トルシエ氏“奇策”を提言「オランダ戦は“捨てろ”」 | 日本のお姉さん

トルシエ氏“奇策”を提言「オランダ戦は“捨てろ”」

おもしろかったからコピペしたけど、読まなくていいです。↓

トルシエ氏“奇策”を提言「オランダ戦は“捨てろ”」
6月16日 12時11分配信(スポニチアネックス)
 【トルシエ氏徹底分析(2)】岡田武史監督(53)はW杯という大舞台で初めて本田1トップという布陣を敷いた。失敗すれば批判にさらされたはずの作戦だが、トルシエ氏は指揮官の綿密な計画を見抜いた。そして次戦オランダ戦での新たなる“奇策”を提言した。

 本田は本来、アタッカーではない。カメルーン戦の4―3―2―1は実験的な布陣だった。では岡田監督は何をしようとしたのか。カメルーン相手にいかに日本代表が力を発揮できるか、相手との力関係を配慮した上でメンバーを組んだのだ。

 強化試合を振り返ってもらいたい。善戦した5月30日のイングランド戦(●1―2)ではDF闘莉王の先制ゴールというアドバンテージを最後まで生かせなかった。一方、6月4日のコートジボワール戦(●0―2)は守備の厳格さに欠けた。強化試合から学んだことは守りの大切さだ。そこで岡田監督は、内容の良かったイングランド戦をベースに攻撃の選手を1人、ベンチに下げる道を選択した。FW岡崎慎司を下げ、松井を投入、そして中盤から本田を前に出す形となった。中盤をより守備的にし、勝ち点3を勝ち獲ったのだ。

 さて次戦は19日にオランダと対戦する。まず勝ち点3だけでは1次リーグを突破できない、それは意識すべきだろう。そしてオランダは日本よりはるかに経験があり、エベレストのような存在だ。勝つ確率は20%、ドローの確率が40%。しかも勝つためには100%以上の力を出し切ることが必要で、そんな戦い方をすれば、重要となる3戦目まで心身のスタミナが持たないだろう。

 私ならキーマンとなる松井、大久保、長谷部、本田の4人を休ませ、稲本、玉田、中村憲、岡崎を起用する。そしてカメルーン戦のように守備的に戦う。幸いDFラインはカメルーン戦でそれほど走らされなかった。阿部にも疲労は感じられないので、そのままでいい。うまくローテーションが組めるはずだ。オランダに勝つか、引き分ければ、1次リーグ突破は大きく近づくが、日本に勝てば1次リーグ突破が決定的となるオランダは必ず勝ちに来る。そのバランスを考えれば、24日のデンマーク戦にすべてを賭けるべきだ。ではオランダ戦はいかに戦うべきか、それは次回、19日のスポニチ紙面でお話ししよう。

 ◆フィリップ・トルシエ 1955年3月21日、パリ出身の55歳。93年からナイジェリア、ブルキナファソ、南アフリカなどアフリカ諸国の監督を歴任。卓越した手腕で白い呪(じゅ)術師の異名を持つ。98~02年に日本代表監督。02年W杯では「フラット3」という3バック布陣で日本を初の決勝トーナメントに導いた。その後もカタール、モロッコなど代表監督を歴任し、07年12月からJFL・FC琉球の総監督。現役時代のポジションはDF。http://southafrica2010.yahoo.co.jp/news/ndetail/20100616-00000003-spn_wcup-socc
岡田監督、次戦での先発入れ替えを示唆
南アフリカ合宿リポート 2010年6月15日
6月16日 6時27分配信

■中村憲、オランダ戦に意欲燃やす

練習で指示を出す岡田監督。オランダ戦では先発を入れ替えることも示唆
 サッカー日本代表は6月15日、ベースキャンプ地のジョージで練習を行った。14日のカメルーン戦で先発した11選手はホテルで静養し、それ以外の選手が午後4時から約1時間半、汗を流した。

