日本は、本気で東南アジアから看護師を日本に移住させたいのでしょうか?
EPA看護師:国家試験に揺れる医療現場(上) 候補者たちは今
政府がインドネシアと経済連携協定(EPA)を締結し、同国の看護師候補者が初来日してから今年8月で丸2年を迎えた。EPAに基づいて日本に滞在している候補者の数は、インドネシア人とフィリピン人を合わせて429人に上る(4月1日現在)。彼らは3年という短い期間で、日本の看護師国家試験に合格しなければならないが、これまでに合格した候補者はわずか3人と全体の1%にも満たない。初年度にインドネシアから来日した94人は、来年2月の試験がラストチャンスとなる。候補者たちは今、何を思っているのか。そして、医療現場は―。受け入れ先となっている病院を取材した。
栃木県足利市にある足利赤十字病院。集中治療室(ICU)で働くフィリピン人女性看護師のエヴァー・ラリンさん(34)は今年3月、来日からわずか半年余りで一発合格を果たした。フィリピン人合格者の第1号となったエヴァーさんは、「幸せでした」と笑顔で振り返る。初受験で合格した候補者は、これまでに彼女ただ一人。母国とサウジアラビアの病院で10年以上のキャリアを積み、救急治療室(ER)で看護師長を務めた経験もあるため、4月にICUへ配属となった。
「いずれ医療現場に国際化の波は訪れる。職員がそれに備えるきっかけになると考えた」。同病院の小松本悟院長は、受け入れを決めた理由をそう話す。同病院では8年前から、医学部を志望する英国人留学生を受け入れており、英語が堪能な職員もいるなど、バックアップ体制は万全だった。さらに、医師が隣接する短大の看護学科の講師を務めているため、試験問題に精通していることも大きかったという。小松本院長は、「病院全体で受け入れ、きちんとした教育を行えば、合格させることは可能だ」と強調した。
ICU配属から4か月余り。同僚の看護師は「優しいし、よく気が付く。介助などはもう一人で大丈夫」と太鼓判を押すが、やはり言葉の壁は厚い。これまでの経験があるとはいえ、患者の容体が安定した場合を除いて、基本的に日本人の看護師が付き添う。「日本語だけが問題。看護のことは分かっているのに…」。エヴァーさんは、自分のキャリアを十分に生かせないことにジレンマを感じている。
最大の問題は看護記録だ。まだ書く機会はないが、エヴァーさんは5月から、実際の記録をノートに書き写し、日本人の看護師に添削してもらっている。書き手によって変わるクセ字に慣れるためだ。最初は悪戦苦闘したエヴァーさんだったが、最近では赤字の修正の数も減ってきているという。
前出の看護師は、「電子カルテになれば、状況は変わると思う」と、電子化に期待を寄せる。その一方で、こうつぶやいた。「(ICU後の経過観察のための)HCU(高度治療室)で働くのは厳しいかもしれない」
■最後の試験を前に、募る焦りと不安
東京都八王子市にある永生病院。この病院では、インドネシア人とフィリピン人の看護師候補者合わせて6人を受け入れている。
2年前に来日したインドネシア人女性看護師のデウィ・セップチヤスリニさん(25)は、今年2月の国家試験で合格点にわずかに届かず、またしても涙をのんだ。合格したインドネシア人のリア・アグスティナさんは高校時代からの友人。その悔しさはひとしおだった。
デウィさんは、名門インドネシア大を卒業後、首都ジャカルタ市内の病院の内科病棟で経験を積んだエリート。このため、関係者の期待も大きく、現在は彼女を病棟勤務から外し、都内の予備校に通わせるなどの特別メニューを組んでいる。
同病院のリハビリ病棟で働くインドネシア人男性看護師のイルファン・ボラギンアギンさん(34)も、2年前に来日した候補者の一人だ。現在、看護助手として患者のおむつの交換やベッドメイキングなどを行っている。
イルファンさんは大学卒業後、ジャカルタ市内の病院に7年間勤務した。世界保健機関(WHO)の最新の統計によると、インドネシアの平均寿命は67歳(123位)。国内のリハビリテーション病棟もまだ少ないという。イルファンさんは「これからインドネシアもリハビリの時代が来る。(それに備えて)日本で勉強したかった」と、来日の理由を話す。
来年2月の国家試験が近づくにつれ、二人の焦りと不安は募る。「漢字の勉強が大変。来年駄目だったら、また申請して日本に来る」とイルファンさん。一方のデウィさんは、「(インドネシア人の候補者)二人が合格したのだから、私たちも頑張れば受かる」と合格を誓った。
