方式と呼んでもよいだらう。まさにバベルの塔だ。
閑話休題。戰後の文部省は結局のところ當時のローマ字に對應するやう
に五十音圖を破壞した。それでいはゆる現代假名遣なるものが生れたが
表記のゆれを認めた一時しのぎのもの。
正しい假名遣といふものは存在しなくなった。では正しいローマ字とい
ふものならあり得るかといふと、據り所とすべき假名表記がないのだか
ら、それもまたあり得ないのだ。
今年度の大學入試センター試驗の國語問題をみてみるとよい。最初にあ
るのは現代文。長い文章のあとの設問の第一は漢字の知識を問ふもの。
長い文章とは何の關係もない。漢字の知識をそのままに問ふのはむくつ
けきものとでも考へてゐるのだらうか。後は解釋の問題ばかり。
花岡氏は地頭を鍛えるには讀むことが大事だとして司馬遼太郎ではなく
池波正太郎を讀めと次のやうに續ける。
<司馬の本を讀んでもいっかうにかまはないのだが、日本語の奧深さを
知るには、池波でなくてはだめだ。やさしい言葉で人情の機微を表現す
ることができるのが日本語の妙である。>
これは重要な指摘だ。國語教育では内容を問題にして解釋を問ふことが
多い。國語教育が解釋に重きを置けば國語の妙がおろそかになる。セン
ター試驗問題の國語、第三問に至って古文。
この場合なら解釋を問ふのは國語の問題として成り立つが、解釋であれ
ば、司馬と池波の史觀を問ふやうなもので國語のことは消えてしまふ。
第三問では活用語尾を動詞助動詞に分類させる文法の問題もある。だか
らいささかほっとするのだけれど、問題文が保元物語からだといふのが
氣になる。保元物語などこの歳になるまで讀んだことがない。
現代文に比べて古文はそんな程度にまで進んだのだらうか。同じやうな
疑問は第四問の漢文についても感じた。『金華黄先生文集』といふもの
からの出題なのだ。「といふもの」と書いたのは恥づかしながら聞いた
こともないものだったからだ。
國語表記を國が管理してゐるから、專門業者でなければ問題作成もまま
ならない、すると著作權のことがあるので、段々とこれまで出題された
ことのないやうなものに移ってしまふ。さういふことの結果であるやう
に思はれてならない。
「則其求之也、曷嘗不貴於敏乎」を讀下し文にする問題もあった。今レ
點をカタカナで、一二を算用數字で示せば「則其求レ之也、曷嘗レ不貴2
於敏1乎」。これも私には難しかった。まあ幾つかならべてあって、そこ
から選ぶのだからなんとかなったけれど、曷を「いづくんぞ」と訓ずる
ことも知らなかった。
無知を棚にあげていふが、かういふ力を必要だとすることと、「世界中」
はセカイジュウだと常用漢字音訓表で「中」の讀みはジュウと決めつけ
ることとどう折合をつけるのだらうか。因みに我が假名漢字變換システ
ムでは世界中はセカイヂュウと打たねばならなかった。
私は花岡氏が「地頭」をヂアタマとしたことに滿腔の贊意を表するもの
だ。たかがそんなことに大仰なと言ふ勿れ。最近讀んだ一文を紹介した
い。
<假名遣は新しいのにした。いまままで舊いのをつかてゐた私がどうし
てさうしたかといふと見えなくなったからである。私は編輯者であるこ
とを好み、ことに校正のしごとが好きであった。ただし新假名はできな
くて覺えようともしなかった。
新假名の知識があると私のしごとは一目で睨みがきかない。校正できな
くなったが實はこの原稿は全部舊假名で書いてある。印刷所は親しかっ
たところだから直してくれるであらう。
題名や引用を示す括弧のなかは舊假名にしておいてもらふ。私はいまで
も舊假名が好きだが、どうせ見えないのだから多くの讀者に便利な方が
よいと思ふ。>
鹽谷贊『幸田露伴』の自序の一節。目を惡くした人の辯。教科書も端末
になるかもしれない御時世。どうして音聲が基本だからと目の方をない
がしろにしてよいものか。
露伴はDickensをヂッケンス、Wordsworth をウオヅヲースと書いてゐる。
今ウィキペディアでみるとディケンズとワーズワースだ。子音について