 トレーニングメニューはウオーミングアップ、ビルドアップからのシュートと続き、3対3、7対7のゲーム形式の練習を実施。その後、自主練習を行って終了した。カメルーン戦での勝利を受け控え選手も刺激を受けた様子で、精力的に練習に取り組んだ。
 特に意欲を燃やすのは、MF中村憲剛だ。カメルーン戦では最後まで出番がなかったが、「勝ち点3を取ろうとしていたので、それが達成できて良かった。勝つことで勢いが出るし、次で勝ち点を取らないといけないのはみんな分かっている」と語気を強め、19日のオランダ戦に向けて入念に準備をしていた。
 また、一時は岡田ジャパンでレギュラーを張ったFW玉田圭司は、「オランダはチームとしてすごくまとまっている。あっちが主導権を握ることが多くなると思うし、そういうところはやらせて、自分たちのチャンスを待つ形になると思う」とコメント。玉田のように試合のテンポを変えられる選手は貴重で、本番で切り札的に起用される可能性は十分ある。

 この日、岡田武史監督は、あらためてオランダ戦で先発メンバーの入れ替えを行うことを示唆。カメルーン戦後の記者会見でも予告していた通り、オランダの2枚のセンターバックに対して積極的にプレッシャーをかけていく戦術を採用する予定で、メンバーもハードワークに耐えられる選手を積極的に起用していくもようだ。勝っている時はメンバーを入れ替えないことが定石だが、指揮官はあくまで自分の考えを貫き通す構え。オランダ戦のスコアについては「次、勝つなら1対0.5」と独特の言い回しで接戦での勝利を予告した。

 カメルーン戦後は試合会場のブルームフォンテーンに宿泊せず、チャーター機でジョージに戻っており、主力組は十分に休養を取った様子。16日からは再び全体練習が始まる見通しで、オランダ戦に向けた戦術練習に着手することになりそうだ。
<了>
http://southafrica2010.yahoo.co.jp/news/cdetail/201006160001-ism
ゼムノビッチ氏「オランダ戦はメンバーを変更すべき」
日本代表・カメルーン戦レビュー
6月15日 16時00分配信
スポーツナビ(スポーツナビ)
ゼムノビッチ氏は本田のワントップが勝利へ導いたと評価する 【ロイター】

 サッカー日本代表は14日、2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会の初戦となるカメルーン戦に臨み、本田圭佑のゴールで1-0の勝利を収めた。
 元清水エスパルス監督で日本サッカーにも精通するズドラヴコ・ゼムノビッチ氏に、カメルーン戦の印象、そして19日のオランダ戦への戦い方などをうかがった。

■本田のワントップは評価すべきシステム
 まずは勝つことができて良かったです。強化試合ではなかなか良い試合ができませんでしたので、多くの反省点を次に生かすという意味では、カメルーン戦では良い答えが出ていました。大変意味のある勝利でした。
 岡田監督の選手選考は素晴らしかったですね。彼は初戦にいわゆる“戦える選手”をぶつけていきました。カメルーン相手に良い意味でリスペクトをしない選手。スター選手に物おじすることなく、自分たちのサッカーを貫き通した結果が1-0という勝利につながったと思います。
 本田や大久保らは、言葉は悪いかもしれませんが“傲慢(ごうまん)さ”を出していた。ポジティブな意味での傲慢さですね。真剣勝負の試合ではこれがすごく大切になってきます。これがカメルーン戦の勝利につながった大きなポイントですね。

 あとは今までパス、パス、パスというサッカーをやってきましたが、カメルーン戦では違いました。例えば本田、大久保、松井がボールを持ったらドリブルで果敢に仕掛ける動きが見られました。大事なポイントでファウルを誘って、相手の流れになりそうな時間帯になるのをうまく遮る。時間をうまく使うことは、以前の日本代表にはなかったことです。

