「日本”菅没”」 | 日本のお姉さん

「日本”菅没”」

■「加瀬英明のコラム」メールマガジン
送信日 : 2010/10/28 (Thu)
題 名 : 「日本沈没」ならぬ「日本”菅没”」

 小松左京氏の『日本沈没』というベストセラーがあったが、いまや全国民が見守るなかで、日本〃菅没〃が進んでいる。

 菅内閣は無知、無恥、無能、無策だ。九月七日に、中国の〃漁船〃が尖閣諸島周辺のわが領海を侵犯して、海上保安庁の巡視船に体当たりした。海上保安官が強行移乗して、船長以下十五人の乗組員を逮捕した。

 重罪である領海侵犯容疑によって、厳しく追求すべきところを、軽い「公務執行妨害容疑」を適用した。菅内閣は国内法によって、「粛々と」対応するといった。

 もっとも、日本には法的な欠陥があって、戦後、独立国であることを忘れたために、領域(海)警備法が欠けている。領域を侵した者には、出入国管理法違反しか、問えない。

 中国に阿(おもね)て、公務執行妨害によるよりも、他の独立国ならそうするように、領海侵犯によって捕えるべきだった。そのうえ、船長だけ拘留して、十四人の船員をすぐに中国へ送り返した。中華人民共和国憲法を読むと、「人民武装力」として、人民解放軍と並んで民兵がある。民兵のなかに、漁船を操る「海上民兵」がいる。

 私は日本の意志を試すために、尖閣周辺の領海を侵犯した可能性が高いと思う。
なぜ、十五人全員を必要な時間をかけて、取り調べなかったのか。それぞれ一人にして、〃民兵〃なのか、軍歴を洗って、中央からの指令によってわが領海を侵犯したのか、訊問すべきだった。

 一人ずつ隔離して、「陳君は早く帰国したいといって、もう自白しているぞ。上からの指令で、侵犯したと供述している。君が嘘を通そうとするのなら、君の身内に気の毒だが、国内法によって、夕張炭坑で重労働三十年に処することになるな」とでも脅かして、自白をひきだすべきだった。

 菅首相、前原外相が「中国との外交的な配慮によって、船長を不起訴処分にして釈放する」と、那覇の地方検事がいったのを受けて、「検察の決定に従った」といったのは、嘘だ。鬼が舌を引き抜くことになろうが、善良な日本国民と違って、三枚も、四枚も舌を持っているから、痛痒を感じまい。

 だが、どうして那覇の小役人が、高度な政治判断を行うことができよう。
それも、「北京との政治結着」ではなかった。裏で話し合う力もなかった。尖閣諸島がわが領土であるのは明白なのに、中国は日本に対して、猛々しく「賠償」を要求している。
中国は日本をいっそう、侮ることとなろう。かつて中国は長いあいだにわたって、「アジアの病人」と呼ばれたが、今や日本が「アジアの病人」となっている。

 アメリカは中国の「神聖な領土」であるはずの台湾に防衛兵器を供給して、万一の場合には台湾関係法を適用して、台湾を武力を用いて守るといっている。にもかかわらず、中国はアメリカに礼を尽している。私たちには、傍若無人に振舞う。

 もう一つ情けないのは、九月二十三日にクリントン国務長官が前原外相とニューヨークで会談した時に、「尖閣諸島について日米安保条約が適用される」と述べたのを、政府から、与野党、マスコミまで、あげて愁眉をひらいて、喜んだことだった。外国に守ってもらわねば、自力で何もできないし、しようともしないのは、恥かしい。
 これ以上、防衛予算を削減してはなるまい。
加瀬英明事務所