二度と戦争はしたくないニッポン。
流血の記録・砂川
1956年/モノクロ/55分
◎撮影:武井大、植松永吉、城所敏夫、勅使河原宏、大野忠、亀井文夫 ◎編集:亀井文夫、渡辺正巳、豊富靖、岸富美子 ◎音楽:長沢勝俊 ◎企画:砂川斗争記録映画製作委員会◎製作:大野忠 ◎製作会社・提供:日本ドキュメント・フィルム
1955年、東京近郊の砂川地区で起った米軍立川飛行場の拡張計画。政府は農民の土地の強制測量を図り、1000名を超える武装警官を動員。それを阻止する農民・労組員・全学連による砂川闘争を強烈な迫力で描いた亀井文夫の渾身作。町ぐるみで土地を守る闘いは、60年安保の前哨戦となり、全国からも様々な市民が応援に駆けつけ、ついに1968年米軍に基地拡張を断念させる勝利となった。
安保条約
1959年/16mm/モノクロ/20分
◎監督:松本俊夫
◎製作:安保映画製作委員会
※画像は参考画像
1951年9月の日米安全保障条約締結から60年6月に至る安保条約反対闘争の実状を逐条的に展開した記録映画。この大衆デモのために米大統領秘書ハガチーは追い返され、アイゼンハワー大統領の訪日は中止され、安保自然成立後、岸内閣は総辞職した。 ★シネ・ヌーヴォでの上映となります。
くずれる沼 画家山下菊二
1976年 /モノクロ/45分
◎制作・構成・編集:野田 眞吉
◎撮影:長谷川 元吉 、亘 眞幸
画家 山下菊二の自己解放と人間的自由の奪還の記録。人間の自由とは何かを問い、そして安保闘争を戦った山下菊二。少年のような純粋な、自由な魂をそのまま持って大人になったといえる画家、山下菊二の生活と意見、その受難と反抗の人間記録。
1960年安保闘争~不滅の足跡
1969年/モノクロ/50分
◎製作:記録映画作家協会、日本映画・放送
産業労働組合、共同映画全国系列会議
◎再構成・編集:かんけまり
◎撮影:安保映画撮影集団
1960年6月安保への怒り
1960年/モノクロ/40分
◎監督:野田真吉、富沢幸男 ◎撮影:安保
映画撮影集団 ◎製作:安保映画製作委員
会、川久保勝正、坂斎小一郎
「安保反対」「打倒岸内閣」を掲げたおびただしい人々のデモ、山となった署名用紙。条約を承認させまいと国会を取り巻いたデモ隊、それを妨害する警官隊。参加者の中から死者を出した日の模様。歴史的な新安保条約阻止の一大統一行動。アイクの訪日を中止させ、岸を退陣させた巨大な波。日本列島を揺り動かした近代最大の国民運動を克明に、みずみずしく描く。
ANPO
2010年/アメリカ、日本/89分/カラー
◎監督・プロデューサー:リンダ・ホーグランド◎撮影:山崎裕 ◎音楽:武石聡、永井晶子
◎出演・作品:会田誠、朝倉摂、池田龍雄、石内都加藤登紀子、串田和美、東松照明、中村宏、横尾忠則、他 ◎作品:丸木位里、丸木俊、山下菊二、他
今から半世紀前の60年安保当時、熱かった日本をアーティストがどのように表現したのか。1960年6月に日米安全保障条約が岸信介政権下で自動更新されるまでの一ヶ月間、国会周辺は安保に反対する市民のデモで溢れかえった。1945年の敗戦からまだ15年しかたっていないその時代、様々な立場の人が参加したこの運動を一つにした最大の原因は「二度と戦争をしたくない」という市民の強い意志だった。日本で生まれ育ち、黒澤明、深作欣二、阪本順治監督作品など多くの邦画の英語字幕を手掛けてきたアメリカ人女性監督リンダ・ホーグランドが手掛けた初長編ドキュメンタリー。
~~~~~~~~~~
日本で生まれ育ち、黒澤明監督作をはじめ多くの邦画の英語字幕を手掛けてきたリンダ・ホーグランドが初監督を務めたドキュメンタリー。1960年当時、日米安保条約に反対した市民たちのデモによる空前の安保闘争の実態に迫る。アーティストの横尾忠則や、演出家の串田和美ら多くの芸術家らが、日本中で大論争となった歴史的闘争を振り返る。本作であぶり出される戦後の日米のねじれた関係性に言葉を失う。