 本田をワントップに据えるシステムは、選手に自分の役割を明確にさせる上でも評価できるものだと思います。本田はキープ力がある。だから、そこでタメができる。ほかの選手の動き出しやサポートがそこで生まれるんです。あとは前を向いてドリブル突破することができるのも、彼の大きな強みです。1対1、もしく1対2という状況でも強引に仕掛けることができますし、ボールを簡単に失わない体の強さもあります。
 大久保と松井に関しても、彼らの特長である突破力を生かすためにはとても良いシステムでした。例えば、後方からのサポートが少し遅くなっても、1人で仕掛けることができるので、相手にとっては大きな脅威になっていたと思います。

 守備に関しては、センターバックの中澤と闘莉王の集中力が最後まで途切れませんでしたね。ミスもなかった。それに、三角形の頂点である阿部のアンカーが機能していました。試合終盤、カメルーンがパワープレーに徹していた時間帯も、常に危ない場面を回避する働きをしていましたし、ロングボールを中澤や闘莉王が懸命に跳ね返していた場面でも、そのセカンドボールに対して高い集中力を見せていました。
 これはどのポジションにも言えることなんですが、守備的な選手を並べるのではなく、守備の意識が強い選手を並べることがとても大切なんです。もちろん守備能力があればベターですけどね。日本がW杯で戦うためには、この守備意識が高くないとなかなか勝利を手にすることが厳しい。また、GKの川島をはじめ、最終ラインの選手は声を出し合って集中力を維持していました。

 選手交代も良かったのではないでしょうか。岡田監督の明確な意図が表れていたと思います。相手が疲れている中、DFの背後を取る動きを得意とする岡崎の投入は効果的でした。矢野も良かったですね。終盤で1点をリードしている時間帯で、相手のセットプレー時には彼の高さが守備の点で生きる。また、運動量も豊富ですので、前線でのプレッシャーは日本代表に大きな効果を生み出していたと思います。最後にピッチを後にした長谷部は欧州でプレーしているためか、最後は体力的に厳しかった。重要なポジションであるために、フレッシュで動ける稲本を入れたことも評価すべきポイントです。

■決勝T進出の鍵はメンバー変更
 カメルーンはいわゆるゲームメーカー不在が響きましたね。攻撃の起点がなかった。だからどうしてもエトーに頼らざるを得ない。そこに長友というマンマークが強い選手がいて、ほぼ完ぺきに抑えられてしまったんです。このままではダメだと思ったのでしょう。ルグエン監督は(後半30分に)イドリスを投入したんです。彼は背が高く(190センチ)、ヘディングが強い選手です。ここからロングフィードが多くなってパワープレーのサッカーに変更したんですね。でも、実は日本はパワープレーの対応を得意としているんです。高校や大学サッカーではよく見られるプレーですから。逆にサイドからクロスを上げられる方がよほど怖かったはずです。

 決勝トーナメントに進出するためにはどうすればよいか。(第2戦の)オランダは確かに強いです。引き分けることさえ難しいかもしれない。そこで、わたしなら第3戦のデンマーク戦で勝ち点3を絶対に奪うために、オランダ戦で何人かメンバーを変えます。メンバーを「落とす」という意味ではありませんよ。チーム力が落ちるという表現は好ましくありませんから。
 まず、グループリーグ3試合全部を同じメンバーで戦うのは厳しい。特に試合会場は高地、低地、高地と続くわけですから、体力面での不安があります。回復が遅れる可能性もある。そこで(カメルーン戦で)負担がかかった選手を休ませるんです。
 今までレギュラーだった選手、例えば岡崎、中村俊輔、楢崎がスタメンに復帰することは何ら問題ではありません。そもそも、ベストメンバーとは何を意味するのかという話です。カメルーン戦で勝利したメンバーなのか。わたしにとって、ベストメンバーとは最もコンディションが優れている選手が11人そろっていることなんです。(カメルーン戦で)控えだった選手、出場しなかった選手が、オランダ戦に向けてベストコンディションに調整していくことが良いサッカーをするための重要なポイントだと思います。デンマーク戦を見据えてオランダ戦に臨むべきです。
<了>