みると明治期の方が正しかった。假名字母制限のせいだ。
だから needs をニーズ、kids をキッズとしなければならない。これで
は英語教育がうまくいくはずがない。そして相變らず外國人先生のため
に右往左往してゐるのだ。
11日日經夕刊の記事によれば靜岡縣富士市教委は市立小中學校のALT
を直接雇用に切替へるのに伴ひ、昨年始めてALTの採用を行なった。
「英國や米國の出身者にこだはってゐては人數が集まらない」と、英語
を公用語とするアジア圈の外國人も含めて募ったが、12人の採用豫定に
對し決ったのは八人。14人が應募したが英語力に問題がある人もゐたと
のこと。
先日或る席でカゴッマベン(鹿兒島辯)をローマ字でどう書くかを話題
にしてみたが出來る人はなかった。音聲と文字の關係、表音主義を標榜
したはずが、この基本を忘れてゐるのだ。
日經夕刊の記事の冒頭はかうだ。
<小中高校で英語の發音などを教へる外國語指導助手(ALT)の確保
に、地方の教育委員會が頭を惱ませてゐる。採用や勞務管理のコストを
抑へるため民間委託が多かったが、制度上日本人教師との聯携が十分に
できないなどの問題も浮き彫りになった。今春から小學校の英語義務化
がスタートするなど役割が増すなか、直接雇用にに切替へる自治體もで
てきた。>
要するに英語を教へるときに發音だけを取り出して別に教へるべきだと
してゐるのだ。アルファベットをletter と呼ぶ、letter は文字の單位
であり同時に音聲の單位でもあるといふ覺悟がないのだ。その奇妙さに
記者も氣がついてない。先入主の強さを思ふ次第。
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「安易な『胃ろう』やめては」に賛同
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馬場 伯明
元自治医大消化器外科教授の笠原小五郎先生が「安易な『胃ろう』やめ
ては」と提言している。私はこれに賛同する。(2011/1/7朝日新聞「私
の視点:終末期医療」に掲載)
終末期の医療を考え、判断する上で非常に有意義であると思われる。笠
原先生と掲載紙の了解を得て、長いけれども以下《 》に全文を転載
する。
《 30年ほど前、患者の胃に直接、栄養物を流し込む管を造設する「胃
ろう」という術式が開発された。リスクが少なく手軽にできることから、
我が国で広く普及し、口から食べ物がとれない約40万人が、胃ろうで生
命を維持している。
私は昨年4月に60床の介護療養病床を初めて担当し、意識もなく痛みの刺
激にかすかに反応するだけの寝たきり高齢者が、回復の見込みもなく、
胃ろうからの栄養補給で生かされているのを見て衝撃を受けた。
3ヶ月間に入院した67人の患者の主な疾患は脳卒中の後遺症と末期の認知
症で、うち40人は胃ろうなどで栄養を補給され、そのうち17人は植物状
態である。
急性期の病院で脳卒中の治療が終ると、嚥下障害のある患者には胃ろう
を造設し、療養施設への早期退院を促す。病院として在院日数の短縮を
図るのである。
胃ろうの手術はリスクは少ないが、致命的な合併症をきたすこともあり、
術前に説明と同意が必要だ。しかし、たいていは意識障害を起こしてい
る患者に代わって家族に同意を求めることになる。
早期に退院させたい担当医が「口から食べ物を取り続けると誤嚥性肺炎
を起こします。胃ろうを作らないと死にますよ」と言えば、家族はなか
なか拒否できない。脳卒中後の症状が比較的安定しないこの時期に、多
くの患者は胃ろうを造設される。
しかし「胃ろうでも胃内容の逆流による誤嚥性肺炎のリスクが減ること
はなく、嚥下障害も回復しません」とデメリットも含めた説明を受ける
と、意識障害の強い患者の家族ほど胃ろうは希望しないケースが増える
という。
胃ろうを作らなければ、患者の多くは輸液を受けつつ数ヶ月以内に「飢
えや渇きもない」安らかな表情で、枯れるような平穏な死を迎える。