ストーリー:日本で宣教師の娘として育ったリンダ・ホーグランドは、通訳や字幕翻訳の仕事を通して60年安保闘争が日本人のトラウマとなっていることに気付く。そして多くのアーティストたちが絵画や写真を通して深く安保問題や、米軍基地問題を表現していることを知る。彼女は、仕事を通じて知り合った横尾忠則や、写真家の石内都らに取材を試みる。http://www.cinematoday.jp/movie/T0009171
~~~~~~
アメリカ人監督の目から見た日米安保とは?深作欣二監督に影響を受けた『ANPO』女性監督
[シネマトゥデイ映画ニュース] 1960年の安保闘争といわれた激動の時代を、その時代を生きたアーティストたちがどのように表現したのかという観点から描き出した映画『ANPO』のメガホンをとったリンダ・ホーグランド監督に映画の裏話を聞いた。
ステレオタイプな見方かもしれないが、アメリカ人監督から見た日本を描いた映画、と聞くと、日本人としてどこか押し付けがましさを感じることがある。だが、ホーグランド監督は流暢(りゅうちょう)な日本語で「『ザ・コーヴ』みたいなね。あれ許せないよね」と笑っていた。期せずして映画『ザ・コーヴ』の名前が出たが、そのプロパガンダ映画とは逆に、この『ANPO』という映画は、人々の話に耳を傾けている印象がある。それは長年、通訳や翻訳の仕事をしてきて、常に相手が何を言いたいのかを考えてきたホーグランド監督ならではのスタイルなのだろう。
さて、この映画の中には、映画『仁義なき戦い』(深作欣二監督)『火垂るの墓』(高畑勲監督)『しとやかな獣』(川島雄三監督)『日本の夜と霧』(大島渚監督)といった映画の断片が登場する。アメリカと戦争をした、かの戦争が日本人にどのような影響を与えてきたのか、戦争を経験してきた監督たちだからこそ描ける怒り、叫びがそこから伝わってくる。この絶妙なチョイスは数々の日本映画の字幕を担当してきたというホーグランド監督ならではなのだろうか。「確かに、『仁義なき戦い』はわたしが英訳をしたから知っていましたけど、ほかはわたしの趣味ですね」と話すホーグランド監督は、相当な日本映画通であることがうかがえた。
ホーグランド監督は、これらの日本映画に魅せられた理由について、「おそらく今では政治的と言われるような題材を、エンターテインメントとしてさらっと表現してるところですよ。例えば『しとやかな獣』の脚本を書いたのは、新藤兼人さんなんですが、彼ぐらいじゃないと、あのむちゃくちゃなブラックユーモアは書く勇気がないでしょうね。だからついていくのに必死ですよ、彼らは達人だから」と話す。そして「日本が戦争責任を正式にとらなかったと、いつもバッシングを受けてきましたけど、少なくとも、あの戦争を直視しようとしている日本の映画監督たちはたくさんいた」と付け加え、『ANPO』が深作欣二監督の1972年公開の映画『軍旗はためく下に』の構成に影響を受けたという事実を明かしてくれた。
それにしても日本というのは矛盾に満ちた国だ。平和な国のはずなのに、軍人がたくさんいる。米軍基地は要らないと言いながら、それでもアメリカに頼らざるを得ない。この『ANPO』という映画を観ていると、そういった現状に思いをはせずにはいられない。宣教師の娘として日本で生まれ育ったホーグランド監督の立場もまた矛盾している。「わたしには日本の投票権もないし、パスポートもないから、自分の国ではない。でも自分の故郷だと思っている。日本の田舎で育ったことで、日本人独特の、気の使い方や思いやりにものすごく影響されて育った。そういう日本に対する感謝の気持ちがあるんです」と話す。しかし幼いとき、広島・長崎の原爆の事実を知り、ある種、自分の故郷に対する加害者であるという立場を自覚したのだという。「だからわたしが責任をとって批判をしなくちゃいけない国はアメリカなのね。日本の批判は投票権のある方がしてください。確かに日米の関係と軍隊の問題は複雑だけど、だからって何も考えないというのは、大人の発想じゃないですから」と話す笑顔が印象的だった。
映画『ANPO』は9月18日より渋谷アップリンク、横浜シネマジャック&ベティほかにて全国順次公開
http://www.cinematoday.jp/page/N0026228
基地問題!日米関係!阪本順治監督が戦争とアメリカを語る!日本はどこへ行く?
