中国は、ロシアのことを「ただの資源供給国」として見下している | 日本のお姉さん

中国は、ロシアのことを「ただの資源供給国」として見下している

ロシア政治経済ジャーナル No.663
2010/7/18号
では、本題。

私は今年に入ってから、何度も「08年と10年は全然違う時代」と書いてきました。
時間が経つに連れ、そのことを証明する事実が出てきています。


これまでのポイントを簡単にあげておきましょう。


1、中国とロシアは05~08年、一体化して「アメリカ一極世界」を崩壊させてきた

2、08年9月にリーマン・ショック→アメリカ発「100年に1度の大不況」が起こり、「アメリカ一極世界」は崩壊した

3、世界の運営は、アメリカを中心とするG8ではなく、G20で行われるようになり、中ロ念願の「多極世界」が到来した

4、しかし、多極世界で中国は「G2」(米中)と称される勝ち組、ロシアは原油大暴落により負け組になった

5、ロシアは、同じ負け組のアメリカに接近するようになった

6、それで、アメリカ主導の「イラン制裁」に同意した

7、国連安保理常任理事国 米英仏ロが「制裁支持」で一体化する中、国際的孤立を恐れる中国も、最後には「制裁支持」にまわ
った


これを読んで、「何のこっちゃさっぱりわからん」という、新規読者
の皆さま。

是非、こちらをご一読ください。


http://archive.mag2.com/0000012950/20100618171654000.html
【イラン問題でわかる世界情勢の変化~崩壊する多極主義陣営】

そして、こちらも↓
http://archive.mag2.com/0000012950/20100621160826000.html
【イラン問題でわかるロシアの変心~崩壊する多極主義陣営2】


今回は、米ロ関係がさらに改善しているという事実、そこから何がわかるか?というお話。


▼メドベージェフのアメリカ訪問

6月10日、アメリカは大きな外交的勝利をおさめました。
そう、国連安保理でイラン追加制裁決議が採択されたのです。


<イラン追加制裁決議を採択=3カ国が棄権・反対─安保理

6月10日0時26分配信 時事通信

 【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は9日午前(日本時間10日未明)、公式会合を開き、米国などが提出した対イラン追加制裁
決議案を賛成12、反対2、棄権1の賛成多数で採択した。

非常任理事国のブラジル、トルコが反対、レバノンが棄権に回った。>



ブラジル、トルコは反対したものの、ロシア、中国が制裁を支持したのは大きな勝利。


アメリカ一極主義 対 中ロ多極主義 の争いがつづいていた08年までは考えられなかったことです。



ロシア側から見ると、「アメリカに恩を売った」形。

ブッシュ‐プーチン時代、「米ロ新冷戦」とよばれ、最悪になった両国関係。

しかし、オバマ‐メドベージェフという新世代の登場により、徐々に改善にむかってきた。

「雪解けムード」が漂う中、メドベージェフはアメリカにむかいます。

まず訪れたのは、シリコンバレーでした。



<<露大統領>米でITの先端企業視察

6月24日10時38分配信 毎日新聞

 【ロサンゼルス吉富裕倫】訪米中のロシアのメドベージェフ大統領は23日、カリフォルニア州のシリコンバレーでIT(情報技術)関
連の先端企業を視察した。>

メドベージェフは、なぜこの場所を、まっさきに訪れたのでしょうか?


08年9月のリーマン・ショックで、原油価格は140ドルから30ドル台まで大暴落した。

これがロシア経済を直撃した。

同国のGPDは08年5.4%だったのが、09年はマイナス8%。

プーチンとメドベージェフは、ロシア経済の脆弱性を思い知られたのです。

http://archive.mag2.com/0000012950/20100621160826000.html
【イラン問題でわかるロシアの変心~崩壊する多極主義陣営2】

で、こんな風に書きました。

【引用ここから▼】

<しかし、今回の危機でメドベージェフ・プーチンは、ロシア経済の脆弱性を嫌というほど思い知らされた。

で、どうするの?


「資源依存経済脱却」

「経済の多角化・近代化」


今までお題目にすぎなかったこれらの政策に、取り組む必要を痛感した。

しかし、ロシアには経済を近代化する金も技術もない。

結局、「欧米との関係を改善し、投資を呼び込むしかない!」という結論に達したのです。

(中国は、ロシアのことを「ただの資源供給国」として見下している)


最近まで行われていた「サンクトペテルブルグ経済フォーラム」で、メドベージェフは、一生懸命

「ロシアは経済の近代化をすすめているので、是非投資して欲しい」と呼びかけていました。>

【引用ここまで▲】



もうおわかりでしょう。

ロシアは「資源だけ国家」から、「ハイテク国家」に生まれかわりたい。
メドベージェフは、シリコンバレーのIT企業に、「投資してください」とお願い営業にいったのです。