欧米では「脳卒中の後遺症や認知症の終末期で、食べられなくなったら
寿命」という哲学が根付いてるという。一方、我が国では「食べられな
くなったら胃ろう」という短絡的な思考が許されてきた。
誰のための終末期医療なのか、という視点がまったく、欠けているとい
わざるを得ない。
複数の調査で、医師の8割、市民の7割が「植物状態に陥ったら、胃ろう
で生かされるのは拒否したい」と答えている。誰もが、病院の都合や家
族の思惑に左右されずに、人間らしく安らかに自然な死を迎える権利を
保障されなければならない。
施設間で差はあるが、1人の胃ろう患者には年間ざっと400万円の公費と
100万円の自己負担が必要となる。全国40万人の胃ろう患者のうち植物状
態にある人が3割を占めるとすれば、毎年6千億円ものお金が使われてい
ることになる。
終末期医療における胃ろうのあり方について、考え直すべきときが着て
いるのではないか。 》(笠原医師の投稿文の【転載】終わり)
長崎県の親戚の脳梗塞の女性は意識がないまま胃ろうを造設され、そこか
らの栄養補給で、5年間ベッドで90歳まで「生き」続けた。家族はもやも
やした気分のまま「これも親孝行の一つ」と自分たちを納得させていた。
その施設では同様の「胃ろう」造設者らが多く「生き」ていた。彼らは、
不満を言わない。手間がかからない。治療リスクがない。回復しなくて
もよい。何よりも安定した収入を経営にもたらす。
つい半世紀前までは「食べられなくなったら寿命」というのが(欧米で
はなく)日本でも常識(哲学)だった。いつの間にか「死にますよ」と
言われたら、家族は土壇場で胃ろうを拒否できなくなった。療養施設な
どへの早期の追い出しを促す病院や医師は家族の心理を見抜いているの
だ。
私は「リビングウイル」を書いている。以前本誌(1429号2009/1/26)で
報告した。その要点は、72時間を経てもなお朦朧状態で自発的な呼吸と
意識の回復がないときは、人工呼吸器を外し点滴・栄養補給もやめてく
ださいということである。
リビングウイルは、担当医師が、酸素供給の管などを外しても、犯罪者
(殺人者)に陥ることにならない現在では唯一の方法である。終末期医
療などで胃ろうの造設は私には不要である。たとえ一時造設されていて
も医師は(私の意思に従い)外すことができる。
私はこう思う。「人間は最後の最後まで生きなければならないのか。細
胞の最後の一片まで生きたいのか」と・・・。
健康人で、何らかの傷病により嚥下できない患者に、一時的に胃ろうの
造設をした方が効果的な場合もあるだろう。慎重な判断が必要である。
しかし「食べられなくなったら胃ろう」という短絡的な思考は最低の対
応である。「患者のための終末期医療」という視点を第一とすべきであ
ろう。
ある未来の一場面が頭をよぎる。《 流動栄養を移送する本管がLED
照明の大部屋に敷設されている。その枝管が、並べられたベッド上の物
言わぬ寝たきりの胃ろう造設者多数に繋がっている。自動制御で流動栄
養が音もなく供給されている。排泄物も自動回収である。》悪夢の光景
だ。
まるで温室ハウスのプランター栽培のトマトに送られる流動肥料管と同
じだ。トマトは大きく育ち立派に熟する。だが、胃ろうの管の先からは
何も生まれて来ない。
胃ろうを拒否する権利は判例により確かに保障されている。終末期医療
のアンケートでも「延命医療をやめる(&方がいい)という回答が70%
超えている。(「今後の終末期医療のあり方検討会」編集2005←少し古
いが)
しかし、現場の(一部の)医師の心ない「脅迫」により、実質的には、
家族らにはその権利はないのも同然である。
この実態は是正されるべきである。そのために(一部の)医療機関や医
師らには考えを切り替えてもらう必要がある。また、流動栄養の実施ま
たは中止のための法制度的・実態的な条件を詰めることも急ぐべきであ
ろう。
だが、それよりも「人間らしく安らかな自然な死を迎える」という考え
