チュウゴクの官僚たちは、たたき上げの有名人を潰して犠牲の山羊にする
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010年)5月20日(木曜日)
通巻2971号 (5月19日発行)
中国安売り電化製品トップだった「国美電気」はなぜ狙われたか
全土200都市に1350店舗から700のチェーン店へ転落した影で
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国美電気グループの社長、黄光裕は16歳のときに思い立ち、高校を中退して屑拾い稼業でこつこつと貯めた資金500元を元手に独立した。国美は英語名GOME(発音はグオメィ)。
かならず安売り店のチェーン化で成功するのだ、と。
国美の成功物語は次のように知られる。
最初、かれは内蒙古自治区へ偽ブランド商品などを担いで行商に往き、これがあたった。人々が欲しがる品物があり、しかも流通システムが悪いので、内蒙古では、いつでもモノは払底していた。
経済発展とともに中国人の所得が上がり、日本と同様に中産階級の購買力が急激に上昇するとヤマダ電機、ベスト電器、ビッグカメラ、LAOXなどのような日本型量販店が中国でも儲かるとの先見力が働いて、黄は「国美」を立ち上げたのだった。
国美はまずデルのコンピュータを売ることで有名になる。
電気製品の安売りからエネルギー、不動産、製薬業にも進出した。そして黄光裕は2004年に香港に上場を果たした。
過去五年間というもの、中国財閥ランキングで第一位が三回、『フォーブス』でも中国財閥第二位にランクされた。個人資産は6200億円(フォーブスは黄の個人資産を2500億円と見積もったが)。
全土で従業員四万人、海外にも進出する準備をしていた。ライバルは蘇寧電気である。
▲賄賂は文化、収賄が常識、なにか文句あるか
しかし共産党独裁の政治制度のもとで、民間人がビジネスに成功すると賄賂を欠かせない。賄賂こそは中国の文化である。
額がすくないと、権力は、この企業を横領するか、つぶしにかかる。ロシアでプーチンが、イラクでサダムがやったように。
09年11月、黄光裕は突如、拘束された。10年二月に起訴されたが、それまで留置所におかれたまま。この人権無視の捜査の遣り方にヒューマンライトをいう団体らは抗議したが、無駄だった。
容疑は『インサイダー取引』。かれの兄が経営する『山東金泰集団』の株価操作という嫌疑である。
人民元八億元を不正に外国通貨に交換し、海外からの投資にみせかけて、じつはインサイダー取引を展開して株価を操作、けっきょく三億元強(46億円)もの不当な利益を上げたというのだ。
そして5月18日、判決が出た。懲役14年、罰金額はじつに五億元と二億元相当の財産没収。黄夫人もインサイダー取引の容疑で罰金刑がくだった。
しかしインサイダー取引など、中国では日常茶飯、共産党幹部の多くが関わっていることである。驚きにも値しない。
一方で矛盾するが温家宝首相率いる中央政府は『汚職撲滅』を謳っており、共産党としては幹部に関わりの薄い民間人の「スケープゴート」が必要だったのだ。
ちなみに中国のジニ指数、0・4から0・61に跳ね上がっている。つまり中国GDPの61%が特権階級によって寡占されており、庶民の怨念が募っている事実を証明するかのような数字である。
犠牲の山羊として、格好の対象は貧乏から成り上がって中国第二位の財閥となった有名人が、うってつけというわけだった。
これでインサイダー取引の黒幕らは、今夜も「よく眠れる」だろう。
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(読者の声1)貴誌2970号の「暗闇にイコン」の記事中、「中国のマンデラ」として、王丙章博士が無期徒刑で中国の獄中にあるということを、はじめて知りました。名前もはじめてです。
いったいどういう人物で、しかし何故に日本では知られないのでしょうか?
