中国の犬は、韓国を噛む悪い犬ー飼い主も無能で無責任ー犬の要望など誰も聞きたくないわ | 日本のお姉さん

中国の犬は、韓国を噛む悪い犬ー飼い主も無能で無責任ー犬の要望など誰も聞きたくないわ

2010年12月2日発行
JMM [Japan Mail Media]  No.612 Thursday Edition
http://ryumurakami.jmm.co.jp/supported by ASAHIネット
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■ 『大陸の風ー現地メディアに見る中国社会』 第190回
  「Son of a Bitch」

  □ ふるまいよしこ :北京在住・フリーランスライター

 ■ 『大陸の風ー現地メディアに見る中国社会』  

        第190回
「Son of a Bitch」

 前回のレポートで「証拠」と「国家機密」で揺れる日本の案件(今回の尖閣問題は
中国漁船と日本の巡視艇の衝突を発端としているものの、ビデオ公開事件は決して中国との案件ではなく、日本の国内問題だった)を書いたら、2週間後に今度はWikileaks(ウィキリークス)という、スウェーデンを根拠地とするウェブサイトがアメリカ政府の外交通信文書を暴露するという騒ぎがあった。
 
 日本のマスメディアはまだインターネットをキワモノ、あるいは悪者として取り扱う視点が主流なので、「またインターネット上で暴露モノが出たよ」「まったく困るよねぇ」的な取り扱いしかされていないが、世界のメディアではトップページを大きく飾っている。それによると、「どこかの国のトップがよその国の悪口を言った」という品のないレベルのものから、「なに、あの世界的な事件の裏にはこんな取引が?」

的なもの、またアメリカ及びその他関係国が現在この瞬間に進めている外交やその他政策がおじゃんになってしまう、と言われるレベルまでの機密が25万点も暴露されているそうである。
 
 海外マスコミやインターネットはやっきになって先を争って解読、翻訳、解説しているのは、それが「アメリカ」の外交文書だから。というか、だからこそ暴露されたのであるけれども、これが他国の文書であれば本国の人たちもあるいは周囲の人たち
も、「ホントかよ? うそでしょ」で煙に巻いたり巻かれたりするのだろう。それがことアメリカの、となるとみなさん頭から「信じる」ことを前提に真面目に解読を試みる。ここにも「証拠」のが持つ、ある種の力関係が現れていると思う。
 
 ただ前述したように、日本のメディアはこの事件を「インターネットの暴露モノ」
としかとらえていないのか、あるいはその解読にやっきになることを「アメリカ政府
に対して申し訳ない」と思っているのか、その報道トーンはかなり抑え気味であり、
紹介したとしても悪口話の暴露などキワモノ中心だ。今回暴露された機密の解読は世界勢力の裏地図を読み解く良いチャンスだと思うけれど、日本はそういうところにも腰が引けている。ただ、もちろん外務省や防衛省ではきっと省内で専門チームが解読を進めているはずなので、メディアはそちらの「発表」を待っているのかもしれない。
 
 つまり、表ではインターネットの暴露がどうのこうの、と言ってはいても、結局は
同じなのだ。そこにはみんなが求める情報が確実に流れているわけで、「申し訳ない」 と言いつつもその情報を無視して「なかった」ことにはできない。なのに、そこで日本のメディアが表向きには頬かむりして情報界の清廉居士を演じているとしたら、情報の「仲介者」としての役目を失ったことにはならないか。ウィキリークスの「機密
取得ー暴露」はたしかに既成のシステムや価値観に衝撃を与えるものだが、過去メ
ディアはそうやって歴史を動かすための旗振り役だったのではなかったか。それがおとなしく政府機関が解読して発表するおこぼれを待っているとしたら、残念極まりない。
 
 ともかく、今回暴露された25万点もの資料は広範囲にわたっており、しばらくい
ろんな方面に影響を及ぼしていくのだろう。たとえばアジア情勢で言えば、アセアン
や華人社会の間で中国と付かず離れずの微妙な役回りを演じているシンガポールのリー・クワンユー上級相個人が語ったとされる中国指導部個人に対する評価や、中国の某高官による「北朝鮮を制御できるのはもうアメリカだけだ。中国の言うことになんぞ耳を貸そうとしない」という数年前の発言は非常に興味深い。
 