の根元(哲学)を、平常時から自分自身でしっかり確立しておくことが
何よりも大切であると思う。
脳梗塞の後遺症で右手が不自由になった長崎の母(91歳)は、今、スプー
ンを左手で持ちぎこちなく食べ物を口へ運んでいる。自分で食べ嚥下す
ることは人間の尊厳の重要な行為の一つである。
「胃ろうは、せんでんよか」と母は言う。「お母ちゃん、がまだして
(がんばって)食べんと、いかんよ」と、祈るような気持ちで、私は母
に語りかける。(2011/1/19千葉市在住)
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話 の 福 袋
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◎中国経済、日本抜き世界2位確実に=10年のGDP、10.3%増
【北京時事】中国国家統計局が20日発表した2010年の国内総生産(GDP)
は物価変動の影響を除いた実質で前年比10.3%増加し、政府目標の8%
を大幅に上回った。
2桁成長は07年以来3年ぶり。10年のGDPは国際比較に用いられる名目で39
兆7983億元(約5兆8812億ドル)。日本の内閣府によると、1~9月のドル
建てGDPは日本が中国をわずかに上回ったが、10~12月は中国がかなりの
差で日本を上回ったとみられ、中国が世界第2の経済大国に浮上したこと
が確実視されている。
日本のGDP統計は2月半ばに発表の予定。
10年第4四半期(10~12月)の中国GDPは前年同期比9.8%増。輸出回復
などを背景に高い伸びを保った。日米欧など主要国の景気回復がもたつ
く中、中国の好調さは際立っている。
10年全体の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比3.3%と、政府目標の
3%を上回った。一方、食品価格の上昇一服などを背景に、12月は前年同
月比4.6%と、前月の5.1%から鈍化した。
ただ、最近は各地で天候不順が続き、農業生産への影響が懸念されてい
る。国際穀物価格も高騰。今後、食品価格を押し上げる公算が大きい。
12月の卸売物価指数(PPI)は前年同月比5.9%上昇。原材料の上昇圧力
は根強く、賃上げの動きも広がっており、今後もインフレ圧力が高まる
との見方は多い。 時事通信 1月20日(木)11時6分配信
◎さかなクン発見のクニマス、帰郷のめど立たず
絶滅したとみられながら約70年ぶりに山梨県の西湖で生息が確認され
た魚クニマス。
本来の生息地・田沢湖がある秋田県仙北市では、発見者の東京海洋大客
員准教授「さかなクン」の表彰を検討するなどブームに沸く一方、水質
の問題から「帰郷」のめどは立っていない。西湖側でも、保護に向け、
手探りが続く。
クニマス発見の報から1か月近くたった今月11日、JR田沢湖駅に懸
垂幕がお目見えした。掲げたのは、懸賞金をかけて全国に情報を求めた
こともある田沢湖観光協会。地元では観光振興への期待も高まっている。
秋田県は仙北市と「クニマス里帰りプロジェクト」を発足させ、〈1〉
ハタハタに次ぐ県魚に〈2〉県内での養殖〈3〉田沢湖畔に展示施設設
置――などの案が出ている。
だが、田沢湖でクニマスが死滅した原因となった水質問題は未解決だ。
1940年、下流の水力発電所に供給する湖水を補うために温泉付近から流
れ込む玉川の強酸性水を引き込んだことが死滅につながった。
田沢湖の水素イオン指数(pH)は2009年で5・1と、中性を示す7よ
りもかなり低く、ウグイやコイなど酸性に強い魚しか生息できない。
1991年に中和施設が本格稼働して、98年には5・7まで回復したが、玉
川の水の酸性度が上がり再び悪化。秋田県立大の杉山秀樹客員教授によ
ると、クニマス生息には6・5~7・5まで中和する必要があるという。
県は「当初目標の6・0を達成する見通しもない」とし、仙北市は中和
施設の能力向上や玉川の導水停止などを検討するが、水利権の調整が必
