コプトについて。イスラム社会について。
コプトについて重要な記事。↓
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)1月8日(土曜日)
通巻3184号
ルノー・日産の「電気自動車」の特許機密が中国へ漏洩していた
李克強副首相は英独西三カ国でばらまき外交、フランスをスキップ
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未曾有の産業スパイ事件だ。
次世代自動車の中枢技術といわれる電気自動車の最先端機密が、日産の提携先であるルノーから中国へ流れていたのだ。
フィガロなどの報道に拠れば、特許出願前の電池とモーターの技術で、ルノーの幹部三人が中国に売却した疑惑があり、サルコジ大統領は情報機関に調査を命じた。
おりからスペイン、英国、ドイツを訪問中の李克強副首相はパリをスキップし、各地で財政危機に陥った当該国のユーロ建て国債をじゃんじゃん買うと派手な政治宣伝のおかげで「大歓迎」を受けた。(じっさいに幾ら購入したかは不明。アドバルーンで終わる可能性も高いが、外交の常套手段である)。
しかも李は「副首相」にすぎないのに、サバテロ西首相、キャメロン英首相、メルケル独首相が面会したのも、中国の誇るふんだんな「外貨準備」が魅力だからだ。
さてここでパズルがある。
一連の動きが舞台裏でいかように絡み合っているか?
成都の軍事施設で盗撮(?)されたとされる中国のステルス戦闘機の画像がUチューブから世界へ流れ出して、衝撃を与えた(一説に中国は意図的に流したという)。
中国の「J20」はステルス爆撃機で、米国F22ステルスを真似たものだが、じつはこの中国版ステルス・ジェット戦闘機シリーズはロシアのスボイー27のライセンス生産から派生した戦闘機。
技術を盗まれたとして、怒髪天を突く怒りを示したロシアは08年以後、中国に一切の軍需品の輸出を止めている。中国はライセンス生産の条件として外国へは輸出しないと約束していた(日本の新幹線も、そうやって約束し、いまは平然と反古。外国へ輸出商談をすすめている)。
問題はここである。
中国のステルス戦争機、試作品段階で不良、不具合が見つかり、飛行に失敗したという情報がある。
米国ペンタゴン筋も「中国が自前のステルス戦闘機を実戦配備するには十年以上かかる」と総括している。
ロシアは対抗上、同じ戦闘機をインドへ輸出する決定をしている。
▼EUの国債を買う取引条件は武器輸出解禁だ!
すると中国はどうするか?
その魂胆は明らかではないか。
「EU諸国から武器禁輸原則を解除して貰い、ヨーロッパのエンジンや、関連のハイテク技術を入手するのである。そのために李副首相は訪問先で、『財政危機に陥ったEU諸国を救う』などと公言し、ギリシア、スペインの国債を購入し、さらにポルトガル国債も購入を熟慮中と言っているのである」(アルジャジーラ、1月7日付け)
「もっともNATOは米国との軍事同盟であり、最先端の軍事技術を中国に売り渡す可能性は低いと言わざるを得ない」(イアン・ブレマー『ユーラシア・グループ』代表)
投資のプロから見ても中国のEU国債買いは「蛮行」に見えるらしい。
「名門老舗の投資グループ『ピムコ』といえば世界最大のファンドであるが、ユーロの主要な債権への投資をやめている。ポルトガル、ギリシア、アイスランドの政府債権を過去数週間購入しておらず、まもなくイタリアとスペインの政府債権への投資もやめる、とアンドリュー・ボソムワース(ミュンヘンの『ピムコ』ファンド・マネジャー)はヘラルドトリビューン(1月8日付け)のインタビューに答えた。
中国の駐英大使は「中国はEUの財政危機を救うことは出来ないが真の友人のために貢献するのだ」などとテレグラフ紙に寄稿しているが、実際に中国はスペイン、ポルトガルでは石油化学企業との合弁や共同投資をよびかけ、これらは南米の資源鉱区開発プロジェクトが多いことも留意しておく必要がある。
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(読者の声1)新年になりましたが、我国の政治はますます内向きになり足の引っ張り合いに明け暮れているようです。
メディアに煽られて実現した政権交代はとんだ食わせ物であることが誰の眼にも明らかになってきました。
世界の枠組みが大きく変わった今、我国も戦後体制やその焼き直しから抜け出して本当の意味で自立した国に生まれ変わらなければなりません。
目先の繁栄にかまけてやり残された課題に果敢に挑戦し誇れる国の実現に進む、心有る国民を基盤とする政治体制が今こそ求められております。貴マガジンは見極める目を涵養し惑わされぬ国民であるための糧であります。
本年も益々のご健筆に期待しております。
(宮崎太郎)
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◎毎日一行◎ 内閣改造、六月まで通常国会。菅政権は居直りを目ざすらしい
ゾ!
