中国労働者、機械と交代 元高容認・賃上げ 外資が対抗策 (1/3ページ)
2010.6.23 05:00
賃上げをめぐり混乱が続くホンダロックの工場。外資系メーカーにとっては工場の機械化が緊急課題だ=広東省(ブルームバーグ)【拡大】
人民元改革による元相場の上昇や最低賃金基準の引き上げ、従業員のストライキを受け、中国で操業する外資系メーカーの工場が競争力を失いつつある。外資系各社は対抗策として、労働力への依存を引き下げようと、生産ラインの機械化に全力を挙げている。
≪日産「撤退はない」≫
香港貿易発展局の調査によると、世界の工場として知られる中国南部の珠江デルタ地域の賃金は過去6カ月で17%上昇した。またモルガン・スタンレーは今月、中国の人件費の対国内総生産(GDP)比率が現在の15%から、今後10年で30%に増加する可能性があるとの試算を発表した。
中国に生産拠点を置く海外企業に助言を行うインファクト・グローバル・パートナーズのマネジングディレクター、イアン・スポールディング氏は「工場は低コストで多くを製造する方法を真剣に検討しなければならない。競争力を維持するために生産性強化の取り組みを始める必要がある」と話した。
コードレス電話機製造、香港のVテック・ホールディングス(偉易達集団)は地方政府による最低賃金基準の引き上げを受け、5月に約2万人の従業員を擁する中国工場の賃金を約20%引き上げると発表した。クレディ・スイスは賃上げにより同社の最終利益が5%減少する可能性があるとの予測をまとめた。
日産自動車も人件費増加に対応し、生産性向上を目指している。中国での合弁会社、東風汽車が広東省広州市で建設している新工場には、従来の工場より多くの機械を導入する予定だ。同社の広報担当、米川満氏は「中国工場の自動化率は上昇しているが、日本工場と比べるとまだ低い」と話した。
同社の志賀俊之最高執行責任者(COO)は「中国での生産性を高める必要がある」とした上で、「人件費が高いという理由だけで、中国から撤退することはない」と述べた。
≪後を絶たぬ工場スト≫
今年に入って少なくとも10人の従業員が自殺したことが明らかになった台湾の鴻海精密工業の中国子会社、富士康国際(フォックスコン)は最低賃金労働者の給与を2倍に引き上げることを決定した。同社の郭台銘会長は8日に、自動化を推進して労働能率を上げることで、コストの上昇分を吸収することができると話した。
ホンダの部品子会社ホンダロック(広東州中山市)では、9日に労働者が賃上げを求めストに突入。15日に中断したが、賃金交渉は続いている。トヨタ自動車の中国・広州の工場も、デンソーグループの現地部品工場がストライキで操業を停止していることを受け、22日朝から稼働を停止するなどストによる工場の稼働停止が後を絶たない。
中国の5月の消費者物価指数は過去19カ月で最大の前年同月比3.1%上昇を記録するなどインフレは加速しており賃上げを求める従業員の声は切実だ。
ホンダロックで働く男性(40)は「われわれの経済的負担は非常に大きい。ここで起きたことが、中国全土の労働者に影響を与えることを期待している」と話した。(ブルームバーグ Mark Lee)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100623/mcb1006230504007-n1.htm