要だ。
山梨県側では、富士河口湖町と西湖漁協が保護対策チームを設ける予定
だが、突然見つかった幻の魚の扱いに戸惑いも広がる。
(2011年1月20日16時50分 読売新聞)
◎中国、主席訪米に合わせボーイング200機購入
【ワシントン=岡田章裕】米ホワイトハウスは19日、米航空機・防衛
大手ボーイングが航空機200機(190億ドル相当)を中国から受注するな
ど、総額450億ドル(約3兆7000億円)超の中国との大型商談が成立した
と発表した。
胡錦濤国家主席の訪米に合わせたもの。中国側は、人民元の早急な切り
上げは受け入れなかったが、大型商談で米国側に配慮した。
(2011年1月20日14時23分 読売新聞)
◎地デジのビル陰対策98%にめど 支援効果で設備設置が加速
7月24日に予定される地上デジタル放送への完全移行に向けて支援策を
推進する総務省は20日、ビルの陰などが原因で発生する受信障害対策の
共同アンテナ設置施設が、12月末で計画を含めて98%(設置済みは88%)
に上ったことを明らかにした。
地デジ化によって新たに発生する難視世帯の対策も計画を含めて99%
(同56%)に達し、最も困難だった対策がともに残り1~2%まで改善
される見通しとなった。
ビル陰などにより受信障害対策が必要な施設の対策状況は昨年9月末で、
計画含めて91・7%(設置済みは70・2%)、新たな難視の対策状況は計画
含めて71・5%だった。総務省は電波状況の無料調査やアンテナ設置のた
めの補助金など支援策を強化。急速に改善が進んだ。
一方、地デジ放送を視聴する受信機(チューナー)の世帯普及率は昨年
9月末で90・3%に達し、11月末の出荷台数は9752万台に上っている。24
日には、官民共同の地上デジタル推進全国会議が「完全デジタル化最
終行動計画」を発表し、地デジへの移行を促す方針。
民放やNHKはテレビ画面に地デジ対応を呼びかけるテロップの流す見
通しだ。(産経ニュース 2011.1.20 14:48)
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反 響
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1)意表を衝いた与謝野馨さんの政治行動に非難が集中している。
彼を理解しようとしているのは、わずかに恩師の中曽根さんとなぜか井上政典さんとクライン孝子さんくらいである。
確かに普通には考えにくいポジションの変更である。外見上は政治的変節にみえる。
しかし与謝野さんをしてあえて非難覚悟で混沌とした民主党・菅政権に同調させた真因は、まだ明らかになっていない。
彼が政治地位執着亡者なのか政策実現特攻隊員なのか、性急に即断しないで、客観的な政治成果の有無を今しばらく観察する必要があるのではないか。
もともと火中に栗がないのか、もしかして存外に栗にありつけるのか、それが判るのはそう遠い先でない。
とかく世間は騒ぐだけの能しかないのに、答えを性急に求めたがる。
弱者の近ぺこに遠吠え、愚者の早とちりに貧乏ゆすり、という言葉を聞いたような気がする。(品川 阿生居士)
2)經濟界の實力ある指導者層が、このように薔薇色の近未来図を描いてくれるのは、世界經濟の動きからみた観測気球の役割を部分的に果たす上では、大いに結構でしょう。
しかし、中共はもちろん、上海マフィア?と軍部が北京政府を傀儡化し、全世界を己が版図に収めようとするかに見えるその覇権主義が、今後、過去の日本軍部と同様、ますます地方民族を迫害し、近隣諸国の安全と利益を脅かすという方向に向かう、その巨大なマグマは無視できないのではありませぬか。
サイバースペースでの中国人民と全世界の非共産国国民との協調と圧力蓄積による民衆側からの抑止力増強によって、少しは事態が改善できるのではないかという安易な観測もあり得るでしょう。
しかし、実際のところ、今後の勢力地図はどのような形になるのでしょうか。