(YK生、高知)
(宮崎正弘のコメント)王丙章博士は改革開放の恩恵で国費留学生として、最初にカナダへ留学した医学博士。1982年11月に、米国にいた中国人留学生を糾合して『中国之春』をNYで旗揚げし、欧米マスコミがおおきく取り上げたため、またたくまに『自由、民主、法治、人権』をとなえる反政府組織は世界に拡がりました。
小生は1983年夏にNYで王丙章にインタビュー。「あなたは日本からきた初めてのジャーナリスト」と言われました(詳細は拙著『中国の悲劇』)。
一年で世界三十数カ国に拡がり、日本でも地下組織ができ、翻訳版もでた時期があります。週刊誌で紹介したところ、すぐに翻訳記事が香港『亜州週刊』にでました。
日本のマスコミは中国の海外留学生による反政府運動を黙殺しました。北京政府の都合の悪いことは書かないという姿勢は、現在よりも強烈でしたから。だから王博士を知らない日本人が殆どでしょうね。
さて、89年6月4日天安門事件。王博士はNYから日本経由で北京へ向かおうとして、成田空港で搭乗拒否されます。
記者会見を空港で行い、各紙がこのときは報道しました。小生の知り合いらが神田で王博士を囲む会を開催しました。当時の学生指導者たち、ウーアルカシイ、柴玲、王丹らが次々と米国へ逃れ、また知識人の方励之、劉賓顔らも出国し、反政府運動はピークを迎えます。
各組織が合同団結し、89年秋、『中国民主陣線』の誕生です。
ウーアルカシイは日本での集会にも現れ、小生は二回あっていますが、かれはいま台湾女性と結婚し、台湾に定住しています。柴玲はNYでファンドマネジャーの夫と暮らし、運動の一線をから後退し、つまり、闘っているのは王博士のグループ(中国民主党)。そこで中国国内で組織を拡げようとして、無謀にもベトナムから広西チワン自治区へ潜入したところ、王丙章は逮捕され、広東省で起訴され、無期懲役となったわけです。
面会した家族に拠れば、おそらく拷問により神経が冒されている様子だと、香港で記者会見がありました。二年前です。
そういう経過があります。(なお「王丙章」の『丙』は火偏です)。
▲ドキュメンタリー小説『天安門のパンドラ』(扶桑社)について
ついでと言うと失礼かも知れませんが、これらの時代背景をとらえて、当事者のひとりが天安門事件における学生運動と共産党との闘いを小説化(ドキュメンタリーのベル)した書籍がでました。
劉剛『天安門のパンドラ』(井上一葉訳、扶桑社)です。
映画化のはなしも進んでいるそうです。
この小説は天安門事件の中心人物のひとりだった劉剛が初めて書いた悲劇への道を詳細に綴った作品で、かれは『指名手配』された21名のなかにリスト・アップされ(それも王丹、ウーアルカシイに次ぐ第三位の手配)、逃亡中、河北省保定で逮捕され、懲役6年ののち、香港から米国へ亡命。いまニュー・ジャージーに住んでいます。
原作は「天安門事件二十周年」にあたる2009年6月4日に香港で出版され、「事情通」の日本人が「井上一葉」というペンネームで翻訳。中国語に堪能なプロにいわせると『原作以上の日本語』だそうです。
現場にいなければ出てこない場面、描写、会話が生き生きとしており、たとえば胡錦涛は登場人物達の会話を通じて、つぎのように評価されています。
「胡燿邦罷免に疑問を表明して学生運動鎮圧に不満だったくせに(チベット武力鎮圧に乗り出し)」ト王丹が胡錦涛の写真を指さし(ヘルメットをかぶって武力鎮圧の指揮を執る)
『一年経つか経たないかで(胡は)公儀介錯人に変わり果てたか。変わり身が大きすぎるって』(中略)『一年前はまだ、個性のないバカ者、思想のない機械、感情のない道具に改造されるんじゃないかと心配していたくせに、いまや自分がその道具になっただけじゃなくて、道具製造器になったわけだ』
「これぞ共産主義だ。ひとを殺人マシンにだって改造出来るんだ」
小説とはいえ登場人物の大半は実名ででてきます(同社は扶桑社刊、1900円)。
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A9%E5%AE%89%E9%96%80%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9-%E5%8A%89-%E5%89%9B/dp/4594061664/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1274218601&sr=8-2