■ズドラヴコ・ゼムノビッチ
1954年3月26日生まれ。セルビア出身。清水エスパルス監督時代には天皇杯とゼロックス・スーパーカップで優勝。その後はセルビアに帰国して監督業を続けるも再来日。現在は清水エスパルスや千葉県内でユース世代の育成に力を注ぐ
http://southafrica2010.yahoo.co.jp/news/cdetail/201006150008-spnavi


「侍に屈したライオン」、吹き荒れる監督批判
日本に敗れたカメルーン国内の反応
6月16日 11時40分配信

木村かや子(スポーツナビ)
■本田のゴールで「墓場の沈黙」

エトー(右)をサイドに配置して失敗するなど、ルグエン監督(左)への批判はすさまじい 【Photo:ロイター/アフロ】

 カメルーンの喜びと不安の入り混じった空気は、失望と怒りのそれに変わった。大会前から批判の声が強かったのだから、“不屈のライオン”(カメルーン代表の愛称)が、十分倒せる相手と見なされていた日本に、この上なくふがいないありさまで敗れた後、国民がいかに深く失望に沈み、その怒りがいかに激しく燃え上がったかは、想像がつくだろう。

 仲間とともに英雄の殊勲を祝おうと、ある電話会社の計らいでドゥアラ(ここはエトーが生まれ育った町でもある)の町中に備え付けられた大スクリーンの前に集った約7000人の住民たちは、試合前にお祭り騒ぎを繰り広げ、国歌演奏の際には選手たちとともに誇らしげに歌っていた。しかし、祝いの宴(うたげ)は39分(本田のゴールで日本が先制した時間)で終わる。地元の新聞は、その様子を「墓場の沈黙」という言葉で表現した。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間は「葬儀の終わりのようだった」という。

 彼らの失望は、単にカメルーンが負けたからという理由だけではなかった。雄々しくライオンの勇姿を期待していた国民たちは、最後の15分を除き、潤滑なプレーはもちろん、果敢さもチームスピリットも見せられなかった代表の姿にあぜんとしたのである。あるファンは「自分の目が信じられない。これが不屈のライオンだなんて……」とつぶやいた。それは、エトーの「カメルーンは優勝を目指すべき」という発言が大きく報道され、夢が膨らんでいた矢先のことだった。

■「ルグエンの無能さは前代未聞」
 無垢(むく)な一般国民が失望に打ちひしがれた一方で、ある程度のサッカー通のファンたちは怒りに走った。エースとしての働きを見せなかったエトーや、存在感のなかったマクーンへの批判も多かったが、何より、カメルーン代表のフランス人監督、ポール・ルグエンへの個人攻撃はすさまじいものがあった。

 大会前から、選手の起用法に批判が出ていたが、にもかかわらずルグエンが固執した4-3-3システムでは、カメルーンの選手たちが力を発揮できていなかった。実際、選手たちは試合の大半を通し路頭に迷っているかのような印象を与えたが、その様子を目にしたファンたちは、「ルグエンの頑固さが代表の潜在能力を台無しにした」と激怒。特にエトーをセンターフォワードで起用しなかったこと、またヘディングはうまいがドリブルがほとんどできないとされるウェボをサイドに配置したこと、またカメルーンで最も才能あるGKとされるカメニをプレーさせなかったことを猛烈に批判した。

 カメルーンで最も人気のあるサッカーサイト『カメフット』に寄稿したファンたちは、「まだ、ルグエンを首にするための4日間がある」と次々に解雇を要求。「ルグエンの無能さは前代未聞。主力のほとんどが、本来の役割ではないポジションでプレーしている」「彼はカメルーンサッカーの文化をまったく理解していない」「彼がなぜレンジャーズとパリ・サンジェルマンから追い出されたがよく分かった」「ルグエンはフランス人だから、カメルーンの行方のことなど大して気にしていないのだ」「やつはわが国の顔に泥を塗った」と歯に衣を着せない個人攻撃を仕掛けた。

