多い日では約270隻 これではダメだ! 日本の海洋戦略 著者: 平松茂雄 古澤忠彦
◎アジア全域に迫る中国「海洋覇権」の脅威
http://www.seisaku-center.net/modules/wordpress/index.php?p=704
2010年9月9日(木曜日)
アジア全域に迫る中国「海洋覇権」の脅威
中国・台湾(対中外交・対中認識)
尖閣・竹島・東シナ海ガス田問題
アジア全域に迫る中国「海洋覇権」の脅威
9月7日、日本固有の領土である尖閣諸島周辺で、中国の漁船が領海侵犯したばかりか、海上保安庁の巡視船に衝突した。
8日、石垣海上保安部は公務執行妨害容疑で中国漁船の船長を逮捕した。
ところが、報道によれば、仙谷官房長官の「中国と波風を立てたくない」という態度から、立件の判断に半日もかかったという。
それ以前に、「8月中旬以降、尖閣諸島の周辺海域で操業する中国漁船が増えており、多い日では約270隻を確認。1日に70隻程度が領海内に侵入していた日もあるという」(読売新聞9・8)から、いったい何をしていたのかという話だ。
南シナ海では南沙諸島や西沙諸島の領有権を主張する沿岸諸国と中国が対立しているが、南シナ海沿岸諸国は海軍力では中国よりも余程劣るにもかかわらず、違法な操業を行った中国漁船を拿捕するなど、自国の主権・海洋権益を守ろうと毅然とした態度で立ち向かっている。
独立国家であれば当たり前の対応である。
そうした世界の常識から見ても、民主党政権の対応は極めて異常で、こんな政権に国の舵取りを任せていて日本は大丈夫なのか、との思いを禁じ得ない。
一方、尖閣諸島周辺に限らず、中国は今、南シナ海、黄海、東シナ海、西太平洋……アジアの全海域でプレゼンスを高めている。
このまま放置すればいったいアジアはどうなるのか、また日本はどうなってしまうのか? 半世紀にわたって中国を観察し続けてきた中国研究の第一人者、平松茂雄氏に聞いた(以下は、『明日への選択』最新号のインタビューより抜粋)。
【良書紹介】「これではダメだ!日本の海洋戦略」
◎これではダメだ! 日本の海洋戦略 著者: 平松茂雄 古澤忠彦 価格: 525円
http://www.seisaku-center.net/modules/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=75
著者: 平松茂雄 古澤忠彦 価格: 525円
これではダメだ! 日本の海洋戦略
中国の海洋覇権と戦略なき日本
平松茂雄 古澤忠彦 共著
A5判64頁 定価500円+税
ISBN978-4-902373-28-8
海洋進出、宇宙進出、核大国化……中国の軍事的台頭を早くから予見しことごとく的中させてきた中国研究の第一人者と、海上自衛隊において総監を歴任した元海将の対談ブックレット。
平成19年にわが国では海洋基本法が制定され、中国のガス田開発や海洋進出に対してようやく対処できる体制になったかのように思われているが、実はそれは大いなる錯覚だ。法律ができたといっても、未だ有効な手立ては何も講じられていないのだ。いまや海から包囲される日本―。このままでは日本の海洋権益はますます侵害され、日本の海も、島も、資源も中国に奪われてしまう。
そもそも、東シナ海でのガス田開発や西太平洋への進出など、中国が海洋覇権を拡大する背後には、いかなる戦略があるのか? また日本が直面している危険とはいかなるものなのか? さらにそれを乗り越えるために、わが国にはどんな選択肢があるのか? 中国の国家戦略を分析し、日本のとるべき国家戦略について、二人の専門家が語り尽くす。
〈表紙写真〉東シナ海ガス田の周辺を遊弋する中国の軍艦
書店ではお求めになれません。当オンラインショップにてお申し込み下さい。
【主な内容】
Stage1
このままでは東シナ海は「中国の海」になる
「中国のものは中国のもの、日本のものも中国のもの」 既成事実化が進んでいる
Stage2
「力の後盾」なくして日本の海は守れない
海洋基本法はできたが…… 安全水域法のお寒い現実 現行法では何もできない自衛隊 「領域警備」の法整備を
Stage3
意志も戦略もない国家でよいのか
国家意志がなければ脅威は見えない 国家戦略のない日本 「まずアメリカありき」は危険 自衛隊は楽勝か?