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(読者の声2)チベット自由人権百人委員会講演会のお知らせです。
緑まぶしい季節となりました。会員の皆様におかれましては、益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。また、チベット百人委員会の活動に対しまして、日頃よりご理解とご支援をいただいておりますことに心より感謝申し上げます。
さて当委員会は、亡命政府元公安大臣アラク・ジクメ・リンポチェ師をお招きし下記の通り講演会を開催いたします。ご多用とは存じますが、ご出席いただきますようご案内申し上げます。
記
講演 「チベットの現状と展望」
講師 アラク・ジグメ・リンポチェ師(亡命政府元公安大臣・元議長)
とき: 平成22年5月29日(土) 14:00~16:00
ところ: 仏教伝道会館 7F 「見の間」 (港区芝4-3-14)
http://aura-soma.jp/map/bdkmap.htm
(都営地下鉄三田駅から徒歩3分)
参加費: 1000円
主催: チベット自由人権日本百人委員会
共催: チベット問題を考える会
問い合わせ:090-5493-5421(岡崎)
FAX 03-6404-8842
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(読者の声3)貴誌前号拙文の続きです。
草地貞吾について『朔北の道草』のことを申し上げましたが、これは膨大な抑留体験者の上下二巻の膨大な文集で、その中心人物が草地貞吾であるということです。
草地の文章は『関東軍作戦参謀 草地貞吾回顧録』が素晴らしいです。文章の質もきわめて高く、読み始めるとやめられません。ソ連の満州侵略からシベリア抑留までの生の記録では この種のものとしては最高です。
http://www.fuyoshobo.co.jp/runout.html
シベリア抑留については若槻泰雄という人の『シベリア捕虜収容所』が、もっとも信頼されているバイブル的な文章ですが、この若槻という人は猛烈な反共主義であると同時に天皇陛下の戦争責任を問う「天皇制廃止」論者です。
戦争責任論上下二巻のほか日本共和制を提唱する文章もあります。相当なリベラルです。
その若槻泰雄が天皇崇拝者の草地貞吾の生きざまを絶賛していることにたいへんびっくりしたと同時に深く感銘を受けました。若槻が草地を評価するもとになった本はたぶん『関東軍作戦参謀 草地貞吾回顧録』であったと思います。
天皇ご自身が人間宣言をしてしまっているいま、現人神・天皇陛下という考えを草地のように受け入れることは難しいしもはや不可逆的であり得ないことですが、その精神の在り方、そして人間の価値としての信念と行動の在り方は現代において最も欠けているものです。
収容所をたらいまわしにして、なんとか自白を強要したソ連側の激しい拷問にもかかわらず、信念をつら抜き通した姿は「素晴らしい」の一語です。
若槻泰雄は他の関東軍首脳の態度を厳しく批判していますが、草地は良くも悪くもそれらの参謀を論じながら一切悪口を言っていないのもなかなかなものです。
余談ながら満州ものの古本は高価ですね。草柳大蔵の『実録 満鉄調査部』は書棚に眠っていました。
http://www.amazon.co.jp/%E5%AE%9F%E9%8C%B2%E6%BA%80%E9%89%84%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E9%83%A8-%E4%B8%8A-%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%8D%89%E6%9F%B3-%E5%A4%A7%E8%94%B5/dp/4022602465
いま読み直しています。