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(読者の声2)「エジプトのキリスト教コプト派とイスラムについ
て」
その昔、カイロに3年ほど暮らしたことがある。キリスト教コプト派は紀元2世紀ごろからエジプトのアレキサンドリアを中心に広がった古代キリスト教の1派である。エジプトはイエスが幼時時代にヘロデ王の迫害をおそれて家族が逃避した国とされ、イエスが住んでいたというカイロ近郊はキリスト教徒にとり深い因縁がある場所だ。
しかし6世紀にイスラム教が広まるとアラブ人がエジプトの都市を占領してエジプト人にイスラム教を強制した。その結果エジプトには、イスラム教徒と少数だがキリスト教徒がいる。
私のアラビア語の家庭教師はコプト教徒だった。彼は銀行勤務で職場に好きな娘がいたがその父親がイスラム教徒だったので結婚は不可能でいつも嘆いていた。
というのはイスラムの男はキリスト教の娘と結婚しても良いがキリスト教の男はイスラムの娘を娶ることは禁止だからだ。もし禁忌を犯すとイスラムの娘は家族から義絶されて社会的に生きられない。米国に駆け落ちするしかない。
また悪くすると娘の兄や伯父が一族のメンツをつぶされたとして殺しに来る。イスラム教が全生活を支配しているのである。
一般にアラブ人は数字に弱いと思われるが、コプト教徒はイスラム教徒よりも計算がしっかりしていると見られている。
だから銀行や財務省などにはコプト教徒の割合が高いという。イスラム教徒だと、計算間違いをしても「インシャアラー」(アッラーの思し召しのままに)で済まされる恐れがあるからであろうか。
コプトの会計士に会ったことがある。彼は手首に十字の刺青を入れていた。イスラムに転向しない不退転の覚悟を示していたのだと思う。彼の名刺の裏にはカラーでマリア像が印刷してあった。
よく「片手にコーラン、片手に剣」というが、イスラム教の異教徒への圧迫は厳しいものがある。
私が門番に仏教徒だというと、イスラムを知らない闇の子扱いで憐れまれた。
当時は日本と中東の宗教観の違いの大きさに驚いていたが、今や外国人の大量流入で日本人の外国宗教への無知と無警戒は危険な時代に入っている。
日本人に内外の宗教観の違いを本格的に啓蒙する必要があると思う。
(東海子)
(宮崎正弘のコメント)貴重な体験をなさいましたね。アレキサンドリアには友人が三年ほど赴任していたことがあり、一度は行きたいと思っていたのですが。
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(サイト情報)日米外相会談。1月6日、ワシントンで前原・クリントン外相会談が行われた。
(1)クリントン国務長官の声明
U.S. Department of State, January 6, 2011
http://www.state.gov/secretary/rm/2011/01/154070.htm
(2)会談後のクリントン国務長官と前原外務大臣による記者会見
http://www.state.gov/secretary/rm/2011/01/154069.htm
(3)ホワイトハウスの声明
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/01/06/readout-vice-presidents-meeting-japanese-foreign-minister-seiji-maehara
(4)前原外務大臣は戦略国際研究センター(CSIS)で、「アジア太平洋に新しい地平線を拓く」というテーマで講演を行った。
Opening a New Horizon in the Asia Pacific Statesmen's Forum: Seiji Maehara,
Minister for Foreign Affairs of Japan The Center for Strategic and
International Studies (CSIS)
http://csis.org/event/statesmens-forum-seiji-maehara-minister-foreign-affairs-japan
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/23/emhr_0106.html
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 508回】