Stage4
台湾問題が日本の生死を決する
狙いは台湾にあり 中国がシーレーンを押さえれば…… 南西諸島は必ず巻き込まれる 南西防衛重視に転換せよ 求められる日本の覚悟
【編集部より】
中国の軍事的脅威の高まりが指摘されている。二十年連続の異常な国防費の増加、弾道ミサイルによる衛星破壊実験、米空母への挑発と牽制……等々、軍拡にまつわる報道は枚挙に暇がないほどである。わが国周辺でも、そうした軍事力拡大を背景にして、潜水艦による領海侵犯や不法な海洋調査など海洋進出にまつわる事件が後を絶たない。
最近、中国軍事当局者が「太平洋を東西に分割し東側を米国、西側を中国が管理することを提案した」というニュースが報じられていることを見ても、中国が東シナ海のみならず西太平洋においても海洋覇権をめざしているのは明らかであろう。
ところが、わが国では、日中間の当面の懸案とされているのは、強いていえば東シナ海でのガス田開発問題のみである。しかも、このガス田問題は単なる資源開発をめぐる対立か、せいぜい排他的経済水域の境界線の確定というレベルの問題だとしか捉えられていない。こうした現状は、中国の国家戦略全体を捉えるものではなく、また中国の海洋進出をきわめて矮小化した危険なものと言わざるを得ない。
一体、中国の対外戦略とはいかなるものなのか、また、日本が直面している危険とはいかなるものなのか。さらには、それを乗り越えるためにわが国にはどんな選択肢があるのか――いわば、中国の海洋覇権の攻勢のなかで、日本がとるべき国家戦略が語られねばならないと考える。
そこで、中国の軍事戦略研究の第一人者であり、中国の海洋進出に長年警鐘を鳴らし続けてこられた平松茂雄氏と、海上自衛隊横須賀地方総監などを歴任され、中国海軍にも詳しい古澤忠彦氏のお二人にご登場いただき、中国の国家戦略を分析し、日本のとるべき国家戦略について語っていただいた。
日本李登輝友の会の「日台共栄」で紹介されました
台湾で翻訳出版(漢文版/『這樣下去會發生問題!日本的海洋戦略』)されました。
◎アジア全域に迫る中国「海洋覇権」の脅威
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目次
◎中国海軍の監視を堂々と続けよう 〈『明日への選択』平成22年6月号〉
◎日本は海から中国に包囲されている 『これではダメだ!日本の海洋戦略』が台湾で翻訳出版
本文
◎中国海軍の監視を堂々と続けよう 〈『明日への選択』平成22年6月号〉
http://www.seisaku-center.net/modules/wordpress/index.php?p=702
四月に中国艦隊十隻が、東シナ海から沖縄本島―宮古島の間の海域を通り抜け、西太平洋の沖ノ鳥島西方海域で演習を行った。その際、監視していた海上自衛隊の護衛艦に対して中国の艦載ヘリが異常接近を繰り返し、日本政府は外交ルートで抗議した。
一方、中国側は「公海上における正常な訓練で国際法にも符号する。世界各国で通用するやり方だ。むやみに勘ぐるべきではない」(中国国防省報道官)と日本側の抗議を一蹴。国際報道紙「国際先駆導報」は、「日本は中国艦艇が頻繁に外洋に出ることに慣れるべきだ」という中国海軍関係者の言葉を引用し、日本側の反応を「神経質」と指摘した(産経新聞4・23)。
悪いのはまるで日本の方だと言わんばかりのトンデモナイ主張である。
だが、中国は自国周辺で同様の出来事が起きたとき、全く逆の反応を示したことがある。以下、平松茂雄氏の『中国の戦略的海洋進出』(勁草書房)に基づいて、中国の主張を紹介しよう。
二〇〇一年四月一日、南シナ海の海南島付近の公海上空で、米軍の偵察機と中国軍の戦闘機が接触。中国の戦闘機が墜落し、パイロットが死亡する事故が起きた。この時、米国は中国の戦闘機の挑発的な行動に問題があり、「公海の上空であるから、米軍機に責任はない」と主張した。
それに対して中国側は、同四月四日、「中国軍機は中国沿海の排他的経済水域で米軍偵察機を追跡・監視しており、それは完全に正当なもので、国際法に合致している」と米側を批判した。