(TK生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)若槻泰雄氏には米国における日系移民排斥の歴史を描いた新書もありますね。たしか『排日の歴史』(中公新書)。85年に拙著『ふたつの山河』(ダイナミックセラーズ)の取材でロサンゼルスに二週間ほど滞在したおり、参考にしました。その後の彼の著作に関してはまったく知りませんでした。
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(読者の声4)貴誌前号の「読者の声2」ですが、感想です。
戦前の左翼はソ連の対日工作の手先でした。現代ロシアの歴史家によると関東軍内にもソ連スパイ(日本軍人)がいたそうです。張作霖暗殺事件の河本大佐を連想します。
スパイの動機は金、女、醜聞、そして理想主義です。
当時日本の理想主義左翼はソ連でどんなに恐ろしい左翼政治が行われていたのか知りませんでした。このため杉本・岡田嘉子組のような間抜けな亡命者が出たのです。共産主義者の杉本は越境するとすぐにKGBに逮捕され、すさまじい拷問を受けて、日本のスパイと認め、銃殺されました。岡田は美女だったので生き残りましたが愚かであったと述懐しています。
戦前の日本当局の取り調べは残虐なKGBと比べると幼稚園程度で、大げさな被害論は左翼の反日宣伝でしょう。
本当はソ連と同じレベルでやってよかったのでしょうが。
ちなみにKGBの尋問では質問は一回だけ。尋問官は回答に不満だとナイフで顔面を切り裂いたそうです。結局、最後は射殺していたようですが。
なお戦前の日本では昭和初期の一斉取り締まりで左翼は大量に転向したので、特高はもっぱら国家主義者を監視していたそうです。
日本人は1991年ソ連が滅びて犯罪国家であることが証明された以上、その手先であった日本左翼を否定しなければなりません。特高警察は日本のFBIであり、憲兵隊の取り締まりは万国共通の当然の自衛行動でした。なんら非難される筋合いはありません。
これらの機関に勤務した人々は戦後弾圧され左翼から非難ましたが、敵の手先になった左翼とは比べ物にならない立派な人でした。
われわれも日本民族なら時代遅れの倒錯した特高、憲兵非難は止めなければいけません。
(東海子)
(宮崎正弘のコメント)いまのスパイに理想主義が動機というのは考えにくいですね。カネか女がスパイになる二大動機。ですからリクルートもしやすい。嘗てのソ連より「中国の代理人」が日本にはウヨウヨいます。
拙訳「レフチェンコ証言」(レフチェンコ米議会証言『ソ連KGBの対日謀略』、山手書房、加瀬英明監訳)の時代からから隔世の観があります。
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(読者の声5)宮崎県の口蹄疫を聞くにつけ、阪神淡路大震災の村山富一のバカさ加減を思い出します。
当時もTVで被害の状況が時々刻々映し出されているにもかかわらず「ばか総理」は官邸で文化人とやらと茶飲み話中で、対談相手から「こんなにのんびりしていて大丈夫なのですか?」と心配されてもどうしてよいかわからずただにやにやうろうろするばかりだったと聞いています。
アホの赤松が外遊していたのと全く状況が似ています。
さらに、震災後の国会答弁では「なにぶんはじめてのことだったけど最善を尽くした。」などと妄言を吐いてるのは、赤松が「初動に誤りはない。」と虚勢を張って答弁するのとダブります。
さらに両名とも社民党出身であることも共通しています。
こんなあほの総理に間抜けの大臣の下では、震災犠牲者や殺処分する農家の皆さん、される牛ブタなどは浮かばれません。
まあ、危機管理意識が欠如していると野党は追及する予定のようですが、議員のレベルは国民のレベルという民主主義の原則からは、一番危機意識が欠如しているのは、こんなあほバカを選んだ我々国民ということになります。
毎日、ため息が出ます^^;
しかし民主に投票してない私としては、そのトバッチリを受けたくないのですが、日本国民である以上、平等に受けざるを得ません。これこそ「悪しき平等」のきわみです。毎日がはらはらドキドキ、体によくない!!