 カメルーンの新聞は、一般ファンほどあからさまな罵倒(ばとう)はしなかったものの、ディフェンスの選手のポジショニングミスや、中盤の創造力の欠如、攻撃陣の機能不全を指摘しつつ、やはりルグエンの戦略的選択を酷評。前述の『カメフット』は、23人の招集メンバーから始まって、起用選手、システムなどの選択の過ちを挙げ、「彼のメッセージはまったく選手に伝わっていない」と切った。また、『カメライオン』という別のサイトは、試合翌日に「ルグエンの外れの采配(さいはい)」と題された原稿の中で、「相変わらず選手の選択とポジションを模索していたルグエンは、チームを敗戦に導いた」と語り、エトーをセンターに移すのに80分も待ったことをはじめ、ありとあらゆる戦術的ミスを並べ挙げた。

■反フランス感情までが高まりそうな勢い


エムボマは「日本のセンターバックが強固」と分析し、カメルーンの戦略の間違いを指摘した 【ロイター】

 一方、日本に関しては「グループEで最も弱いとされる相手に対し……」と、日本を格下とみなしていたことをほのめかしながらも、日本の組織力を「非の打ち所のない」という言葉でたたえた。『カメライオン』は、日本のパフォーマンスを「守備面で堅固、攻撃面で実現力があった」と表現。ちなみに、試合報道のタイトルとして最も多かったのは「不屈のライオン、日本の侍に屈服させられる」(『アフリカ・プレス』)というたぐいのものだった。カメルーン代表の愛称、不屈のライオン(Les Lions indomptables)に引っ掛け、「屈し
ないはずのライオンが日本に屈した」と皮肉ったわけである。どこも考えることは同じのようで、同様のタイトルが、フランスの『レキップ』紙も含め、少なくとも5媒体で使われていた。

 とはいえ、当然ながら現地の反応は日本を称賛することよりも、自チームの問題分析のに集中していた。南アフリカで取材にあたる『トリビューン・ダフリカ』のニジカム記者は「われわれは日本に敬意を払っていたし、決してなめてはいなかった。しかしこのグループの中で、日本は倒さねばならない第一の相手だったことは事実。特にこの試合、序盤は双方にミスがあり、お手上げと感じるほど日本が圧倒していたわけではなかっただけに、国民はいっそう歯がゆさを感じた」と語る。

「得点シーンでは、松井の正確なパス、そのワンチャンスを逃さなかった本田の冷静さと決定力は見事だったが、こちらのマークのミスもあり、また本当にワンチャンスだった。後半に(岡崎のシュートが)ゴールポストをたたいた場面があったが、これはGKハミドゥが相手FWの前にボールをこぼすというミスを犯したからだ。そして何より、われわれのチームのアタックが機能していなかった。エトーを擁しながらも、彼を下がらせたため、その力が活用されていない。エムビアのミドルシュートがクロスバーに阻まれ、ゴールが入らなかったのは大きな不運だったが、彼はDFだ」

 選手では、その期待の大きさゆえ、エトーがやり玉に挙がったが、それはルグエンが彼を4-4-2のセンターフォワードで起用していないせいだと見る向きも多い。また松井のクロスの場面で、大久保に釣られて中央に入り、本田をノーマークにしてしまったエムビアのミスも指摘されたが、彼は強化試合の多くでセンターバックとしてプレーし、そのポジションに定着したかに見えていた。それゆえ、適任者がおらず問題視されていた右サイドバックに突如移されたエムビアに、一瞬の錯覚が起きたとしてもそう不思議ではないという意見も出た。