同病院の研修担当者は、「もともとの知識がどれくらいなのか。母国でどのような勉強をしてきたのかが分からない」と指導上の不安を口にしながらも、「とにかく体調を崩さないよう、今は健康面に気を使うだけ」と、候補者たちを見守っている。
( 2010年08月07日 14:00 キャリアブレイン )
EPA看護師:国家試験に揺れる医療現場(下) 振り仮名は“特効薬”か
厚生労働省は6月下旬、看護師国家試験で使用する用語を見直すための有識者検討チームを設置し、難解な専門用語に注釈を付けたり、漢字にルビを振ったりすることなどの検討に入った。検討結果は来年2月の試験問題に反映させる方針で、次回がラストチャンスとなる第一陣のインドネシア人候補者に配慮した形だ。しかし、候補者を受け入れている病院の関係者や有識者などからは、そうした対応の効果を疑問視する声もある。また、試験問題に手を加えること自体、本末転倒との見方も強い。一方、当の候補者たちは、不合格で帰国した際の現地での受験を求めている。
【関連記事】
EPA看護師:国家試験に揺れる医療現場(上) 候補者たちは今
看護師国試の用語見直し、「医療者共通の課題に」―日看協
「現地で受験認めて!」―インドネシア人看護師が陳情
EPA看護師の専門用語への対応で検討チーム―厚労省
EPAに基づく受け入れで改善を―東京都が厚労省に要望
「もう時間が無い。どの参考書が1番いいのか教えてほしい」―。候補者をあっせんする国際厚生事業団が6月中旬、受け入れ先の病院関係者を対象に東京都内で開いたガイダンス。インドネシア人候補者の第一陣の受け入れ先からは、こうした悲痛な声が聞こえた。終了後、ガイダンスを担当した予備校講師の前には名刺交換の列。講師の話では、病院から個別に相談があるという。
ある病院関係者は、「受け入れ先の病院も少し疲れている。(次の試験が)最後だから頑張ろうという思いもある」と明かし、こう続けた。「次も落ちたら、(3年間の)病院の経費がすべて無駄になる。問題をいじることに意味があるのか」
一方、6人の看護師候補者を受け入れている永生病院(東京)の宮澤美代子相談役は、「大変なのは最初から分かっていたはず。文句ばかり言うべきではない」と喝破(かっぱ)する。看護学校での修学や一定期間後の候補者の選抜など、EPA(経済連携協定)の枠組みを見直すとともに、インドネシア人の第一陣に対しては、試験時間の延長や振り仮名などの経過措置をとるべきとの考えだ。
■試験問題への対応に賛否両論
「(母国で)家族と一緒に生活しながらトライしたい」。7月3日に東京都内で開かれた、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者を支援するボランティア組織「ガルーダ・サポーターズ」の定期総会で、インドネシア人の第一陣の看護師候補者ら6人はそう訴えた。その中には、3月に合格したリア・アグスティナさんとヤレド・フェブリアン・フェルナンデスさんの姿もあった。
現行の制度では、滞在期間中の3回の受験で合格できなかった場合、再申請することも可能だが、受験地は日本国内のみ。受験のために再び来日するにしても、2週間の滞在費用で現地の年収の約半分に相当するという。6人の陳情は、不合格となって帰国した場合の現地での受験を求めたものだ。「その方が日本での経験も無駄にならない」。候補者の一人はそう話した。
一方、注釈や振り仮名など試験問題への対応をめぐっては、候補者の中でも意見が分かれている。あるインドネシア人の第一陣の候補者は、「外国人と日本人の壁はよくない。(合格後の)仕事は日本人と同じ。もし日本人用と外国人用の二つの試験があれば、日本人用の試験を取る」と、外国人を特別視することに反対の立場だ。
別の第一陣の候補者は、「音読み、訓読み…。とにかく漢字は大変」と訴える。あるフィリピン人の候補者も、「(滞在期間)3年では短い。振り仮名はヘルプ(助け)になる」と強調した。
■用語見直しは「医療界全体で行うべき」
医療界では、医学・看護用語の見直しを患者満足度の向上につなげるべきだとする考えが強い。日本看護協会の小川忍常任理事は、「より患者さんに理解しやすくするために、専門用語を見直そうという話なら分かるが、それは医療界全体として取り組むべきだ。EPAのためにやるのはおかしい」と、国の対応に疑問を投げ掛ける。