[シネマトゥデイ映画ニュース] 1960年の安保闘争を現代アートの観点から見つめ直したドキュメンタリー映画『ANPO』の公開を記念して、日米関係をテーマにした作品を監督している阪本順治監督と本作のリンダ・ホーグランド監督のトークショーが開催されることが決定した。
映画『座頭市 THE LAST』などで知られる阪本監督は、2004年公開の映画『この世の外へ クラブ進駐軍』で、敗戦直後の東京でアメリカ進駐軍を相手に演奏する若きジャズメンを通して、これからの日米関係の在り方を描いた。今回のトークショーでは、黒澤明監督作品をはじめ、数多くの日本映画の字幕を担当したホーグランド監督が、映画で語り切ることのできなかった戦争について、そして日米関係について二人で語り合う予定だ。
1950年代後半に生まれた阪本監督は、安保闘争をリアルタイムには知らず、60年安保を知るアーティストの作品から影響を受けてきた世代の一人。本作について、当事者とはいえない阪本監督が語るのも、この作品に登場するアーティストや映画作品に影響を受けてきたからだろう。
日米関係、安保闘争について一つの答えを求めるのではなく、疑問を提起するという形で展開していく本作は、これまでのことよりも、これからのことについて考えさせられる。阪本監督が語るのも、これからの日本を担う一人として認められたから。日本とアメリカがどうあるべきか、基地問題などで揺れる現代に語られるべき問題は、山積みのままだ。本トークショーを含んだ映画の上映は9月20日19時30分より、渋谷アップリンク・ファクトリーにて行われる。
映画『ANPO』は9月18日より渋谷アップリンクほか全国順次公開
http://www.cinematoday.jp/page/N0026966
日本に米軍基地は必要か?「二度と戦争はしたくない」日本人の心の抵抗描く
[シネマトゥデイ映画ニュース] 10日、六本木の森美術館で、映画『ANPO』公開記念トークイベントが行われ、リンダ・ホーグランド監督、そして本作に出演している写真家の石内都、画家の中村宏が登場した。
宣教師の娘として日本で生まれ育ち、黒澤明監督作品をはじめ、数多くの日本映画の字幕を担当し、映画『TOKKO-特攻-』ではプロデューサーを務めたホーグランド監督。『ANPO』では、そのいかにもアメリカ人というルックスながら、流暢(りゅうちょう)な日本語を話す彼女が、1960年の安保闘争と言われた激動の時代を、その時代を生きたアーティストたちがどのように表現したのかという観点から描き出している。
1960年当時の岸信介政権の下で、強行的に改正された日米安全保障条約だが、「二度と戦争はしたくない」という思いから多くの市民が安保に反対したにもかかわらず、その願いはかなわず、市民の間には挫折や敗北感に支配されていた。
しかし画家の中村は、「リンダさんは表現の世界では勝ったじゃないのと言ってくれたんですよ。僕らはそういう評価はされたことがなかったから新鮮だった。老人はおだてられるとうれしいんですよ(笑)」と言って会場を笑わせた。中村は性的な雰囲気や心的世界などを奇抜な画面構成と特異な表現で描き出すというスタイルの画家だ。
リンダ・ホーグランド監督も、「アメリカ人から言わせると、絶対に1枚も売れないとわかりながらも、50枚、60枚と描き続けるというのがすごい。わたしにとっては中村さんたちは英雄ですよ」と話し、さらにこの映画が中村の絵を見たショックから生まれたことを明かしていた。
本編中には、日本に駐留するアメリカ兵が、怒りの表情で「カメラを回すな」とすごむシーンがある。ほんの10秒くらいのシーンだが、ホーグランド監督によると、このシーンがアメリカ人には衝撃だったらしい。「彼らは後ろめたさがあるから、カメラに関する意識が高いんです。だからすぐにああいう発言が出るんです。これをわたしの友人に見せたら、『今だに進駐軍なんだね』とものすごくショックだったようです。飛行機が爆音を上げて低空飛行するシーンなども、アメリカ人はああいう映像を見られないんで驚いてましたよ」と明かし、これから映画祭などで世界の人々に見せるのが楽しみだと話していた。
そんな流れから、日本に米軍基地は必要かと聞かれたパネリストたち。沖縄から帰ったばかりだという石内は「わたしは反対です」ときっぱり。「基地を作るべきかどうか国民投票をして、一番賛成が多かった県に基地を作ればいいと沖縄の人たちは言っていました。日本人は基地についてリアルに感じていないんです」と話すと、会場からは大きな拍手が沸き起こっていた。
本作では、この問題について結論を出すのではなく、問題を提起する形となっている。改めて日本とアメリカとの関係を考え直す機会になるのではないだろうか。
映画『ANPO』は9月18日より渋谷アップリンクほか全国順次公開
http://www.cinematoday.jp/page/N0026141
アメリカ軍の基地に反対なら
代わりの日本軍の基地が必要だと思うが、
それについては、なんにも言わないところが
左翼っぽい。事実、自分の国に外国の軍隊の
基地があるということは、ストレスである。
それを受け入れているのは、日本が軍隊を
持たずに、アメリカ一国に自国の警備を
まかせようとしたから。フィリピンでは、
アメリカ軍が撤退したとたんに、チュウゴク軍が、待ってましたとばかりに、フィリピンの島々を占領した。フィリピンは、自国の島々や
海域をチュウゴクに奪われても、チュウゴクの言いなりになっている。ノーベル平和賞の受賞式には、参加しなかった。
フィリピンの軍隊が実際にチュウゴク軍よりも
弱いから、反対もできないでいるか、フィリピン人がだらしないからか、フィリピンの政治家たちがチュウゴクに買収されているかだと思う。
フィリピン人も、それでいいと思っているのかもしれない。なんにも、知らされていないか、知らされていても、日々の食事にもことかいていて、政治に関心が無いかだろう。
~~~~~~~
反安保!現代アートから、露骨に戦争の記億や米軍基地問題と向き合う!