 つまり、すべての批判はルグエンに立ち戻るのだ。『カメフット』のムルー・ムグナル記者は「日本戦の日、ルグエンは選手選択における入れ込み、ためらい、限界を露呈し、それがライオンたちの闘志を封印してしまった」と書いた。一般ファンの中には、ルグエンに「カメルーンはおろか、二度とアフリカ大陸に足を踏み入れるな」と毒づく者さえいる。果ては、ルグエンのみならず、彼を監督に選んだ協会会長も解雇しろという声も。ルグエンがフランス人であることから、反フランス感情までが高まりそうな勢いなのだ。

■エムボマ「カメルーンの戦略的チョイスは間違っていた」
 代表OBたちはどうだろうか。元カメルーン代表のスターで、フランス国籍も持ち、試合日はカメルーンと日本に精通する人物としてフランスのテレビ局『カナル・プリュス』の解説者を務めたパトリック・エムボマは、現地記者に意見を求められ、遠慮がちにこう分析していた。
「戦術やポジショニングなど、かなりのことに失望した。ルグエンはこのやり方でワールドカップ(W杯)予選を突破したので、その形で続けたことは非難できない。気になったのは、前半のカメルーンが日本の強みである(ディフェンスの)センターにロングボールを投げ込んでばかりいたことなんだ。日本の2人のセンターバック(中澤と闘莉王)は非常に強固だ。カメルーンの戦略的チョイスは間違っていたと思う」

 また、「テストを繰り返してきたのになぜ改善が見られないのか?」と聞かれたエムボマは「おそらく監督はテストをやりすぎたのではないか。いろいろな選手を試しすぎると、一貫性がなくなり、それゆえ選手は自分がやるべきことも、自信も見失ってしまう。今は、プレーを変えるという意味での小さな奇跡が必要だ。われわれには、舵(かじ)を正すための時間が4日ある。過去にテストのための多くの時間があったが、それが実りのないものだったことが、日本戦で明らかになった」と答えていた。

 一方、元カメルーン代表監督のジュレ・エヌヨンガは「日本選手はスピードがあり、潤滑にボールを回す能力を持つが、カメルーンだって非常に良い選手を擁している。残念ながら、わが代表は“チーム”ではなく、ただの選手の寄せ集めだった」と語る。「次の試合で第1戦で使ったシステムを使う意味はまったくない。われわれの伝統である4-4-2に戻るべきだ。スピードはなかったとしても、この形でならプレーを築くことができる」

 カメルーンは今、もうW杯が終わってしまったかのように意気消沈している。しかし、前向きな見解もないわけではない。敗戦から一夜明けた15日、『カメフット』は、ウェブサイト上で「ライオンは1つの戦いで敗れたが、まだ戦争に負けたわけではない。エムビアはポジショニングミスで本田をフリーにしてしまったが、クロスバーを直撃する見事なシュートを放った。最後の15分の彼らは勇敢だった」と国民の士気を煽ろうと努め、その上で「エトーがセンターにポジションを変えること、これはデンマーク戦の必須事項だ」と続けた。

 つまり、希望を保とうと努めている記者、OB、一般のファンまでもが、寄ってたかってチームのシステム、選手の選択やポジションを指摘しているのだが、ルグエンがそれに耳を傾けるか否かは別の話だ。いずれにせよ、本田の一発がルグエンとカメルーンの“結婚”に事実上の終止符を打ったことだけは、ほぼ間違いなさそうである。

<了>

木村かや子(きむらかやこ)

東京生まれ、湘南育ち。1986年、フェリス女学院大学国文科卒業後、雑誌社でスポーツ専門の取材記者として働き始め、95年にオーストラリア・シドニー支局に赴任。この年から、毎夏はるばるイタリアやイングランドに出向き、オーストラリア仕込みのイタリア語とオージー英語を使って、サッカー選手のインタビューを始める。遠方から欧州サッカーを担当し続けた後、2003年に同社ヨーロッパ通信員となり、文学以外でフランスに興味がなかったもののフランスへ。『週刊サッカーマガジン』(ベースボール・マガジン社)などで執筆中