なぜかというと、メドベージェフは、モスクワ近郊に「ロシア版シリコンバレー」を作ろうとしている。


<ロシアはモスクワ近郊のスコルコボに先端産業を集めた

「ロシア版シリコンバレー」作りを進めている。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

“本家”のツイッター社を訪れた大統領は、簡易投稿サイト「ツイッター」に「クレムリンロシア」の名でアカウントを開設し、さっそく「シリコ
ンバレーの価値はコミュニケーションにある。

同様の環境をロシアに作りたい」などと発信した。>(同上)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「国が主導でシリコンバレーを作る・・・???」


ちょっと日本人には理解しがたい発想ですが。

まあ、うまくいくかどうかは別として、メドベージェフさんのシリコンバレー訪問の動機は、そういうことです。



そして、翌6月24日、メドベージェフとオバマさんは、仲良くハンバーガー屋にむかいました。

<オバマ米大統領、ロシア大統領とハンバーガー店で昼食
6月25日12時6分配信 ロイター

 [アーリントン(米バージニア州) 24日 ロイター] オバマ米大統領は24日、米国を訪問中のロシアのメドベージェフ大統領
をハンバーガー店での昼食に招待した。

 ワシントン郊外のバーガー店「レイズ・ヘル・バーガー」を訪れた2人は、ワイシャツにネクタイ姿でテーブルに着き、ハンバー
ガーをほおばった。>


オバマさんの体型を見れば、どうみても「ハンバーガー好き」には思えません。
しかし、庶民に近いことをアピールするために、ハンバーガー屋に行くのでしょう。


そして、メドベージェフも楽しそう。
メドベージェフさんを見ていると、毎日のようにインターネットの話をし、自分でもネットを駆使している。

そして、ITの総本山アメリカへの強い憧れを感じます。

この方は、本当に「冷戦時代を知らない世代」なのでしょう。
冷戦時代、ドイツでせっせとスパイ活動をしていたプーチンさんとは明らかに違う。


さて、メドベージェフは、アメリカで多少の「外交的成果」をおさめました。


<米、露のWTO加盟を支持 首脳会談、9月末目指す 

6月26日7時56分配信 産経新聞

 【ワシントン=佐々木類】オバマ米大統領とロシアのメドベージェフ大統領は24日、ホワイトハウスで会談し、ロシアの9月末ま
での世界貿易機関(WTO)加盟に向け、米露間で交渉を急ぐことで一致した。

 オバマ大統領は会談後の共同記者会見で、ロシアのWTO加盟を支持する意向を示し、「ロシアのWTO加盟は、米露両国に
も世界経済にとっても好ましいことだ」と述べた。
加盟交渉の進捗(しんちょく)状況については、「90-95%の問題が解決済みで、残る難問は解決に向けて作業を進めると報告
を受けている」と明らかにした。>



ただ、これが「外交的勝利」といえるかは微妙なところ。
実際にアメリカがロシアのWTO加盟を支持するか、まだなんともい
えません。
ロシアの保守派からは、「アメリカはまたロシアをだますつもりだ!」
という意見が出ています。


(「また」というのはなんでしょうか?
たとえば、アメリカはソ連のゴルバチョフ大統領に、『NATOは東方に拡大しない』と約束していました。
しかし、実際はドンドン拡大している。等々)


何はともあれ、米ロ関係はゆっくりと改善しているように見えます。


▼米ロ、スパイを交換する

さて、アメリカ訪問をいい感じで終えたメドベージェフ。
しかし、オバマさんと一緒にハンバーガーを食べたそのわずか3日後、仰天ニュースが飛び込んできます。

アメリカ司法省は6月28日、「FBIがロシアのスパイ11人を逮捕した」と発表したのです。

これはいったいなんでしょうか?


「米ロ関係が改善した時期にわざと逮捕した」としか思えません。
目的は、「米ロ関係を再び悪化させること」となるでしょう。

当然のことながら、アメリカには「ロシアとの関係改善を快く思わない有力な勢力」があります。


この「スパイ事件」が大騒ぎになり、米ロ関係は再び険悪になるのかと思えました。
ところが、この問題は大騒ぎにならなかった。

騒がれたのは、美人スパイ「アンナ・チャップマン」さんの外見。

美人スパイアンナ・チャップマンの写真はこちら↓
http://www.nypost.com/p/news/national/sexy_russian_spy_anna_chapman_2Zmmc1rSqu2H71x3v7BibM


結局この問題は、「アメリカとロシアがスパイを交換する」ということで、アッという間に解決します。


<10対4 ウィーンでスパイ交換 米露、冷戦後最大規模

7月10日7時56分配信 産経新聞

 【ニューヨーク=松尾理也、モスクワ=遠藤良介】ロシアのスパイ11人が米司法当局に訴追された事件で、米露両国政府は9日、逃亡中の1人を除く「美貌(びぼう)の女スパイ」アンナ・チャップマン(28)ら10被告と、欧米のスパイとしてロシアで服役していた4人をウィーンの空港で交換した。