[シネマトゥデイ映画ニュース] 日本で生まれ育ったアメリカ人監督、リンダ・ホーグランド監督が、日本の現代アートを通して、自分の故国であるアメリカと生まれ育った日本の安保闘争以降の関係を振り返ったドキュメンタリー映画『ANPO』が9月18日より公開される。
安保闘争50周年となる今年に公開される本作は、反安保をテーマに据える絵画や写真、音楽など日本の現代アートの紹介に、60年安保闘争を知るアーティストへのインタビュー交えながら、アメリカと日本の関係にスポットを当てたドキュメンタリー。普天間基地移転問題など、現在まで続く問題を根本から見つめ直した作品だ。
ホーグランド監督は17歳まで日本で過ごし、大学卒業後は日本のテレビ局のニューヨーク支社に勤めた日本生まれのアメリカ人。映画制作に携わると同時に、黒澤明監督や 宮崎駿監督の映画の字幕翻訳も手掛けている。そんなホーグランド監督が、日米の関係を描くために現代アートを用いたのは、村上隆をはじめとして、日本の現代アートは世界的に高く評価されているにもかかわらず、露骨に戦争の記億や米軍基地問題と向き合った作品はほとんど知られていないことがきっかけとなったのだという。
生まれ育った国と故国のはざまで揺れるホーグランド監督は、「わたしは、世界にこの素晴らしい『文化遺産』を紹介したいと思ったと同時に、日本の若い人にも知ってほしいと思いました」と本作が海外だけでなく、日本国内の若い世代に向けられていることを明かすと、「日本にも『抵抗』の歴史があり、その『抵抗』を世界級のアートとして表現し続けているアーティストたちがいることを」と表立っては語られない日本の歴史言説についても言及した。
終戦からわずか15年後に起きた安保闘争にはさまざまな立場の人が参加し、「もう戦争をしたくない」という強い意志を感じさせた。そのことを現代アーティストの作品から現代に問い直した本作は、辛らつといってもいいほどの視点から日本人を見つめる。それもすべては、ホーグランド監督の愛情の裏返しなのかもしれない。
映画『ANPO』は9月18日よりアップリンクにて公開
http://www.cinematoday.jp/page/N0026016
~~~~~~~~
加藤登紀子、政府にもの申す!「戦争に勝利・敗北はない」東京大学・安田講堂で安保熱く語る!