インドネシア人の看護師候補者を対象に、国試対策の講師をしたこともある獨協医科大看護学部の日下修一准教授は、「小学1年生の教科書に載っている言葉を彼らに教えたことがあるが、その時点でつまずいた。それは基本的な言葉を知らない、学んでないからだ。彼らにとっては、易しい言葉も『褥瘡(じょくそう)』のような難しい言葉も、変わらない」と、振り仮名の効果に懐疑的だ。むしろ、日本と、インドシア、フィリピン両国の看護観の違いを問題視する。
日下准教授によると、両国では急性期看護が主流で、多くの場合、看護師は医師のサポートをする「診療の補助」を担っているという。「日本では『療養上の世話』が中心となっているのが現実だが、彼らはそれをあまり看護ではないと思っている」。両国では、通常シーツ交換や排泄ケアなどを家族が行うため、受け入れ先でそれらの仕事を頼まれた候補者が怒って帰国したケースもあるという。「受け入れ施設のほとんどは慢性期の病院。来日前の説明も不足している」と、候補者と受け入れ側の“ミスマッチ”を指摘した。
■看護師候補者は「カルロス・ゴーン」
一方、業務経験や高い専門知識を持つ高度人材であることから、候補者の専門性を積極的に生かすべきとの声もある。
来日後の日本語研修を担当する海外技術者研修協会の春原憲一郎・日本語教育センター長は、彼らを日産自動車を業績回復に導いた「カルロス・ゴーン」になぞらえる。「即戦力受け入れのスキームであるべきなのに、(ゼロから3年以内に合格という)育成型のスキームを使っているからボタンの掛け違いが起きている。この制度的なねじれを正さない限り、彼らも受け入れ側も幸せになれないのではないか」
■ ■ ■
「日本との関係が悪化する」「このまま帰国させると国際的な非難を浴びる」「日本人でも読めない難解な漢字を覚えさせるのは酷だ」…。大手メディアでは、こうした“同情論”が目立つが、外国人看護師の受け入れが日本の医療の質の向上につながるのか、という論点が抜け落ちているように感じる。インドネシア人とフィリピン人の候補者の中には、10年以上の経験を持つ人材も多いが、看護師免許を相互認証とせず、日本の国家試験の合格を義務付けたのに、「受からせる試験」で患者を納得させることができるのだろうか。
「ダブルスタンダードにはしない」。厚労省の足立信也政務官はキャリアブレインの取材にこう答えた。一般の受験者と候補者の試験はあくまで同一とし、難解な単語を分かりやすい表現に置き換える。注釈を英語にする可能性も否定しなかったが、「試験のレベルを落とすつもりはない」とも強調した。厚労省の用語見直しの方針は、月内にも決まる。
(この連載は編集部の敦賀陽平が担当しました)
( 2010年08月08日 14:00 キャリアブレイン )
~~~~~~
研修生制度のように、日本に長居はさせないが、
出稼ぎのチャンスを与えるというシステムの延長のような気がする。
若い人に働きに来てほしいが、長居は困る。
それだったら、受かるはずがない難しいテストを
受けさせて、本当に日本語が日本人並みに上手な
エキスパートだけ受け入れるだけでいいと思う。
もしも、本気でイスラム教徒が多いインドネシア人や
マレーシア人を受け入れるつもりなら、
最初から難しいテストなんか設けないと思う。
フィリピン人でも、イスラム教徒が多い地域もあるし、
イスラム教徒が日本に増えると、嫌でも
イスラム過激派も、日本に紛れ込んでくる。
過激派と穏健派の違いなんて、日本人には
わからないと思う。穏健でリベラル、または
世俗的なイスラム教徒が、ある日を境に
過激派になって自爆テロに走るのだ。
イスラムの過激な指導者がひとりいれば、
過激派の人口は、じわじわと増えていく。
イスラム教徒が日本に増えてもいいじゃないと言う人も
いるけれど、イスラム教徒が増えた欧州の国々が
苦労している様を日本人は無視している。
人のフリみて我がフリ直せと言うことわざがある。
外国の苦労を見ながら、同じことをするのは、
おばかさん。
おばかさんが日本の政治家になったら、
たぶん、日本という国は存在しても、
中の民族が変わっていって、別の国になってしまう。
エジプトも、昔は、違う民族がいたのに、
今では、イスラム系の民族ばかりだ。