また同四月五日付の『人民日報』は、米側の主張について、「これは強盗が他人の玄関先にやって来て騒ぎを起こしても、そこの人は止めさせられない」ようなものであると述べた上で、こう批判した。
「国連海洋法条約によれば、外国の飛行機は排他的経済水域において『自由に飛行する』権利を有するが、それは必ず沿岸国の法律と国際法の規定を守り、沿岸国の主権、安全、国家利益に危害を与えない活動であることが前提となっている。ところが米国の軍用機は中国の近海上空にしばしば出没して、偵察飛行を行ない、中国の主権に挑戦し、さらに正当に追跡・監視している中国の航空機に衝突して破壊した。これは国際法に違反しているばかりか、中国の安全と国家利益に危害を与えた。米国は国際法の『飛行自由』の原則に違反している」
さらに同四月六日付の『解放軍報』は、「もし他国の軍用機がハワイ付近の空域で、偵察を行なった場合、あなた方はそのような『国際慣例』と『飛行の自由』を容認できるのか」と問うた上で、「米国が中国沿海空域でのこの種の飛行を停止する」よう要求したのである。
米国を中国に、中国を日本に、空(飛行機)を海(艦船)に置き換えれば、まさに今回の中国艦隊の行動と酷似している。この中国の論理に則れば、日本が非難される筋合いはまったくない。つまり、こういうことだ。
国連海洋法条約はすべての国が排他的経済水域を自由に航行できると規定しているが、同時にこの自由を行使する場合は、沿岸国の権利を適切に考慮しなければならないとしている。しかし、今回の中国艦隊の行動はそれを考慮せず、日本の主権、安全、国家利益に脅威を与えた。日本が国際法上の正当な権利に基づいて追跡・監視するのは当然であり、中国が非難する方がおかしいのだ。
日本政府はその時の中国の主張にならって、こう言うべきだろう。
「もし海上自衛隊の艦艇が中国周辺の海域で艦隊行動を行なった場合、あなた方はそのような『国際慣例』と『航行の自由』を容認できるのか。中国が日本周辺海域でこの種の行動を停止するよう要求する」と。
ちなみに、平松氏は本誌にこうコメントしている。
「中国はある時は国際法を利用し、ある時は国際法を都合良く解釈して、自らを正当化し、影響力を拡大しようとしています。そうした不当な主張は容認してはならないし、自由に行動させてはならない。冷戦時代、米海軍は日本周辺海域で情報収集するソ連漁船の活動を妨害し、ソ連潜水艦を執拗に追跡しました。海上自衛隊も米軍に協力して懸命に活動しました。今わが国が為すべきは、中国が何を言おうが、憶せずその先例を堂々と実行することです」
〈『明日への選択』平成22年6月号〉
◎日本は海から中国に包囲されている 『これではダメだ!日本の海洋戦略』が台湾で翻訳出版
2008年10月9日(木曜日)
http://www.seisaku-center.net/modules/wordpress/index.php?p=583
今年4月、当センターから出版した『これではダメだ!日本の海洋戦略』(平松茂雄・古澤忠彦著)が評価され、このほど台灣安保協會(台北市、理事長・鄭欽仁台湾大学名誉教授)から『這樣下去會發生問題! 日本的海洋戦略』として翻訳出版された(漢文版、写真下)。
『これではダメだ!日本の海洋戦略』は、昨年4月に制定された「海洋基本法」の制定後もなお、中国の海洋進出やガス田問題に有効に対応できていない日本の現状を切り口に、東シナ海や日本周辺海域のみならず、西太平洋、インド洋にまで海洋覇権を拡大する中国の国家戦略を分析。また単に分析するにとどまらず、「日本はどうすべきか」という点に特にフォーカスして、こんご日本がとるべき海洋戦略・防衛戦略について、二人の専門家が徹底的に語り尽くしたブックレット。同書の結論である「台湾問題が日本の生死を決する」という問題意識が、「中国の脅威」に直面する台湾の有識者の認識と合致・共鳴し、翻訳出版の運びとなった。
◆高知沖潜水艦事件、中国への備えは大丈夫か?