[シネマトゥデイ映画ニュース] 1960年6月15日に起こった日米安全保障条約闘争の国会デモからちょうど50年を迎えた15日、シンポジウム「60年安保闘争の記録と記憶」が東京大学・安田講堂で行われ、社会学者で東京大学大学院人文社会系研究科教授の上野千鶴子氏、ノンフィクション作家・保阪正康氏、社会学者・小熊英二氏、ドキュメンタリー映画『ANPO』のリンダ・ホーグランド監督が参加した。会場は安保闘争をリアルタイムで体験した年配者のみならず、20歳代~30歳代の若い世代など約1,000人の観客で埋まった。
イベントは、ホーグランド監督が、デモ参加中の6月15日に死亡した東大生・樺(かんば)美智子さん(当時22歳)の命日にあたるこの日に、映画を上映したいという熱意から実現したもの。米国ニューヨーク在住のホーグランド監督は、日本映画の英語字幕翻訳の第一人者としても知られ、子ども時代に愛媛や山口で暮らした日本ツウ。映画は、安保闘争を題材にした写真や絵画といったアートを切り口に戦後の日米関係のゆがみを振り返るもので、写真家・石内都氏、画家・中村宏氏、演出家・串田和美氏など約30人のインタビューが収められている。ホーグランド監督は「わたしは1960年について語る資格のない米国人ですが宣教師の両親のもとに日本で生まれ、日本映画にあこがれて翻訳の仕事に携わってきました。その中で、大島渚監督や今村昌平監督の作品を通して、1960年に国民が大きなトラウマを抱える事件があることに気付きました。あの成瀬巳喜男監督の作品も1960年を境にトーンが変わっている。そのときに濱谷浩氏の写真集「怒りと悲しみの記録」(※安保闘争の記録写真集)を紹介され、そのときの怒りや挫折から生まれたアートという文化遺産の存在を知りました。それらを通して日本人の主観的な体験を記録したい。米軍が駐留している苦痛や、日本に抵抗の歴史があったことをアートを通して世界に発信したいと思った」と語り、約15分のダイジェスト版を上映した。
シンポジウムは上野氏の司会で「安保闘争は戦後最大の社会運動であり、失敗に終わった反政府運動から何を学ぶのか?」を中心に話し合われた。同志社大出身で当時、京都から国会前でのデモに参加したという保阪氏が体験談を交えつつ、「当時の人たちは安保条約の内容を詳しく知らなかった。しかし、なぜあれだけのデモになったかというと、新安保条約を強行採決した岸信介首相の存在があった。多くの人の戦争に対する嫌悪感が岸にかぶさり、『あの人が戦争の責任者であり、二度と戦争を起こさないためにもあの人の存在が問題なのだ』という意識が、人々が運動を起こすバネとなった」と分析。また保阪氏は著書
「六〇年安保闘争の真実」を発表しているが、「記録というものを父とし記憶を母として教訓という子どもを生む。それを育てていくのがわたしたち」と歴史の中で、安保闘争が起こった意義を振り返る必要性を説いた。
続いて、「〈民主〉と〈愛国〉」などの著書がある小熊氏は「安保闘争は、終戦の15年後に起きたということが大きい。戦争の生々しい記憶を皆が共有し、反戦という気持ちが人々を駆り立てた。ではなぜ記録するのか? 戦争の記憶と結び付いた安保闘争は、現在生きているわれわれが思い出し続ける必要がある。特に安保の記憶は沖縄に凝縮されており、今回の普天間基地移設問題から鳩山政権転覆へとつながっている。つまり安保や戦争の問題を振り返らなければ、沖縄に刺さったトゲを抜くことはできない」と力説した。司会に徹していた上野氏も「この時期、鳩山政権が転覆した直後にこうした集会を開く歴史的意義を強く感じます。鳩山さんがしくじったのは、県外移設を唱えたせいで、沖縄住民の希望というパンドラの箱を開けてしまった。そのせいで他の地域からの反発を受け、これまで沖縄県民にいかなる犠牲を強いてきたかを国民が実感できるきっかけを与える偉大な功績を残した」と自論を展開。これに触発された小熊氏も、「だいたい米国は、日本に基地を置く必要性も理由も何一つ説明しない。これで対等な日米関係といえるのか」とほえた。
シンポジウム終盤には、映画『ANPO』にも出演している歌手・加藤登紀子が特別ゲストとして登場。1960年の国会デモに16歳の女子高生ながら駆け付けたという加藤にとっては、シンポジウムで度々使われた「失敗に終わった反政府運動」や「敗戦」という言葉が引っ掛かったよう。「『失敗に終わった60年』と上野さんはおっしゃった。でも戦争に勝利・敗北はない。勝利しても死ぬ人は死ぬ。わたしは、60年安保は革命は起こせなかったし、止めることもできなかったけど、たくさんの素晴らしい瞬間を、エネルギーを、わたしたちに与えてくれたと思っています。そこから生まれたと思っている人もいるワケで、政府の方は抹殺できたと思っているかもしれないけれど、樺さんたちの信念は、わたしたちの魂に生き続ける力がある。それは敗北ではなく勝利です。心の中に永遠の輝きを残すという勝利を、わたしたちは経験したかもしれない。だから、そんなに簡単に勝った、負けたで歴史を語ってほしくない」と出席者たちを一喝し、会場から「そうだ!」の声援と大拍手を浴びた。そして加藤は、樺さんが遺した詩を朗読。最後は出席者全員で樺さんへの1分間への黙とうをささげて、イベントは大盛況のうちに終了した。(取材・文:中山治美)
映画『ANPO』は今夏公開予定