単なるシミュレーションやモデリングではなく、中国との取引きで実績を上げていらっしゃった方がたのご洞察を切望する次第です。 (坂元 誠)
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中国高成長「日本に好機」 景気討論会で三井物産社長
【日經QUICKニュース】 2011/1/19 16:12
日本経済新聞社と日本経済研究センターは19日午後、東京・大手町の日経ホールで景気討論会を開いた。中国経済の先行きについては楽観的な意見が相次いだ。中国政府は過度なインフレを抑えこむことに成功し、人民元を緩やかに切り上げていくとの見方が大勢を占めた。
飯島彰己氏(いいじま・まさみ) 1974年横浜国立大学経営学部卒業、三井物産入社。90年英国三井物産(ロンドン駐在)。2000年鉄鋼原料本部製鋼原料部長。06年執行役員 鉄鋼原料・非鉄金属本部長。08年代表取締役専務執行役員。09年代表取締役社長。
三井物産の飯島彰己社長は中国経済について「金融引き締めの影響が一部で出ているが、内需の拡大によって高成長は維持する。大きな心配はしていない」と述べた。
飯島氏は中国では共産党「一党で経済政策を推し進めることができる」と指摘し、日本や欧米などに比べて意思決定スピードが速いことも経済運営上の利点になっているとの認識を示した。
一方、同国が抱える課題としてエネルギーの効率化や社会インフラの整備を挙げ、「日本企業がこれらをサポートすれば大きなビジネスチャンスになる」と語った。
日銀の門間一夫調査統計局長も「中国は個人消費、固定資産投資が堅調で、先行きも高い成長が続く」との見方を示した。懸念されるインフレリスクについては「コントロールが効かなければ、1番困るのが中国当局。熱気ある国なので精密機械のようにコントロールするのは難しいが、
中期的には楽観的にみている」と語った。
一方、日本経済研究センターの岩田一政理事長は「中国の金融政策は足もとではまだ中立に近い緩和の状態。今の程度ではまだインフレを抑え、バブルをなおすのは難しい」との見方を示した。
中国のインフレ問題に関し、野村証券金融経済研究所の木内登英チーフエコノミストは「金融引き締めで物価の上昇を抑えつつ、(ドル買い・人民元売りの)為替介入をしている政策には整合性がない。自国の利益のためにはインフレを抑える必要性があるから、介入を緩めて通貨を切り上げていくだろう」との認識を示した。
人民元の切り上げ幅については「2005~08年は平均6~7%だった。今回はもう少し高く10%くらいになるのではないか」と述べた。今後は人民元を国際的な通貨に育てあげていく動きも出てくるとの見通しもあわせて示した。〔日経QUICKニュース〕
3)Mさんが台湾から買ってきてくれた「カバラン」は噂に違わず素晴らしい味で、本当に特別ではなく格別な味(亮次郎さん談)、スコッチ以上にスコッチ、最高級品のウイスキーでした。
日本酒でもワインでも情熱と技術さえあれば、世界のどこででも一級品を作ることができる証明をカバランはしてくれました。(唸声)
4)「動的防衛力」とは?これまでとの相違点? (宝珠山 昇 )
平成22年12月17日安全保障会議決定・閣議決定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」により整備される「我が国の防衛力ー動的防衛力」の従来のものとの相違点は何か、これまでに策定された四回の「防衛計画の大綱」の主要な特徴は何か、といった質問が寄せられました。小生は次のように理解しています。参考にしていただければ幸いで
す。
(1) 昭和51(1976)年10月29日決定された「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱」は、米ソ冷戦などがもたらした極東地域の緊張を踏まえた"北方領域重視の防衛力構想"と言え、その整備・維持・運用の実態面に着目すれば、情勢が緊迫してきた場合に急速に整備拡充(イクスパンド)する"基盤"を重視し、即応態勢を、警戒監視、情報収集などの平時にも緊要な機能や災害派遣、不法行動などの小規模の事態に限定した「基盤的防衛力構想」と理解しています。(平成7年度まテで20年間適用)