 今まさに、韓国延坪島への北朝鮮の砲撃に驚いた世界がちょうどその中国の出方を大きく注目しているところだ。中国もその重責に発奮したからこそ、11月28日の日曜日午後になって突然、緊急記者会見を開くと大騒ぎしただろう。中国はそんな世界の期待に華々しく応えるつもりだったのだろうが、どんな重大決定が発表されるのかと息をひそめて待っていたのは海外メディアの記者だけではなく、記者会見召集のニュースを知った中国人のネットユーザーたちも同じだった。
 
 そして会見が始まり、現場にいた海外メディア記者の誰かから「中国は六カ国会談
の各国担当者に緊急会議開催を呼び掛ける」という内容がほぼ発表と同時にツイッターに流れた瞬間、中国人ネットユーザーたちの期待と緊張感が「ぷしゅーーーーーーーーーーッ」と大きな音を立ててみるみるうちにしぼむのが分かった。そして数秒間前まで息をつめてコンピュータ画面を見つめて政府の発表を待っていたネットユーザーたちはあっという間にこの会見に興味を無くしてしまい、いつもの日曜午後の話題に戻っていった。その時の彼らの気持ちはその後ツイッター上に流れたこんなツイート(書き込み)に代表される。
 
「急に集められた記者たちはたぶん今ごろ、中国外交部の報道官の祖先を18代さかのぼって罵ってることだろうね」
 
 あれほど物々しく、日曜日の午後ばたばたと召集された会見が結局、六カ国会談開催への「呼びかけ」だったことには、同様にツイッターを見ながら第一報を待っていたわたしも面喰らった。しかし、落ち着いてみると、それが今の中国にとって北朝鮮問題において行使できる唯一の「力」になってしまったのだと気がついた。
 
 覚えておられる方はいらっしゃるだろうか。実はこの「大陸の風」レポートは六カ
国会談の第一回会談の時から始まったのだ。
(「時代の幕間」
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report4_698.html
 
 あの頃の中国は、世界貿易機関(WTO)への正式加盟を果たし、2008年オリ
ンピックの北京開催を決め、上海でAPECも開催出来たので意気揚々だった。そこ
に北朝鮮の核問題を話し合う場として中国が選ばれたのは、中国の北朝鮮と世界との橋渡し力を見込まれたからだった。WTOやオリンピック、APECでは「場」を中
国に移しただけだったが、六カ国会議はあっせん者として中国の「実力」を発揮でき
るとの高揚感があった。
 
 それが、である。いまや中国にとって北朝鮮との橋渡しは、六カ国会議開催の「呼
びかけ」ることだけになってしまった。それも華々しく、海外の主たるメディアを緊
張の面持ちで呼び集めて世界に向けて発表したにもかかわらず、まず韓国に、そしてアメリカに断られ、日本もそこに同調したのである。
 
 そしてさらに国内の白けた反応。今や中国の人々も、さらには日ごろから中国政府が情報を管理しているメディアですら、この六カ国会談に期待し、持ち上げる者はいなくなっていた。雑誌『新世紀』を発行している「財新」というメディアグループのウェブサイトには堂々と「なぜ『我々』は北朝鮮を援助し続けるのだ?」という激しい口調のコラムすら掲載されていた。
 
 そのコラムの筆者、米国での留学経験を持つ弁護士の斯偉江氏は、そこで、かつてルーズベルト米大統領が「なぜアメリカは南米で多くの人たちを殺す独裁者を支援するのだ」と尋ねられ、「やつはSon of a Bitch(畜生)だ、だが、我々が与えるエサ食べている畜生だ」と答えた例を引用し、はっきりと「北朝鮮は、我々のSon of
a Bitchだ」と呼んでいる。そしてそんな北朝鮮を中国が支援するのは、アメリカや
日本は自分たちの敵であり、「帝国主義は今だに我々を潰そうとしている」と信じて
いるからなのだ、と言う。
 
