トラック3台分の遺体ージャマイカ銃撃戦 | 日本のお姉さん

トラック3台分の遺体ージャマイカ銃撃戦

銃撃戦で市民ら60人死亡=警察とギャングの衝突拡大―ジャマイカ

5月26日8時16分配信 時事通信

 【サンパウロ時事】カリブ海の島国ジャマイカで25日、大物ギャング首領の拘束を阻止しようとするギャング組織と警察の間で銃撃戦が続発し、AFP通信は複数の病院筋の話として、一般市民を含む60人以上が死亡したと伝えた。乳児を含む多数の遺体がトラック3台に乗せられ、病院敷地内の安置所に搬送されたという。
 AFP通信によれば、ゴールディング首相は同日、「法を順守する無実の市民が銃撃戦に巻き込まれたことは遺憾だ」としながらも、首領逮捕による法秩序回復に全力を尽くす考えを示した。ただ、衝突が収まる気配はなく、死傷者数の増大が懸念される。 

 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
     平成22年(2010年)5月26日(水曜日)
           通巻2976号 

 ジャマイカ暴動の背景は麻薬ボス vs 米国
   治安悪化、麻薬取引のメッカ、親米政権の面従腹背ぶり
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 2010年5月24日にジャマイカの首都キングストンで発生したギャング団と警察との銃撃戦は、非常事態宣言のあとも断続しており、死者26名(AP,25日)、警官隊にも三名の犠牲。ついに軍が投入された模様だ。

 学校、企業は一斉に休みとなっており、旅行者には退去勧告が出されている。日本外務省は24日に首都のダウンタウンに近づかないよう「注意喚起」を発令。

 もともと、原因は米国にもある。
 09年に米国はジャマイカの麻薬王クリストファー・コーク(47歳)に逮捕状を出して、ジャマイカ政府に身柄の引き渡しを要求した。
ジャマイカのブルース・ゴールディング首相(労働党政権)は親米路線を掲げるも、米国に面従腹背、ちゃらんぽらんでコークの収監、米国への引き渡しを放置してきた。

ところが、あまりの強い要求に麻薬センターといわれる首都キングストンのスラム街を手入れ、いきなり銃撃戦となる。
 ジャマイカといえば、日本人が思い浮かべる印象はコーヒーとレゲィ音楽くらい?
 五輪の100メートル記録保持者は歴代、ジャマイカです。カモシカのようなバネに恵まれて走ることは得意なのがジャマイカ人の特徴。

 スラム街は麻薬王コークの牙城でもあり、表向きの日常生活で、かれは「慈善事業」を施して、雇用をひろげ、スラム街の英雄でもあり、したがって逮捕状など出ていても協力するはずがない。住民の多くは武装している。

 クリスト・ファーコークは別名ヂュダス・コーク、世界的な麻薬王の一人として知られる。
かれは父親が刑務所に収監中、火事で焼け死んだ。
この事故をコークは「権力の罠」と信じており、闇の世界に君臨する一方でジャマイカ政界の陰を担い、「労働党」に資金を流し、いわばアンタッチャブルな存在だった。

 ジャマイカの歴史をたどれば、1494年、コロンブスが発見したことにより近世が始まる。
奴隷貿易の中継地として栄え、1670年に英国植民地、1962年独立だが、大英連邦のメンバーであり、元首はエリザベス女王である。

 人口はわずか280万、秋田県ほどの面積しかない。流ちょうな英語を駆使するエリートは米国に留学し、米国で就労するため、祖国経済は疲弊するばかりである。


 ▲西のモンテゴ湾周辺は治安が保たれている様子

 脱線するが、007シリーズの第一作をご記憶だろうか? ジョーン・コネリー主演の『007は殺しの番号』は全編これ、ジャマイカが舞台。しかも原作のイアン・フレミングはジャマイカに住んでいた。

 世界から観光客を集めるモンテゴ・ベイは紺碧の空と美しい海、映画のロケ地にも最適、レゲィの世界的スーパー歌手ボブ・マーレイの生まれ故郷でもある。

 日本人観光客も多く、しかもボーキサイト、バナナ、ラム酒のほか、世界最大のブルーマウンテン・コーヒーの産地。UCCはキングストンに買い付け事務所を設置しているほど、じつは日本とのつながりが深い。