そもそも、当センターが『これではダメだ!日本の海洋戦略』を出版したのは、わが国はすでに「海から中国に包囲されつつある」にもかかわらず、いまだにそうした深刻な現実を見ようとしない状況に、「何とか穴を開けたい」という一念からであった。
つい先日も、高知沖に国籍不明の潜水艦が現れ領海侵犯されたという報道があった。当初は中国海軍所属の宋級潜水艦ではないかとの情報がもっぱらだったが、数日を経ずして事件そのものを扱う報道が消え、今では何事もなかったかのように忘れ去られてしまった観がある。もちろん、事件の真相はいまだ不明ではあるけれども、平松氏は「中国の潜水艦はふだんから日本近海にうようよしている。いつどこに現れてもおかしくない」と指摘する。
平松氏によると、中国はここ三十年余り、わが国周辺の広範な海域で海洋調査活動を続けている。それに対してわが国が有効な対抗措置をとらないことから、2000年には中国の海軍艦艇が日本を一周。今では中国の艦船が東シナ海をわが物顔に遊弋し、日本最南端の沖ノ鳥島周辺海域つまり西太平洋にまで進出している。また潜水艦については、2003年に中国海軍の在来型潜水艦(明級)が、鹿児島県佐多岬に近い大隅海峡を、中国国旗を掲げ浮上したまま通過。さらに2004年には、攻撃型原子力潜水艦(漢級)が、先島諸島の領海を潜航したまま侵犯し、海上自衛隊の哨戒機の執拗な追跡を受けながらも、それを振り切って中国領海まで逃げ切ってしまった。
以上のことを踏まえ、高知沖での事件について平松氏はこう語る。
「中国は長年の海洋調査活動により、海底の起伏・地形から海水の温度・塩分に至るまでわが国周辺の海域について知悉しています。今度のは中国の潜水艦かどうかはまだ不明ですが、中国海軍は西太平洋で活動できるまでに成長してきているのだから、いつどこに現れてもおかしくない。ちょうど横須賀に原子力空母ジョージ・ワシントンが入ったけれども、今回のような事件が続くならば、いかに無敵の米空母機動部隊といえども、危なくて台湾有事になっても動けません。いずれにしろ、わが国は海から中国に包囲されているという現実に、もっと関心を持ってほしい」
◆自衛隊に「領域警備」の任務を
ところで、今回の高知沖事件では領海侵犯されたにもかかわらず、海上警備行動が発令されなかった。2004年の中国原潜による領海侵犯の教訓から、政府は潜水艦が領海侵犯した場合、原則としてただちに「海上警備行動」を発令する方針を定めているのだが、福田政権は「すでに領海外に出ている上、再侵犯の可能性は低い」との判断から発令を見送った。国家の安保方針をスルーするとは由々しき事態であり、こんご何政権であれ、間違っても「前例」にしてはならない。
もっとも、仮に発令されたとしても、海上自衛隊ができるのは、潜水艦に浮上を求め、領海内から退去を要請することだけ。現行法では実力で排除するどころか、警告さえできないのだ。だから、古澤忠彦氏は『これではダメだ!日本の海洋戦略』の中でこう述べている。
「海上警備行動で自衛隊に与えられる権限は海上保安庁と同じ『警察権』で……武器使用が認められるのは正当防衛・緊急避難のケースだけです。つまり相手が弾を撃ってきた時初めて使える。しかし、その場合も『警察比例の原則』というのが働いて、他国の軍艦なら当然持っている国際法上の武器使用の権限は行使できません」「ですから、本当に日本の海を守ろうと思えば、自衛隊に『領域警備』の概念を取り入れる必要があります。『領域警備』というのは、わが国の領域が侵害された場合、自衛権を行使するということです」
かつてスウェーデンは、領海を侵犯したソ連の小型潜水艦に対して爆雷を投下して排除した。これが国際常識である。実力で警告し、最終的には排除し得る法制に変更しなければ、日本の海は守れない。平松・古澤両氏は、自衛隊に「領域警備」の任務を全面的に与えること、さらに「海から中国に包囲される」という危機に直面し、わが国の防衛戦略の根本的な転換を訴えている。あらためて『これではダメだ!日本の海洋戦略』の一読をお薦めしたい。