――国を挙げての「全民発瘋」は、あの時代だけではありません
『為毛主席而戰 文革重慶武闘實録』(何蜀 三聯(香港)書店 2010年)
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1966年8月、毛沢東が文革を発動するや、北京に続けとばかりに重慶でも文革が始まる。だが、何が何だか五里霧中。そこで北京に倣って「資本主義の道を歩む実権派」「毛沢東の敵」を故意に仕立て打倒しようとするが、攻撃された側も組織固めして反撃の機を窺う。
そこへ、如何様にも解釈可能な「毛主席の最高指示」が北京から飛び込んでくる。かくて攻防双方が互いに「我こそ真の毛沢東派」「お前らは反革命分子」と罵り合い、街頭での小競り合いがエスカレート。
やがて重慶全体の大学、高校、中学、政府機関、国営企業、解放軍を巻き込んでの大規模な殺戮戦へと発展する。なんせ重慶は兵器生産の一大メッカ。武器にはこと欠かない。機関砲、榴弾砲、高射砲、戦車、軍艦までもが動員される始末だ。
この本は、ナゾ多き重慶での武闘の実態を客観的かつ克明に再構成した労作である。経済大国への道を驀進する中国に憧れる内外の有識者(トンマ)共に一読を強く薦めたい。
重慶での武闘における犠牲者(時には味方に惨殺された)の数は、今もって不明だ。いや重慶のみならず、中国全土でも犠牲者の正確な数を把握することは至難だろう。
おそらく共産党独裁が続く限り、数字が明らかにされることはないはずだ。だが重慶の場合、相手側組織に捕虜として捉えられ「叛徒」「探子(スパイ)」の烙印を押された末に殺された人数は一応は明らかになっている。
この本が引用している『重慶公安大事記(1949-1997)』によれば、66年8月からの1年ほどの間に重慶では22回に亘って大規模な武闘が展開され、結果として惨殺された捕虜は1737人。
犯行に加わった者は878人。うち239人が後に逮捕され刑に服したというから、逮捕を免れた639人(=878-239)は口を拭って今もノホホンと、いやカネ儲けに生真面目に奮闘努力しているのかもしれない。小規模な武闘を加えれば、犠牲者の数はさらに増すに違いない。
著者は重慶といわず全国各地で展開され、残酷な結末を迎えざるをえなかった武闘について、「なぜ彼ら(高校・大学生、青年労働者、軍人)は、あのように残忍になったのか。発狂したのだろうか。彼らは凡て文革前の17年間の『毛沢東時代』に革命の伝統教育や階級闘争教育など「毛沢東思想」の教育によって成長した熱血青年なのだ。共産主義青年団員もいれば中共党員も復員軍人もいた。『最も革命的な時代』、『最も革命的なスローガン』の下で、彼らはナゼ、あのようなことをしでかしたのか。これこそを、人びとは深刻に受け止め、深く思いを致すべきことではなかろうか」
と結ぶ。
著者の考えを言い換えるなら、彼らは突如として集団発狂したわけではない。17年という年月をかけて発狂するように教育された熱血青年であればこそ、勇躍として冷血漢にも、凶悪な殺人者にもなれた。
凡ては「百戦百勝の毛主席と偉大な共産党」を守るという“大義”のため。だが、果たしてそうか。殊に最近の中国の海外への膨張ぶり、常軌を逸したとしか思えない沸騰経済を考えると、これまた「全民発瘋」としかいいようはない。
つまり、これからの世界は、文革に熱狂し、指導者の意のままに狂奔し、残酷極まりない武闘を潜り抜け、残虐な結末に心の痛みを感ずることなくゼニ儲けに狂奔し、海外への膨張を急ぐ人びとと彼らの後裔に加え、自国民を殺し合いの場に引きずり出し、その責任を毛沢東に押し付けたまま、何もなかったかのように自らは口を拭って知らん顔の共産党政権を相手にせざるをえないことを、常に肝に銘じておかなければならないのだ。
《QED》
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『日米安保、五十年』(西部邁氏との対談。海竜社、1680円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4759311092/
『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』(徳間書店、1680円)
『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
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