 1980年に親米のシアガ政権が誕生し、おりからカーターを破って保守革命が始まった米国のレーガン政権はカリブ海重視政策の基軸にジャマイカをテコ入れを決めた。
当時のシアガ首相は労働党、それまでは極左反米主義を掲げたマンレー(人民国家党)がジャマイカの政治を牛耳っていた。

だが米国のてこ入れがあってもジャマイカは貧困から抜け出せず、ほとんどの経済政策はうまくいかず、町に失業はあふれ、89年にふたたび反米マンレーの政権に移る。

 マンレーは人民国家党を率いるが、左翼思想を捨てて親米路線に転換し、爾後、この政権は首相の顔を変えながらも十八年間も継続した。
2007年にいまの労働党政権に復帰した。ゴールディング首相は表向き親米、裏では労働党の支持基盤であるスラム街、その経済を成立させている麻薬のボスとも裏面でつながっているとされる。

 ジャマイカは「人口わずか280万人だが、昨年だけでも殺人事件による犠牲が1660名という世界最悪の治安危険地域」(NYタイムズ、26日付け)。
NY,マイアミ空港などジャマイカからの便が到着すると厳重な麻薬チェックがある。


 ▲ジャマイカは第二のキューバとなるおそれもある

 余談。個人的なことを書く。
ジャマイカの帰り路、筆者もNY空港で麻薬密売と間違えられ、スーツケースなど別室で念入りに調べられた。
以後、通関のときはジャンバーをやめ、背広にネクタイと決めた。

1985年は国連がきめた国際青年年だった。ジャマイカでも世界大会が開催されることとなり、筆者は米国共和党の友人らに頼まれて、極東代表をやらされ(38歳でした)、二回、ジャマイカへ行った。

ラム酒はうまかったが、ブルーマウンテン・コーヒーはまずかった。それを言うと「客人、ここのコーヒーの大部分は日本へ空輸されています。残っているのはカスです」と回答があった。

同会議の日本、韓国、台湾のオルグも担当、韓国から六名、台湾から二十余名の代表団。日本からも結局、柔道親善演武やたこ揚げチームなど合計25名の代表団をジャマイカに派遣することとなった。

 さらに余談をつづけると、ジャマイカへは準備会と本会議のため二回渡航。キングストンのホテルに合計一週間ほどいたが、民度の低さに衝撃を受けた。
教育を受けていないので部屋の清掃の仕方もわからない従業員、備品をポケットに入れている。レストランでもあまりの要領の悪さ、頼んでからプールで一泳ぎしても注文した品物はこない。

 担当大臣はウォーキートーキーを持ち歩き、なんだか田舎の村長さん風情である。町は夜ともなるとゴーストタウン同然となり、焼かれたビルは廃墟。物騒な町だなぁという記憶がよみがえる。
 当時のシアガ首相にも面会し、日本から蹴鞠の土産を進呈すると、珍しいそうに手にしたが、ガードマンが爆弾検査処理するといった有様だった。

 結局、このおりの世界大会には日本代表に当時参議委員議員だった佐藤栄佐久(自民党青年局長だったと思う)、秘書役が後日麻生首相の秘書官となるM氏。しかもその後、佐藤議員は福島県知事へ転身され、スキャンダルに巻き込まれて失脚。あのときジャマイカで一緒に連凧をあげたりしたことは昨日の夢幻のごとし。

 閑話休題。
 ジャマイカ政府が麻薬王を逮捕できるかどうか、親米路線をはしって米国から多大の援助をとりつけたジャマイカの政治の今後が左右される。

 いたずらに米国に逆らうと、経済制裁を受けかねず、ジャマイカは第二のキューバとなるおそれもある。
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(読者の声1)ユーロ崩壊が真近に迫っているようですが、数ヶ月前のFinancial Timesにこんな寄稿がありました。
『Japan's mythical debt crisis』(日本が債務不履行に陥ると云う作り話)
www.ft.com/cms/s/.../8c72d612-3025-11df-8734-00144feabdc0,s01=1.html
その中で寄稿者曰く「私達は経済の仕組みを十分に理解していないんじゃないのか?」と。緊縮財政で経済を立て直すことしか頭に無い彼等西洋人も薄々気付き始めたようです。
でも、事の真相は解らない。
そういえば、今年の1月か2月だったか、イギリスが財源確保の為に増税を実施したところ、かえって景気が悪化し、財源確保がままならなかったと言うジレンマが毎日新聞でも報じられていました。
EU経済の建て直しがままならないまま、ギリシアの深刻なペテンぶりが発覚、域内の経済のみならず政治の混乱も引き起こし、もはやEUは解体寸前の域にまで差し掛かったように思えます。
EUがどのような『解体新書』を披露してくれるのか、私達はじっくりと高見の見物というわけにはいきませんね。我らが日本も売国政権が日本を必死で解体しようとしていますから。
   (マチェドニアン)