→目次・お申し込みはこちら
これではダメだ! 日本の海洋戦略
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解除するには下記URLにアクセスして下さい。
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永山英樹氏の2010年9月14日の古い記事も読んでおいてください。↓
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-1285.html
【尖閣海域「中国船拿捕」問題】台湾は冷静―メディアでは「日本支持」論も
永山英樹
ブログでは関連写真も↓
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-1285.html
■尖閣に関する中国人の嘘が自由時報で明らかに
中国人から見れば尖閣諸島は「中国台湾省」に属するとなるが、日本が同諸島海域で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を逮捕した問題に関し、台湾の無関心ぶりに不満を示す中国メディアの報道が見られた。
「台湾のグリーン陣営(本土派)の新聞は本当に小さな扱いだ。国民党系の新聞は大きく取り上げているが第三者の立場。メディアが民意を左右すると言うのがよくわかる。「去中国化」(非中国化政策)の賜物だろう」と。
本土派の新聞とは自由時報のことだろうか。最大発行部数を誇る同紙だが、たしかに九月十三日には「釣魚台地図には中華民国の嘘が描かれている」との投書をも掲載している。
そこにはこうある。
―――李登輝元総統が「釣魚台は日本の領土だ」と言うたびに統一派は非難するが、こうした話は政治的な嘘を明らかにしているものに過ぎない。
それはいったいどう言うことだろうか。
■一九七二年以前の地図では「日本尖閣群島」と
―――中国国民党が政権握っていた時代の一九七二年以前、国防研究院が出版していた「中華民国地図集」第一巻は一九七二年の第四版以前は中華民国の領土には釣魚台は含まれておらず、釣魚台は同じく「世界地図集」第一巻に日本の「尖閣群島」として表記されていた。
―――また一九七〇年に国立編訳館が発行した「国民中学地理」第四巻を見ても、当時は「尖閣群島」を「中華民国」との間に境界線を引き分けていた。
――― 一九六八年、国連が釣魚台海域で石油資源を発見したことを受け、中華民国政府は六九年から釣魚台に関する主権を宣伝し始め、七〇年には日本に対し、それを声明した。
―――そして突然、政府の教科書、メディア報道では日本の尖閣群島は中華民国釣魚台に変わった。それはまるで国共両党が長きにわたって「台湾は(日本から)独立すべし」と主張しながら、第二次大戦後に「台湾は中国不可分の一部」に変わったのと同じだ。
「中華民国の嘘」の嘘とはこう言うものだ。尖閣諸島を「中国台湾省」に属すると主張し始めたのが、中国人である蒋介石の時代のこの政権だったのだ。そしてそれに呼応し、同様の主張を行ったのが中華人民共和国である。
■台湾の保釣は在台中国人の反米反日の口実
このようにこの投書は事実を重視する台湾人の立場から、中国人の虚構宣伝を批判するものなのだが、文章はまだ続く。台湾で尖閣問題を巡って反日を煽ってきたのは在台中国人勢力だったことが明らかにされている。
―――七一年、各地で反日保釣デモが行われた。馬英九も当時は保釣学生だった。七八年、米国のグリーンカードを取得していた馬英九は、ニューヨークの中国国連代表団事務所前で中国が釣魚台を日本に渡そうとしているなどと抗議している。
―――民主化が行われる李登輝時代まで、保釣は統一派が台湾派政府の親米友日を攻撃する口実になってきた。
―――二〇〇五年六月、国民党主席選挙のとき、馬英九は国際司法裁判所では無報酬で弁護に立ちたいと言い、さらには日本との一戦も惜しまないと強調しながら、(日本との争いを好まない)陳水扁総統を「なかなか見られない軟弱な総統」とまで非難している。