(GV2)
(宮崎正弘のコメント)民主党に投票した国民のうち、固定票部分は旧社会党支持あるいは共産党支持ですから、懺悔も後悔もしていないでしょう。浮動票を小鳩にいれた人々にとって、彼らがこれほどの馬鹿だったとは「想定外」でしょうね。
中央政府閣僚をみていたら、よほど宮崎県知事のほうがしっかりしている!
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西村真悟のコラム
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改めて、国内の鳩と中国共産党の危険性について
先に、現政権について、「アホか!」としか論評できないと書いたが、数日経った今も同じである。普天間基地移設問題の五月末決着の約束を忘れたような鳩、改めて、アメリカ政府がこの鳩との会談を嫌った措置が適切であったと思う次第である。
それと、検察審査会で起訴相当との判断がされている幹事長、これはずるい。御輿の上が、普天間の国外移転、県外移転と言っているときに、御輿を担ぐ振りをしながら既に県内の適地を購入している。言うまでもなく、購入代金と値上がり後の土地価格の差額獲得を待っているのである。これを濡れ手に粟という。政治に携わりながら、ここに神経が行く。これが彼の本質なのだ。
と、言うわけで、この面々に関してまた何を書けばいいのかと思っている矢先、福井県立大学教授の島田洋一氏のブログを見て笑った。一枚の写真が貼り付けてある。米原駅長が乗降客に注意を呼びかけた張り紙だ。
曰く、「鳩の糞が落ちてくるので注意してください」
そう言えば、家近くの駅の天井の梁には尖った釘が並べて立てられて鳩がとまらないようにしている。また、公園には「鳩に餌をやらないようにしてください」という立て看板が立てられている。その理由は、餌をやると鳩が増えすぎて糞により公園の美観を損なうからだという。
鳩は、糞に注意しなければならない。しかし、これは駅にいる鳩、公園にいる鳩のこと。
ところが、愕然として気付く我が国の惨状は、この鳩がズルシャモに担がれて「政府をやっている」のである。その糞害いやその惨害は、計り知れない我が国の国益の喪失であり、具体的な国家と国民の生命の危機を自ら招いているのである。
国内において、やれ普天間移転の方針は、閣議決定ではなく総理大臣の声明で済ますとか、連立解消だとか、幹事長が政治倫理審査会に出席するとか、これだけで一体いいのか。
この程度のことが政治だと思っているのなら、鳩一家は東京にいても役に立たない。せめて、口蹄疫病で八万頭以上の牛が殺処分を受けている宮崎に行ってその処分を手伝えばよい。
国を護るという崇高な志のもとに組織された自衛隊に、牛の死体の処分をさせて平気でいるな。
この国内の混迷と停滞の中で、我が国への脅威は、のど元に鎧通しが近づくように南の海域周辺から迫っている。
三月の黄海における韓国哨戒艦の沈没は、北朝鮮の魚雷攻撃によるものであることは確実だと思われる。その北朝鮮の金正日は、五月に中国を訪れている。つまり、経済が破綻して対南冒険主義に走った北朝鮮は中国に逃げ込み、抱え込んだ中国は北朝鮮は中国の勢力範囲にあるということを南に示している。極道の親分がヒットマンを抱え込んで威力を示しているのと同じだ。
その中国は、今年に入っても露骨な海軍演習を東シナ海で繰り返し、三月、四月には、中国軍艦の艦載機が我が国自衛艦に異常接近して、ミサイルの照準を合わせた(ロックオン)。また我が国の排他的経済水域で調査活動をしていた海上保安庁の調査船を中国海軍艦艇が「ここは中国の海である。退避せよ」と通告しながら追いかけている。
これに対して鳩の政府は、中国の行動を放任して何もしていない。五月にはいって岡田外相が中国外相に、外の会議の場でついでに「抗議」したらしいが、「あそこは中国の海である」と一蹴された。つまり「おととい来い」である。
さて、フィリピンのアメリカ空軍のクラーク空軍基地とアジア最大のアメリカ海軍基地であったスービック海軍基地が、フィリピン上院の軍事基地拡張拒絶決議によりフィリピンに返還されアメリカ軍が撤退したのは、1992年11月である。
そして、中国軍がフィリピンが領有を主張する南沙諸島のミスチーフ環礁等を武力占領して建築物を構築したのが、1995年である。以後中国は既成事実を積み重ねて大型機が離着陸できる滑走路まで建設してしまった。