「でも、中国政府はアメリカと経済協力を推し進め、世界二位になった。我々の未来
は明るく、『帝国主義』が崩れようとしているのを眺めているところではないのか。
なのに、まだ自分に自信が持てなくて、わざわざSon of a Bitchを飼って用心棒代わ
りにして、バランスを図ろうとしている。残念なことにこのイヌは全くこっちの言う
ことがきかない。どこの誰が、自分が韓国を砲撃して、軍艦を沈めたことをお金を下
さるご主人さまに告白するだろうか? そしてそのご主人さまときたら、飼いイヌが
人を咬んでも、その善し悪しも、責任も、罰についても語らず、ただ『みなさん、静
粛に、落ち着いて』としか言わない。もし自分が咬まれたらどうするんだろう? 
『いや、そんなことはしないよ、奴はうちのSon of a Bitchなんだから』って言うん
だろうか」

 中国はかつて朝鮮戦争の際に義援軍を出し、多くの死者を出した。それが理由で心情的にはずっと北朝鮮に近かった。かつて北朝鮮を「朝鮮」、韓国を「南朝鮮」と呼んでいたこの国で、いつしか「北朝鮮」「韓国」という言葉が定着したのと同じよう
に、人々も北朝鮮に対して冷たい視線を向けるようになった。現在、来日中の中国人フリージャーナリストの安替は、これを「2000年ごろから韓国の主要メディアが
中国語サイトを設立し、自分から中国に向けて朝鮮半島の情報を流すようになった結果、市民が韓国の情報を元に朝鮮半島を分析するようになった結果だ」と語っている。

 
「イヌの飼育には絶対に技術がいる。ルーズベルトが飼ったイヌは人の話をよく聞い
たが、毛沢東時代に自信をもてなかった頃、言うことを聞くイヌを飼ったわけだが、
トウ小平の時代になると、そのイヌがあまり言うことを聞かなくなったので、ヤツを
殴って自分のイヌではないとみなした。つまり、少なくとも無駄なカネをそいつに使
わなくなった。トウ小平は韓国と国交を樹立したことが北朝鮮をむっとさせてそうい
うことになったんだけど、トウには少なくとも自分に自信があったのでイヌはなかっ
たのだ。その後、再び自信を失ってからまたイヌを飼うという自己欺瞞に陥って、そ
の結果イヌにだまされているというのにエサを与え続けなければならなくなり、結局
どちらがどちらの主人なのか分からなくなってしまったんだ」
 
 北朝鮮を「畜生」と罵るこのコラムは発表からすでに数日が経っているがいまだに
削除されておらず、閲覧が可能だ。さらに同サイトにこのコラムの英語訳まであり、
西洋メディア関係者にも読まれていて、実際にわたしもそんな西洋人記者の一人の情報でこの文章の存在を知ったのだった。
(英語翻訳アドレスは、
http://blog.english.caing.com/article/124/
 
 海外からの圧力と激しい国内の反発、そして北朝鮮側の不服従。ここで頭を垂れるわけにいかない中国政府は六カ国会談開催に突破口を求めた。しかし、残念ながら、それは実らなかった。今回の呼びかけ不発は、逆に中国の北朝鮮への無力をあらわにしてしまった。そしてまたウィキリークスはそんな中国の無力さが、すでに数年前に中国高官によってアメリカに伝わっていたことを暴露した。
 
 そしてそんな中国政府は、「敵国」アメリカの外交資料暴露という本来であれば
「喜ぶべき」事件の報道を国内メディアに対して規制しているそうだ。昨日の友は明
日の敵、昨日の敵は……。
 
 これこそが中国がかつてあこがれ続けた、世界舞台デビューがもたらした7年目の現実である。

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ふるまいよしこ
フリーランスライター。北九州大学外国語学部中国学科卒。1987年から香港在住。

近年は香港と北京を往復しつつ、文化、芸術、庶民生活などの角度から浮かび上がる中国社会の側面をリポートしている。著書に
『香港玉手箱』(石風社)
(
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883440397/jmm05-22 )
『中国新声代』(集広舎)
(
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4904213084/jmm05-22 )
個人サイト:(
http://wanzee.seesaa.net )
JMM [Japan Mail Media]                No.612 Thursday Edition
【発行】  有限会社 村上龍事務所
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