■保釣運動をコマとしてきた中国政府
そして今回の騒動だ。投書はこう言う。
―――二〇〇八年、政治的空気が大きく変わり、日中両国は東海での共同開発で合意し、〇九年五月には友好気分継続のため、保釣行動を封殺した。昨年五月上旬には台湾と香港の保釣団体が釣魚台の主権宣揚のために出航しようとしたが、香港の保釣リーダー梁国雄は「台湾・香港・中国政府が共同で封殺した」と批判している。
―――ところが今、日中で争議が再発し、中国は一方的に共同開発協議を延期した。
―――昨年、梁国雄は「中国は保釣をコマとして使い、かつては資金を援助して出航させようとしたものだが、民間の保釣を好まないときは何もさせようとしない」と批判していた。それでは今、中国はどうするか。台湾の馬英九政権はそれにどう合わせるのか。
■台湾政府は保釣団体の船出にどう対処する
馬英九の国民党政権はどうするのか。少なくとも上述のように、「第三者」の立場に立って日中の動向を眺めているかのように見える。
同政権にしても尖閣問題において、自国の漁民の漁業権問題は重要視しているが、この問題で中国と歩調を合わせ、そのペースに乗って「友日」政策を後退させ、日本との関係を損なおうなどとは考えていない。
十三日正午(日本時間午後一時)、香港の「保釣行動委員会」は保釣パフォーマンスを目的に、台北県野柳から台湾の団体と二隻の漁船に乗り込み、尖閣諸島に向けて出航する計画だが、これに対しても台湾政府の許可は下りていない。
尖閣海域への出航を宣言した保釣グループ。12日、台北県内の集会で
台湾の海巡署は、保釣活動家たちの行動に干渉はしないが、釣船は二十四海里を越えてはならないとの「娯楽漁業管理法」に従うべきだとしている。
ちなみに同日午前の段階で、団体が確保できたのは二、三人乗りの小船だけだ。
一方中国の福建省アモイでは、この行動に合流予定の保釣活動家たちが当局から出航を阻止されている。メンバーによると当局は「出航の阻止はしていないが、待てと言っている」。
これを受け梁国雄氏は「胡錦濤も馬英九も強く出ろ。ともに釣魚台の領土を防衛し、日本に寸土も踏ませるな」と強く訴えている。
■東支那海戦略で台湾との連携が必要だ
以上を見てもわかるのは、尖閣問題は一般に日本と台湾、中国との領有権争いだと言われるが、台湾では自国に領有権はないとの正論がマスコミにも堂々と報じられ、しかも「親米友日」の観点から、保釣運動出身の馬英九の政権ですら反日を叫ぶのに躊躇しているとの状況にあることだ。
また香港や台湾のごく少数の中国人たちは、保釣運動華やかなりしころの青春時代を忘れられないためか、中国政府の支援を訴えながら反日保釣のパフォーマンスを繰り返すが、これらはいつでも中国のコマになり得ると言うことだ。
少なくともすでに台湾と中国が反日で連帯するとの虚像を、日本に対して見せ付けてきた。つまり日台分断のための情報操作工作のコマとして十分の威力を発揮しているのである。
尖閣を巡る日中間の対立を機に、日本側は「友台」の立場に立ち、「尖閣諸島は日本の領土であり、台湾人は中国人の築いた政治的虚構に惑わされるな。日台離間策に乗って東支那海の要衝である尖閣は日台にとっても生命線。これを中国に渡すな」と訴えて行かなくてはならないはずだ。
話せば、台湾人なら理解できるはずだ。もちろん漁業権問題も絡んでくるが、領土を巡る不必要な対立が解消されれば、逆にその解決も容易になると言うことも台湾側がわかっていないはずがない。
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『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html
『日本之声』 http://groups.yahoo.com/group/nihonnokoe
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