(宮崎正弘のコメント)ユーロは架空の通貨なのに、欧州には共同体幻想があって、主権を持たせながら通貨主権だけを各国が放棄してうまれた不思議な通貨です。
 ギリシアを除名するか、ドイツ自らがユーロから飛び出すか、しないと解決にはなりませんから、深刻な状況に突入したことだけは間違いないでしょう。

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(読者の声2)広東省の最貧困村 生徒300人の小学校にトイレなし。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月24日の記事から抜粋です。
http://japanese.china.org.cn/life/txt/2010-05/24/content_20106231.htm
 (引用開始)
『広東省西部、雷州市の東塘村、908世帯3957人が暮らしている。そのうち貧困ライン以下の世帯は468世帯2021人で、貧困率は51%以上(中国の30年前の水準)。
 東塘村で唯一の学校である東塘小学校は、2年前にやっと「セメント時代」に入った。
しかしこの小学校にはきちんとしたトイレがない。四方を囲った簡単な「トイレ」は屋根なしで、小用を足す時は排泄物が直接畑に流れていくが、もし大の場合は100メートル先の林に行って解決する必要があり、雨が降ると我慢しなければならない。
表面的には東塘村の中学校への進学率は100%だが、学生たちの入学年齢は非常に高く、8歳で小学校に上がるのはまだ早いほうで、中学校に入る時はほとんどの生徒が16歳以上だ。
これは、子供たちが早く学校に上がると、中学を卒業しても畑仕事ができないと村人たちが考えているためで、また東塘村の王南党支部書記によると東塘村にいる130人の中学生のうち、100人以上が中学校を卒業しないまま退学するだろうという。』
 (引用止め)。
 中国の中では経済的に豊かな広東省ですら田舎ではこれほど遅れているのですね。
内陸部の貧困地域などどれほど貧しいのか想像もできません。皇帝から共産党に政治は変われど、農民はあくまで収奪の対象でしかない実態がうかがえます。農村部から見たら上海万博など遠い外国の出来事と変わらないのでしょうね。
   (PB生)


(宮崎正弘のコメント)一生のうち、一度も北京も上海もみないという中国人も半数以上。自分がたまたま住んでいる省が、なんという省かも知らない。上海は外国と思っている農民が多い。


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(読者の声3)情けない日韓サッカー壮行試合(5月24日)でしたが、ブラジル出身のラモスは、日本に帰化して、日の丸大好きの男です。
彼が以下に言う言葉は、国旗を子供の頃から公式の場で見てもおらず、日の丸の下で団結する気持ちも教わらなかった戦後の日本人の堕ちていった奈落を実感させる言葉です。
まだ戦前世代が元気で教師もしていた時代はまだよかった…。
昭和の40年時代以降に、「戦後民主主義」という言葉が生まれ始めた時代以降に教育された世代は、国の重さが理解できない。ラモスはそういう歴史的経緯を知らないでしょうが、結果は理解しているのです。
彼のいう国の「プライド」を知っているのは、かつて日本が教育した韓国の若者であるという皮肉はいったい何を物語るのでしょうか?
ブラジル生まれの男から愛国心を教わる日本人とは一体なんでありましょうか。ほんとに日本は終わりになりますよ。ラモスを国会議員候補として立てようとしない自民党も先が見えています。
     (HT生、大田区)

(宮崎正弘のコメント)サッカーは興味がない分野なのでノーコメントです。しかし鞠けりゲームにも愛国心が必要なのでしょうか。 
      ○
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『朝日新聞がなくなる日』(ワック、945円)
『中国分裂 七つの理由』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ、1680円)
『絶望の大国、中国の真実』(石平氏との共著、980円。ワック文庫) 
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