(2) 平成7(1995)年11月28日決定された「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」は、米ソ冷戦の終焉、多極化、大規模災害などを踏まえ、民族独立などを支援する国際平和協力活動などへの貢献を付加し、陸上自衛隊の編制と編成を再編・縮小し"国際平和協力任務を強調した防衛力構想"と、理解しています。(平成16年度まで9年間適用)
(3) 平成16(2004)年12月10日策定された「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」は、大量破壊殺傷兵器(NBCR)や弾道ミサイル(M)の拡散の進展、国際テロ組織の活動の活発化などを踏まえ"NBCR+M対応を強調した防衛力構想"と、理解しています。(平成22年度まで6年間適用)
(4) 平成22(2010)年12月17日決定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」は、中華人民共和国の台頭(米中冷戦)を踏まえ"南西領域重視の防衛力構想"と、理解しています。
また、これは、南西領域が広大な海洋領域で、陸上部隊を配備する余地が少ない島嶼を主体とする領域であるため、そこでの多様な事態に即応(適時・適切に対応)するため、常時活動している情報活動、警戒監視、偵察、海洋および航空の防衛力を重視するものとなり、この整備・維持・運用の実態面に着目すれば「動的防衛力」と、表現できるものと理解しています。 この表現は、基盤的防衛力構想と同様、周辺諸国を無用に刺激しないように配慮を加えたものとも理解されます。
装備や運用面で重視されているのは、南西海域における警戒監視態勢の充実に活用できる次のようなものと理解しています。
・ 潜水艦を16隻態勢から22隻態勢に増強
(潜水艦の建造ペース一年一艦は不変・耐用命数を大幅に延伸)
・ 海洋における防空能力もあるイージス護衛艦を増勢(4隻態勢から6隻態勢)
・ 那覇基地に配備する戦闘機を長距離飛行性能の高い機種に更新・近代化
(F-4をF-15)
・ 那覇基地に配備する飛行隊数を一個から二個に増強(約20機から約36機)
・ 日本最西端の与那国島に沿岸監視隊を配備(約200人規模)
・ 陸上自衛隊の作戦基本部隊(師団、旅団)等の在り方について総合的に検討
(参考:与那国島は、面積約29キロ平方メートル、現在約800世帯・約1600人、年平均気温23.6℃、那覇より八重山諸島の中心である石垣島まで航空距離で約410km、さらに石垣島から約124km、台湾までは約111kmの国境の島。
なお、従来の基盤的防衛力との比較では、「大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」とし、「本格的な侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持することとする」としているので、大規模侵攻事態などへの備えとなる「基盤」部分を縮減し、警戒監視、情報、洋上哨戒、防空、弾道ミサイル対処、輸送、指揮通信などの即応態勢を拡充したものになっているように理解しています。
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身 辺 雑 記
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一日置きか二日置きの編集なら楽だ。情報を早く伝えなければ、という焦りがありました。焦れば正しい判断が損なわれます。1日休んだら週刊
誌が読めた。
渡部 亮次郎