この南沙諸島海域も、我が国の尖閣諸島海域と同様、1970年代後半に海底油田の存在が確認されてから中国がにわかに領有を主張したものである。
そして、中国は1992年2月、領海法を制定してこの海域を中国の領海だと勝手に国内法で決めて傍若無人な「調査活動」を繰り返している。これも尖閣と同様である。これが中国の行動パターンである。
また、この南シナ海の南沙諸島海域は、世界の全貿易量の15%、日本の全貿易量の50%が行き来する世界経済上重要なシーレーンである。
ここで確認しておかねばならないことは、中国が領有権の主張から、それを武力占領という行動に移す切っ掛けは何であったかということである。それは、その地域の「力の空白」、つまりアメリカ軍のフィリピンからの撤退である。
次に、目を南シナ海の北、バシー海峡から東シナ海に移す。中国は、台湾は中国のものと主張し、南沙諸島と同じ海底油田の存在という切っ掛けで尖閣諸島の領有を主張するに至っている。さらに、中国共産党は明らかに沖縄を狙っている。
そして今までさんざん周辺海域で「調査活動」を傍若無人に行い、近年にいたっては、潜水艦を潜航させたまま我が国領海内を通過させ、本年に入って述べたように我が国自衛艦に対する中国海軍機の異常接近とロックオンという「戦闘行動」を行っている。
よって今、中国は何を見ているのか。それは、この東シナ海海域に「力の空白」が生まれるか否か、これだけである。
そして、鳩山由紀夫は、今、まさにこの海域に「力の空白」を造るために総理大臣になっているのである。沖縄のアメリカ軍基地を沖縄から海外に撤去するのが「私の公約」だからである。
従って、今非常に危険な事態が南の海域に生まれている。
中国は「力の空白」があれば何でもする。
毛沢東は、アメリカ政府が「防衛ラインは台湾から沖縄日本列島のラインである」と表明したとき、朝鮮半島はアメリカの防衛ラインの外、つまりそこに「力の空白」がある、と判断して、金日成の韓国侵攻にゴーサインを出した(朝鮮戦争の勃発)。
同時期、チベットの軍備弱小と判断したとき、ぬけぬけと「西蔵和平解放」と称してチベットに侵攻した。
今、沖縄では、左翼と中共の工作により「反アメリカ軍基地闘争」が盛んである。従って、沖縄に「力の空白」が生まれれば、西端の「西蔵和平解放」を真似て東端の「沖縄和平解放」と称する「沖縄侵略」を仕掛けてくるであろう。
次に、中国共産党の対外行動の背景には、国内の惨憺たる情況から目をそらすという動機がある。
台湾海峡の金門・馬祖への攻撃は、毛沢東の大躍進政策が数千万人の餓死という惨憺たる結果を生み出していたときだ。{ケ小平のベトナムへの侵攻は、文化大革命がもたらした大矛盾・大不満から人民の目を逸らすためであった。
では今の中国の国内状況はどうなっているのか。
中国政府の発表する統計と上海万博の報道を信じてはいけない。
中国では、毎年、9万から10万件の暴動が起こっているという。これは、現時点のタイ情勢以上の異常事態ではないか。唯、我が国では報道されないだけである。
中国社会科学院の公表している事態は次の通りである。
「大規模な暴動に発展する群体事件については、2009年、全国規模で社会的影響があまりにも大きいものは10件近く起きた」と認めた上で、「一部地域では、社会安定のイメージを立てるために、地方幹部が昇進を狙い、暴動に蓋をしている」と中央と地方の溝の深さを指摘している。そして、「民の恨みは、あまりにも深い」と指摘している。
また、共産党規律委員会では、「暴動の背景には、官僚、政治家、党員の腐敗問題がある」と結論づけている。
ここに顕れた中国当局ももはや隠すことができない国内の状況一端から推し量れることは、安定した我が国にいては想像できない深刻な中国国内の状況、支配層の腐敗と民衆の恨み、そして混乱である。
ここ30年間、一貫して反日教育を繰り返してきた中国共産党が、この国内の不満から民衆の目を逸らせる為に、東シナ海で憎き日本に対して「沖縄解放」の攻撃を仕掛ける可能性はおおいにある。
中国の現状と過去の事例に則して言うならば、いつ中共がこの攻勢にでても、もはや不思議ではない。
これを事前に抑止して、我が国と東アジアの平和を確保する道は、第一に、我が国が一気に国防力を増強することである。