今回のスパイ交換は冷戦終結後では最大規模となる。>


アメリカでのスパイ摘発の動機がどうであれ、米ロ両国に「関係を壊したくない」という意志があることは明白でしょう。


▼メドベージェフ、さらに欧米に歩み寄り
スパイ問題を無難に乗り切ったメドベージェフ。
今度は、欧米を大喜びさせる発言をします。

なんと、「イランの核兵器保有は近い!」と宣言したのです。


<イランの核兵器保有 露大統領「近い」

7月13日7時56分配信 産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領は12日、各国に駐在する大使や外務省幹部を前に演説し、「イランは核兵器製造が可能な技術の保有に近づいている」と警告した。

インタファクス通信などが伝えた。ロシアがイランによる核兵器保有の可能性を直接的に指摘するのは珍しく、イラン問題をめぐって欧米との協調を深める意思表示と受け取れる。>


これは、ロシアが既に「イランを守る役割を放棄しつつある」ことを示す有力な証拠です。

< ロシアは従来、友好国イランとの関係を対米カードとも考え、イランの核開発疑惑には欧米よりも柔軟な姿勢を見せていた。

しかし、国連安全保障理事会が6月、イラン追加制裁決議を採択した際には、露、イラン両国指導部が互いを激しく非難し合うなどしている。>(同上)



これが「演技」である証拠は出てきていません。


「ロシアは、イランよりも欧米との関係改善を選んだ」


と見るのが自然でしょう。


このように米ロ関係は改善していますが、特にロシア側が熱心に働きかけているようです。


▼米ロ関係改善からみえる、世界的時流の変化

さて、米ロ関係が改善している事実から、何がわかるのでしょうか?
繰り返しになりますが、世界情勢は08年と10年で全然変わったということです。


08年までは、アメリカ一極世界をぶち壊すために、
独仏を中心とするEU、ロシア、中国が一体化していました。
しかし、リーマンショックでアメリカ一極世界は崩壊した。

つまり、「アメリカ一極世界打倒」のために構築された「多極主義陣営」も、その存在意義がなくなってしまったのです。


そして、今度は米中G2時代が到来した。


すべての国が、現在「アメリカにつくのが得かな?」「中国につくのが得かな?」と考えています。



日本も欧州もインドもロシアも考えている。



時流は、ゆっくりとですが、アメリカ 対 中国 の方に動きつつあります。


(アメリカ政府は、中国から一番多く金を借りているので、まだその自覚がない。
そして、米民主党には「親中派」が多い。)



で、勝つのはどっち?

これは、いわゆる「その他の極」(日本・欧州・インド・ロシア等)がどっちにつくかできまるのです。


で、その帰結は?

ここでは長くなりすぎますので、書ききれません。

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行く道を明確に示します。

日本は、なぜ第1次大戦・冷戦に勝利し、2次大戦で負けたのか?
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その法則性とは?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


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(おわり)

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★小山さまからのおたより

とりあえずは、民主党が議席を減らし自民党が増やしたことで何とか一息つけそうな状況ですね。

ただ、「外国人参政権」に限ってみてみれば、賛成の人がまだまだ多いのではないでしょうか?

=========
      外国人参政権付与法案の賛否で見た結果


賛成 135   反対 101

【外国人参政権賛成】
公明 19
共産 6
社民 4
民主 106(反対の人も少しいる)

【外国人参政権反対】
自民 84
みんな 11
国民 3
たちあがれ日本 3

【?】
改革 2 (賛成に近いと思われる?)
無所属 3
諸派  1

===
ねじれ現象が起きてしまったことで、また衆議院でも与党で3分の2の議席を確保していないことからすると、これからしばらくは法案ごとの超党派での決議をしていくのでは?と思われます。

そうなると、もし、小沢さん(および小沢一派)が9月の民主党代表戦に出て再び主導権を牛耳ると、公明党などとこの件で合意して決めてしまうということも十分考えられます。

みんなの党がキーマンになるなどという報道はありますが、基本的に民主党とは相容れないでしょう。

それよりも、はるかに公明党の考え方と民主党の考え方は近い。

民主党が大敗したことで、小沢復活のチャンスを作ってしまった。

これは、逆に怖いことです。

ある意味、選挙に負けて、代表戦に担がれるチャンスを得たということになったのでは?

小沢がいなかったから選挙に勝てなかったという意見まで出ています。

(本当はあんたの担いだ鳩山が日本中世界中で意味不明の行動をとったからこけたのに・・・)

与党とか野党とかそういう見方で選挙を見ればたしかに万歳三唱なのかもしれませんが、試合巧者の小沢が前面に出てくることでまた、日本の未来に暗雲が出てきたと私は思っています。

今後の動きに気をつけていかないといけないなと痛感しております。


▼編集後記へ
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★編集後記

モスクワでは、歴史的猛暑がつづいています。
昨日は35度だったとか。
モスクワは、もはや日本と同じくらいの暑さになっているようです。

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