次に、それが、一気にできないならば、我が国はアメリカ軍のプレゼンスを確保してアメリカと連携し共同歩調を執って東アジアと世界の平和を確保することである。
しかし、今、鳩の政権のバカさ加減ばかりが報道される内向きの情報封鎖の中にいる国民は、この我が国に迫る危機を注視できず、鳩政権は、防衛費を削減し、アメリカを沖縄から追い出す反基地闘争に迎合して「力の空白」をつくり出している。
総理の鳩は、我が国の総理としては優柔不断に見えるが、中国共産党の飼い犬としては、断固として彼のために尽くしているのである。つまり、祖国を裏切り敵のために働いている。それを支えているのが、初めから自分の祖国は中共だと認めている自称中国人民解放軍の野戦軍司令官(実質は下士官以下)である。
(了)
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(にしむら・しんご氏は前衆議院議員)
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@@@@@@@ @@@@@@ 宮 @@@@@@@ @@@@@@@
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「日本文化 チャンネル桜」からお知らせ
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記
番組名:「闘論!倒論!討論!2010 日本よ、今...」
テーマ:経済討論第11弾!「二番底到来!? ユーロ経済と日本」
放送日:平成22年5月22日(土曜日)20:00-23:00
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日本文化チャンネル桜(スカパー!217チャンネル)
インターネット放送So-TV(http://www.so-tv.jp/
)
<パネリスト>(50音順、敬称略)
上村シーラ千賀子(シスコシステムズ上級管理職・早稲田大学、秋田大学講師)
田代秀敏(エコノミスト・ユーラシア21研究所研究員)
藤井厳喜(国際問題アナリスト)
三橋貴明(経済評論家)
宮崎正弘(作家・評論家)
司会:水島総(日本文化チャンネル桜 代表)
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『三島由紀夫研究会』の「公開講座」のお知らせ
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土曜日午後、高田の馬場まで散歩にでましょう!
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22日、古田博司(つくば大学教授)が登壇
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とき 5月22日(土曜日) 午後3時ー5時
ところ 高田馬場駅前「ホテル・サンルート」三階会議室
http://www.sunroutehotel.jp/takadanobaba/access.asp
講師と演題 筑波大学教授 古田博司「文化防衛論と日本文明圏」(仮題)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E7%94%B0%E5%8D%9A%E5%8F%B8
会場分担金 おひとり2000円(会員と学生は1000円)
(ふるたひろし先生は産経新聞「正論大賞」新風賞受賞者。朝鮮文化歴史に造詣が深く、独自の視点からの日本文明論史観に切り込む話題の論客です)
▲
(特記)土曜日の午後なので会場は、いつものアルカディア市ヶ谷ではありません。なお、終了後、講師を囲んで懇親会を付近の居酒屋で予定(希望者のみ。別途会費お一人3000円。午後五時―七時)。
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『トンデモ中国、真実は路地裏にあり』(阪急コミュニケーションズ、1680円)
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